歯科材料・器械
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15 巻, 1 号
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原著
  • 宮坂 平
    1996 年15 巻1 号 p. 1-13
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンを試作し, シラン処理剤(γ-MPTS)の濃度が機械的性質に及ぼす影響を調べた結果, 処理濃度11%で圧縮強さは最大となり, 間接引張強さは8%で最大となった. 次に, シラン処理濃度と熱処理温度が機械的性質に及ぼす影響を調べ, 処理濃度が低い(1%)と熱処理温度の影響は小さくなり, 処理濃度が大きくなると110℃以上の熱処理で強度が低下することがわかった. 以上の結果をもとに, マクロフィラーの形状(無定形と球形), ミクロフィラーの配合率(10〜40%)およびフィラーの配合・処理方法の3条件を変化させてハイブリッド型フィラーの処理を行った. この結果, マクロフィラーの形状は, 球状より無定形のほうが圧縮強さは大きくなった. また, マクロフィラーとミクロフィラーは予め配合してからシラン処理したほうが, マクロフィラーとミクロフィラーを個別にシラン処理してから配合したものより圧縮強さが大きくなった. ミクロフィラーの配合率では, 30%が最も大きな圧縮強さを示し, これ以上の配合率で圧縮強さが低下した.間接引張強さは, ミクロフィラーの配合率が増加すると減少した.
  • 橋本 典也, 武田 昭二, 河出 任弘, 加山 勝敏, 中村 正明
    1996 年15 巻1 号 p. 14-19
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯冠用金属材料のタイプIII金合金, 金銀パラジウム合金およびチタンを取り上げ, 同種あるいは異種の金属を2個ずつ組み合せて, 動的抽出した. すなわち, 1個を試料瓶底面に固定し, もう一方を自由に旋回させる方法を用いて, 240 rpmの旋回条件で5日間にわたって動的抽出したのち, 細胞生存率に基づく抽出液および濾液の細胞毒性を調べるとともに, 金, 銀, パラジウム, 銅, 亜鉛およびチタン量を測定した. その結果, 2個の金属を組み合せて動的抽出した場合, 金属の組み合せによって組成元素の溶出量に然が認められたものの, 細胞生存率には差が認められなかった. 今回の実験で, 最も多い溶出量を示したのは銅であったが, 最大でも0.83 ppmとわずかであった. その他の元素については, 0.1 ppm以下であった. 次に組み合せによる溶出量への影響をみると, タイプIII金合金を自由に旋回させた場合に溶出元素量は最も多く, 逆にチタンを自由に旋回させた場合に最も少なかった.
  • 福地 紀之, 赤尾 勝, 青木 秀希
    1996 年15 巻1 号 p. 20-28
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    微結晶ハイドロキシアパタイト(HAp)は水酸化カルシウム縣濁液とリン酸水溶液の中和反応により合成し, 超音波型ホモジナイザを用いて分散した. 微結晶HApの性状は, 粉末X線回折, SEM観察, 電気伝導度測定により調べた. 微結晶HApはHAp単相からなり, 粒子の均一性と高い初期溶解性を示した. 微結晶HApの溶解性がマクロファージの形態に及ぼす影響をラット腹腔マクロファージを用いた細胞培養試験で調べた. 培養液中のCa, Mg, P濃度測定, 細胞内Ca濃度測定およびTEMと位相差型顕微鏡を用いた形態観察を行った. その結果, 微結晶HApは培養液中のCaイオン濃度を著しく減少させ, Mg, P濃度は変化しなかった. マクロファージは微結晶HApを活発に貪食し, 著しく伸展しruffle形成を示した. 貪食された微結晶HApは細胞内で溶解され, Caイオン濃度は増加した.微結晶HApの高い溶解性とマクロファージの形態変化は相関していた.
  • 掛谷 昌宏, 深瀬 康公, 石川 陽一, 齊藤 仁弘, 松崎 誠, 西山 實
    1996 年15 巻1 号 p. 29-37
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    曲げ試験の測定条件, すなわち, 支点間距離, 試験体の幅と厚さ, クロスヘッドスピードおよび試験体表面の仕上げなどの条件が曲げ強さの測定値に与える影響について検討した結果, 試験体の幅を除く上記の条件は, 測定値に影響を及ぼすことが明らかとなった. すなわち, 支点間距離が試験体の幅または厚さの約7倍より小さくなると測定値は大きくなり, そのSDは大きくなった. また, 試験体の厚さが大きいほど, クロスヘッドスピードが速いほどおよび試験体表面の仕上げが細かいほど, 測定値は大きい値を示した.
  • 中村 勇三
    1996 年15 巻1 号 p. 38-50
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    アクリル系軟性裏装材は, 優れた操作性と粘弾性的性質を有している. しかし, これらの性質はシリコーン系, フルオロ系のものに比べて, 口腔内では急速に劣化する. したがって, 著者は, 37℃蒸留水中あるいは人工唾液中におけるアクリル系軟性裏装材の耐久性を向上させることを試みた. アクリル系軟性裏装材の粘弾性的性質における経時的変化率は, エチルメタクリレートあるいはブチルメタクリレート(従来の液相成重量の10〜20%)を添加することによって, さらに, 材料を光重合型に変えることによって, 著しく小さくなった. 耐久性の評価は, 6ヵ月間37℃蒸留水中あるいは人工唾液中に浸漬された後の試料に対して, 粘弾性試験あるいは表面粗さ試験を通して行った. 試作軟性裏装材は, 光重合法を導入することによって, 耐久性がかなり向上することが確認された.
  • 妹島 利行, 齋藤 誠一郎, 糟谷 知宏, 柴崎 貞二, 池谷 正洋, 松崎 誠, 平田 修二, 齊藤 仁弘, 西山 實
    1996 年15 巻1 号 p. 51-57
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    石こう模型を消毒液に浸漬する方法は簡便であるが, その表面粗さが大きくなることが知られている. したがって, 石こう模型の表面粗さを大きくすることのない消毒液が必要である. そこで, 現在使用されている石こう模型材6製品を用いて作製した石こう模型を, グルタールアルデヒドおよび次亜塩素酸ナトリウムに硫酸カリウムを添加した溶液に浸漬し, それらの表面粗さについて検討した結果, 次の事柄が判明した. 2%グルタールアルデヒドおよび0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬した石こう模型は, 表面粗さが大きくなることが確認された. 消毒液に3%硫酸カリウムを添加した溶液に浸漬した石こう模型の表面粗さは, それを添加しない場合と比較して小さくなる傾向が認められた.
  • 平口 久子, 内田 博文, 中川 久美, 田辺 直紀, 土生 博義
    1996 年15 巻1 号 p. 58-66
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ゴム質印象材による模型の再現性に及ぼす印象の冷却収縮の影響と印象の再加温の効果を検討した. 原型は両隣在歯を配したクラウン支台歯を摸したエポキシ樹脂製模型を使用し, 模型は三次元座標測定システムにより測定した. 口腔内温度で硬化させた印象を口腔内温度で水中で再加温し, 模型の再現性に及ぼす印象の再加温の効果をみた. その結果, 以下の結論を得た. 1. ゴム質印象材による模型には, 印象の冷却収縮による寸法変化と変形が認められた. 2. 印象を再加温することにより模型の再現性が向上した. 3. 印象の再加温において, 印象を口腔内温度の水中に保存する時間は5〜30分の間で任意に選択できることが示された.
  • 入江 正郎, 中井 宏之
    1996 年15 巻1 号 p. 67-71
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    3種の充塡用グラスアイオノマー, 光硬化型(Fuji II LC, GC), その類似品(Dyract, DeTrey/Dentsply), 従来型(Fuji II GC), に対する好ましい研磨時期について, 硬化(光照射)直後に研磨した場合と1日間水中浸漬後に研磨した場合の人歯V級窩洞の全周にわたる間隙発生数から検討した. 測定は, 低速用カッターで修復物中心部を縦(歯軸)方向に切断後, 計測した. その結果, Fuji II LCとFuji IIについては24時間水中浸漬後研磨すると硬化(光照射)直後研磨と比較して有意に間隙数は減少したが(α=0.05), Dyractについては24時間水中浸漬後研磨しても光照射直後研磨と同等の間隙数しか示さなかった.
  • 原嶋 郁郎, 平澤 忠
    1996 年15 巻1 号 p. 72-77
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    デュアルキュアー型レジンセメントの光重合性およびレドックス重合性を赤外線吸収スペクトル法によって検討した. その結果, レジンセメントのレドックス重合機能は未硬化の状態では有効に働くが, 低い二重結合反応率であってもレジンがゲル化していると十分には機能せず, 不均一な光照射によってもたらされた不均一な硬化状態が37℃1日経過後にも認められた. ゲル化したレジンに対しては, 光重合のほうがレドックス重合よりもたやすく反応率を向上させた. したがって, 光照射が十分に行えないと予想される場合にはレドックス重合による硬化まで光照射をひかえたほうが, より均一な高い反応率をもってレジンセメントを硬化させることができると結論した.
  • 齊藤 晶子
    1996 年15 巻1 号 p. 78-88
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    長期耐久性および抗齲蝕性を兼ね備えた象牙質接着剤の可能性を探索するため, MMA-TBB系レジンを用いて接着を行った場合におけるフッ化物の効果を検討した. トータルエッチングが可能な10%リン酸水溶液で前処理した象牙質に対して, フッ化ナトリウムを含む2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)水溶液プライマー, あるいはフッ化物またはフッ化物含有ガラス粉末を添加したレジンを用いて長期水中浸漬試験を行った. 対照のフッ化物無添加群の接着強さは, 浸漬期間の延長に伴って低下したのに対して, フッ化物添加群においては1年間に渡って優れた安定性を示した. 比較のためフッ化物を含むグラスアイオノマーセメント(GIC)の接着についても同様に検討した. GICの接着強さは低かったものの, 6ヵ月まで有意差は認められなかった. フッ化物を用いたMMA-TBB系レジンとGICの接着は, 象牙質界面が長期的に安定しているという点で共通しており, フッ化物の効果によるものと思われた.
  • 鈴木 明子
    1996 年15 巻1 号 p. 89-97
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    象牙質の接着における重合開始系の役割を明らかにする研究の一環として, 1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツル酸(CEB)/アセチルアセトン銅(CAA)/ビニルベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド(VB14)開始系を用いたMMAレジンの象牙質への接着における諸因子の影響を検討した. 2〜3%塩化銅を添加した10%リン酸と35% 2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)プライマーの使用は, 接着強さの向上に有意に効果的であった. 至適条件下では平均の接着強さは12.8〜14.4 MPaであり, これはMMA-TBBレジンで得られる値と同等であった.
  • 横山 有紀, 安元 かずお, 田島 清司, 柿川 宏, 内山 長司, 小園 凱夫
    1996 年15 巻1 号 p. 98-103
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    水を電気分解することによって得られる電解酸性水は, 優れた殺菌効果をもつことから, その応用が高まっている.化学薬品を用いた消毒液と異なり, 使用後廃棄しても排水汚染を招く危険性のないことも電解酸性水の特長の一つである. 本研究では, 被検菌としてStaphylococcus aureusを用い, 電解酸性水をアルジネート印象の消毒に応用した場合の有効性について検討した. 電解酸性水にわずか1分間浸漬しただけで, 4×105個の菌が数個にまで減少し, 実用上十分な滅菌効果が得られた. さらに10分間浸漬するか, あるいは1分間洗浄して1分間浸漬することによって, 印象表面はまったく無菌の状態になった. このように, 電解酸性水は印象の消毒に最適のものとして期待される.
  • 熊崎 眞義, 熊崎 護
    1996 年15 巻1 号 p. 104-115
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    十分な飼育のもとに飼育されたビーグル犬3頭の上下前歯を用いてエアータービン切削とEr:YAGレーザー切削を行い, 歯髄の変化と象牙質切削面を対象として病理組織学的検索法とSEMで観察を行ったところ, 両者の歯髄に対する影響には大差はなかった. Er:YAGレーザー切削では, 切削後1週間前後で二次象牙質の生成を1例に認め, 1例に水腫の発現を認めたが, 象牙質変性は1, 2例を除いて認められなかった. SEM観察によると不規則な凹凸のみで, スミアー層は認められなかった. 病理組織で認めた濃染層は9 μm程度であった. エアータービンによる切削では, すべての窩洞切削において象牙質の熱的変性を思わせる像と, 切削条痕ならびにスミヤー層が認められ, さらにCollagen様の線維が認められた.
  • 板橋 勇人
    1996 年15 巻1 号 p. 116-131
    発行日: 1996/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, チタンの研磨面およびワイヤ放電加工面に対してグロー放電処理を行い, その表面上での骨芽細胞様細胞, 線維芽細胞, および上皮細胞のin vitroの初期の動態を検討することである. X線光電子分光分析の結果, グロー放電処理は比較的汚染のない表面をもたらし, 表面ぬれ性を著しく改善した. グロー放電処理を行った表面上では未処理の表面上よりも高いレベルの細胞初期付着を示した. SEM観察の結果, グロー放電処理を行った表面では細胞が表面によく適合していることが認められた. これらの結果より, グロー放電処理は準備されたチタン表面上で良好な細胞動態を得るために有用であることが示唆された.
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