歯科材料・器械
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13 巻, 4 号
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原著
  • 市丸 俊夫, 斎藤 設雄, 昆 隆一
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 331-339
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    著者らはアルジネート印象材に対する消毒・固定兼用液を調製した.その組成は0.5%NaClO-0.5%CaCl2-1.0%Na2SO4, 2.0%GA-0.5%CaCl2-1.0%Na2SO4, 1.0%Ca(ClO)2-1.0%Na2SO4の3種である. アルジネート印象材4製品について調べたところ, これら溶液はいずれも0.5%NaClOや2.0%GA単独液に比べ浸漬中の印象の重量変化が小さく, また, せっこう模型面の粗さ値も低値であった. CaCl2は印象面をゲル化することによって印象の吸液量を抑制し, 模型面あれをも改善した. Na2SO4はCaCl2のゲル化作用を緩慢にし, 印象の過度な離液を抑制した. 次亜塩素酸剤あるいはGAと適量の両塩から構成された消毒・固定兼用液は多くの製品に対して, 印象の重量変化を安定化し, 模型の面あれを改善するのに有用と考えられる.
  • 齊藤 仁弘, 山中 信幸, 金子 和幸, 堀江 康夫, 林 純子, 森 隆宏, 西山 實
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 340-345
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    現在, 歯科用金属として臨床で用いられている20K金合金(CG), 12%金銀パラジウム合金(CW), コバルトクロム合金(ST, SC), ニッケルクロム合金(DN)およびチタン(KS)の熱伝導性をクセノン・フラッシュ法によって測定し, 合着用セメントおよび床用メタクリレートレジンのそれらと比較検討した.その結果, 歯科用金属はいずれも合着用セメントおよびメタクリレートレジンよりも熱伝導率が大きく, その熱伝導率は, CG>CW>KS>SC>ST>DNの順であった.また, チタンは, 熱伝導率がコバルトクロムおよびニッケルクロム合金と比較して大きく, かつ密度が小さかった.
  • 川口 稔, 福島 忠男, 宮崎 光治
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    試作BisGMA系およびUEDMA系光重合型コンポジットレジンの硬化深さに影響をおよぼす因子として, 照射光強度(500, 1, 000, 1, 500W・m-2), 光照射時間(20, 40, 60秒)およびフィラーの種類(マイクロフィラー, 不定形石英, 不定形シリカガラス)について検討した.コンポジットレジンの硬化深さは照射光強度に大きく影響をうけ, 照射光強度が増大すると硬化深さも増大した.光照射時間もコンポジットレジンの硬化深さに影響をおよぼし, 照射時間の延長とともに, 硬化深さも増大した.また本研究の結果から, レジンマトリックスとフィラーの屈折率の差がコンポジットレジン内部での光強度の減衰に重要な役割をはたしていることが示唆された.
  • 伊藤 充雄, 新納 亨, 森 厚二, 横山 宏太, 中山 優子, 山岸 利夫
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    キトサンは甲殻類から抽出されている.このキトサンは有機酸によって溶解出来るものである.キトサンフィルムはキトサンゾルから作ることが出来る.キトサンゾルを5%のポリリン酸ナトリウム水溶液で中和し, ゾルをゲル化してフィルムを作る.このフィルムはゴムのような弾性体である.キトサンフィルムには, 生体内に使用する前に患部の大きさにあわせてナイフやハサミで切断するのに強さが必要である.しかし, 生体内でキトサンフィルムは吸収され, 骨と置換するため強さの大きなフィルムは必要ではない.本研究は, キトサンフィルムに添加するハイドロキシアパタイトの量とpH値, 粘性, 収縮量, 硬さ, 引張強さと伸びの関係について測定を行った.結果は次のようであった.1.ハイドロキシアパタイトが多くなるとpH値は高くなった.2.ハイドロキシアパタイトが多くなると粘性は高くなった.3.ハイドロキシアパタイトが多くなると収縮量は小さくなった.4.ハイドロキシアパタイトとキトサンゾルの比が4/11のキトサンフィルムの硬さが最も大きかった.5.ハイドロキシアパタイトとキトサンゾルの比が4/11のキトサンフィルムの引張強さが最も大きかった.6.ハイドロキシアパタイトが多くなると伸びは小さくなった.
  • 吉成 正雄, 宮山 直也, 谷田部 賢一
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 358-366
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    矯正用Ti-Ni合金ワイヤーの耐食性を改善すべくスパッタ法によるアモルファス・コーティングを施し, 電気化学的耐食性, 曲げ変形挙動を調査することにより本法の有用性を検討した.現在, 矯正用に超弾性型Ti-Ni合金が主に使用されている.しかしこの系の合金は平坦な表面状態では優れた耐食性を示すが, 矯正線のようにエッジを有する形態にすると極端に耐食性が低下する.一方アモルファス合金は原子配列に規則性がなく均一であり結晶粒界も存在しないので, 極めて優れた耐食性を発揮するといわれている.本報告はアモルファス金属を創製するのに最も汎用されているスパッタ法を用いて, Ti-Ni矯正ワイヤーにTa系合金のアモルファス・コーティングを施し, 主に電気化学的手法による耐食性と3点曲げによる超弾性特性を検討した.その結果, コーティングを施すことにより, 超弾性特性は若干変化したが, 耐食性は大きく改善され, 本法の有用性が確認された.
  • 門磨 義則
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 367-374
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    チオバルビツル酸モノマーで表面処理した歯科用合金に対するレジンの接着の耐水性を評価するために, 歯科用合金に吸着したチオバルビツル酸モノマーの耐水安定性を検討した.チオバルビツル酸モノマーである5-アリル-2-チオバルビツル酸および5-(4-ビニルベンジル)-2-チオバルビツル酸(5VS)をMMAあるいはエタノールに溶解させて4種類の表面処理液を調製した.金属の表面に表面処理液を塗布することによりチオバルビツル酸を吸着させた.金属表面に対する水の接触角や4と60℃の水中での2, 000回の熱サイクル後のレジンの被着体金属に対する引張接着強さを測定した.これらの値を温水中に浸漬する処理の前と後に測定し, 比較することによりチオバルビツル酸で処理した金属に対するレジンの接着耐水性を評価した.被着体表面に対する吸着が弱い場合には, 温水中に浸漬した後に接着させたレジンの引張接着強さは有意に低下した.しかしながら, 表面処理液として5VSのエタノール溶液を用いた場合には貴金属合金に対して温水処理後も比較的に高い接着強さが得られた.これらのことから, この5VSが吸着した貴金属とレジンの接着は長期的に耐水性があることが示唆された.
  • 藤島 昭宏, 宮崎 隆, 青山 眞理子, 久根下 斉
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 375-380
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    6種類のコンポジットレジン材料を用いて, 光照射だけの試験片(未処理試験片)と光照射に引き続き加熱処理を行った試験片(加熱処理試験片)を作製し, 23℃大気中1日, その後37℃蒸留中1ヵ月, 4〜60℃のサーマルサイクル1ヵ月(約104回)の保管を行った.片側切り欠き入り三点曲げ試験により破壊靱性値(KIC)を測定した. 未処理試験片のKICは, ほとんどの材料で水中浸漬とサーマルサイクルの両方の保管条件により増大し, 保管中に後重合が進んだためと考えられた. しかし, 材料によってはサーマルサイクル後のKICが水中浸漬後のKICよりも有意に低下しているものが認められ, サーマルサイクルが材料の吸水による劣化を加速したと考えられた. 一方, 加熱処理試験片ではサーマルサイクル後のKICが水中浸漬後のKICよりも有意に高いものが認められ, 加熱処理により材料中に生じた内部応力が, サーマルサイクルによっても解放しにくかったものと考えられた.
  • 平 雅之, 若狭 邦男, 山木 昌雄, 大元 一弘, 佐藤 尚毅, 新谷 英章
    1994 年 13 巻 4 号 p. 381-387
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    歯科医は治療を行う齲蝕歯の切削にエアータービンハンドピースを用いている.本研究では, エアータービンハンドピースのトルク性能と仕事能率を評価する目的で, 術者が2種類のエアーベアリング式ハンドピースと2種類のボールベアリング式ハンドピースによって駆動された切り刃の無いバーを硬貨セラミックスに対して押し付け, バーの回転数と負荷圧を同時計測した.実験結果の解析より, ボールベアリング式ハンドピースはエアーベアリング式ハンドピースを上回るトルク性能を有することが確認された.すべてのハンドピースにおいて, 負荷圧と仕事能率の間には上に凸の放物線状の関係が認められた.ミニチュアタイプとスタンダードタイプのエアーベアリング式ハンドピース並びにスタンダードタイプのボールベアリング式ハンドピースを効果的に使用するためには, 垂直方向の負荷圧は約100gf以下に設定すべきと考えられた.ハイトルクタイプのボールベアリング式ハンドピースを効果的に使用するためには, 垂直方向の負荷圧は約400gf以下に設定すべきと考えられた.
  • 高田 恒彦, 山田 敏元, 佐藤 暢昭, 片海 正明, 高津 寿夫
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 388-396
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    細田らにより提案された分類に従い, 4種の前歯用レジン, 2種の臼歯用レジン, 4種の前臼歯用レジンおよび1種の試作レジンの計11種のコンポジットレジンが, エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)によるフィラー組成および粒径の分析により3種のカテゴリーに分類され, SEMによる観察が行われた.Helio ProgressとMultifil VSはMFR型レジンに分類された.PALFIQUE ESTELITEはSFRレジンに分類された.他の8種のレジンはセミハイブリッド型に分類された.更に本研究をもとに若干の再検討を加えた.即ち球状サブミクロンフィラーから成るSFRレジンが新たにカテゴリーに分類された.
  • 福島 忠男, 井上 勇介, 川口 稔, 宮崎 光治
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 1994/07/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの10-3処理象牙質への接着性を改善するために, N-(Hydroxyethyl)methacrylamide(EMA)とN-(2, 3-Dihydroxypropyl)methacrylamide(DMA)を含むデンチンプライマーを調製した.10wt%と60wt%, EMAおよび10wt%DMA含有デンチンプライマー以外では, いずれのデンチンプライマーもコンポジットレジンの接着力を有意に向上させた.40wt%EMA含有デンチンプライマーの方が35wt%HEMA含有デンチンプライマーより有意に高い接着力を示し, また50wt%DMA含有デンチンプライマーも45wt%GM含有デンチンプライマーより有意に高い接着力を示した.SEM観察の結果, いずれの試料にも接着界面に, 厚さ1μmの耐酸性象牙質層が観察でき, 接着破壊は耐酸性象牙質層, レジンおよび象牙質の凝集破壊であった.
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