大都市圏港湾域においては,物流施設立地ニーズが高い一方で,これら施設整備の用地が限られており既存埠頭を物流拠点として再開発するニーズがあるが,面的整備による再開発手法は殆ど検討されていない.そこで,東京都市圏港湾域をモデル地域として,最近の物流事業者のロジスティクス・ニーズに対応した港湾域における国際物流の一層の効率化や安全確保,道路・鉄道などとの交通接続性の強化,空間利用の高度化などを可能とする物流拠点再開発手法の方向性を検討した.具体には,物流施設立地動向,港湾域の空間利用の現状分析等を行い,新たな再開発の計画制度やその実現のための事業制度からなる再開発手法を検討・提案した.
本論文は,国際航空旅客輸送市場における純流動旅客数を推計する手法を示し,それが現在その代替として広く用いられているOFOD統計とどの程度乖離しているかについて検討するものである.具体的にはOFOD統計をもとに利用者の経路と航空券の種類の選択行動を定式化して推定される空港間の利用者数と,定期国際便の空港間利用者の統計であるTFS 統計の空港間利用者との差が最小になるように選択行動のパラメータを推定し,純流動旅客数を推定する.この手法を世界の主要10都市間に適用し,OFOD 統計と推計した純流動旅客数が約27~33%乖離している可能性があることを明らかにした.
わが国同様大都市圏拠点空港の容量不足に悩まされてきた英国では,90年代後半より航空会社間におけるスロットの二次的売買が判例上認められてきた.本売買はスロットの交換を行うとともにスロット間の実質的な価値の差異を金銭にて填補するというスキームにて行われてきており,これまで空港容量という希少資源の有効活用に貢献した一方で,そのさらなる展開に際しては,スロットが包含する権利の明確化,売却益に係る利益調整システムの構築,売買の透明性確保,及び寡占の防止といった課題が残されている.
世界でも有数の混雑空域であるNY首都圏の空港では,近年その混雑の影響で航空機の遅延問題が深刻化している.その1つの原因が非効率な空域設計にあり,その改善のために世界でも例のない大規模な空域再編が約10年かけて計画され2007年末から一部実行に移されている.本報告では,まず,狭隘な空域で世界最大規模の発着回数を処理しているNY首都圏空域における航空管制の運用方法の現状を紹介し,大規模な空域再編による遅延問題,環境問題の改善方法について報告する.最後に,それらNY首都圏空域の管制運用および空域再編と我が国首都圏空域における管制運用を比較しながら,我が国の将来の管制運用効率化に対する示唆を述べる.
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