Drug Delivery System
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24 巻, 6 号
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特集 “組換えウイルスキャリア-遺伝子治療・ワクチン応用への新展開-” 編集 : 水口裕之
  • microRNAによる遺伝子発現制御システムを搭載した組換えウイルスの開発
    櫻井 文教, 川端 健二, 水口 裕之
    2009 年24 巻6 号 p. 572-581
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換えにより自己増殖能を欠失させるとともに,治療効果が期待される遺伝子を搭載した遺伝子導入ベクターや,腫瘍でのみ増殖することにより腫瘍を退縮させる制限増殖型ウイルスは,がんをはじめとする各種難治性疾患に対する新たな治療薬として注目を集めている.その遺伝子組換えの基本ストラテジーは“遺伝子発現効率(治療効果)を高める”とともに,“安全性を高める”ことである.
    本稿では,組換えウイルスの安全性を高めるストラテジーとして,最近筆者らが研究を進めているマイクロRNAによる遺伝子発現制御機構を搭載した組換えアデノウイルスについて解説する.マイクロRNAによる遺伝子発現制御機構を利用することにより,治療遺伝子の発現や制限増殖型ウイルスの増殖を細胞特異的に制御することが可能となり,組換えアデノウイルスの安全性を大きく向上させることに成功した.
  • カスタムメイドベクターによる遺伝子治療の可能性
    中井 浩之
    2009 年24 巻6 号 p. 582-591
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    アデノ随伴ウイルス(AAV)は,その誕生から現代に至るまで,自然選択(natural selection)により非常にゆっくりと進化を遂げてきた.ところが,2002年に100種を超える血清型やバリアントが霊長類組織から単離されて以来,人為的操作により急速な進化を遂げつつある.ウイルスの構造が単純で外殻蛋白の遺伝的操作が容易であることから,合理的設計法(rational design)と定向進化法(directed evolution)を用いることにより,使用目的に最も適したカスタムメイドAAVベクターが容易に作成,使用できるようになってきている.
  • 腰塚 哲朗, 森 康子
    2009 年24 巻6 号 p. 592-598
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus:VZV)は宿主(ヒト)に初感染すると水痘を引き起こし,その後,知覚神経節に潜伏するが,再活性化すると今度は宿主に帯状疱疹を発症させる.水痘発症予防のための水痘生ワクチンが開発されているが,現行のOkaワクチンは,WHOで唯一認められた水痘弱毒生ワクチンである.
    最近,筆者らは,本OkaワクチンをベースとしてムンプスウイルスHN遺伝子を保有する組換えウイルスを作成した.本組換えウイルスはモルモットにおいてVZVおよびムンプスウイルスに対する中和抗体を誘導し,VZVおよびムンプスウイルスに対する多価生ワクチンの候補となることが示された.
    本稿では,現行の水痘ワクチンおよびその組換えウイルスについて概説し,さらに多価生ワクチンとしての応用に関しても概説する.
  • 中村 貴史
    2009 年24 巻6 号 p. 599-607
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    現在世界中において,生きたウイルスを利用してがんを治療するウイルス治療(Oncolytic Virotherapy)に関する前臨床研究,および臨床治験が積極的に行われている.弱毒化麻疹ウイルスは,世界中でワクチンとして利用され,その効果と高い安全性が確立されている.その一方,このウイルスは種々のがんに選択的に感染し,増殖することによって強力な腫瘍溶解性を発揮する.本稿では,分子生物学的な手法を広汎に用いた麻疹ウイルスと宿主の相互作用の解明と,その感染制御を利用しがんへ特異的に感染する腫瘍溶解性麻疹ウイルスの開発を中心に紹介する.
  • 阿部 隆之, 谷 英樹, 松浦 善治
    2009 年24 巻6 号 p. 608-615
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    バキュロウイルスは,環状の二本鎖DNAを遺伝子に持っている昆虫を宿主とするウイルスであり,現在,大腸菌発現系と同様にさまざまな組換え蛋白質の発現系システムとして広く汎用されている.その一方で,近年,複製はしないが,広範囲な哺乳動物細胞にも感染できることが示され,新しい遺伝子導入ベクターとしての有用性が期待されている.これまでに,筆者らは,バキュロウイルスのウイルスベクターワクチンとしての評価を検討したところ,バキュロウイルス自身に哺乳動物細胞に自然免疫応答を誘発できることを見いだした.近年同定された,自然免疫認識分子であるToll様受容体は,さまざまな病原微生物由来の構成因子を認識し,炎症性サイトカインやインターフェロンを誘発して生体防御反応に寄与することが知られている.さまざまなToll様受容体およびそのシグナルアダプター分子であるMyD88を欠損した免疫細胞内では,バキュロウイルス感染に伴う炎症性サイトカインの産生が著しく減少することが示されたが,インターフェロンの産生は正常であることが確認された.Toll様受容体非依存的にインターフェロンを産生する分子としてRNAヘリケースであるRIG-IおよびMDA5が同定され,さまざまなRNAおよびDNAウイルス感染に対するインターフェロンの発現制御に関与していることが報告されている.しかしながら,バキュロウイルスによるインターフェロンの産生はこれらRNAヘリケースにも非依存的であることが示され,既報のシグナル経路とは異なる機序にてインターフェロンの産生が制御されている可能性が示唆された.
  • 村上 晋, 堀本 泰介, 河岡 義裕
    2009 年24 巻6 号 p. 616-626
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/16
    ジャーナル フリー
    インフルエンザウイルスのリバースジェネティクスの確立により,ウイルス蛋白質を任意に改変した変異ウイルスの作製が可能になった.そういった変異ウイルスは,現在のインフルエンザの基礎研究において欠かすことのできない有用なツールとして活用されている.また,応用面においても,現在備蓄が進んでいるH5N1プレパンデミックワクチンには本法を用いて作製された弱毒変異ウイルスが用いられている.今後,変異ウイルス作製技術は,インフルエンザの次世代ワクチンの開発にも大いに貢献することが期待される.
    一方,リバースジェネティクスを用いた外来性エピトープや外来性遺伝子を発現する組換えインフルエンザウイルスの構築により,効果的な免疫応答を惹起する多価ワクチンや遺伝子治療用デリバリーベクターへの応用が考えられている.現時点では,組換えウイルスの安定性,発現性,増殖性などの問題点を改善する必要性が指摘されているものの,インフルエンザウイルスベクターの持つ数多くの利点を活かすべく実用化を目指したさまざまなアプローチが展開されている.
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