歯科材料・器械
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6 巻, 2 号
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原著
  • -CaSO4・2H2O結晶とエナメル質アパタイトとのepitaxyの可能性について-
    楳本 貢三
    1987 年6 巻2 号 p. 111-130
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    New surface treatmentとして提起されたcrystal bondingについての基本的概念を把握し, 生成結晶 (CaSO4・2H2O結晶) とエナメル質アパタイトとの結合機構を解明することを目的として, アクリル酸モノマー-硫酸アンモニウムおよびクエン酸-硫酸アンモニウム水溶液を用いエナメル質表層に対する作用についてX線回折, SEM観察, 接着試験, およびXMA等により検討を行った結果, 石こう結晶 (100) 面および (111) 面とアタパイト (001) 面が, また石こう結晶 (100) 面とアパタイトのac面間においてepitaxial growthの可能性が示唆され, crystal bondingにおける接着強さにからむ要因の一つであると考えられた.
  • 中林 宣男, 荒金 光夫
    1987 年6 巻2 号 p. 131-134
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    著者らは, さきに, モノマーにジメタクリレートを用いた光重合型硬質レジンの機械的性質は, 同一組成の加熱重合型硬質レジンより劣ることを報告した.今回, 光重合型硬質レジンの性質を改善するために, 重合性の高いアクリル基を有する2'-アクリロキシエチル 2-メタクリロキシエチルカーバメート (UAMA) を合成し, 光重合型硬質レジンへの応用の適否について検討した.その結果, 光重合による塊状重合体では, UAMAはジメタクリレート (UDMA) より優れた性質を示した.また, TMPTフィラーとガラスフィラーを混入した硬質レジンでは, UAMAが光重合と加熱重合で同程度の性質を示したのに対し, UDMAの光重合でのブリネル硬さと圧縮強度は加熱重合より劣ることが認められた.
  • 第2報 荷重-変位曲線と微小破断面形状の関連性
    松田 一郎
    1987 年6 巻2 号 p. 135-143
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     予亀裂付き試験片を使用して, 荷重-変位曲線と銀合金の微小破断面形状について検討した.
     I型ディンプルの分布密度が低い場合, 予亀裂先端領域の局所的塑性変形は大きな値を示した.そして, I型ディンプル内のすべり線の形状は, 機械的強度と関連した.
     イリジウムかロジウムをAg-Cu合金に添加すると, 母相内の針状相が微細化あるいは減少して, II型ディンプルが少なくなった.また, 合金の延性が幾分改善した.
  • -その1 各種ニッケル-クロム合金の溶出元素について-
    洞沢 功子, 杉江 玄嗣, 伊藤 充雄, 高橋 重雄
    1987 年6 巻2 号 p. 144-152
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     市販15種類のニッケル-クロム合金の鋳造試験片を1%乳酸, 0.05%塩酸, リンゲル液に37℃, 7日間浸漬した後の溶出元素量とそれら合金の組成を高周波誘導結合型プラズマ発光分析法によって定量分析した.
     その結果, 合金成分の溶出はクロム含有量が14%以上で抑制効果がみられた.また, 試験したニッケル-クロム合金のNiだけの溶出元素量は, 1.0 mg/cm2以下であった.3種類の浸漬液では, 1%乳酸が腐食性が大きく, リンゲル液は合金の耐食性を比較できないほど小さい.
  • 関 文秀
    1987 年6 巻2 号 p. 153-167
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     本研究では圧縮試験と引張試験を比較する目的で, 歯科鋳造用合金, 加工材, 熱処理材の各圧縮特性におよぼす要因について調べ, 以下の結果を得た.
     圧縮耐力は試片の縦横比と圧縮速度に影響を受ける.
     焼準熱処理をした鋼の上部降伏点, 下部降伏点は圧縮試験でもはっきり現れることが判明した.
     加工材および熱処理材の圧縮耐力は引張耐力と実験誤差の範囲で一致していたが, 鋳造材の圧縮耐力と引張耐力には大きな差が認められた, 引張試験は鋳造欠陥による影響が大きいことが判明した.
  • 竹内 春芽
    1987 年6 巻2 号 p. 168-182
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     本研究では, 歯科用アマルガムの市販品8種について, 耐力, 破砕強さ, 圧縮歪等の圧縮特性に影響をおよぼす要因を調べた.そして以下に述べるような結果を得た.
     圧縮耐力には主として圧縮速度だけが大きく影響するが, 破砕強さには多くの要因が影響することが判明した.
     歯科用アマルガムの応力緩和とクリープは圧縮特性に深い関わりを持つ.
     歯科用アマルガムの強度は, 破砕強さによるよりも圧縮耐力による方がより正確に判定可能である.圧縮耐力値は破砕強さ値よりばらつきが小さい.
  • 加藤 博重, 小林 廣之, 清水畑 明, 大島 久美子, 北野 誠弓, 柴崎 好伸, 福原 達郎
    1987 年6 巻2 号 p. 183-189
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     フル・ブラケット法における結紮は, 歯の移動にとって重要な役割を持っている.
     本報では, 熱硬化性ポリウレタンゴムからなる新しい結紮専用のOリング・エラスティックを試作し, その理工学的特性と臨床的意義について検討を加えた.試料としてはOリングと同型の既に市販されている5種のリングを用い, 吸水試験, 引張試験, 永久伸び試験の基礎的実験を行い比較検討した.その結果と臨床的な関連についての結論は次の通りである.
     1)全試料において, 37℃蒸留水中30日間浸漬後の吸水量は, 差を認めなかった.
     2)全試料が, 臨床上の拡大量に十分な伸びと強度を示した.
     3)条件別の引張試験からOリングは他の試料より総合的に優れた特性を認めた.
     4)Oリングは最も小さい永久変形であった.
     5)Oリングの持続性を有する優れた弾性から, 結紮のみならず歯に対して均一な矯正力の適応が可能と考えられた.
     6)Oリングを用いた結紮の着脱操作は容易であることが判明した.
  • テーパーの付いた板状試料の残留応力とゲートの位置との関係
    木村 博, 寺岡 文雄, 杉田 順弘, 熊沢 洋一
    1987 年6 巻2 号 p. 190-195
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    ゲートの位置を変えて射出成形したテーパーの付いた平板試料の残留応力を光弾性解析によって検討した.さらに, 平板試料から得られた条件のもとで射出成形した上顎全部床義歯の残留応力とモノマークラックについて検討した.厚さの薄い部分から射出成形したテーパーの付いた試料は, 厚さが変化する境界付近で大きな応力集中が見られた.一方, 厚さが変化する境界付近から射出成形した試料は, 主応力差線図は滑らかで, 境界付近の応力集中は最も少なかった.切歯乳頭部付近から射出成形した上顎全部床義歯は, 床後縁部や口蓋部から射出した義歯と比べると応力集中やモノマークラックは少なかった.今までの実験結果から, 射出成形レジン床義歯の応力集中, モノマークラックやひけなどを低減することが可能となった.
  • 第2報 被着材と接着材の熱膨張係数差が及ぼす接着強さへの影響
    野口 八九重, 中村 かおり, 赤間 ゆかり, 山本 秀
    1987 年6 巻2 号 p. 196-204
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     前報において設定したサーマルサイクリング条件に則り, 被着材の物性とサーマルサイクルによる接着強さの低下傾向との関係について調べた.
     レジン系接着材の場合, 被着材と接着材の熱膨張係数差によってセメントが受けるひずみは, 接着強さの低下因子に必ずしも関係しない.このことは, 例えば, 被着材の表面処理等の前処理によって経時的な接着強さの低下が防止できることを示唆している.
     また, 歯に対する接着強さの低下傾向は, 合金に対する場合よりも小さい.したがって, 長期間にわたって装着された金属修復物の離脱は, 歯とセメントとの界面ではなく, 金属-セメント界面で生ずるものと考えられる.
     そして, 合金の場合, 接着強さの経時的低下傾向は, その表面に生成する酸化膜の構造に関係するものと思われ, 非金属合金の場合でのうすくて強固な不動態被膜は, 加熱によって酸化膜を形成させる貴金属合金の場合よりも好ましい結果が得られる.
     被着材の剛性では, その値が高いほどサーマルサイクルによる接着強さの低下傾向は小さくなるが, その効果は経時的接着強さの低下率を補うほど大きくはない.
  • -(第1報) 第2リン酸カルシウム結晶添加による石こう (CaSO4・2H2O) 結晶の生成について-
    楳本 貢三, 山中 彬, 倉田 茂明, 山崎 升
    1987 年6 巻2 号 p. 205-211
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     石こうの機械的性質を改善することを目的として, 石こうの硬化過程において核となる物質を添加し, 結晶核の数の増加を計り, 成長する結晶が互いに結合, またはからみ合いをおこすことにより緻密な三次元構造の硬化体をつくり, 石こうの機械的性質を向上させることを期待した.
     本研究においては, 石こう結晶と結晶構造が類似している第2リン酸カルシウム (DCPD) を選び, 石こう結晶生成の有効な異種核となり得るかを検討した.
     すなわち、DCPDをCaSO4・2H2O過飽和溶液に添加した反応溶液において, 溶液中のカルシウム濃度に著しい減少がみられたこと, および溶液中の生成固体の分析, すなわちFTIR測定による石こう結晶水由来の吸収, EPMA測定によるS元素の存在が確認されたことにより, DCPDを核として石こう結晶の生成が促進されることが認められた.
     以上の結果から, DCPDは石こう結晶生成の有効な結晶核であり, これらを基盤として緻密な石こうを生成させると共に石こう相互の架橋の可能性を高め, 石こうの機械的性質を改善するために有効な物質であると考えられた.
  • 亘理 文夫, 西村 文夫, 福本 良平, 野本 直
    1987 年6 巻2 号 p. 212-217
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    高融点金属鋳造用の耐熱材として融点約2, 700℃のジルコニア (ZrO2) に注目し, 埋没材として利用するための基礎的研究を行った.耐熱性を劣化させずに鋳型としての十分な強度を得るために様々な耐熱材粉末, および無機系, 有機系の結合材の使用を試みた.耐熱材として純ジルコニアおよび各種安定化ジルコニア, 結合材としてジルコニアゾル, りん酸およびりん酸塩, 水溶性有機質樹脂を使用し, さらに分散性, 流動性, 生型強さなどの改善のために界面活性剤も使用した.また, 非水系結合材として常温重合MMA樹脂を使用した.ジルコニア基埋没材の混水比, スラリーの流動性, 硬化時間, 硬化時の寸法変化, 生型および焼成後の圧縮強さ, 熱膨張率, 熱伝導度, 金属との焼付反応性, 鋳造欠陥への影響等の特性を調べた.ジルコニアはチタンとの焼付反応性が小さく, かつ鋳造欠陥の少ない鋳造体を得ることのできる, 優れた高温用埋没材と考えられる.
  • 大道 博文, 金城 直実, 細田 裕康
    1987 年6 巻2 号 p. 218-227
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     ヒト抜去上顎小臼歯に形成したII級窩洞に市販の光重合型レジンを塡塞し, 従来の隔壁法および今回新たに採用した隔壁法を用いた5種類の光照射法により重合硬化させた.そして色素浸透試験を行い歯頸側窩縁における辺縁微小漏洩を調べた.さらに各々について側室部レジンの色々な小部分におけるヌープ硬さを測定した.得られた結果は以下の通りである.
     1)一部透明なバンドを隔壁に用いた場合, 側方照射法は歯肉窩縁部における微小漏洩の減少に非常に有効であった.これは, このバンドが, この部位に集中的に光照射することを可能にしたからである.
     2)ベベルを付与していない歯肉側窩縁部にはしばしばエナメル質の亀裂が観察された.従って, 窩縁にはベベルを付与することが推奨される.
     3)象牙質のみからなる歯肉側窩壁においては, 本研究において最良であった方法を用いたにもかかわらず辺縁微小漏洩は防止できなかった.
     4)側室部レジンのヌープ硬さの分布をみると, 新しい隔壁法を併用した側方照射法を適用した場合には, 歯肉側窩縁部において良好な重合状態を示した.
  • その1 繰り返し圧縮の影響について
    堀江 恭一, 中島 章富, 細田 裕康
    1987 年6 巻2 号 p. 228-235
    発行日: 1987/03/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
     臼歯用コンポジットレジンの繰り返し圧縮に対する耐久性が動的試験機を用いて検討した.
     2種のコンポジットレジン (化学重合型および光重合型) を用いて円柱型試片(直径2.5 mm, 高さ5 mm)を作製し, 37℃蒸留水中に1週間保管した.それぞれ10試片を用いて圧縮破壊強さを測定した.他の試片は動的試験機による繰り返し圧縮試験に用い, それぞれある一定荷重の繰り返し圧縮を負荷した.試片が破壊するまでの繰り返し圧縮回数を記録した.また, 600万回まで破壊しなかった試片については圧縮破壊強さを測定した.さらにこれら試片破断面のSEM観察を行なった.
     以下のことが判明した.
     1. 繰り返し圧縮に対する耐久性はその材料の圧縮破壊強さに依存しているように思われる.
     2. 繰り返し圧縮を負荷された試片とされなかった試片との間に圧縮破壊強さの差はなかった.
     3. 繰り返し圧縮を負荷された試片の大型フィラー上に細かい線状の亀裂が観察された.
     4. 試片内の気泡は, コンポジットレジンの繰り返し圧縮に対する耐久性の低下に重要な役割を果たしていた.
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