中国人訪日旅行者数は,東日本大震災直後に著しく減少した後,平成24年に入ってから急速に増加に転じている.そこで本研究では,このようなマクロ的現象に影響する中国人の訪日旅行に対する意識を,個人属性によるグループ別に多時点で捉え,訪日意向の変化を明らかにすることを目的とする.実施した6回のWebデータは,時系列と多様な個人属性の比較という2つの側面を有するため,パネル分析手法を適用した.固定効果モデルによる推計の結果,時点固有の効果と個人属性による効果を峻別することができ,時間の経過による訪日に対する抵抗感の軽減,ならびに日中関係の「積極」評価層における訪日意向の高さを明らかにすることができた.
特殊会社であるJR4社が経営自立計画を策定した.JR九州の経営が好転し,株式上場の準備に入っている.しかし,完全民営化の実現のため特殊な存在である経営安定基金等をなくした場合の通常方式の試算では,同社の上場基準の達成は容易ではない.他の3社は,通常の上場方式では完全民営化は超長期的な課題になってしまう可能性が高い.一方,最近は上場基準が緩和され,企業の成長を前提とせず安定的な経営であればよくなった.政府の助成を維持している特殊な事例もある.そこで,通常の方式による上場ではなく,JR4社の特殊な要素を維持し,とりあえず上場する特殊な方式の可能性について制度的に検討する.
近傍グラフは,データ間の類似度や近接性を解析し,そのデータ構造を視覚化する手法として注目され,多くの分野で活用されている.しかし,地域の近接性を記録するデータの一つであるOD交通量データを用いて近傍グラフを構築し,そこから明らかになる地域構造を視覚表現しようとする試みは,これまでのところ見られない.本報告は近傍グラフに着目し,主要な発着地域の組み合わせの抽出を行い,その結果を視覚表現する新たな手法を提案する.最後に,全国幹線旅客純流動調査データを用いた分析を通して,提案手法の適用可能性を検証する.