ポリアクリル酸とセルロース誘導体を架橋化した親水性ポリマー, および水から構成されたハイドロゲルのゲル強度に及ぼす添加剤の影響, および創傷被覆剤としての応用の可能性について検討を行った. ゲルは親水性ポリマーをアルミニウムで架橋化することによって形成され, キレート化剤であるエデト酸ナトリウム(以下EDTA)の添加量によりゲル強度を調整できることがわかった. 得られたゲル強度の異なるハイドロゲルを用いて, ラット背部打ち抜き創の治癒に及ぼすゲル強度の影響をみた. その結果, 水で膨潤した親水性解リマーのゲル強度が0.54g/cm
2の製剤ではコントロール群との間に創面積比の差はみられなかったのに対し, 2.99∼3.50g/cm
2の範囲では, 貼付開始後3日以内にコントロール群にくらべて有意に創面積比が減少し, 治癒促進効果がみられた. つぎに臨床効果の確認されている市販のハイドロゲル, およびハイドロコロイド系の創傷被覆材4製品と適度に架橋化したハイドロゲルを用いた創傷被覆材(以下SG-01)の創傷治癒に関与する物理化学的特性について比較検討した. その結果, SG-01の粘着性, 水蒸気透過性, および酸素透過性の成績はいずれも比較4製品の範囲にあり, 創傷からの滲出液の除去に関与する吸水速度, および吸水量は市販品に比較して最も高い値を示した. 以上のことから, ポリアクリル酸とセルロース誘導体からなるハイドロゲルは, 水で膨潤したときのゲル強度を約3∼4g/cm
2とすることにより, 滲出液の除去能にすぐれた新規の創傷被覆剤になりうる可能性が示唆された.
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