日本海南部の隠岐群島西ノ島の市部層は中部中新統あるいは上部中新統に対比されてきた.これまで市部層上部はごく限られた地域にのみ露出していたが,瀬戸山トンネルの工事の掘削によって多数の化石が採集された.この群集はAnadara tazawensisを多く含み,Kaneharaia kaneharaiとLaevicardium shiobarenseを伴うことから,塩原型動物群に対比される.従って,市部層は西ノ島の南方約60km離れた本州の布志名層から神西層にかけての地層に対比され,その年代は中期中新世の後期と推定される.また,堆積環境としては,主に寒流の影響を受けていた上浅海の環境が推定される.さらに,北海道以外から初めてMizuhopecten cf. nakatombet-suensisを同定した.本論の結果と海士町試錐の結果から,島前の中新統は下位より下部中新統の美田層,中部中新統の大津層と市部層,上部中新統の海士層およびアルカリ火山岩類に区分された.
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