Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
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ISSN-L : 0913-5006
36 巻, 4 号
日本DDS学会
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “がん微小環境の理解に基づくナノDDSの展開”  編集:狩野光伸
  • 田中 啓祥, 狩野 光伸
    2021 年36 巻4 号 p. 232-240
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    Enhanced permeability and retention(EPR)効果により血管からがん組織内へと漏出したナノDDSは、多くの場合、間質障壁により妨げられ、腫瘍細胞へと到達することができない。間質障壁は、がん細胞と種々の「正常」な細胞の相互作用を通じて形成・維持される。こうした相互作用の場を「がん微小環境」という。がん微小環境中の線維化組織、すなわち主として異常な形質を獲得した線維芽細胞およびこれらの細胞により産生され過剰沈着している細胞外基質により構成される組織は、とりわけナノDDSの送達効率の重要な規定要因として知られる。本稿では、がん微小環境における線維化について概説した後、より効率的なナノDDS送達を実現するうえでの示唆について考察する。
  • 田邊 思帆里
    2021 年36 巻4 号 p. 241-247
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    細胞集団におけるRNAシグナルパスウェイは、小胞やエクソソームを介して伝達される。RNAにはmRNA、microRNA、circular RNA、long non-coding RNA等のさまざまな種類が存在し、それぞれの役割が異なると考えられる。治療抵抗性がんは上皮間葉転換(Epithelial-mesenchymal transition:EMT)やがん幹細胞(Cancer stem cell:CSC)様の性質を有し、がん転移の際には周囲の環境に応じ、エクソソームmicroRNA等のシグナルパスウェイが変化することが知られている。本稿においては、エクソソームによる細胞集団のRNAシグナルパスウェイに焦点を当てた。
  • 山本 雅哉, 森本 展行
    2021 年36 巻4 号 p. 248-255
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    スフェロイドは、疾患メカニズムや薬物作用を培養系で理解するためのツールとして、医学研究で注目されている。スフェロイドにおける細胞と細胞、細胞と細胞外マトリックスの相互作用は、体内の細胞微小環境を模倣することを可能とし、その結果、体内の細胞機能を培養系で再現することができる。しかし、この細胞微小環境は、スフェロイド内の細胞へ薬物を送達する際の障壁としても機能する。この問題を解決するために、スフェロイドに対する細胞集団浸透性ポリマーとしてスルホベタインポリマーを開発した。本稿では、スルホベタインポリマー修飾による抗がん作用の増強について紹介する。
  • 西口 昭広, 田口 哲志
    2021 年36 巻4 号 p. 256-264
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    がん創薬の基礎研究や前臨床試験においては、二次元細胞培養モデルや動物モデルなどのがんモデルが使用されているが、三次元構造の再現やヒト-動物間の種差、免疫機能評価、ハイスループット性、再現性などに課題がある。このような課題を解決する評価モデルとして、がん体外モデルが注目を集めており、それらを構築するためにはがんの足場となる生体材料(バイオマテリアル)の開発が重要である。本稿では、がん微小環境体外モデル構築を行ううえでのバイオマテリアルの役割について紹介する。バイオマテリアルを活用することにより、間質組織まで再現したがん微小環境体外モデルを構築することが可能となり、より生体に近い細胞機能や薬剤応答を生体外で再現でき、がん創薬や個別化医療、がん分子基盤の解明に貢献すると期待される。
  • 青木 伊知男, 長田 健介, 住吉 晃, Bakalova Bakalova
    2021 年36 巻4 号 p. 265-276
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    生体内でがん微小環境の特徴と変化を可視化し評価することは、腫瘍の治療や診断を目的とするDDS開発において重要であり、また臨床応用された際にも、個体差が大きながん治療の高精度化や高精度医療の実現に欠かすことができない。MRIは臨床に幅広く普及し、高い空間分解能と軟部組織の情報に加えて、多様な機能イメージングを提供し、DDS開発とその臨床応用に重要な情報を提供し得る。本稿では、がん微小環境評価のための生体イメージング法を概説するとともに、DDSはMRIでの診断と研究に何をもたらし得るか、腫瘍微小環境を評価するMRI造影剤と撮像法、そしてDDSの課題解決に対するMRIの役割について動向をまとめ、将来を展望したい。
  • 竹本 智子, 吉澤 信, 山下 典理男, 森田 正彦, 西村 将臣, 横田 秀夫
    2021 年36 巻4 号 p. 277-285
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    近年のイメージング技術の発展によって、これまでは見ることができなかったさまざまな生命現象を、ナノスケールの精度で観察できるようになってきた。だが同時に、観察画像は大規模で複雑なものとなり、現象の理解に有用な情報を取り出すための画像解析の専門性は年々高くなっている。画像解析には汎用画像処理ソフトウェアで利用できるような古典的な信号処理フィルタや、機械学習に基づく注目領域の抽出などの幅広い技術があり、さまざまな解析目的に応じて処理法を取捨選択する必要がある。本稿では最新のイメージング技術によって取得した細胞集団や細胞内現象の観察画像に対して、筆者らや共同研究者らがこれまでに行ったノイズ除去、細胞集団および細胞内骨格の動態解析、細胞膜周辺領域と細胞分裂の検出に関する画像解析法とその周辺技術を紹介する。
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