本研究は, 水溶性シクロデキストリン(W-CD)で溶解性を改善した難溶性薬物デキサメタゾンのラット経鼻投与後の薬物動態, および凍結脳損傷モデルにおける脳浮腫抑制効果を評価することにより, 経鼻から脳へのデキサメタゾン送達の可能性を検討した. デキサメタゾンはmono-maltosyl-
β-CD(GCD)を用いて溶解改善し, 高濃度溶液(1.57%)を得た. このデキサメタゾン-GCD溶液を改良
in situ薬物滞留法の手術を施したラットに経鼻投与した結果, 血清中デキサメタゾン濃度は速やかに上昇し, 静脈内投与に匹敵するbioavailabilityが得られた. さらに, 凍結脳損傷モデルにおける脳浮腫改善効果は, デキサメタゾン-GCD溶液の経鼻投与のほうが静脈内投与よりすぐれており, 経鼻から脳へ効率よく送達されている可能性が示唆された. これらの結果より, W-CDによる溶解性の向上と経鼻投与法は, デキサメタゾンの脳への適用における新たな治療戦略となる可能性が示された.
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