歯科材料・器械
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21 巻, 1 号
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原著
  • 鬼頭 健二
    2002 年21 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は, フッ素徐放性で, 接着性および物性の優れたレジンセメントを開発することを目的として, フッ素徐放性のモノマーを配合した接着性レジンセメントの液組成について検討した.すなわち, セメント液部にフッ素徐放性のフルオロホスファゼンモノマー(合成モノマー, P3N3(F)1(EMA)5)を市販モノマーに10.0〜40.0wt%配合し, 5種のセメント液組成物を作製した.硬化物からの経時的なフッ素徐放量, コバルトクロム合金, 金銀パラジウム合金および18カラット金合金との接着強さ, 硬化物の圧縮強さ, 吸水量および溶解量を測定した.フッ素徐放量およびその積算値は, セメント液成分として配合する合成モノマーの配合量が増加するにつれていずれも増加した.合金3種との接着強さは, 合成モノマーの配合量が増加するにつれて減少した.圧縮強さは, 合成モノマーを配合すると増加する傾向を示した.吸水量および溶解量は, 合成モノマーの配合量が増加するにつれていずれも大きく減少した.
  • 横山 盛次, 大江 好美, 新谷 明喜
    2002 年21 巻1 号 p. 10-20
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    高い強度を要求される鋳造用タイプ4金合金において, 溶体化処理温度の違いが機械的性質に及ぼす影響については未だ不明な点が多い.そのため臨床応用された状態での鋳造用タイプ4金合金の諸性質を明確に論じることができない.本研究では市販鋳造用タイプ4金合金(イシフクキャスティングゴールドType4)の溶体化処理温度を600, 650, 700, 750, 800, 850, 900℃で10分間加熱したあと一定の条件で硬化熱処理を行い, ビッカース硬さ, 引張強さ, 伸び, 耐力, 結晶構造を調べ, 溶体化処理温度の違いが機械的性質に及ぼす影響を検討した.その結果, 軟化および硬化熱処理のビッカース硬さ, 引張強さ, 伸び, 0.2%オフセット耐力は溶体化処理温度が高くなると減少した.溶体化処理温度900℃引張強さの破断面SEM像では空孔が認められ, 溶体化処理温度700℃では欠陥のない組成を呈し, X線回折線からα単相であることが確認された.
  • 中島 義雄
    2002 年21 巻1 号 p. 21-31
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    鋳造用リングライナーの緩衝能を表すパラメータとして, 埋没材の吸水膨張に対する乾ライナーの緩衝効果について検討した.ライナーは, セラミックファイバー系15種(A群 : ロックウール系, B群 : セラミックファイバー低温系, C群 : セラミックファイバー標準系, D群 : セラミックファイバー低温〜標準系, E群 : カオリン系)を用いた.硬化膨張測定器移動枠に乾ライナーを装着して埋没材の吸水膨張率を120分間測定し, ライナー装着なしでの吸水膨張率との差, すなわち, 緩衝量から緩衝効果を検討した.その結果, 埋没材の吸水膨張に対するライナーの緩衝量は, 練和開始20分後まで増加して極大を示したのち急激に減少し, 25〜40分後で極小を示したのちわずかに増減する傾向を共通して示した.注水した練和開始15分以降120分まで緩衝量が正の値を示したのはD群の3製品であった.緩衝量の極大値は, D群が最も大きくなる傾向が認められた.緩衝量の極大値から判定した埋没材の吸水膨張に対する乾ライナーの緩衝効果は, D群の3製品で有効と判定された.
  • 廣嶋 ふみ子
    2002 年21 巻1 号 p. 32-39
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    直流電源を有する試作プラズマ発生装置を用いて, 低温プラズマ処理がチタン表面へ及ぼす影響, また被着面に対するレジンセメントの接着性, 金属接着性プライマーの吸着状態に及ぼす影響について検討した.JIS2種チタン板に対する低温プラズマ処理は, チタン板の表面形態を変化させずに, レジンセメントに対する顕著な接着性の向上を示した.さらに, 歯科臨床を想定した唾液で汚染された被着面に対して, 低温プラズマ処理は研磨面だけでなく粗造なサンドブラスト面に付着した唾液も除去し, 高い接着強さを再現させることが可能であった.FT-IRによるIRAスペクトルの結果からも, 低温プラズマ処理は金属表層の汚染物質を除去し, 金属接着性プライマーに対する反応性を高めることが示唆された.チタン表面の低温プラズマ処理は, 歯科接着技法における接着前処理として非常に有効な表面処理方法であることが判明した.
  • 小島 之夫, 福井 壽男
    2002 年21 巻1 号 p. 40-48
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯科矯正時の歯の移動を計算する方法を示した.中切歯に一定荷重が加わる場合を計算し, 傾斜移動と歯体移動が計算できることを示した.次に, スプリングによって第2大臼歯を整直させる場合を計算した.大臼歯は, 挺出力とモーメントを受け, 遠心方向へ傾斜移動する.この移動状態は, 初期動揺の移動状態とほぼ同じであった.下顎の犬歯, 第1,第2小臼歯をワイヤで連結した固定源の歯では, 歯が移動することによって, それを妨げるような荷重がワイヤから加わる.荷重の再配分が矯正中に生じる.このような移動状態は, 初期動揺状態から予測することは難しい.
  • 荒 昌晴
    2002 年21 巻1 号 p. 49-61
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)およびそれに炭酸カルシウム(CC), リン酸カルシウム(CP)を複合化した材料に, クロルヘキシジン酢酸塩, テトラサイクリン, テトラサイクリン塩酸塩, ミノサイクリン塩酸塩, メトロニダゾールを含有させたシートを作製した.それらを37℃でリン酸塩緩衝液(pH7.4)に浸漬して, シートからの抗菌剤の溶出, 分子量, 厚みの経時変化を測定し, 抗菌剤および基材が抗菌剤の溶出およびPLGAの分解挙動に及ぼす影響を検討した.抗菌剤の溶出は, 基材および抗菌剤の種類によってかなり影響を受け, 溶出挙動, 1日での溶出率, 溶出速度が上がる時期, 大部分の溶出が完了する時期に違いを生じた.PLGAの分解には, 抗菌剤の影響は小さく, 基材の影響が大きく, PLGA単独基材に比べて, 複合化基材の分解は遅かった.
  • 大山 篤
    2002 年21 巻1 号 p. 62-71
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    過酸化ベンゾイル(BPO)をPMMA粉末内に含有あるいは含有しない20種類のPMMAを用い, PMMA粉末のBPO含有量, 分子量, 形状およびPMMAへのBPOの添加が, BPO/N, N-ジメチル-p-トルイジンを開始剤とするPMMA/MMAレジンの重合に及ぼす影響を次のような観点から検討した.すなわち, 重合時の特性(ピーク時間, ピーク温度)および重合物の分子量, 残留モノマー, 残留BPOを, それぞれ熱電対法およびサイズ排除クロマトグラフ法, 高速液体クロマトグラフ法により測定し, 検討した.その結果, 次のことが分った : (1)BPOを粉末内に含有するPMMAでは, PMMA/MMAレジンの重合への影響は粉末の形状, 分子量で大きく, BPO含有量では相対的に小さかった.(2)BPOをPMMA粉末に添加した場合には, 重合時の特性および重合物の性質がBPO含有粉末の場合とは異なった.
  • 小澤 篤
    2002 年21 巻1 号 p. 72-81
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    3種類の市販リン酸塩系埋没材を用いて鋳造床製作への急速加熱の適用を試みた.その結果, 市販の急速加熱型埋没材だけでなく従来型でも適用が可能なことが判明したが, 一方, 急速加熱時に鋳型内温度が110℃付近で破裂する従来型埋没材もあることが確認された.鋳型の破裂原因として圧縮強さは関連性が薄く, 走査電子顕微鏡による観察で鋳型内が多孔でありガス排出がスムーズである場合に成功することが示唆された.また, 爆発した埋没材は他の埋没材に比べて結合材の配合量が少ないことが認められたので, その粉末中にNH4H2PO4を増量して鋳型を作製したところ, 急速加熱に対応可能になった.以上のことから, リングレス鋳型の急速加熱では鋳型内部の構造が大きな影響を与えるものと考えられた.
  • 伴 清治, 鶴田 昌三
    2002 年21 巻1 号 p. 82-89
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    サンドブラスト処理したチタンおよび12%AuPdAg合金を, 450℃で45MPaの密閉容器中で超臨界水処理を施した.電界放射走査電子顕微鏡では超臨界水処理した純チタンには0.2μm以下の微粒子が生成し, 600℃で大気焼成したものでは厚い膜が生成していた.X線回折により, これらの生成物はTiO2であることが確認された.一方, 超臨界水処理した12%AuPdAg合金では酸化物は検出されなかった.しかし, 600℃で大気焼成したものではCuOが生成していた.これらの表面処理をした金属板に2種の硬質レジンを接着し, せん断接着強さを測定した.1種の硬質レジンは超臨界水処理した純チタンとの接着強さが他の条件より大きい値を示した.しかし, 12%AuPdAg合金と硬質レジンとの接着強さに与える超臨界水処理の効果は認められなかった.
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