Drug Delivery System
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38 巻, 3 号
日本DDS学会
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “イオン液体とDDS”  編集:太田琴恵
  • 福田 達也, 池田 真由美, 岩尾 康範
    2023 年 38 巻 3 号 p. 190-198
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    薬物の物性改善、また皮膚や消化管といった薬物送達における障壁、いわゆるbiological barrierの克服を目的として、イオン液体(ILs)のDDSへの応用が注目されている。その利用方法として、医薬品有効成分(API)の可溶化や安定化、吸収促進を目的とした溶媒としての利用と、API自身のカチオン・アニオンの性質を用い、API自身をILsとする方法があり、低分子医薬から高分子医薬までのさまざまなモダリティに応用可能な技術である。本稿では、溶媒としてのILsの利用と、APIのIL化に関する近年の動向を紹介し、APIの物性改善およびBiological barrierを克服するうえでのILsの有用性について解説する。また、中枢疾患治療への応用を目指したAPI-IL開発研究に関する筆者らの最近の成果を紹介する。
  • 古石 誉之, 米持 悦生
    2023 年 38 巻 3 号 p. 199-209
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    医薬品有効成分(API)が難溶性であることで、生物学的利用能の低下やそれに伴う有効性・安全性の低下は、医薬品開発段階において未だに問題となっている。また、高分子化合物を用いた優れた医薬品開発が進むなか、安定性が低いことが原因でその開発が進まない例が散見される。本稿では、APIのイオン液体化(API-IL化)によるAPIの可溶化およびそれに伴う応用例、タンパク質医薬の安定化のために、生体適合性の高いコリンおよびアミノ酸ILを使用した例について紹介する。
  • 伊藤 雅隆
    2023 年 38 巻 3 号 p. 210-219
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    深共晶溶媒(DES)は、水素結合を形成する2種以上の固体もしくは液体から構成された液体である。各成分単体が室温において固体であっても、共晶融解温度が室温より低ければDESは室温において液体となる。DESは有機溶媒の代替として期待されており、さまざまな物質の抽出や合成に関する研究が盛んである。さらに、近年では有機酸や糖からなるDESや3成分系のDESが報告されている。筆者らは医薬品原薬(API)を容易に溶解可能なDESを調製し、APIの溶媒として利用できる可能性を示した。特に難水溶性APIであるタダラフィルにおいて、水の24,800倍もの溶解性が確認された。また、マロン酸を含むDESにカルバマゼピンを分散させたスラリーを調製し、ビーズミルで処理することで、カルバマゼピンをマロン酸との共結晶へ変換することに成功した。本稿では代替溶媒や結晶化におけるDESの有用性について述べたい。
  • 後藤 雅宏
    2023 年 38 巻 3 号 p. 220-229
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    イオン液体の製剤利用に近年注目が集まっている。なかでも、イオン液体の経皮吸収促進機能は、小分子の薬物のみならず、ペプチドやタンパク質などのバイオ医薬品までおよび、非侵襲性の経皮製剤の開発に大変有用である。特に、イオン液体の製剤利用においては、イオン液体の安全性を担保することが重要な課題となっている。そこで本稿では、コリン、アミノ酸、脂肪酸そして脂質など、安全性の高い素材によって形成されたイオン液体を紹介する。生体適合性の高いイオン液体の活用によって、DDSの徐放特性を発揮する中分子医薬あるいは経皮ワクチンの開発が可能となった。最近では、核酸医薬などの新しいモダリティにも、イオン液体の利用に大きな期待が寄せられている。
  • 清水 太郎, 濱本 英利, 石田 竜弘
    2023 年 38 巻 3 号 p. 230-238
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    イオン液体は、室温で液体の塩であり、水や有機溶媒に続く第3の溶媒として注目されている。イオン液体は有機カチオンと有機・無機アニオンから構成され、その組み合わせを変えることによって無数の物性をもつ溶媒を作製することが可能である。イオン液体は薬物の溶解性や安定性や吸収性を向上させることが可能であるため、近年、イオン液体を医薬品開発に応用する研究が盛んに行われている。経皮投与は非侵襲的で利便性に優れた投与方法である一方で、親油性の低分子にしか適用し難かった。しかし、薬物をイオン液体に溶解する、または薬物自体をイオン液体化することによって、さまざまな薬物を皮膚透過できることが、近年報告されてきた。イオン液体とともに皮膚に適用した薬物は、皮膚局所だけでなく全身にも移行するため、さまざまな疾患治療への応用が期待される。本稿では、外用剤・経皮吸収製剤に用いられるイオン液体の特性および疾患治療への応用について紹介する。
  • 鈴木 直人
    2023 年 38 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    患者数が増加傾向にある難治性中枢神経系疾患を治療する医薬品の開発において、治療薬を脳内に送達する技術の開発が喫緊の課題となっている。脳は血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)によって保護されており、経口あるいは静脈投与された薬物のほとんどが脳内に到達できず、これら薬物による中枢神経系疾患の治療を困難にしている。近年、BBBを迂回して治療薬を脳に送達する方法として、鼻から脳への直接経路が存在する経鼻投与が注目を集めている。しかしながら、本経路では粘膜繊毛クリアランスや鼻粘膜組織が鼻腔からの薬物吸収を妨げているため、効率的な鼻から脳への薬物送達にはこれら課題を克服することが必須である。本稿では、近年DDS材料として注目されるイオン液体を、脳を標的とした経鼻投与製剤に応用した研究例について紹介する。
DDS製品開発の最前線
  • 實川 真弓
    2023 年 38 巻 3 号 p. 246-249
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー
    ラピフォートワイプ2.5%(本剤)は、2022年1月に承認されたグリコピロニウムトシル酸塩水和物を有効成分とする国内初のワイプ製剤であり、米国Dermira社が開発したQbrexzaの処方を一部変更したものである。本剤は薬液を含浸させた不織布を1日1回両腋窩に適用して、発汗を抑制する原発性腋窩多汗症治療剤である。Qbrexzaと同等の皮膚透過性および製剤安定性を維持しつつ、消防法危険物に該当する薬液を非危険物となるようにした。不織布は薬液との反応性、吸水性および使用感を、アルミ分包は室温3年の品質および優れた開封性を達成させた。本剤の開発の経緯および臨床試験成績について紹介する。
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