硬質レジンジャケット冠と合着用セメントとの接着強度の向上を図ることを目的として, 光重合型オペークレジン硬化体の表面処理がセメントとの接着強さに及ぼす影響を検討した.使用した光重合型オペークレジンは, デンタカラー(クルツァー), サーモレジンLC(GC), ニューメタカラーL(サンメディカル), セシード(クラレ)の計4種類である.合着用セメントは, エリートセメント100(GC, 以下EC), フジアイオノマータイプI(GC, 以下FI), スーパーボンドC&B(サンメディカル, 以下SB), パナビアEX(クラレ, 以下PE)の4種類を採用した.円盤状のレジン硬化体試料は硬質レジンジャケット冠を想定し, 光重合型オペークレジンと光重合型前装レジン(デンタカラーDA10)とからできており, ともにデンタカラーXSにて光照射し重合した.その後, 硬化したオペークレジンの表面処理を施し, オペークレジン面どうしを合着用セメントで突き合わせたものと, 金銀パラジウム合金(モリタ)とセメントで合着した2種類の試験片を作製し, 剪断接着試験に供した.オペークレジン硬化体どうしをセメントで合着した場合は数種類の表面処理が行なわれた結果, 硬化体表面をアルコールで拭き取り, クリアフィルポーセレンボンド(クラレ)を塗布する方法(以下Al+PB)が, 無処理のものと比較してEC以外の3種類のセメントいずれを用いても統計的に高い接着強度を示した.光重合型オペークレジン硬化体をAl+PBで表面処理しECを用いた場合は, 0MPa, FIを用いた場合は20MPa前後の接着強度を示した.これに対し, SBやPEの接着性レジンセメントを用いた場合は, いずれも30MPa以上の高い接着強度を示し, 前装レジン内部からもぎ取れるという被着体破壊が生じた.また, オペークレジン硬化体をAl+PBで表面処理し金銀パラジウム合金とセメントで合着した場合も, 無処理のものに比して高い接着強度を示し, 接着耐久性も優れていた.以上のことから, オペークレジン硬化体の表面をアルコールで拭き取り, シランカップリング剤を含んだボンディング剤を塗布することによって, 合着用セメントとの接着強度が改善され, この処理方法が硬質レジンジャケット冠をセメント合着する際に効果的であると考えられた.
抄録全体を表示