Drug Delivery System
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37 巻, 5 号
日本DDS学会
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
FOREWORD
OPINION
  • 松浦 善治
    2022 年37 巻5 号 p. 372-376
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    人類の歴史は感染症との戦いであり、致死性の高いウイルス感染症が幾度となく出現し、日本でも奈良時代に天然痘により当時の日本の人口の4分の1が失われた。近代に入ると有効なワクチンや薬剤が開発され、20世紀中には地球上から感染症を根絶できると誰もが楽観視していたが、エイズ、インフルエンザ、SARS、MERS等の感染症が出現し、特に、2019年の暮れに中国武漢で発生した新型コロナウイルスのパンデミックは猖獗を極め、現代社会がいかに感染症に対して無力であるかを思い知らされた。さらに、グローバリゼーションや自然破壊等の人的要因によって感染症は大きく変容している。本稿では、これまでに人類が経験した感染症を概説し、新型コロナウイルスとの戦い、そして今後の感染症対策について解説したい。
特集 “感染症に対するワクチン・抗体医薬におけるDDSの応用”  編集:吉岡靖雄
  • 原谷 健太, 五反田 圭介, 塩川 理絵, 星野 麻衣子, 久保 千代美, 倉持 太一
    2022 年37 巻5 号 p. 378-387
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    1990年代後半に、がん領域や免疫炎症性疾患領域において、抗体医薬品が画期的な治療効果を示して以降、さまざまな疾患領域において抗体医薬品の研究開発がなされ、現在までに日米欧で100品目を超える抗体医薬品が承認されている。感染症領域における抗体医薬品の開発は限られていたが、抗体工学の発展、SARS-CoV-2の感染の拡大により、感染症領域における抗体医薬品の重要性が注目されている。本稿では、これまでの感染症領域における抗体医薬品の開発と、抗体工学やDDS技術の進展に伴う今後の抗体医薬品の展望を概説する。
  • 森山 彩野
    2022 年37 巻5 号 p. 388-394
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    2019年に発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症の治療や発症抑制のためにさまざまな抗体医薬の開発が進められている。SARS-CoV-2中和抗体の開発で大きな障壁となるのが、スパイク糖タンパク質に変異をもつ変異株の発生と感染拡大である。またコロナウイルスは多くの野生動物や家畜、愛玩動物が保有しており、これまでにも重篤呼吸器症候群コロナウイルスや中東呼吸器症候群コロナウイルスが動物からヒトへ伝播して大きく感染が広がったケースがある。SARS-CoV-2についても動物が起源であると考えられており、今後も種を越えた伝播が発生する可能性が考えられる。これらを踏まえて、SARS-CoV-2変異株や類縁コロナウイルスに対する交差反応性に優れた抗体医薬の開発が求められる。
  • 新藏 礼子
    2022 年37 巻5 号 p. 395-401
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    Dysbiosisは、健康な微生物叢と比較した微生物組成の変化であり、腸内微生物多様性の減少および微生物分類群の変化を特徴とする。腸内のdysbiosisはまた、炎症性腸疾患、結腸直腸がん、心血管疾患、肥満、糖尿病および多発性硬化症を含むさまざまな疾患の病因において重要な役割を果たすと提唱されている。腸の多量体免疫グロブリンA(IgA)抗体は、腸内微生物叢を調節するだけではなく、病原性細菌、インフルエンザやSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)などのウイルス感染を粘膜部位から排除するのに重要であることが、多くのエビデンスから示されている。1970年代以降、治療用IgAまたはIgGの経口投与試験が、主に病原性大腸菌またはディフィシル菌によって引き起こされる感染性腸炎を治療するために行われてきた。しかし、現在まで臨床応用として開発に成功したものはない。腸内病原体に対する防御機能に加えて、IgAは腸内共生微生物叢を調節して共生に導くことがよく知られているが、dysbiosisを治療するためのIgA治療薬の開発も進んでいない。本稿では、治療用IgA抗体の利点とその開発について議論する。
  • 河合 惇志, 平井 敏郎, 吉岡 靖雄
    2022 年37 巻5 号 p. 402-411
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    COVID-19に対してかつてない速度でワクチンが普及した背景には、DDS技術の発展が必要不可欠であった。特に、mRNAワクチンにおける脂質ナノ粒子(LNP)の開発は、まさにDDS技術の結集といえよう。一方で、mRNAワクチンを含め、現状のさまざまなワクチンは多くの課題を有しており、より効果的かつ安全なワクチン開発に資する基盤技術の確立が世界的に待望されている。本稿では、ワクチンモダリティの1つである組換えタンパク質ワクチンに焦点を絞り、抗原改変技術からアジュバントの改良に至るまで、ワクチン開発基盤技術の最新知見について紹介する。
  • 細見 晃司, 國澤 純
    2022 年37 巻5 号 p. 412-420
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    飲む・吸うといった方法により粘膜組織を介してワクチン接種を行う「粘膜ワクチン」が注目されている。粘膜ワクチンの実用化には、デリバリーシステムやアジュバントの応用が必要不可欠である。ポリマーやナノゲル、リポソーム、微生物成分などのデリバリーシステムを用いることで、ワクチン抗原の粘膜組織への送達や滞留性が向上し、ワクチン効果を高めることができる。さらには、デリバリー機能に加えて、抗原提示細胞の活性化やT細胞応答の誘導制御などの免疫応答をコントロールできるアジュバント機能を付与することで、より有効性の高いワクチンの開発も試みられている。本稿では、各種ワクチンの対象に適した機能を付与できる次世代型のデリバリーシステムの開発を紹介したい。
  • 水口 裕之, 立花 雅史, 櫻井 文教
    2022 年37 巻5 号 p. 421-428
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    非増殖型アデノウイルスベクターは、in vivoへの直接投与において優れた遺伝子導入活性を示すことから、病原体由来の抗原タンパク質を発現させることにより、新興・再興感染症に対するワクチンベクターとして積極的な開発が進められてきた。最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンとして、欧米中露において迅速な実用化がなされた。本稿では、アデノウイルスベクターの特性、COVID-19に対するアデノウイルスベクターワクチンの特徴、およびアデノウイルスベクターワクチンの可能性について解説する。
  • 渡辺 登喜子
    2022 年37 巻5 号 p. 429-436
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    ウイルス性感染症を予防するうえで、ワクチンは最も有効な手段の一つである。1976年、エドワード・ジェンナーが世界初のワクチンである種痘を発明して以来、さまざまなウイルス性感染症に対して、不活化ワクチン、弱毒生ワクチン、組換えタンパクワクチン、ウイルスベクターワクチン、核酸ワクチンなど、多様なプラットフォームに基づくワクチン開発が進められてきた。本稿では、数あるワクチンプラットフォームの中から、ウイルスベクターワクチンに着目して、いくつかの例をあげて概説するとともに、近年、国際的な問題となっている新興感染症に対するワクチン開発などの取り組みについても述べる。
DDS製品開発の最前線
  • 田中 雅康
    2022 年37 巻5 号 p. 438-443
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/02/25
    ジャーナル フリー
    ブロナンセリンは、ドパミンD2、D3ならびにセロトニン5HT2A受容体拮抗作用をもつ非定型抗精神病薬である。筆者らは、世界初の抗精神病薬のテープ剤として、ブロナンセリンを有効成分とする経皮吸収型製剤を日東電工株式会社と共同開発し、2019年9月に国内販売を開始した。経皮吸収型製剤を設計するうえで、皮膚透過性、皮膚刺激性、粘着性の3つの技術的なハードルがある。筆者らは、この技術的ハードルを克服し、ロナセンテープの製剤開発に成功した。ここに、製剤設計について詳細に報告するとともに、開発に至った経緯および臨床試験成績についても記述する。
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