小窩裂溝填塞材,レジン系4材料およびグラスアイオノマー系2材料の合計6材料の発生に及ぼす影響を,マウス由来のES-D3細胞から分化した心筋細胞の鼓動率から調べた.実験には50%細胞分化率(ID
50),および同細胞ならびに分化した同種の他細胞(Balb/c3T3cell)の50%細胞生存率(IC
50)とを合わせた3つのパラメータを用い,ヒトへの発生毒性を予測するEmbry-onic Stem Cell Test 法にて検討した.その結果,ID
50については,レジン系4材料で平均6.4〜9.2 μg/mlを示した.グラスアイオノマー系2材料の液では,Fuji IIIで平均157.3 μg/ml,FujiIII LCで54.1 μg/mlを示した.両細胞のIC
50はID
50と類似の結果を示した.一方,グラスアイオノマー系2材料の粉末ではID
50およびIC
50が得られなかった.また,同時に調べた硬化後の材料の細胞毒性について,レジン系4材料はグラスアイオノマー系より強い細胞毒性を示した.以上,今回の小窩裂溝填塞材でレジン系4材料は弱いながら発生毒性を疑わす結果であったのに対し,グラスアイオノマー系2材料の液には発生毒性の疑いはなかった.今後,歯科生体材料の生物学的安全性の観点から,発生に対する影響を含めて,研究・開発段階での調査が必要であることが明らかとなった.
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