群馬・長野県境の東側の地域には,中新世から鮮新世にかけて形成された火山岩類が広く分布している.これらの火山岩類は,中期中新世末から後期中新世初頭にかけて堆積した原市累層と板鼻累層を覆っている.本地域の火山岩類は,霧積累層,鼻曲層,入山峠層に区分される.霧積累層は海成堆積物からなる基盤岩類を不整合の関係で覆い,鼻曲層および入山峠層に不整合の関係で覆われている.霧積累層は下位から久保部層,碓氷湖部層,湯の沢部層,道全部層,入の湯部層に区分される.久保部層は,角閃岩,結晶片岩,片麻岩,ホルンフェルス,石英斑岩,チャート,砂岩,頁岩等の礫を含んでいる.変成岩礫は領家変成帯に由来するとみられる.久保部層は,流紋岩およびデイサイト質の火山性堆積物からなり,火道の役割をしていた中尾山岩体群から供給されたものである.これに対して,久保部層を除く霧積累層の各部層,鼻曲層,入山峠層は,安山岩質の火砕岩と溶岩により構成されている.調査地域には,およそ30を越える貫入岩体と300本以上の岩脈が認められる.これらの多くのものは,霧積累層堆積期のものと考えられる.
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