歯科材料・器械
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1 巻, 4 号
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原著
  • 佐久間 崇之, 小野 喬, 奥田 礼一
    1982 年1 巻4 号 p. 323-327
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    我々の開発した吸引型鋳造機に, 試作した大型の鋳造用リングを装着し, 歯科用としては比較的大型の義歯用フレームの鋳造試験を行なった.
    試験の結果
    1)この方法を用いれば, 全部床義歯あるいは部分床義歯に使用する金属フレームの鋳造に際してはきわめて失敗が少なく, 鋳造体表面, 特にその上面はきわめて滑沢なものが得られる.
    2)吸引鋳造法によって, このような大型の鋳造物の製作が可能となった理由は, 鋳造リング上面に上蓋を装することにより, リングと埋没材の隙間におこりがちな空気の漏洩が防止できたこと, 側面からも陰圧が作用したため, 排気効率が向上し, 鋳造に際して鋳型上面と鋳型内部間に, きわめて瞬時に圧力差を作り得たためであると考えられた.
  • 宮入 裕夫, 福田 秀昭, 永井 正洋
    1982 年1 巻4 号 p. 328-338
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    エアタービンハンドピースは優れた切削器械として広く用いられており, 最近では技工用のエアモータなどとしても, 使用されている.
    本研究においてはエアタービンの回転性能試験に関する研究として, 定荷重および定速度負荷試験について検討を行なった. 両負荷方法(切削方法)は歯科臨床および技工などで広く用いられているもので, このような負荷方法によってエアタービンの回転性能は異なるのではないかと考えられている.そして, これらの試験方法の結果を踏え, 切削工具の支持方法として, エアベアリングタイプとボールベアリングタイプとについて回転性能の検討を行なった.
    そこで, エアタービンの回転性能試験を行なうために, それぞれの負荷方法で試験できる回転性能試験装置を作製した. その結果, 定速度負荷および定荷重負荷の両負荷方法によるエアタービンの回転性能は回転速度-トルク線図で同様な結果を得ることを確認した. そして, 試験の容易な定速度負荷方法による回転性能試験が有効な試験方法であることが明らかとなった.
    一方, 定荷重負荷試験により回転性能とエアタービンの回転支持方法との関係について検討した.
    回転部支持方法として, エアベアリングタイプとボールベアリングタイプが一般に広く用いられており, この両支持方法について実験した.エアタービンの回転中の負荷に関し, エアベアリングタイプは初期回転速度の40%程度の速度低下の近傍で急激な速度の低下が見られるが, ボールベアリングタイプではそのような現象は見られない.したがって, エアベアリングタイプでは広い領域で回転速度の変化が行なわれ得る.しかしボールベアリングタイプに比べ, エアベアリングタイプの使用トルク範囲は低くなっている.
  • 若狹 邦男, 山木 昌雄
    1982 年1 巻4 号 p. 339-345
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造用 32Ni-23Cu-25Mn 及び 84Ni-9Cr 合金の castability を spiral 状及び up and down 状のコイル型鋳型によって調べた. その結果, これら合金の直径1.0 mmのコイル型の castability は, O型とV型のルツボ形状やスプルー線の取りつけ位置等によって余り大きな影響をうけなかったが, 前者の低溶融合金における castability は後者の場合の約 40%に比べて 2倍以上の値(約 89%)を示した. また, それらの合金の castability はコイル部の直径が減少, 即ち細くなるにつれて低下する傾向を示した. 他方, up and down 状のコイル型鋳型による低溶融 32Ni-23Cu-25Mn 合金の castability は, スプルー因子, 即ちスプルー直径よりもコイル部の太さ(直径)が大きくなるとき, 低下した. すなわち, (コイル部の直径/スプルー部の直径)の比の自乗が 1.0 以下では, castability はほぼ一定になるが, 2.0 のとき極めて低下することがわかった. 更に, 低溶融合金について, 2 種類のコイル型鋳型を用いた castability は(Mingot/Mcoil) という重量比の増加とともに著しく減少することが判明した.
  • 土生 博義, 田辺 直紀, 平口 久子, 有馬 嗣雄
    1982 年1 巻4 号 p. 346-350
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    前報と同様にして, 錫鋳造体の腐食溶出量に及ぼす影響因子について調査した. その結果, 溶液の種類および浸漬時間に有意性が認められた.溶液が最も決定的な因子で, 1%乳酸溶液中で最大の溶出を示し, 3カ月後の溶出量はおよそ10 mg/cm2 (銀の約 850 倍)であった. 経時的影響は, 1%乳酸溶液中のみに現われ, 時間の増加に比例して溶出量が増加した.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 斉藤 隆裕
    1982 年1 巻4 号 p. 351-359
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科用ポリサルホンの修復および調整方法の一連の研究として, 溶剤による溶接を行い, 溶接強度と溶接状態を検討した. 溶剤だけをポリサルホン表面に塗布した場合には十分な溶接強度は得られなかったが, ポリサルホンをクロロホルムに溶解させたドープセメントを用いた場合には, ポリサルホン濃度が 23%のときに溶接効率は約 50%に達した. 被着材にスカーフを付けることにより溶接強度は上昇し, スカーフ角度が30°になると母材で試料は破断した.母材の引張試験ではネッキングが生じ, 試料は約 100%伸びるが, 溶接した試料では弾性率に急激な変化が見られ, 伸びは 6〜10%程度であった.
    母材の破断面は滑らかであるが, 溶接面ではドープセメントとして用いたポリサルホンが剥離しているのが見られた.
  • 谷 嘉明
    1982 年1 巻4 号 p. 360-368
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科用修復材の縁端強度は臨床的に重要な性質であるものの, その測定法は確立されていない.本報では, 粉末冶金工業の分野で, 圧粉体の成形性を測定する規格試験法として用いられているRattler試験法を応用して, 各種コンポジットレジンの marginal fracture toughness を評価した. 各材料について, 6×6×3 mmの角片5個づつ作製し, Rattler試験機の青銅金鋼製シリンダーケージの中に入れ, 87 rpmの回転速度で 10,000 回転させて, 試片の縁端部を磨滅させた. 試験前の試片重量に対する試験後の重量損失率を求めた. 重量損失率の小さいものほど marginal fracture toughness にすぐれていることになる. 実験の結果, MFRがもっともすぐれ, 次いで臼歯用コンポジットレジンで, 従来型コンポジットレジンがもっとも劣っていた. MFRでは一定の回転数以上になると辺縁部の破折は起らなくなったが, 従来型コンポジットレジンでは破折が持続した.コンポジットレジンの marginal fracture toughness は, フイラーの粒径や配合率に影響をうけることがわかった. アマルガムはさらに著しい辺縁部の破折を示した.
  • 井上 勝一郎, 有川 裕之, 藤井 孝一, 蟹江 隆人, 上新 和彦, 鬼塚 雅, 自見 忠
    1982 年1 巻4 号 p. 369-372
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    動的粘弾性測定器を用いてアクリルレジン2種類(加熱重合レジン, 流し込みレジン), ポリカーボネートレジン1種類, ポルサルフォンレジン1種類の動的粘弾性を検討した.またディラトメーターを用いて各材料のガラス転移温度(Tg)を調べた. アクリルレジンの場合, 温度上昇にともなう貯蔵弾性率 (E′)の減少率((dE′)/(dT))がポリカーボネートレジン, ポリサルフォンレジンの場合よりも大きくなった. さらに, アクリルレジンのE′は測定周波数によって大きく変化した. 比容積の温度変化から求めた各材料のガラス転移温度は, 加熱重合レジンでは 110℃, 流し込みレジンでは 90℃, ポリカーボネートレジンでは 150℃, ポリサルフォンレジンでは 190℃となった. これらの結果から, ポリカーボネートレジン, ポリサルフォンレジンはアクリルレジンに比べて明らかに熱的に堅牢な材料といえる.
  • 小島 克則, 窪田 敏之, 門磨 義則, 増原 英一
    1982 年1 巻4 号 p. 373-380
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科用可視光線照射装置から発生する光を分光して各波長の分光放射照度を調べた. その結果, TRANSLUX, PRISMA-LIGHT, HELIOMATの各照射装置の分光放射照度の最大ピークは 500 nmの波長にあり, その分光放射照度はそれぞれ 5400, 3200, 2800 (μW・cm-2・nm-1)であった. またELIPERの分光放射照度の最大ピークは 450 nmにあり, その分光放射照度は 3600 (μW・cm-2・nm-1)であった. どの可視光線硬化型コンポジットレジンのモノマーにも Bis-GMA が含まれており, フィラー含有量は 63〜79 wt%であった.
    示差走査熱量計 (DSC) から求めた重合反応によるモル当たりの発熱量は PRISMA-FIL が最も多く, DURAFILL, HELIOSITは同程度であり, COMMANDが最も少なかった. 3 mmの距離から可視光線を20秒間照射して, 5種類のコンポジットレジンの硬化深さを調べたところ, 最も深く硬化したPRISMA-FILに次いでDURAFILL, HELIOSIT, VISIO-DISPERSの順に浅くなった. また硬化深さは可視光線の照射時間を長くすればする程深くなる.この深さはコンポジットレジンの色調によっても影響を受けることが明らかになった. 15000 (lx)の照明用デンタルライトによる working time の変化を測定してみると, PRISMA-FIL が最も敏感で短かく, 90〜100秒であった.
  • 小倉 英美
    1982 年1 巻4 号 p. 381-396
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    アマルガムに代るガリウム成形充填材の開発を目的として 80wt%Sn-20wt%Cuを母合金とし, 白金, パラジウム, 銀を添加してガリウムと練和, 充填したときの諸性質を調べ, 以下の結論を得た.
    1)寸法変化率は, 全種ADAS No.1アマルガム規格(±20μm/cm)に合格した.添加元素の影響は, 白金添加量を増すと減少し, 逆にパラジウム 5 wt%以上および銀 20 wt%以上添加すると増大する傾向を示した.
    2)圧縮強さは, 練和2日後では寸法変化率と負の相関が認められた. 練和7日後では全種 20 kgf/mm2以上となった. 添加元素の影響ではパラジウム添加量を増すと増大し, 逆に銀の添加量を増すと低下する傾向を示した.
    3)圧縮ちぢみ率は, 練和2日後, 7日後にそれぞれ 2.9〜4.2%, 0.9〜3.3%であり, 圧縮強さと負の相関が認められた.
    4)加圧短縮率測定荷重に耐えられたものはパラジウムの添加されていない試料であった.
    5)かたさ(Hv)は練和7日後に117〜161となり, 白金を25wt%以上添加すると急激に減少することがわかった.
    6)乳酸減量は全て1.4〜2.5mg/cm2であった.
    7)耐変色性はJIS・T 6108歯科鋳造用銀合金規格に準じて調べた結果, 全種合格した.
  • 小倉 英美
    1982 年1 巻4 号 p. 397-416
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    1報で報告した80 wt%Sn-20 wt%Cuを母合金とするガリウム成形充填材の中で, 代表的な組成についてかたさ (Hv), 圧縮強さの経時的変化を調べ, 面分析し, またX線回折とその経時的変化を調べ, 以下の結論を得た.
    1)かたさ (Hv)と圧縮強さは経時的に上昇し, その様相は各組成で異なっていた.また, この両者には正の相関が認められた.
    2)各構成金属について面分析した結果, SnとAgは大部分が粒間に拡散していた.Cuは粒内, 粒子周辺に集中していた.Pt, Pdは大部分が粒内に限局していた.Gaは粒内に侵入し, その程度はPdの添加量で異なるようであった.
    3)X線回折の結果, PtSn, Sn, CuGa2, Ag0.72Ga0.28の存在を推定できた.さらにSn, CuGA2, Ag0.72 Ga0.28の回折強度は経時的に上昇することがわかった.
    4)本実験における最適組成は48 wt%Sn-12 wt%Cu-25 wt%Pt-15 wt%Agであると判断した.
  • 久賀 嘉代子, 鈴木 暎, 守屋 圭子, 清水 友, 宮治 俊幸
    1982 年1 巻4 号 p. 417-422
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    リン酸塩系埋没材の一種であるセラミゴールドの粉末を100%湿度中に開放保存し, 粉末組成の変化を, X線回折と熱分析(DTA)を用いて調べた.
    100%湿度中での開放保存日数が長くなるにつれて, 次の様な, 結合材(NH4H2PO4, MgO)の吸湿変化による化合物の変化が認められた.NH4H2PO4は2日保存で半量以下となり, 6日保存で検出不能となる. Mg(NH4)2H2(PO4)2・4H2OとMgNH4PO4・6H2Oは1日保存で検出される.前者は6日保存までは増加し, 6〜10日保存で一定量を保つが, 10日保存以降は減少し, 27日保存で検出不能となる. 後者は, 27日保存まで増加し続けるが, 2〜4日と6〜10日保存で増加が一時的に停止する. 以上のように, NH4H2PO4がMg(NH4)2H2(PO4)2・4H2Oを経てMgNH4PO4・6H2Oへ変化する吸湿過程は, 埋没材における硬化反応過程での結合材の変化に類似する.
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