細胞膜の表面に発現する糖蛋白質, 糖脂質, プロテオグリカンなどの複合糖質(糖鎖)は, 発癌過程において大きく変化するのみならず, 癌の浸潤·転移においても重要な役割を果たしている. 糖鎖を利用した癌治療薬は, 糖鎖と特異的に結合するレクチンの阻害剤, 糖蛋白糖鎖を標的にした抗体医薬品, 糖鎖による自然免疫系の活性化, 糖鎖の合成阻害剤, 糖鎖を利用した癌ワクチンなどにわけられる. これらのなかには, 米国Food and Drug Administrationからすでに医薬品に認可されているものがあるほか, 臨床試験段階にあるものもいくつかある. 副作用が軽微な治療薬になると期待され, 今後の開発研究が加速する分野である.
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