大麻山深成複合岩体は島根県浜田市西部に分布し,NE-SW方向に約11km,NW-SE方向に約6kmの広がりをもつ累帯深成複合岩体である.本論文では,本岩体の地質,岩石記載,鉱物のK-Ar年代および全岩や鉱物の化学組成と岩石の成因について検討した.大麻山深成複合岩体は石英閃緑岩,花崗閃緑岩,花崗岩およびアプライト質花崗岩に区分され,モード組成や全岩化学組成の検討からそれらは同じマグマから分化したもので,マスバランスの計算結果から,分化の早期では斜長石と単斜輝石が,より後期では斜長石と角閃石が主に分別されることによって一連の化学組成変化を説明できることがわかった.これまで古第三紀貫入岩類とされてきた大麻山深成複合岩体の主岩相は,K-Ar年代測定の結果,石英閃緑岩の黒雲母で71.9±1.6Ma,花崗閃緑岩の角閃石で69.8±3.6Ma,68.5±3.5Maを示すことから,白亜紀最末期の火成活動によって形成されたと考えられる.また本岩体は30-45MaのK-Ar年代を示す古第三紀の小規模な貫入岩類によって貫かれる.大麻山深成複合岩体は上述のK-Ar年代と磁鉄鉱系に属することから,山陰中央部から東部に広く分布する因美期貫入岩類の西方延長にあたるものと考えられる.
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