歯科材料・器械
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12 巻, 2 号
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原著
  • (第3報) 溶解実験による焼結機構の解明
    足立 正徳, 土井 豊, 後藤 隆泰, 若松 宣一, 亀水 秀男, 森脇 豊
    1993 年 12 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    アパタイト焼結体を乳酸で部分溶解した場合のMn2+のESRシグナル強度変化および走査型電子顕微鏡観察から, ハイドロキシアパタイト(HAp)の焼結機構について検討した.
    焼成後のアパタイト粒子を乳酸で溶解した場合のMn2+のESRシグナル強度は, 焼成温度が低い場合, 溶解が進行すると急激に減少するが, 焼成温度が高い場合には, ほとんど減少しなかった.このことから, 加熱による熱反応は, 焼成温度が低い場合, 粒子表層部だけで起こり, 焼成温度の上昇に伴って粒子内部まで均一に進行することがわかった.また, 溶解前および溶解後のアパタイト粒子の走査型電子顕微鏡観察からも, 焼成温度が低い場合の焼結は, 粒子表層部あるいは隣接した粒子界面だけで起こることがわかった.この結果から, Mn2+を指標にしたESR測定によって, アパタイトの焼結機構を模式図として示すことができ, これは従来から考えられているセラミックスの焼結理論とも一致した.また, ESR測定は, アパタイトに限らず他のセラミックスの焼結機構の解明にも応用できることが示された.
  • —BisGMA系レジンの重合率に及ぼす希釈モノマーの配合量とその粘度の影響—
    高野 守
    1993 年 12 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, BisGMAを用いた2種の二元系レジンのモノマー組成と重合率および粘度との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてBisGMA[2, 2-ビス{4-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル}プロパン], TriEDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)およびBMPEPP[2, 2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン]を用い, BisGMAに希釈モノマーをそれぞれ20〜100wt%の範囲で配合して調製した.試作したレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれの系の場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, RDBは, BisGMAに配合する希釈モノマーの配合量の増加に伴い減少し, 80wt%で極小を示した.二元系レジンの重合率は, 成分モノマー単独の重合率の相加平均より大きかった.希釈モノマーの配合量が20〜80wt%の範囲の場合, 2種の二元系レジンの重合率はほぼ同じであった.二元系レジンの粘度は, いずれも希釈モノマーの配合量の増加に伴い単調に減少したが, 粘度の低減効果はTriEDMAの方がBMPEPPより大きかった.二元系レジンの重合率は, 成分モノマーの重合率の相加平均およびその粘度の増減に支配されることが示唆された.
  • —走査型レーザ顕微鏡による測定—
    山口 洋一
    1993 年 12 巻 2 号 p. 154-161
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    水成コロイド印象材は, 臨床での使用頻度が高い.しかし, この材料はそれ自身が水分を含んでいるため, 水分の損失による経時的な寸法変化に問題点を有している.
    そこで, インレーやクラウンブリッジなどの精密印象採得時に用いられる寒天印象材を実験材料とし, その印象表面に再現された20μmの細線で生じた経時的な微小寸法変化を走査型レーザー顕微鏡を用いて測定した.
    その結果, 以下の事柄が結論として得られた.
    走査型レーザー顕微鏡を用いることによって, 従来の測定では困難であった寒天印象材の印象撤去直後からの微小な寸法変化を非接触で測定することができた.
    寒天印象材は経時的に収縮を示し, その収縮傾向は印象材ごとに異なっていた.すなわち, 印象撤去直後から緩やかに収縮する印象材と, 急激に収縮する印象材とが認められた.しかし, 印象撤去から26分後では, 供試したどの印象材もほぼ同じ値であった.
  • —pHの影響—
    藤沢 盛一郎, 菰田 泰夫, 門磨 義則
    1993 年 12 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    4-METAレジンモノマー液をNMRスペクトル分析した結果4-METAと4-METが混在していることが分かった.4-METとホスファチジルコリン, ホスファチジルエタノールアミンリポソームとの相互作用をNMRスペクトル分析した.pH2.5ではケミカルシフトの変化が大きかったが, pH7.0では極めて小さな変化であった.象牙質アパタイトの酸に対する緩衝作用を考慮すると, 有機酸4-METの歯髄損傷作用は小さいものと推察された.
  • —ジメタクリレートシランの水による劣化について—
    西山 典宏, 小松 光一, 手島 英貴, 根本 君也, 堀江 港三
    1993 年 12 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    接着界面でのシランの耐水性を改善するために, 分子内に2個のメタクリル基を有するジメタクリレートシランを合成し, その耐水性を検討した.
    ジメタクリレートシランで表面処理したシリカ面に対するレジンの接着強さは従来のγ-MPSに比べて高い接着強さを与えた.しかし, 試験体を温水中に浸漬すると, 接着強さの低下が見られ, 破壊部位はレジンの凝集破壊から界面破壊へと変化した.ジメタクリレートシランの耐水性がγ-MPSに比べて悪かったのは, 分子内に2個のメタクリル基を有すために有機基の立体障害がγ-MPSよりも大きく, 凝集力の高い吸着層が形成できなかったためと考えられた.しかし, 温水浸漬後に乾燥させた場合の接着強さは向上し, その破壊部位はレジンの界面破壊からレジンの凝集破壊へと変化した.
  • 細田 裕康, 井上 美弥子, 中島 正俊, 山田 敏元
    1993 年 12 巻 2 号 p. 174-183
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    カプセル封入型の光硬化型グラスポリアルケノートセメントのいくつかの特性をin vitroにおいて手用練和のセメントと比較し, 詳細な検討を行い, さらにその臨床応用も試みた.
    その結果, アマルガムミキサーによるセメントの機械練和では, 気泡の面積率の減少が見られ, またセメント硬化体の透明度と, コア・マトリックス比は僅かに増加した.カプセル封入型-機械練和の光硬化型グラスポリアルケノートセメントは, 練和において気泡率が減少するため, 透明感が増加した.このため, より良い色調の適合性を得るためにセメントのシェードに若干の改良が必要であることが示唆された.
  • 細田 裕康, 童 平, 山田 敏元
    1993 年 12 巻 2 号 p. 184-192
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    最近, 各種修復物仕上げ研磨用に開発された粒度の異なる6種のダイヤモンド粒子固着プラスチックジスクの研磨性能と耐久性を詳細に検討したところ, 非常に高い研磨性を有し, 耐久性も十分であることが明らかとなった.
  • 中村 健吾, 後藤 真一
    1993 年 12 巻 2 号 p. 193-210
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    80Ni-20Cr母合金にMo12%, Si2%を内添加した合金(NCMS No.8)のビッカース硬さは203(1/3Hv=68)であったが, 引張強さは40.5kgf/mm2できわめて小さく, 硬さに比べて引張強さが著しく小さい.このためNCMS No.8合金にホウ素を0.2〜0.6%添加して鋳造時の機械的性質を調べたところ, ホウ素を0.4%添加することによって, 引張強さは68%増加して68.0kgf/mm2に改善された.また, 80Ni-20Cr母合金にMo12%, Si6%を内添加した合金(NCMS No.16)についても同様なホウ素添加実験を行ったところ, ホウ素0.6%の添加によって引張強さは32%増加して73.8kgf/mm2に改善された.XMA面分析によると樹枝状晶間質にモリブデン・ホウ素の層状組織が観察され, X線回折ではクロムホウ化物の生成が認められた.
  • 川口 稔, 高橋 裕, 福島 忠男, 宮崎 光治, 羽生 哲也
    1993 年 12 巻 2 号 p. 211-214
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    光重合型リライニング材の操作条件(光照射時間, 混和からの経過時間)が, 溶出モノマー量におよぼす影響について検討した.溶出モノマーの種類と量は高速液体クロマトグラフィーで分析を行った.溶出モノマー量は光照射時間の延長とともに減少した.粉液混和後から光照射までの経過時間が長くなると溶出モノマー量は増加した.本研究の結果から, 光重合型リライニング材の残留モノマー軽減には, 迅速な操作と十分な光照射が必要不可欠であるとの示唆が得られた.
  • 吉田 修, 日比野 靖
    1993 年 12 巻 2 号 p. 215-224
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はセメント泥の放置時間ならびに被着体の表面粗さが合着用セメントの被着体に対する接触角と接着強さに及ぼす影響について検討することである.
    4種類の歯科用合金(Au-Ag-Cu合金, Ag-Pd合金, Ni-Cr合金およびチタン)に対する合着用セメント(リン酸亜鉛セメント, カルボキシレートセメントおよびグラスアイオノマーセメント)の接触角ならびに接着強さの測定をすでに報告した方法に従い行った.セメント泥の放置時間は練和終了後15, 30ならびに60秒とし, また各歯科用合金表面をシリコンカーバイドペーパー120, 400および600番にて研磨を行った.その結果, 歯科用合金の種類を問わずセメント泥の放置時間が長くなるに従い各セメントの接触角が大きくなる結果を示した.カルボキシレートセメントおよびグラスアイオノマーセメントの接着強さはセメント泥の放置時間を変化させても差は認められなかった.また, 歯科用合金の種類を問わずリン酸亜鉛セメントおよびグラスアイオノマーセメントの接触角は被着体の表面粗さが大きくなるに従い大きくなる結果を示したが, カルボキシレートセメントでは差が認められなかった.カルボキシレートセメントおよびグラスアイオノマーセメントの接着強さはシリコンカーバイドペーパー400番にて研磨を行った場合に最も大きな結果を示した.本研究より鋳造修復物はセメントの練和終了後一定の操作時間を持って接着操作を行うことが可能であることが示唆された.
  • 和田 賢一
    1993 年 12 巻 2 号 p. 225-241
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    チタン鋳造体の機械的性質の検討は引張試験を用いて行われてきた.しかしながらそれらの報告のなかにおいては, 弾性性質(見掛けの弾性率, 耐力)が明らかにされていない.
    今回の実験の目的はチタン鋳造体の弾性性質を詳細に検討することである.実験には曲げ試験を用いて弾性率や耐力の算出を行った.また, チタン鋳造体のみかけの弾性率や耐力に及ぼす影響についても硬さ試験や金属組織観察を行い, 合わせて検討した.その結果チタン鋳造体の曲げ弾性率はADA Type IV金合金の鋳放し, 硬化熱処理の条件に近似する値を示した.チタン鋳造体の比例限, 0.03%耐力, 0.2%耐力の結果はADA Type IV金合金の軟化熱処理を施した試験体に近似した.また, 各鋳造条件によって鋳造された試料の表層部の硬さの変化とそれぞれの曲げ弾性率の結果が一致し, 従ってチタンの鋳造体表層に生じた硬化層が弾性率に大きく影響することが明らかとなった.また, 今回の実験よりチタン鋳造体のみかけの弾性率の測定には曲げ試験が有効であることが示唆された.
  • 小北 一成, 武田 昭二
    1993 年 12 巻 2 号 p. 242-249
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    4種類の歯科用プラスチック材料, ポリメチルメタクリレート(PMMA), ポリエーテルサルホン(PES), ポリサルホン(PSF)およびポリカーボネート(PC)に対する細胞の接着強さをしらべるべく, マウス結合織由来のL-929細胞を用い, 円錐円板型粘度計によって培養液を介して0.74Paの定ずり応力を試料表面上の細胞に負荷することによって細胞を剥離し, 接着強さを数量的に求めた.その結果, ずり応力を負荷しない条件下では, PES, PSFおよびPCでは対照の硬質ガラスに匹敵する良好な相対細胞接着率を示したが, PMMAではわずかに低い傾向を示した.一方, 定ずり応力を負荷すると細胞は材料表面から剥離され, 定ずり応力の負荷時間の増加とともに細胞残留率は低下した.この傾向はPMMAとPCで顕著であった.つぎに血清の有無と培養時間の影響については, 血清無添加群で血清添加群より細胞接着率および定ずり応力を負荷した後の細胞残留率ともに低かった.また, 血清添加群において, 24時間培養群よりも4時間培養群で, 細胞接着率および定ずり応力を負荷した後の細胞残留率ともに低下した.
    以上の結果から, 円錐円板型粘度計による細胞の材料に対する接着性の結果は, ずり応力を負荷しない静置条件下での結果と異なることが明らかとなった.したがって, 生体に用いられるバイオマテリアルに対する細胞の接着性を評価するにあたっては, 動的な測定手段をも加える必要があるといえる.その際, 本法はその評価法の1つとして有効な方法であることがわかった.
  • 宮﨑 紀代美, 井上 達也, 菊地 久二, 廣瀬 英晴, 西山 典宏, 安斎 碕, 西山 實
    1993 年 12 巻 2 号 p. 250-256
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    3種類の表面処理剤(γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane, Vinyltrimethoxysilane, Vinyltrichlorosilane)を用いてシリカに湿式法で表面処理を施し, 粉粒体としての基本的な物性である密度, 比表面積および粒度分布の3項目について測定し, 比較検討を行った.
    その結果, 処理剤濃度の増加に伴い, 密度および比表面積は減少する傾向を示し, 平均粒子径が増大する傾向を示した.また, 表面処理剤の種類によって濃度による物性の変化に違いが認められ, シリカの表面処理に伴い, 粉粒体としての物性に変化が認められることが判明した.
  • 安斎 碕, 吉橋 和江, 菊地 久二, 廣瀬 英晴, 児島 茂, 西山 實
    1993 年 12 巻 2 号 p. 257-264
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, 新しい歯科用モノマーの合成と合成したモノマーおよびそのバルク重合物の性質について検討したものである.
    モノマーの合成は, オクタクロロシクロテトラホスファゼン(P4N4Cl8)を用い, この塩素2個をジオール(HOROH)で置換したのち, 残りの塩素を2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)で置換して, シクロホスファゼンリニアーモノマー4種を合成した.
    次に, 合成したモノマーをIR, NMRおよび元素分析し, さらに, バルク重合して, その機械的性質について検討した.
    合成したモノマーの分子量は, 2500〜3000を示し, 屈折率および粘度は, それぞれ1.4978〜1.4995および42〜73ポイズを示した.4種のバルク重合物のうち, 機械的性質の最も良好な値を示した場合は [P4N4 (O(CH2)6O)1(EMA)6] nモノマーであった.
  • 寺尾 隆治
    1993 年 12 巻 2 号 p. 265-278
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    10種類の義歯床用軟性裏装材について各材料の操作時間と硬化時間, 粘度, 弾性回復率, 圧縮弾性率, ゴム硬さ, 寸法変化率等を調べるとともに, サーマルサイクル試験による耐久性の検討を行った.また練和時に混入する気泡がこうした材料の物理的ならびに機械的性質にどのような影響を及ぼすかについて検討した.
    操作時間は2.5〜17.0分であった.一方, 硬化時間は3.8〜14.3分であった.シリコーン系材料の練和開始後90秒での粘度はアクリル系材料に比べて4〜7倍大きい値を示し, 1種類を除いて練和後比較的短時間で粘度は上昇し始めた.弾性回復率は, 遅いものでも練和開始後約9分で90%以上に達した.練和開始後24時間でのアクリル系, シリコーン系材料の圧縮弾性率は3.57〜9.01×106dyne/cm2で, 口腔粘膜組織の弾性率(0.7〜4.4×107dyne/cm2)とほぼ同じか, より低い値を示した.圧縮弾性率, ゴム硬さとも気泡を除去した試料は, 気泡が混入した試料よりも高い値を示し, 練和後30日までの圧縮弾性率の経時的変化は小さくなった.常温硬化型アクリル系材料では, 気泡が徐々に大きくなる現象がみられ, また最高で約1.6%の寸法変化率を示したが, 気泡を除去した場合, 寸法変化率は小さくなった.アクリル系, シリコーン系材料では, サーマルサイクル試験後は表面性状の粗れが著しく, 重量の増加やゲル強度の低下がみられた.しかし, 気泡を除去した場合, 表面粗れ, 重量変化, ゲル強度の低下とも小さくなった.このことから気泡の有無が材料の耐久性に大きな影響を及ぼしているものと思われる.
  • 若林 元
    1993 年 12 巻 2 号 p. 279-294
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, 象牙質被着面を酸処理後, 露出した象牙質コラーゲン層を有機質溶解剤で除去し, 得られた象牙質アパタイトの微細凹凸構造面に直接接着材を作用させ接着強化を図る方法を検討したものである.象牙質被着面処理剤は第一処理に3種の酸処理剤を用い, 第二処理には有機質溶解剤として10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl-Solution)とこれに増粘剤としてアルミナを8〜18 wt%添加した10%次亜塩素酸ナトリウムゲル(NaOCl-Gel)を用いた.さらに, 市販ボンディング材とこれに助触媒であるベンゼンスルフィン酸ナトリウムを加え濃度を高めたボンディング材も試作した.
    その結果, 外側性歯面を想定して垂直にした被着面にNaOCl-Solutionで第二処理を60秒間行っても接着強さは3.6 MPa以上得られなかった.これに対し, 増粘剤を14 wt%添加したNaOCl-Gelで第二処理すれば10.6 MPaの初期接着強さが得られた.またNaOCl-Gelは垂直にした被着面でもコラーゲン層を効率よく溶解除去することがSEMおよびFT-IR分析から解明され, コラーゲン層の溶解除去と接着強さには密接な関連のあることが判った.さらに, ベンゼンスルフィン酸ナトリウムを5 wt%添加したボンディング材を用いた場合, 20, 000回のサーマルサイクリング試験においても8.1 MPaの接着強さが維持され, 被着体破壊による接着低下も見られなかった.また, 本処理法を象牙質支台に用い, 辺縁漏洩を検討したところ無処理ならびに第一処理のみの場合と比較的し明らかに漏洩が抑制され, 優れた辺縁封鎖性を示した.以上の結果から, 40%リン酸とNaOCl-Gelを被着面処理に用いる本処理法は, 接着強さの向上と辺縁封鎖性に有用であることが判った.
  • 川井 隆夫, 寺延 治, 島田 桂吉
    1993 年 12 巻 2 号 p. 295-303
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    Ca/P比の異なるMg含有ヒドロキシアパタイト粉末を焼結して得られたセラミックスの界面反応挙動について, 無機電解質のほかに牛血清を含んだ液を用いて調査した.
    本原料を用いることによって, 1, 200℃でも安定なβTCP-HAP2相混合セラミックスが得られた.これらのセラミックスはβTCP量の多いほど, 液中に血清成分が存在すると溶解しやすいが, αTCPに比べて1/3で, Mgの溶出も1ppm以下であった.
    本セラミックスはCaおよびPが飽和状態では試料表面にHAP微粒子が析出し, αTCPに比べてin vitroで安定性が高く, 生体内でも親和性が良好であると考えられた.
  • (第1報) コバルトクロム鋳造床義歯について
    寺岡 文雄, 北原 一慶, 杉田 順弘, 木村 博
    1993 年 12 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    重合開始部位を制御したDSシステムで作製したコバルトクロム鋳造床義歯の適合性を, 常温重合, 低温長時間重合および湿式重合で作製したものと比較検討した.鋳造したコバルトクロム合金の曲げ弾性係数は23, 000 kgf/mm2であった.DSシステムで作製したコバルトクロム床義歯の口蓋部および床辺縁部での間隙は約0.10 mmで, 他の重合方法で作製した場合の1/2から1/3であり, 適合性は優れていた.右側臼歯部に荷重を加えた片側均衡テストにおいて口蓋部と反対側の浮き上がり量は, DSシステムが最も少なく, 常温重合, 低温長時間重合, 湿熱重合の順に多くなった.
  • 後藤 隆泰, 若松 宣一, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 林 憲司, 足立 正徳, 土井 豊, 森脇 豊
    1993 年 12 巻 2 号 p. 310-315
    発行日: 1993/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    金属焼付用陶材の4点曲げ強度を37℃のArガス中で歪速度8.33×10-5sec-1で測定した.また, 臨界応力拡大係数(破壊靱性値)をSEPB法により測定し, 先に報告した37℃の蒸留水中での5種類の歪速度における4点曲げ強度のデータを用いてクラック成長に及ぼす水の影響を検討した.Arガス中およびこれと同じ歪速度における蒸留水中の強度のワイブル統計処理の結果, 強度は破壊確率が小さい側で一致し, ワイブル係数は蒸留水中では15.3, Arガス中では8.1となった.Arガス中に対する蒸留水中の破壊直前のクラック長さの比を求めると, 破壊確率が高いほど増加し, 最大で約2倍に達した.次に, 破壊は表面の欠陥から始まり, Arガス中のクラック成長量は零であると仮定すると, 蒸留水中で破断直前までに成長したクラック成長量の平均は5〜36μmと見積もられ, 歪速度の減少とともに増加を示した.また, 歪速度が遅くなるにつれて, 個々の試料の成長量はほとんど等しくなり, 欠陥のもとの大きさに依存しなかった.
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