大阪府南部の大阪層群に発達する褶曲構造やドーム状構造をつくった構造運動の始まりや性格を解明するため,大阪層群の下部に挟まれてくるピンク火山灰層とその上下の地層の堆積相解析をおこなった.その結果,ピンク火山灰層層準の堆積環境には扇状地から内湾泥底まで存在し,河川流路や氾濫原が多く,それ以外にもエスチュアリー,潟,潮汐平底,外浜等の環境も含んでいることが明らかになった.見かけの海水面変動曲線から,ピンク火山灰層堆積当時,堆積盆地の内部で沈降速度に差が生じていたことが判明した.沈降速度の遅いところが現在の背斜構造の軸や軸近傍に位置し,速いところは現在の向斜部にあたる.これらの結果から,ピンク火山灰層堆積当時,堆積盆地内に沈降速度に差異を生じ,地形的な小起伏が生じており,現在の地質構造をつくった構造運動が当時すでに始まっていたことが明らかになった.ピンク火山灰層堆積当時の古地理図から,堆積盆地内に発生した構造運動はN-S,NE-SW方向に伸びる起伏が生じ,堆積盆地内に陸と海を生じさせていたことが判明した.
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