歯科材料・器械
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2 巻, 4 号
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原著
  • 宮崎 隆
    1983 年2 巻4 号 p. 347-367
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    一般に圧縮試験による強度特性値としては, 破壊に抗する抵抗力を示す圧縮強さが採用されているが, 臨床的には, 永久変形による機能喪失に抗する抵抗力を示す降伏点の方が重要である.本研究では複合レジンの圧縮試験時の諸条件が, 圧縮強さと実用降伏点すなわち圧縮耐力に及ぼす効果が検討された.圧縮強さには, 試片の寸法, 形状, 試片作製時の個人差, 試片端の潤滑, 試験速度等の要因が影響を及ぼすことが判明し, これに対し, 圧縮耐力には速度の要因だけが影響することが判明した.従って圧縮耐力により簡単な試験法で信頼度の高いデータを得ることができる.複合レジンには主に脆性を示すものと塑性を示すものとがあり, 圧縮強さではこれらの強度を合理的に比較できないが, 圧縮耐力によれば合理的に比較できることが, 8種の複合レジンの圧縮試験の結果明らかにされ, 圧縮耐力の有用性が確認された.
  • 中村 光夫, 中林 宣男
    1983 年2 巻4 号 p. 368-374
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 硬組織への高い接着性を与える疎水性基と親水性基を有するモノマー, 4-METAを開発し, 歯科的応用を試みてきた.今回はこの4-METAをボンディング剤に含む新しい接着性レジンセメントを試作した.試作したレジンセメントの硬化時間は7分16秒, 被膜厚さは16.5μと従来型のセメントとほぼ同値を示した.破砕抗力は1720kgf/cm2, 圧縮引張り強さは205kgf/cm2とともに従来型のセメントをしのぎ, 高い値を示した.崩壊率は0.01%とたいへん良好な値を示した.接着性試験では, 前処理エナメル質に対し90kgf/cm2, 前処理象牙質に対し50〜55kgf/cm2, また50μアルミナサンドブラスト処理した金合金Type I, 銀合金に対し75kgf/cm2, 金合金Type IV, 12%金銀パラジウム合金, Ni-Cr合金, Co-Cr合金に対し100kgf/cm2と高い接着強さが得られた.SEM観察において, エナメル質には長いタグが, さらに象牙質には耐酸性に優れた樹脂含浸象牙質が生成していることが確認された.
  • 岡崎 正之, 高橋 純造, 木村 博
    1983 年2 巻4 号 p. 375-380
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    アパタイト含有量の異なるアパタイトレジンの材料学的検討を行なった.新コンポジットレジンは, 合成アパタイト(80℃, pH7.4で合成)を, 2.2'-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパンに混ぜ, 重合開始剤としてBPOを, 触媒としてDHPTを用いて重合することにより作成した.硬化体の無機, 有機成分はX線回折および赤外吸収スペクトル分析により同定した.試料の圧縮強度とヌープ硬さはアパタイト含有量の増加に伴って増大したが, エナメル質や市販のコンポジットレジンには及ばなかった.アパタイトとレジンの重量比Ap/R=1の試料の熱膨張係数は, ほぼ歯質のそれに等しかった.なお, この新コンポジットレジンを窩洞に充填したところ, 歯質との結合は良好であった.
  • 菅原 明喜
    1983 年2 巻4 号 p. 381-400
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンやグラスアイオノマーセメントなど歯科用審美性修復材の研究において, 変色についての報告も数多くなされている.しかし, 変色の原因には種々の因子が存在し, これらが複雑に関与しているものと推察され, 実態を明確にするのは困難である.そこで, 本研究では, 複雑多岐にわたる変色の原因を整理する手段として, Paffenbargerらがシリケートセメントの変色試験に用いた硫化水素ガスを使用して, 各種審美性修復材の変色について硫化物形成の点のみから追求した.その結果, グラスアイオノマーセメントおよびシリケートセメントでは大きな色の変化を示したが, コンポジットレジンでは一部を除いてほとんど色の変化を示さなかった.
  • 有川 裕之, 上新 和彦, 長岡 成孝, 筆本 秀和, 権田 悦通
    1983 年2 巻4 号 p. 401-407
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    種々の条件で鋳造した単純型インレー体の変形を検討した.鋳造体の径と高さの寸法変化率および体積変化率を測定し, またその形状を観察した.クリストバライト埋没材や石英埋没材を用いた場合, 径は収縮しているのに対して高さは膨張しており寸法変化率に大きな異方性がみられる.一方, 体積変化率は径の寸法変化率と同様すべての条件で収縮しており鋳造体の変形は大きい.また鋳造体の表面には金属の収縮によってできたと思われるくぼみがみられ, これが鋳造体の変形をさらに大きくしている.りん酸塩系埋没材セラベストを用いた場合には寸法変化の異方性あるいは表面のくぼみは比較的小さく, 変形の小さい鋳造体が得られる.前報のクラウンの結果との比較から, 強度の小さいクリストバライト埋没材にも金属の収縮抑制効果があるものと推測される.またインレーよりもクラウンのほうが鋳造条件の影響を受けやすいといえる.
  • 井上 勇介, 福島 忠男, 川口 稔, 宮崎 光治, 堀部 隆, 松浦 智二, 長岡 幸一
    1983 年2 巻4 号 p. 408-413
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    市販付加型シリコーン印象材の理工学的性質を明らかにするため本研究に着手した.本報では, 各種の機器を用いて印象材のベースポリマー, およびフィラーの分析を行ない種々の物性の基礎である組成について検討を加え, 以下の知見を得た.1)ベースポリマーは, baseはハイドロジェンポリシロキサン, catalystはビニルポリシロキサンからなることが推察される.2)各印象材の数平均分子量はPRECICONを除き, 稠度の変化とともに増加していたが, PRECICONは稠度に関係なく一定であった.3)フィラーの組成はSiO2, quartz, quartzとCa化合物の混合系の3種からなり, フィラーの充填率は稠度の変化とともに増加されていた.4)フィラーの形態は3MPを除いてほぼ同一で, 粒度分布はPRESIDENTに稠度が高くなるにつれ50%平均粒径が大きくなる傾向を示した以外には, 稠度との関係は認められなかった.
  • 越中 優
    1983 年2 巻4 号 p. 414-434
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    遠心鋳造におけるバックプレッシャーについて, 鋳型空洞内に小型半導体圧力センサーを直接挿入し, 水銀を鋳込んだ時に生ずる空洞内圧力の変化によって調べた.その結果, 次の結論が得られた.(1)実測によって求められたバックプレッシャーは, 圧力方程式を適用して算出した流入金属のスプルー先端部での圧力とほぼ一致した.(2)スプルーの直径が1.5mm以上の場合には, 鋳型空洞内のガスがスプルーを通しても排出され, バックプレッシャーは振動現象を示す.(3)ダイレクトベントは, 直径0.5mm程度のものであっても, バックプレッシャーおよび鋳込み完了時間の減少に非常に有効である.(4)ブラインドベントの設置は, バックプレッシャーの変化にほとんど影響しない.しかし, 鋳型空洞表面積に対するブラインドベントの開口面積が17%以上の場合には, 鋳込み完了時間の減少に効果が見られた.(5)埋没材の底厚は, 6mmから12mmの間では, バックプレッシャーや鋳込み完了時間に影響しない.
  • 松平 修一
    1983 年2 巻4 号 p. 435-445
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    アルジネート印象材には, 粉末およびペーストタイプの2種類あるが, 粉末タイプは, ペーストタイプに比べて比較的均質な練和物が得られやすく, しかも計量が容易であることから多く使用されている.一方, ペーストタイプは, 基材が高粘性で, 臨床的に正確な計量が困難であるばかりでなく, 使用に際し, 石こう粉末で練和するので均質な練和物が得られず印象硬化物中に石こう粉末が残存しやすく, 印象面が粗造で, 良好な物性が得られないなどの欠点が指摘されている.そこで, 著者は, このペーストタイプの欠点を補う目的で, 石こう粉末のペースト化を試み, これとペースト基材を練和するペースト・ペーストタイプのアルジネート印象材の開発を企図した.すなわち, 石こう粉末をペースト化するため, ペースト化剤として, トリオレイン酸ソルビタン(ST), ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン(PST)およびプロピレングリコール(PG)の3種を採用し, ペースト化剤と石こうとの配合比およびペースト状の硬化剤と基材との混合比を変化させた場合の試作アルジネート印象材の種々の物性を検討した.
  • 水沼 徹, 中村 光夫, 中林 宣男
    1983 年2 巻4 号 p. 446-450
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    4-META/MMA-TBB系レジンを接着剤に使用し, 新鮮抜去ウシ象牙質を10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液で30秒間洗浄(10-3洗浄)した場合の接着強さは18MPaを示す.しかし65%リン酸溶液でエッチングすると6MPaに低下する.一方, 25%グルタルアルデヒドで象牙質を処理した場合は, リン酸エッチングでは11MPaを示すが, 10-3洗浄した場合, 6MPaに低下する.以上の事実は象牙質への接着には, コラーゲンの性質が大きく影響することを示唆している.すなわち, 前処理に用いた酸によるコラーゲンの変性を防止できれば, 象牙質への接着強さが向上する可能性がある.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 大西 寛保, 斉藤 隆裕, 矢戸 学
    1983 年2 巻4 号 p. 451-457
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    マイクロ波加熱と従来の湿式法で作成した加熱重合レジンの適合性について検討した.山型模型を使用した場合には, マイクロ波加熱により作成したレジンは, 湿式法で作成したレジンと比べて適合性は優れていた.無歯顎のレジン床の場合には, 口蓋部は歯槽部より一般に適合性は悪く, 両者の肉厚の差が大きいほどその傾向は顕著であったが, マイクロ波加熱で作成したレジンは湿式法の場合と比べると全体的に適合性は良かった.マイクロ波加熱ではフラスコ内部は周辺部より温度は高く, レジンと石こうの温度差は少なく, レジンは約1.5分後にほぼ65℃に達し, キュアリングが開始した.しかし, 湿式法では約65℃の温水中に浸漬した場合には, 約20分後にレジンと石こうの温度は等しくなり, ほぼ30分後にレジンはキュアリングを開始した.
  • 荒木 吉馬, 片倉 直至, 川上 道夫, 笠原 紳
    1983 年2 巻4 号 p. 458-465
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    両端を固定したたんざく状のインレーワックスが冷却する過程において生じる単軸熱応力σ(t)を実測するとともに, 次の式に基づいて数値解析した.[numerical formula]ただし, α, E, aTおよびTは, それぞれ熱膨張係数, 緩和弾性率, 温度-時間換算因子および温度である.この式は熱レオロジー的単純性の概念に基づいて, 不等温系に拡張した線形粘弾性理論から導いたものである.数値計算した結果と実測した結果とは, 実用的な精度範囲, つまり残留熱応力が開放されるときに生じるワックスパタンの収縮量を知るうえで差しつかえない範囲でよく一致した.この残留熱応力は, 材料の熱収縮と弾性率とから弾性論的に予測される応力よりもかなり小さい.すなわち, インレーワックスの応力緩和特性は, 内部応力を減少させるのに大きな寄与をしていた.残留熱応力をできる限り小さくするには, パタンを作成するときにもっとも適切な条件を管理する必要がある.その条件とは, 温度履歴, 保存温度および保存時間である.これらの条件は, 用いるワックスの緩和弾性率と温度-時間換算因子とによって変化する.
  • 藤井 孝一, 有川 裕之, 上新 和彦, 井上 勝一郎, 鬼塚 雅, 蟹江 隆人, 長岡 成孝
    1983 年2 巻4 号 p. 466-470
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    3タイプの義歯床用レジン(アクリルレジン2種類, ポリサルフォンレジン, ポリカーボネートレジン)の水中における応力緩和挙動を検討した.その結果, 23℃での加熱重合型レジンの緩和弾性率〔Er(10)〕は, 他の2タイプのレジンの緩和弾性率に比べてやや高く, 1.71×1010dyne/cm2であった.しかしながら口腔内温度付近の37℃では, これら3タイプのレジン間の緩和弾性率にはほとんど差が認められなかった.常温重合型レジンの場合, 緩和弾性率は本実験で用いた材料のなかでもっとも低かった.2種類のアクリルレジンの場合, 温度上昇にともなう緩和弾性率の低下が, ポリサルフォレジン, ポリカーボネートレジンに比べて大きかった.これらの結果から, アクリルレジンはポリサルフォンレジン, ポリカーボネートレジンに比較して応力緩和を起こしやすいといえよう.
  • 高橋 好文, 伴 清治, 渡辺 徹雄, 菊池 元彦, 森 栄, 長谷川 二郎
    1983 年2 巻4 号 p. 471-478
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本実験は高銅型, 混合相アマルガム母合金, Lumi AlloyのX線分析を行なった.この母合金はいわゆるCuを多く含む2種の母合金から成っており, その組成はおおよそ, Ag 47wt%, Sn 33wt%, Cu 21wt%のものとAg 59wt%, Sn 30wt%, Cu 11wt%であった.また, 母合金中にAg3SnとCu3Snの結晶相が存在していると考えられる.この母合金から得られたアマルガム硬化体には母合金粒子, Cu6Sn5を含むγ1(Ag2Hg3)相と微量のγ2(Sn7-8Hg)相が認められたが, γ2相は時間の経過とともに消失する傾向がみられた.この硬化体を人工唾液に浸漬後, 試料表面の観察を行なったが顕著な変化は認められなかった.
  • 高橋 純造, 岡崎 正之, 木村 博, 上新 和彦
    1983 年2 巻4 号 p. 479-485
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    通気性のない溶融石英製鋳型に, KメタルおよびNi-Cr合金を鋳造することにより, 鋳造方法の違いが鋳型内空気の排出にどんな影響をもたらすかを検討した.鋳型形状(インレー型かクラウン型か), スプール直径(1mmか2mmか), 合金(KメタルかNi-Cr合金か)にかかわらず, 遠心鋳造ではほぼ完全に鋳込まれ, 空気圧鋳造では大きな鋳込み不足を生じた.この実験結果から, 遠心鋳造では鋳造圧は低いが通気性のない鋳型でも, 鋳型内空気はスプルーから容易に排出されることが明らかとなった.
  • 増原 英一, 小島 克則, 窪田 敏之, 郭 永昌, 門磨 義則
    1983 年2 巻4 号 p. 486-494
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    試作されたコンポジットレジンの接着材料としての理工学的諸性質と接着性について検討した.この接着性コンポジットレジンの硬化時間は温度依存性が大きく, 37℃の環境温度にすると理想的な硬化挙動を示した.また, このコンポジットレジンは被膜厚さが17μmと在来のセメントと同程度であった.圧縮強さ, 曲げ強さ, 圧縮引張り強さ, ブリネル硬さ等の機械的諸性質は修復用コンポジットレジンと同程度の値を示し, 耐水性にもすぐれ, 在来のセメントに比べると格段にすぐれていた.この試作レジンは歯質や歯科用合金にもよく接着することが認められた.
  • 門磨 義則, 小島 克則, 増原 英一
    1983 年2 巻4 号 p. 495-502
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    3%塩化第二鉄-10%クエン酸水溶液および3%塩化第二銅-10%クエン酸水溶液は, 歯質とレジンの接着において, 象牙質の前処理液として有効であるとされており, これらのメタクリル酸メチルの重合に及ぼす影響を調べた.p-ジオキサンを用いた溶液重合と前処理液を分散させた塊状重合を行い, 重合速度や生成ポリマーの分子量分布を検討した.塊状重合においては前処理液を共存させると重合速度が低下したが, 重合硬化時には重量平均分子量約5×105のポリマーが生成した.これらのことから, 前処理液は, 初期においては重合反応に深く関与するものの, 重合が進行するにつれて, その影響は小さくなることが明らかとなった.
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