歯科材料・器械
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13 巻, 6 号
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原著
  • 平口 久子, 内田 博文, 中川 久美, 田辺 直紀, 土生 博義
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 521-528
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    上顎無菌顎顎堤断面模型の再現性に及ぼす印象の冷却収縮の影響と再加温の効果について検討した.親水性ビニルシリコーンゴム印象材を使用し, 単層一回印象法および積層二回印象法により, 室温および口腔内温度で印象を硬化させて模型を作製し, 三次元座標測定システムにより測定した.さらに, 口腔内温度で硬化させた印象について, 4通りの方法で再加温を行い, 模型の再現性に及ぼす再加温の効果を検討した.その結果, 以下の結論を得た.1.単層一回印象法, 積層二回印象法のいずれにおいても, 印象の再加温により模型の再現性が向上した.2.積層二回印象法では, 模型の再現性に及ぼす印象の再加温の効果は再加温の方法にかかわらず同じであったが, 単層一回印象法では, 再加温の方法により異なった.
  • 吉田 圭一, 舟木 和紀, 棚川 美佳, 松村 英雄, 田中 卓男, 熱田 充
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 529-536
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    ビスタイトレジンセメントとインパーバデュアル, パナビア21, スーパーボンドC&Bの4種類の市販接着性レジンセメントの機械的性質と歯質および金銀パラジウム合金, タイプIV金合金に対する接着強さを比較検討した.さらに, 金属接着性プライマーのメタルプライマーの効果についても併せて検討した.スーパーポンド以外の3種類のレジンセメントは水中浸漬1日後にほぼ同じ圧縮強さと曲げ強さを示した.しかしながら, 水中浸漬6ヵ月後に, ビスタイトの曲げ強さは1日後のほぼ1/3に低下した.スーパーボンドの曲げ強さと曲げ弾性率は他の3種のレジンセメントのほぼ1/2の値であった.エナメル質にはいずれのセメントも13MPa前後の値を示し, ほぼ同じ値であった.一方, 象牙質にはスーパーボンドが約14MPa, パナビア21が約11MPaと続き, ビスタイトとインパーバは5MPa前後の値であった.金銀パラジウム合金およびタイプIV金合金には, 4種類いずれのレジンセメントも4℃と60℃に水中に交互に1分間浸漬する水中熱サイクル50, 000回後も約30〜40MPaの良好な接着強さを示した.また, 金属接着性プライマーのメタルプライマーをサンドブラスト処理した金銀パラジウム合金およびタイプIV金合金に塗布するだけで, 無処理に比べてレジンセメントの接着強さが著明に向上し, その有効性が認められた.
  • 池田 泰, 今井 庸二
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 537-540
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    金を含む貴金属に対する接着の前処理剤としてアルカンジチオールHS-(CH2)n-SH(n=2, 3, 4, 6, 8, 10)およびチオリン酸系メタクリレートMEPSを用いて, PMMA/MMA-TBBレジンおよび試作したフッ素系ポリマー/MMA-TBBレジンにより, アクリル棒と貴金属の接着を行った.水中における熱サイクル試験を行い, 接着耐久性を検討した.いずれのジチオールもMEPSとほぼ同様の効果を示した.PMMA/MMA-TBBレジンよりも, 試作したフッ素系レジンの方が優れた接着耐久性を示した.
  • 鈴木 禎, 今井 庸二
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 541-544
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(2-6F)とメチルメタクリレート(MMA)よりなる軟質裏装材に3種の架橋剤を添加することにより改良を試み, 吸水率, 吸油率, 硬さ, 水に対する接触角, MMAモノマー溶出率, 粘弾性的性質を測定した.架橋剤添加により, 吸水率・硬さ・粘性は低値を示すようになったが, 水に対する接触角とMMAモノマー溶出率は, ほぼ同程度であった.吸油率は経時的に減少する傾向を示したままで, この点については今後さらに研究, 改良が必要であると考えられる.
  • 藤島 昭宏, 宮崎 隆, 久根下 斉
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 545-551
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    サンドブラスト, ワイヤ放電加工(Wire EDM), 陽極酸化処理を施したチタン(Ti)試料を実験に用いて, 硬質レジンとの接着強さを検討した.デンタカラーとニューメタカラーの2種の硬質レジン前装冠用コンポジットレジンを, それぞれが有するシリコータMDシステムと4-META系接着システムを用いてTi試料と接着させた.試験片は23℃大気中24時間保管, 37℃水中1ヵ月保管および37, 4, 37, 60℃のサーマルサイクルを104回付与した後, 剪断接着試験を行った.デンタカラー, ニューメタカラーとTi試料の接着強さは, 24時間保管のすべての条件において, コントロールとして用いたNi-Cr合金とほぼ同等の接着強さを示した.デンタカラーのTiとNi-Cr試料に対する接着強さは, 水中1ヵ月, サーマルサイクル付与後においても低下しなかった.しかし, ニューメタカラーの接着強さは, サーマルサイクル後に顕著に低下した.ワイヤ放電加工処理された試料は, デンタカラー, ニューメタカラーともに十分な接着強さを示した.しかし, 陽極酸化処理されたTi試料に対する接着は, 特に今回の実験におけるニューメタカラーで, 十分な強さを示さなかった.従って, コンポジットレジンに対する良好な接着を達成するためには, Tiの表面処理は重要であると考えられた.
  • 藤井 孝一, 三浦 啓一, 有川 裕之, 桑畑 弘之, 関 英男, 蟹江 隆人, 井上 勝一郎
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 552-557
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    捩れ自由減衰型粘弾性測定装置を用いて, 23〜200℃の間で市販歯冠用レジンの動的粘弾性を測定した.37, および80℃での各材料の動的ずり弾性率(G')は, それぞれ1.27〜3.85, および0.72〜3.24GPaの範囲であり, 温度上昇に伴いすべての材料でG'の低下が認められた.また, 繰り返し測定により2回目でのG'の増加(1.07〜3.13倍)が認められ, これは材料内の未反応物量が加熱により減少したことによるものと思われた.材料の24時間後のヌープ硬さとG'(37℃)の間には非常に高い相関性が(r=0.89)が得られたが, 無機質フィラー含有量とG'の間の相関性(r=0.41)は低かった.
  • 入江 正郎, 中井 宏之
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 558-562
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    裏層用光照射型グラスアイオノマーについて, 粉液比が人歯象牙質窩洞辺縁部と光照射直後の充填物の間に生じる間隙に及ぼす影響を検討した.同様にテフロン製窩洞辺縁部に生じる間隙と人歯象牙質に対する接着強さも検討した.窩洞辺縁部と充填物の間に発生する間隙は, 象牙質窩洞の場合には粉末量を増しても減少しない(p>0.10)が, テフロン製窩洞に生じた間隙には減少した(p<0.001).また, 人歯象牙質に対するせん断接着強さは粉末量の増加に伴い増加した.象牙質窩洞辺縁部との間隙は, テフロン窩洞辺縁との間隙や接着強さには影響されなかった.
  • 原嶋 郁郎, 今井 弘一, 中村 正明, 平澤 忠
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 563-567
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    Bis-GMAはコンポジットレジンに使用される重要なジメタクリレートの1種であるが, コンポジットレジンに含まれるBis-GMAにはしばしば不純物が認められる.そこでL-929およびHEp-2細胞を用いた細胞回復度試験によって純度の異なる2種のBis-GMAの細胞毒性を評価し, 不純物の細胞毒性に与える影響を検討した.使用したBis-GMAの純度は96wt%と64wt%であったが, 水溶性不純物の影響で64%Bis-GMAのほうが96%Bis-GMAより高い細胞毒性を示した.しかし, 現用コンポジットレジンのBis-GMAは64%Bis-GMAより不純物が少ないと考えられた.また, TEGDMAは比較的強い細胞毒性を示したが, このモノマーはコンポジットレジンマトリックスの重合率を高め, 残留モノマーを減少させる.
  • 野浪 亨, 堤 定美, 福間 正泰, 浦部 哲夫
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 568-574
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    ディオプサイド結晶化ガラスについて検討した.ディオプサイド組成(CaO・MgO・2SiO2)のガラスは1, 500℃で溶融したが, 軟化温度は融点よりもはるかに低く, 800〜900℃で粘性流動を起こすことを見い出した.830℃で0.1MPa以下の圧力で80%以上圧縮変形させることができた.1MPa以下の圧力でガラスインゴットを歯冠形状に成型することができた.850℃・25分で結晶化させたところ, 曲げ強さ400MPa, 破壊靭性値2.7MPa・m1/2であった.結晶化ガラスは変形もなく天然歯に似た色調と透光性を示した.プレス成型法は巣が発生しない, 溶融温度よりも非常に低い温度で処理できるなどキャスタブル法に比べて有利と思われる.
  • 鶴田 浩範
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 575-585
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    薄いガラスビームの片面上に, 26種類の試作コンポジットレジンをそれぞれ接着させた際の重合収縮応力を算出した.さらに, これらの材料の重合収縮量を, 小さなガラスセルとひずみ変換器(UL-50)を使用して調べた.これらの結果から, 硬化過程の収縮応力に及ぼすフィラー形状, フィラー粒径, フィラー含有率の影響を検討した.試料中のフィラー含有率が増加すると, ガラスビームのたわみ(収縮応力)を増大させ, 硬化中の線収縮量を減少させた.さらに, この収縮応力はより大きな平均粒径のフィラーを使用することによっても減少した.同一フィラー含有率の試料では, 収縮応力に及ぼすフィラー形状の影響は認められなかった.
  • 中沖 靖子
    原稿種別: 本文
    1994 年 13 巻 6 号 p. 586-603
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピルメタクリレート(HNPM)をMMAに溶かしたMMA-TBBレジン(HNPM/MMA-TBBレジン)を10-3処理した象牙質へ接着させ, 象牙質接着におけるHNPMの機能を評価した.HNPMは, 接着促進モノマーとして優れた機能を持つ4-METAやPhenyl-Pと同じく疎水基と親水基を併せ持つメタクリレートであるが, ハイドロキシアパタイトとの反応性は無い.HNPM/MMA-TBBレジンの接着強さは, HNPMが3%の時に最高値13MPaを示し, HNPMがモノマーの脱灰象牙質内への拡散を促進, 象牙質表層に樹脂含浸象牙質を形成させることがSEMやTEM観察により初めて確認された.3%HNPM/MMA-TBBレジンで作られた樹脂含浸層は次亜塩素酸ナトリウム溶液により最も分解されにくい.DSCを利用して各種HNPM/MMA-TBBレジンの重合速度を計測したところ, HNPMの濃度が3%以上になるとモノマーの重合速度が速くなり, それに応じてモノマーの拡散が不十分となって, 次亜塩素酸ナトリウム溶液に分解されにくい樹脂含浸層の生成は難しくなることがわかった.3%HNPM/MMA-TBBレジンにより生成した樹脂含浸層の底部には, レジンでカプセル化されたハイドロキシアパタイトの結晶が存在することがTEMで観察された.本研究により, 象牙質への接着とモノマーのハイドロキシアパタイトとの反応性の間には関係がないことを明らかにすることができた.
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