Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
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38 巻, 5 号
日本DDS学会
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “合成高分子による細胞機能制御”  編集:樋口ゆり子
  • 大矢 裕一, 能﨑 優太
    2023 年 38 巻 5 号 p. 356-364
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    インジェクタブルポリマー(IP)は、投与部位でゲルを形成するポリマー材料である。筆者らは、体温程度に加温するとゲル化する生分解性IPについて研究しており、分解時間を任意に制御できるIP製剤を開発して、医学・薬学的な応用展開に取り組んでいる。一方、遺伝的に改変された細胞や幹細胞そのものを、新しい医薬モダリティとして用いる治療法が台頭してきている。これまで治療の難しかった疾病を克服する方法として細胞治療が期待されている。本稿では筆者らが取り組んでいるIPを用いた細胞治療(心筋梗塞治療、がん免疫治療)に関して紹介する。
  • 中村 秀樹
    2023 年 38 巻 5 号 p. 365-378
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    細胞内の動的な空間的秩序を制御する物理的機構として、近年の細胞生物学研究で注目を集めているのが相転移・相分離現象である。タンパク質や核酸の相転移・相分離を介して形成される細胞内構造体である非膜型オルガネラは、転写・翻訳などの生理的現象から疾患の発症に至るまで幅広い生物現象に関与し、新たな非膜型オルガネラの報告も相次いでいる。このため非膜型オルガネラを標的にした操作技術の開発は、細胞機能の操作を実現するうえで重要なオプションとなりつつある。本稿では、筆者が合成生物学分野のツールに基づいて開発した非膜型オルガネラの集合・離散を操作する技術について解説し、現状の技術的課題と将来展望について議論する。
  • 西口 昭広, 田口 哲志
    2023 年 38 巻 5 号 p. 379-387
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    炎症は、免疫細胞によって制御される生体防御システムであり、その調節障害はさまざまな疾患に関与している。炎症性疾患治療の有効性と安全性を向上させることを目的に、生理活性を付与したポリマーの設計およびそれらのナノ粒子化技術の開発が行われている。本稿では、ポリアミンとヒアルロン酸をベースとした生体機能化ポリマーの設計と細胞機能制御について紹介する。これらのポリアミンをベースとした生体機能化バイオポリマー用いた治療法は、免疫細胞機能が制御可能な新規炎症治療薬として、潰瘍性大腸炎をはじめとする難治性の炎症性疾患治療への応用が期待される。
  • 金野 智浩
    2023 年 38 巻 5 号 p. 388-396
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    細胞材料は新時代の医薬モダリティの一つとして期待されており、in vitroでの細胞操作技術の創出が望まれる。細胞はin vitroで基材表面のみならず、分子集合体(ナノゲル会合体)、ハイドロゲル環境(三次元環境)など、さまざまな次元のバイオインターフェースと接触しながら、その機能を発現している。したがって、新しい細胞操作技術を創出するためには、生体親和性、細胞親和性にフォーカスをおいたバイオマテリアルを要素とするバイオインターフェースの創製が必須である。本稿では細胞膜を構成するリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)を側鎖に有するメタクリル酸エステルである、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を一成分とするMPCポリマーの分子設計により、その優れた細胞親和性をさまざまな次元に拡張したバイオインターフェースを用いた細胞操作技術について紹介する。
  • 中西 淳
    2023 年 38 巻 5 号 p. 397-403
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    独自に開発した光応答材料を用いて細胞移動現象の解析に利用した研究例を2つ紹介する。1つ目の光応答基板は光照射によって細胞・細胞集団を動的パターニングができる。細胞がパターニングされた基板を反転させて倒立した状態で細胞移動を誘導することで、細胞集団移動現象における重力ベクトルの影響を明らかにした。2つ目の光応答ゲルにおいては、アゾベンゼンの光異性化反応に基づき、UV/VIS光に応じてゲルの弾性率が変化する。乳がん細胞が付着した足場ゲルの弾性率を瞬時に硬化させることで、細胞は基質の突然の弾性率変化に対して一過性の上皮間葉転換応答を示すことを見出した。
  • 田中 賢
    2023 年 38 巻 5 号 p. 404-415
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    材料が生体組織液に接触すると直ちに水が材料表面に吸着する。水分子は、ナノバイオ界面におけるタンパク質吸着/脱離、細胞接着/非接着現象に影響を与える。界面現象を明らかにするためには、水和した材料の物理化学的な物性を理解することが重要である。本稿では、最近の筆者らの研究例、例えば、ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)、PMEA誘導体、双性イオン型高分子、ポリエチレングリコール、ポリオキサゾリンなどの合成高分子、また、核酸、タンパク質、多糖などの生体高分子に含水した水の状態について議論する。水の状態は、熱分析や分光により解析を行った。界面に形成される特定の水の状態:中間水が、タンパク質吸着/細胞接着に大きな影響を与えることや機能性合成高分子の設計につながることを見出した。
TOPICS
DDS製品開発の最前線
  • 小笠原 隆広
    2023 年 38 巻 5 号 p. 438-444
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    自家培養角膜上皮「ネピック」(一般名:ヒト(自己)角膜輪部由来角膜上皮細胞シート)は、幹細胞研究の世界的権威であるG. Pellegriniらから移管された角膜上皮幹細胞に対する培養技術を基に、株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリングにおいて製造方法および医療機関への提供方法を確立し、眼科領域における本邦初の再生医療等製品として、2020年に製造販売承認を取得した。ネピックは、ティッシュエンジニアリング型の再生医療等製品であり、患者自身の角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞がシート状に培養されたものである。ネピックには角膜上皮幹細胞が含まれ、移植後、生着した幹細胞から角膜上皮細胞が供給されることによって、角膜上皮とその恒常性が再建される。
  • 北原 薫, 森 政和, 藤村 勝政, 青木 透, 瀬戸 晃平, 朝倉 俊成
    2023 年 38 巻 5 号 p. 445-449
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    インジェクター市場は、市場環境や意識、行動の変化により、院内投与から自宅投与への変遷が加速、電動式インジェクターへの使用期待が年々高まってきている。当社では帝人ファーマ株式会社が製造販売元である骨粗鬆症治療剤オスタバロ皮下注カートリッジ1.5 mgの専用インジェクターである、オスタバロインジェクターの製品開発を行った。本稿では製品開発における取り組みと電動式インジェクターの特徴、また非電動式インジェクターとの違いなどについて述べ、電動式インジェクターの可能性について考察する。
DDSの「ちょっとした」技術・知識
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