地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
77 巻, 1 号
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日本の露頭
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原著論文
  • 森清 寿郎
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 77 巻 1 号 p. 7-28
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    長野県,上田地域の中新世青木層には,菱鉄鉱を含む燐酸塩団塊が産出する.それらは,燐灰石1相団塊と菱鉄鉱燐灰石 2 相団塊であり,両者とも方解石を欠いている.燐灰石が晶出した続成ステージと方解石欠如の理由を明らかにするため,団塊の TCC(全炭酸塩体積パーセント),1団塊中での菱鉄鉱と燐灰石の重量比,燐灰石の SO42- 含有の有無,菱鉄鉱の炭素・酸素同位体比を測定した.燐灰石の約半数が結晶格子中に SO42- を含むことから,燐灰石は主要には初期続成作用の硫酸塩還元ステージ晶出であることが明らかである.菱鉄鉱のδ13C の最高値は +9‰で,δ18O 低下とともに δ13C が低下している.炭素同位体比は菱鉄鉱がメタン発酵から有機物熱分解ステージにおいて晶出したことを示す.このことから,青木層では埋没浅所で燐灰石が晶出し,その後埋没がより進んだ深所で菱鉄鉱が晶出した,という晶出順序が明らかになった.その結果から,燐灰石晶出時の堆積物間隙率は,燐灰石を含む 1 相および 2 相団塊の TCC 値,菱鉄鉱晶出時のそれは菱鉄鉱 1 相団塊の TCC 値と 2 相団塊中の菱鉄鉱の体積パーセント,として知ることができる.燐灰石 1 相団塊の TCC 値が,菱鉄鉱晶出時の堆積物間隙率の範囲に入る試料があった.この事実は燐灰石晶出が硫酸塩還元ステージに限定されず,メタン発酵ステージ以降でも生じていたことを示す.青木層堆積物においては続成作用の初期に,間隙水の pH が海水値より低下した.そのため,続成作用時に方解石は晶出せず,青木層に産する団塊は方解石を欠くものとなった.

  • 保科 裕, 力田 正一, 松岡 喜久次, 松井 正和, 市川 孝, 関東山地研究グループ
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 77 巻 1 号 p. 29-43
    発行日: 2023/01/25
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    群馬県の下仁田地域において,跡倉ナップを構成する前期白亜紀の四ッ又山石英閃緑岩体は石英閃緑岩と少量の花崗閃緑岩で構成される.石英閃緑岩はホルンブレンド,斜長石,および少量の石英からなる.花崗閃緑岩は黒雲母,白雲母,斜長石,石英およびカリ長石からなり,少量のざくろ石および菫青石を包有する.

    花崗閃緑岩は,黒雲母片麻岩,角閃岩,結晶質石灰岩の捕獲岩を含む.黒雲母片麻岩は,優黒質層と優白質層からなる層状構造で特徴づけられる.花崗閃緑岩は黒雲母片麻岩捕獲岩の周囲で不均質となり,黒雲母が濃集したシュリーレンを挟在する.花崗閃緑岩は、縞状花崗閃緑岩,優白質花崗閃緑岩,ペグマタイト質花崗閃緑岩を密接にともなう.露頭において,黒雲母片麻岩の岩相が周囲の花崗閃緑岩へ徐々に移りかわることを観察できる.この産状から,黒雲母片麻岩は花崗閃緑岩質マグマによって同化されたと考えられる.黒雲母片麻岩捕獲岩周囲の花崗閃緑岩は,堆積岩を起源とする黒雲母片麻岩の同化によってパーアルミナスな組成となり,S型花崗岩類の鉱物組成や岩相の特徴をもつと考えられる.

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