本地域はフォッサ・マグナ北東部の褶曲構造を形成する第四紀の変動地域にあたり,信濃川により形成された河成段丘群が発達している.本研究では段丘面上の信濃川ローム層を,岩石学・鉱物学的な観点から火山灰層序学的な区分をした.ローム層中から抽出した火山灰は,大町APm, M2, K-Tz, On-Kt, Aso-4, Pm-3C, DKP, AT, As-Kなどの広域テフラ(広域火山灰)と近隣火山起源のテフラである.段丘面上のローム層のテフロクロノロジーを基に,信濃川段丘群を中期更新世の谷上段丘,米原II段丘,後期更新世前半の貝坂I・II段丘,後半の正面段丘,楢ノ木平段丘,完新世の大割野I・II段丘に区分した.段丘基盤の構造と段丘面の変位には類似性が認められる.基盤は非対称な向斜構造をなす.北西翼は急傾斜で活断層や撓曲が見られる.段丘面は比高が高く急傾斜である.一方,南東翼では基盤が緩傾斜で,段丘面は比高が小さいが広い.また,向斜軸上では段丘面は凹地状に変形する.向斜軸は隆起運動の異なるセグメントの境界部であり,段丘面の変位は,これらの断層をともなった差別的な運動により規制されている.また,隆起運動は段丘形成期を通じて優勢であったが,その運動には活発期と停滞期があった.
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