スリランカ北西部の Mantai郡,Yodhawewa地域において得られた鉱滓について地球化学的検討を行った. Mantaiは原始時代からインド洋を横断する交易の港町として栄えた. Yodhawewaの考古学的発掘地点では多数の鉱滓が見つかっており,それらの鉄含有量は変化に富み 1.42から 20.59 wt%である.鉱滓の内,鉄含有量が10wt%以下のものは光沢をもち,岩石薄片では光を通す.これらの試料は淡緑色から暗灰色などであるが,赤色を呈するものもある.ガラス質鉱滓では流動した構造を持つ.注目すべきは高い鉄含有量のものにかんらん石が含まれることである.このかんらん石の結晶形態はほぼ自形(0.5-1.0mmの大きさ)から,矢羽型や針状のものなどさまざまであり,これは冷却の状況による.かんらん石の電子プローブマイクロアナライザーによる分析では鉄かんらん石の組成を示す.鉱滓中の鉄かんらん石はガラス,白榴石,ビュスタイトを伴う.かんらん石とその結晶に含まれるガラスの相平衡からは,かんらん石の結晶温度は1100°C以上と言える.また,白榴石は鉄かんらん石と細かな連晶をなしており,両者の共晶温度は~ 1128 °Cと見積もられる.今回の結果は古代人によるかなり高温の火力を用いた製錬についてのはじめての報告といえる.
北部フォッサマグナの上部新生界堆積盆地は海底火山岩類(層厚 > 5km)の噴出をともなって 16.5~15.5Ma に発生し,それまでの陸域が漸深海海盆に転化した.この厚い火山岩類の噴出は,当時の下部地殻~上部マントルに厖大な厚さの部分溶融帯が存在していたことを示唆する.このような場では,上載重力荷重が,部分溶融帯から大量のマグマを絞りだし,湧昇させたと推測される.その結果,絞りだされたマグマ量に相当する深部の容積欠損を補って上部地殻が沈降し,地表部に漸深海堆積盆地が発生したと考えられる.
北部フォッサマグナの武石山塊には,下部~中部中新統の内村層が広く分布している.内村層は,海成の正常堆積物と火山性の堆積物からなり,大規模な指交関係をとって内村海盆に堆積した.正常砕屑岩は,南~南西部の基盤岩地域を後背地としている.火山性堆積物は,海盆内の内村海底火山の噴出物で構成される.グリーンタフ変動開始時における内村海盆の形成とそこでの正常砕屑岩と火山砕屑岩の大規模な指交関係は,フォッサマグナの発生初期における造構史的なプロセスの1つとして重要な意味を持っている.
秩父盆地新第三系最上部の秩父町層群・横瀬町層群は,盆地南東部の三波川変成帯・秩父帯北帯の基盤岩に接して分布する.両層群の砂岩・礫岩の組成や白亜紀の誘導化石の産出から,当時は,秩父盆地の南東側に今は失われた山中地溝帯白亜系が存在し,多くの砕屑物を供給していたことが示唆される.
長野盆地は,北部フォッサマグナ地域における第四紀内陸盆地の一つであり,盆地の西側に沿って延びる長野盆地西縁断層帯の活動による沈降が継続している.長野盆地には,千曲川や犀川などの大河川や中小の河川が大量の砕屑性堆積物を供給し,流域の各所に自然堤防や後背湿地を有する低平地と扇状地を形成した.本論では,長野盆地における約1,900本余りのボーリング資料をもとに地質断面図を作成し,自然堤防や後背湿地を形成した氾濫原堆積物の性状と分布について述べた.氾濫原堆積物は,粘性土層,有機質土層および砂質土層からなる.このうち,粘性土層と有機質土層は,おもに長野盆地西縁断層帯による沈降の影響を強く受けた盆地の西縁部や延徳低地に厚く分布する.一方,砂質土層は,千曲川と岡田川の流域および扇状地の表層に分布する.氾濫原堆積物のうち,標準貫入試験によるN値が4程度以下の粘性土層および有機質土層とN値が10程度以下の砂質土層を軟弱地盤に区分して等層厚線図を作成した.さらに,1847年善光寺地震とそれ以降に発生した長野盆地を震源とするマグニチュード6程度の2つの地震(1897年上高井地震,1941年長沼地震)について,揺れによる家屋などの被害箇所と液状化の発生個所を抽出し,それらの分布がおおむね軟弱地盤の分布域に重なることを示した.
北部九州脇野亜層群と韓国義鳳山新洞層群の「層灰岩」の主成分ならびに微量成分元素測定,希土類元素測定を行った.紫川・黒川流域の脇野亜層群の「層灰岩」は,義鳳山地域の「層灰岩」と比較して,低い Cr,Nb, Ni,Th,Zr含有量,高い Sr含有量およびやや高い V含有量を示す.「層灰岩」は,軽希土類元素に富み,重希土類元素に乏しい右下がりで,重希土類元素側でフラットな希土類元素パターンを示す.紫川・黒川流域と義鳳山地域の「層灰岩」が負の Eu異常を示すのに対し,八木山川流域の「層灰岩」は正または負の Eu異常を示す.4種の三角図( Cr-V-Rb図,Sr-V-10Th図,Ga-Th-Pb図,10Ni-10Th-Sr図)と総希土類元素含有量変化図を層灰岩石材原産地判別図として提案した.貴船神社の球状敲打具は,これらの判別図では脇野亜層群領域にプロットされる.
A characteristic pyroclastic dyke consisting of tuff and tuffite was found at south of Lake Biwa, central Japan. It intrudes into the Jurassic sedimentary rocks of the Tamba Belt along the Sagami River, Otsu City, Shiga Prefecture. The dyke is considered to be one of pyroclastic dykes at the latest stage of Late Cretaceous igneous activities forming the Biwako cauldron. The occurrence and lithology of the dyke are reported.