歯科材料・器械
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13 巻, 1 号
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原著
  • 新田 義人, 山田 敏元, 森上 誠, 細田 裕康
    1994 年13 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    化学硬化型(Fuji II), 光硬化型(Fuji II LC)各一種類の修復用グラスポリアルケノエートセメントと無処理象牙質界面および三種の前処理剤D.C.(10%ポリアクリル酸), CA-agent(10%クエン酸, 20%塩化カルシウム), K-etch(37%リン酸)で処理された後セメントを填塞した象牙質界面を, 従来の分析走査電子顕微鏡にクライオシステムを導入した結果, セメント修復象牙質試料を-150〜-160℃の低温で凍らせ, 水分の蒸散を極力抑えて試料にダメージを与えないような状態でセメントと象牙質の接合状態が二次電子像により詳細に観察された.また光硬化型セメントと二種類の前処理剤で処理後修復試料表面を3N塩酸で30秒間処理した後にクライオSEM観察された.1.クライオSEMの使用でセメントと象牙質接着界面の接合状態を詳細に実像観察することが可能となった.2.CA-agent処理, K-etch処理された象牙質界面には象牙質処理層へセメントのセメントマトリックスが浸透硬化したと思われるセメントマトリックス浸透層が観察された.特にCA-agent処理では強固な浸透層が見られ, この処理層の深部までマトリックスが浸透硬化しているものと思われた.3.試料表面を3N塩酸30秒間処理後にクライオSEM観察することにより, セメント象牙質界面間における耐酸性の層を観察することができ, その層がセメントマトリックス浸透層に相当すると推察された.
  • 伊藤 充雄, 新納 亨, 森 厚二, 横山 宏太, 山岸 利夫
    1994 年13 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    キトサンは生体内で吸収される天然高分子である.このキトサンを結合材として, β型リン酸3カルシウムを基材とする骨補〓材を作製した.この材料の硬化時間, 圧縮強さ, pH値, 組織観察について種々検討した結果, 以下の結論を得た.1.硬化時間はCaO量, MgO量とZnO量が増加するにしたがって短くなった.2.CaO量3%, MgO量1%一定の硬化体のpH値はZnO量が増加すると小さくなる傾向であった.3.硬化体のpH値はCaO量とMgO量が増加するにしたがって大きくなる傾向であった.4.圧縮強さはZnO量が増加すると大きくなる傾向にあった.5.MgO量が増加すると圧縮強さは低下する傾向にあった.
  • 宮崎 光治, 高田 十志和, 遠藤 剛, 守谷 治, 稲永 昭彦
    1994 年13 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    スピロオルソエステル構造を持つメタクリレート(MASOE)とMMAからなる共重合体(poly(MASOE/MMA))を光開始ラジカル重合によって合成した.それらの共重合体は組成比(MASOE/MMA)27-75/73-25(モル%)を持ち, その分子量は9890-34100であった.そして, それらの赤外線吸収スペクトルおよび有機溶媒に対する溶解性から, 共重合体中のSOE環の開環反応は起こっていないことが確認された.さらに, イオン重合開始剤の存在下でそれらの共重合体とMMAとの粉液重合, およびその重合で得られた重合体の性質について検討した.共重合体とMMAとの粉液重合によって得られた重合体のIRスペクトルからSOE環の開環重合が起こっていることが確認された.それらのポリマーはPMMAと比べて, 同じが僅かに小さい重合収縮と, 僅かに低い硬さを示した.
  • 平口 久子, 中川 久美, 土生 博義
    1994 年13 巻1 号 p. 23-28
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    親水性付加型シリコーンラバー印象材を使用した積層二回印象法による模型の再現性に及ぼす印象材の冷却収縮の影響を, 三次元座標測定装置により検討した.円柱形原型を使用し, 印象硬化時温度, パテ材とシリンジ材の厚さの比を変えて模型を作製した.その結果, 積層二回印象法では, シリンジ材の厚さを薄くすることによって, 模型の再現性に及ぼす印象材の冷却収縮の影響を軽減させることが判明した.
  • 加藤 元, 渡辺 功, 中林 宣男
    1994 年13 巻1 号 p. 29-35
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    リン酸で脱灰された象牙質のモノマー透過性を向上させることを目的に, 65wt%のリン酸水溶液でスメアー層を脱灰除去した象牙質を水洗した後, 直ちに4-METAの5%アセトン溶液を塗布し, その後光重合型4-META/TEGDMA-CQ, NPGレジンを硬化させた上に光重合型コンポジットレジンを接着させた.その結果, リン酸でスメアー層を脱灰除去後エアーブローで乾燥させた試料より接着強さは向上し, SEM, TEM観察により樹脂含浸層の生成が確認できた.しかし脱灰層に拡散できた樹脂量は少なく, 脱灰層の底部には樹脂で包埋されていない脱灰コラーゲン層が残存し, そのために高い接着強さが得られないことがわかった.
  • 渡辺 功, 中林 宣男
    原稿種別: 本文
    1994 年13 巻1 号 p. 36-39
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    光重合型ボンディング剤の研削象牙質への接着に与えるPhenyl-Pを含むHEMA水溶液の影響を検討した.1分間処理ではPhenyl-Pの濃度は20%以上必要であるが10%でも5分間処理すれば効果がある.しかし5%では10分間処理しても効果はない.またHEMAの濃度は20-40%ではその有効性に差はないが.0-10%では有意に低下する.20% Phenyl-Pを含む30% HEMA水溶液で処理した象牙質へ接着させる場合, Phenyl-Pは光重合型ボンディング剤中には必ずしも必要ない.Phenyl-Pは脱灰およびモノマーの拡散促進に有効性が高い.
  • 砂治 正文
    1994 年13 巻1 号 p. 40-50
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    シクロホスファゼン系モノマーを用いた可視光線重合型レジンの重合硬化物の機械的性質および重合率を改善することを目的とし, 重合性基としてメタクリロキシフェニルイソプロピリデンフェノキシ基(BPhAMA), メタクリロキシエトキシ基(EMA)およびアクリロキシエトキシ基(EA)を数種の組み合わせでシクロホスファゼン骨格(P4N4)に置換導入して, 2官能性のモノマー5種を合成し, モノマーの性質, 光バルク重合硬化物の物性および重合率を検討した.その結果, 機械的性質とくに脆性の改善は, 重合性基としてBPhAMAとEMAとをそれぞれ1個ずつ置換したモノマーで顕著であった.また, このモノマーを光重合した場合, 重合率は光照射開始7日以降では, 5種のモノマーのうちで最高を示すものと推定された.
  • 山口 メグム
    1994 年13 巻1 号 p. 51-60
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    著者は, 寒天印象材と模型用石こうとの良好な組み合わせを知るため, 現在臨床で使用されている寒天印象材5種と模型用石こう10種を実験材料とし, それぞれを組み合わせて得た模型の細線再現性および模型平滑面の表面粗さを測定し, 検討した.その結果, 以下の結論を得た.模型用石こうとしては, 硬質石こうの方が超硬質石こうよりも寒天印象材との組み合わせにおいて良好な成績を示した.寒天印象材と模型用石こうとの良好な組み合わせを知るためには, ISOに準拠して作製された金型を用いて印象採得し, それによって作製した石こう模型について, 細線再現性および表面粗さを測定し, その両者から評価する方法が必要であることが示唆された.
  • 荘村 泰治, 高橋 純造
    1994 年13 巻1 号 p. 61-66
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    前報で作成したCADデータをもとに, 切削法でCAMによるTiクラウンの製作を試みた.まず, ボールエンドミルのための工具オフセットと工具干渉を考慮した切削プログラムを作成した.そして, 直方体のTiのブロックを切削装置の精密バイスに取付け, まず歯冠部を切削後, 反転し支台歯部およびアンダーカットの連結部を切削した.反転後の工具位置合わせについてはパラメータを入力すれば正確に調整できるようにした.また, コンタクト部は切削が終了するまで支持部として削り残すようにした.完成したTiクラウンのもとの石こう模型に適合させたところ, 現状ではまだ適合性は完全ではないが, 若干のバリの除去によりかなり改善された.このように, これまでの一連の研究でCAD/CAM法によりTiクラウンを製作することができた.
  • 蟹江 隆人, 中村 勇三, 有川 裕之, 藤井 孝一, 井上 勝一郎
    1994 年13 巻1 号 p. 67-72
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    この研究では, 機能印象材の硬化過程における相対応力とずりによる緩和弾性率の変化を調べ, Nuttingの式を用いて粘弾性挙動の検討を行った.応力緩和は, 6種類のアクリル系機能印象材に対して, 試作したずり応力緩和測定装置を用いて, 16, 23, 30および37℃で測定した.その結果, HS(HI-SOFT)とST(Softone)は相対応力の低下率が大きく, 応力緩和を起こしやすい材料であった.FI(FITT), LY(Lynal), VG(Visco-gel)は硬化後の緩和弾性率が高く, 他の材料に比べて応力の緩和を起こしにくい.Nuttingの式を用いて決定した37℃の指数比(α/β値)は, FIとLYに対しては0.1と0.2となり, またHSとSTに対しては0.5となった.このことは前者は弾性要素が強く, 後者は粘性要素が強いことを示している.その他の材料は0.3と0.4の中間値となった.
  • 西山 典宏, 鈴木 一臣, 山本 桂子, 堀江 港三, 中井 宏之, 根本 君也
    1994 年13 巻1 号 p. 73-77
    発行日: 1994/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    分子内にメタクリロイル基を有し, メチレン鎖長の異なるアミノ酸誘導体, N-メタクリロイル-ω-アミノ酸(NMωA)を合成し, これをプライマーとして象牙質コラーゲンに作用させた場合の歯質接着性を調べ, 分子内のメチレン鎖長の長さ, ならびにN-メタクリロイル-α-アミノ酸(NMαA)プライマー溶液中の水の割合がコンポジットレジンの接着強さにおよぼす影響について検討した.その結果, NMωA分子内のメチレン鎖の長さによって, 象牙質コラーゲンへのコンポジットレジンの接着強さは異なり, メチレン鎖長が1, 3, 4および5 NMωAのアミノ酸誘導体は象牙質にある程度の接着性を示すが, メチレン鎖長が2および7のアミノ酸誘導体, NMωAはほとんど接着性を示さなかった.また, NMαA/水-エタノール溶液中の水の割合によって接着強さは異なり, 水の増加に伴って象牙質面に対するレジンの接着強さは向上し, それとともに, 象牙質とコンポジットレジン接着界面に形成される樹脂含浸層の厚みも増大することがわかった.
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