歯科材料・器械
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12 巻, 4 号
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原著
  • 早川 徹
    1993 年12 巻4 号 p. 455-465
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンと未前処理研磨象牙質面の接着における光重合型ボンディング剤の効果について調べた.光重合型ボンディング剤の主成分としてはメタクリロイルチロシンアミド(MTYA)とグリセリルメタクリレート(GM)を用いた.これに水溶性光重合開始剤である2-ヒドロキシ-(3, 4-ジメチル-9H-チオキサンテン-2-イロキシ)-N, N, N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド(QTX)を配合して, 2-(N, N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA), およびベンゼンスルフィン酸ナトリウム(BSNa)と組み合わせて用いた.
     新鮮牛象牙質を注水下, #1000の砥石で研磨した.光重合型ボンディング剤は2液型であり, 混合かくはんして使用した.研磨象牙質面に光重合型ボンディング剤を適応した後, 1分間光照射した.次にプロテクトライナー(クラレ)を充填し, 1分間光照射して重合させた.37℃水中に1日浸漬後に, 引張り接着強さを測定した.
     光重合型ボンディング剤(A1: 6%MTYA+70%GM+4%DMAEMA+1%BSNa水溶液, BSu3:3%コハク酸+5%グルタルアルデヒド+2%QTX水溶液)を1分間作用させると平均値で約6 MPaの接着強さが得られ, さらに5分間作用させると平均値で約11 MPaの接着強さが得られた.アクリルアミドグリコール酸やphenyl-P等重合性基を有する酸性モノマーをボンディング剤のB液に添加したがコハク酸ほど接着強さの向上には効果がなかった.
     A1とBSu3の混合液を5分間作用させた時に約2 μmの幅で樹脂含浸層が生成しているのがSEMで観察された.
  • 楳本 貢三, 倉田 茂昭, 根本 早春, 小幡 清夫, 上新 和彦
    1993 年12 巻4 号 p. 466-472
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     異種の官能基を持つシランを混合した三種プライマー, 3-mercaptopropyltrimethoxysilane (3-SH)と3-methacryloxypropyltrimethoxysilane (3-MPS), 3-SH, 3-MPSと1, 6-bis(trimethoxysilyl)hexane (1, 6-Bis), および3-SHとN, N-bis(3-trimethoxysilylpropyl)methacrylamide (N, N-Bis) の三種混合物を調製し, 種々の歯科用貴金属合金, 非貴金属合金および陶歯に塗布し, レジンとの接着強さにおよぼす効果について検討した.
     その結果, 3-SHを添加した各プライマーの初期接着強さはいずれの合金および陶歯に対しても良好であった.熱サイクル試験後も, 三種のプライマーは銀合金に対し, 特に3-SH/3-MPSプライマーは金および金銀パラジウム合金ならびに陶歯に対して良好な接着強さを示した.一方, プライマーを塗布しない場合および非貴金属合金では熱サイクル試験後には, 接着強さは大幅にあるいは測定し得ないほど低下していた.
  • 野沢 俊彦
    1993 年12 巻4 号 p. 473-485
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     従来の歯科用合金の腐食は全面が均一に腐食するいわゆる全面腐食によって評価されてきた.しかし, 臨床上では修復物の歯頸部や隣接面あるいは窩壁と修復物の間などに局所的な腐食が認められる.そこで本実験では局部腐食の代表例としてすきま腐食と接触腐食を取り上げ, その腐食挙動を検討した.
     試料電極として市販のAu-Pd-Ag-Cu合金とAg-Sn-Zn合金を用いた.全面腐食モデルとしては通常のモデルを用い, すきま腐食モデルとしては試料露出面に50μmのすきまをガラス板を用いて作成したものを, 接触腐食モデルとしては先の2種類の合金を導線にて短絡したものを用いた.pH2, 0.9%NaCl溶液に60日間試料を浸漬し, 2日毎にクーロスタット法による腐食電位(E)と分極抵抗値(Rp)を測定した.さらに, 全面腐食に対するすきまによる腐食反応の影響を調べるため電位走査法にてイオン反応量を検討した.接触モデルでは両合金に流れるガルバニック電流量を測定した.また, 60日目の試料については表面をESCAによって元素分析した.
     その結果, すきま腐食ではAu-Pd-Ag-Cu合金の場合, 全面腐食に対しE, Rp共に低下し, すきま内イオン反応量の低下も認められた.Ag-Sn-Zn合金の場合では, 全面腐食に対しEは大きく低下したが, Rpはほぼ同じ値を示し, すきま内におけるイオン反応量の低下は認められなかった.一方, 接触腐食ではAu-Pd-Ag-Cu合金の場合, 全面腐食と比較してE, Rp共に低下した.また, 表面分析からは含有成分に認められないSnが多量に検出された.Ag-Sn-Zn合金では, E, Rpともに全面腐食と同様な変化を示した.表面分析からSnに富んだ試料表面被膜であることが認められた.ガルバニック電流は60日目にもわずかながら通電を認め, 接触腐食が長期間継続していることが示された.以上の結果から, 周囲の腐食環境が変わると貴な金属の場合, 腐食速度が変化することが示唆された.
  • (1) 試験法の検討
    赫多 清, 宮川 行男, 大谷 伸之, 中村 健吾
    1993 年12 巻4 号 p. 486-495
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     模型用せっこうのチッピングを定量的に評価するために2種の試験法を考案した.その一つは, 歯科用せっこうで作製した平板形試験片の平面をマイクロカッターのメタルソーで切断し, 切り口辺縁のチッピングを生じた部分の幅の平均値と最大値を測定する方法である.チッピングが生じた部分は, CCDカメラとそれに接続したパーソナルコンピュータを用いて画像データとして記録し, そのデータを自作のソフトウエアで分析した.他の方法は, 歯科用せっこうで作製した円柱形試験片をメタルソーで切断したとき, 破損することなく切断することのできる最小の厚さを測定する方法である.この切断最小厚さはステアケース法を用いて求めた.本研究では, これら2種の試験法を用いて, メタルソーの回転速度および切断荷重が歯科用硬質せっこう, 超硬質せっこうのチッピング幅および切断最小厚さの測定値に及ぼす影響を調べた.その結果, 平均チッピング幅および最大チッピング幅は, メタルソーの回転速度が増加するほど, そして切断荷重が減少するほど大きくなる傾向にあった.また, 切断最小厚さは, メタルソーの回転速度が増加するほど大きくなったが, 切断荷重にはほとんど依存していなかった.
     本研究で考案した2つの試験法は, 模型用せっこうのチッピングを定量的に評価するのに有用であった.
  • 渡辺 孝一, 大川 成剛, 宮川 修, 中野 周二, 本間 ヒロ, 塩川 延洋, 小林 正義
    1993 年12 巻4 号 p. 496-505
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    鋳込まれたチタン溶湯の鋳型空洞内の流れを決定づける要因として鋳造力の大きさとその作用方向が挙げられる.今回は遠心鋳造においても, 狭い流入口の溶湯に作用する圧力で流れ込んでいると見なせる条件で鋳込み, 鋳型内部における鋳造力の影響をX線透過写真および湯流れ模様により観察した.その結果差圧鋳造と遠心鋳造では溶湯の充満過程が異なり, この最大の原因が体積力(重力や遠心力など)の強度の違いにあることが推定された.さらに鋳造体に発生した外部および内部の欠陥にもこの因子が影響していることが分かった.
  • リン酸カルシウムを含有したキトサン膜の製作について
    伊藤 充雄, 横山 宏太, 森 厚二, 新納 亨, 山岸 利夫
    1993 年12 巻4 号 p. 506-512
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     キトサンは甲殻類から抽出できる天然の高分子であり, 生体内で吸収される性質を有している.このキトサンと生体親和性そして骨伝導性に優れた牛骨の焼成粉末および合成したハイドロキシアパタイトとの複合化を試みた.キトサンゾル中に各々の粉末を練り込み, その後, キトサンゾルを中和剤で中和し, ゲル化させ膜を製作する.本実験は膜の諸性質とキトサンを溶解する有機酸の種類および中和剤との関係について検討した結果, 以下の結論を得た.
     1. リンゴ酸で溶解したキトサンゾルのpH値はマロン酸で溶解したキトサンゾルのpH値よりも大きかった.
     2. リンゴ酸とマロン酸で溶解したキトサンゾルにハイドロキシアパタイトと牛骨の粉末を各々に練り込んだゾルのpH値はハイドロキシアパタイトが両者とも大きかった.
     3. .粘性はリンゴ酸で溶解したキトサンゾルよりもマロン酸で溶解したキトサンゾルが大きかった.
     4. 硬さはマロン酸で溶解したキトサンゾルを用いたほうがリンゴ酸で溶解したキトサンゾルを用いるよりも大きかった.
     5. CaO溶液とポリリン酸ナトリウム溶液で中和したキトサン膜の硬さには差が認められなかった.
     6. 引張強さはマロン酸溶液で溶解したキトサンゾルを用いCaO溶液で中和したキトサン膜が最も大きかった.
     7. 伸びはポリリン酸ナトリウムで中和したキトサン膜が最も大きかった.
  • -実験モデルの開発-
    蔡 正煕, 高久田 和夫, 宮入 裕夫
    1993 年12 巻4 号 p. 513-520
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯科矯正に際しては, 歯がどのような矯正力を受けるかを把握することが重要である.しかしエッジワイズ法においてアーチワイヤーにより発現される矯正力は, 歯列弓内の各歯で3次元的に互いに影響し合い, ブラケットスロットとワイヤーとの間にはワイヤーのあそび, あるいは摩擦力などがあるため, その大きさを定量的に知ることは困難である.そこで本研究では, 上顎前突症の治療に際し犬歯の遠心移動を行なったのち上顎4前歯を口蓋側へ移動する段階においてアーチワイヤーが発現する矯正力を測定するために, 各前歯において牽引力, トルクおよび抵抗中心におけるモーメントを測定するための実験モデルを開発した.そして本装置により, コイルスプリングの発現する牽引力およびアーチワイヤーに付与した3rd order bendにより生じるモーメントを計測し, 前歯の移動様式について定量的な解析を行い装置の有用性を確かめた.
  • 大坪 邦彦, 米山 隆之, 浜中 人士, 相馬 邦道
    1993 年12 巻4 号 p. 521-527
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     超弾性型Ni-Ti合金ワイヤーを矯正臨床に応用する上で, 口腔内温度の変化が矯正力に及ぼす影響を明確にする目的で, 口腔内の温度変化と, それに伴う荷重変化について, 抗曲試験により検討した.
     口腔内にセットされたワイヤー部の温度変化は, 7℃から52℃の範囲であった.そこで, 温度変化の条件を低温側3℃, 高温側60℃に設定し, たわみ量を一定に維持した場合の荷重の変化を測定した.その結果, 負荷によるマルテンサイト変態中に温度変化を与えてから元の温度に戻すと, 荷重は初期荷重よりやや低い値を示した.また, 除荷による逆変態中に温度変化を与えて戻すと, 荷重は初期荷重よりはるかに高い値を示した.温度変化を繰り返すと, マルテンサイト変態中でも逆変態中でも規則性を持った荷重変化を示した.
     以上の結果より, 与ひずみ下におけるNi-Ti合金ワイヤーの荷重は, 口腔内での温度変化により, 応力および温度による変態が混在するため複雑に変化し, 元の温度に戻っても荷重は変化することが解明された.
  • 黒山 祐士郎, 青木 秀希, 東方 正章, 吉沢 和剛, 中村 聡, 大柿 真毅, 赤尾 勝
    1993 年12 巻4 号 p. 528-534
    発行日: 1993/07/24
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     α-TCPプラズマコーティング層の溶解性と組織反応を皮下埋入試験により調べた.α-TCPプラズマコーティング層は, チタン基材にβ-TCP粉末をプラズマ溶射することにより作製した.コントロールとして, チタン基材にHAp粉末をプラズマ溶射したサンプルを用いた.10×10×1mmのコーティングサンプル36枚を, 雑種成犬の背部皮下組織内に1, 2, 3ヵ月埋入し, 摘出したコーティングサンプルに対し, X線回折, SEM観察, 減少重量の測定を行い, また, 皮下組織の病理組織学的観察を行った.
     X線回折により皮下埋入1ヵ月以降で, α-TCPコーティング層の表層は一部HApに転化していることが確認された.α-TCPコーティング層の溶解量は, 埋入2ヵ月でHApコーティング層の約1.5倍, 埋入3ヵ月で約1.6倍であった.病理組織学的観察より, α-TCPとHApコーティング層の周囲を結合組織が被い, その結合組織中に炎症性反応はほとんど認められなかった.
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