歯科鋳造用埋没材の新しい結合材として, 第一リン酸アルミニウム(Al(H
2PO
4)
3)を用いた結合材の開発を試み, 本研究では, Al
2O
3・5H
2O-Al(H
2PO
4)
3系結合材の硬化体の加熱特性について検討した.第一リン酸アルミニウムは市販の粉末と溶液の両方のタイプを使用し, アルミナ水和物(Al
2O
3・5H
2O)は合成したものを使用した.熱分析およびX線回折法による定性, 定量分析の結果, 硬化体の大部分(AlPO
4・nH
2O)は加熱初期にAlPO
4に変化し, 高温では, Al
2O
3の生成が起こる場合もあった.AlPO
4の生成量は, 結合材組成中のモル比Al
2O
3/P
2O
5によって決定され, モル比Al
2O
3/P
2O
5=1のときに最も多いことがわかった.第一リン酸アルミニウムの粉末を用いた場合, 加熱によって硬化体はベルリナイトやクリスタルファイトのα-β転移あるいはベルリナイト-クリスタルファイト転移(再組織型転移)により膨張し, 最大で7%(1, 100℃)の線膨張率を示した.第一リン酸アルミニウムの溶液を用いた場合, 加熱膨張は起こらず, 総合的には収縮を示した.反応硬化材として, Al
2O
3・5H
2Oのみの使用では十分な焼成強度は得られなかったが, MgOを添加することで歯科用埋没材として適当な強度が得られることがわかった.
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