1903年以来提案されてきた日本海の形成に関する諸見解は①地塊傾動,②拡大,および③鉛直運動に分類され,議論は現在も収束していない.この縁海の発生は古第三紀~中新世のいずれかであり,その形成プロセスは日本海と周辺域の先新生界基盤に記録されているはずである.基盤は平行配列する 3つのゾーン(火山 - 深成,高圧変成,および“付加”)で構成されていて,日本海拡大による大規模な伸張変形は認められない.1つの試論として,湧昇する DMMプリュームが上部大陸地殻へ最接近し,地殻が薄化 /高密度化して日本海が発生したことが提案される.
北部九州東部に分布する油須原花崗岩の優黒質斑状岩相の主成分ならびに微量成分元素組成測定,希土類元素ならびにSr・Nd同位体比測定を行った.優黒質斑状岩相は,主に普通角閃石 -黒雲母花崗閃緑岩~花崗岩からなり,朝倉花崗閃緑岩赤岩体と油須原花崗岩の境界部と油須原花崗岩中に点在する.優黒質斑状岩相のモード組成と全岩化学組成は,主岩相と朝倉花崗閃緑岩赤岩体の間にある.朝倉花崗閃緑岩赤岩体から,98 .7±0.6 MaのU-Pbジルコン年代が得られた.この年代は,朝倉花崗閃緑岩の活動時期を示しており,油須原花崗岩主岩相の活動時期と同じである.優黒質斑状岩相は,油須原花崗岩主岩相マグマと朝倉花崗閃緑岩赤岩体に類似した花崗閃緑岩質マグマの混合によって形成されたと考えられる.