歯科材料・器械
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16 巻, 4 号
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原著
  • 大橋 静江, 山本 宏治
    1997 年16 巻4 号 p. 241-248
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    Agシリカガラスおよびこれをフィラー成分とするコンポジットレジンの抗菌性をin vitroで検討した.さらに, 銀を含むグラスアイオノマーセメントについても併せ抗菌性を検討した.Agシリカガラスをゾル-ゲル法にて作製し, また, これをフィラーとして70%含むコンポジットレジンを作製した.銀を含むケタックシルバーおよび銀を含まないケタックセムを用いた.S.mutansをTSBY液体培地にて10〜12時間37℃にて嫌気培養し, これを1×106cells/mlに調整した菌液にそれぞれの試料を浸漬した後, TSBY寒天平板培地を用いて菌数を測定した.Agコンポジットレジンならびにケタック-シルバーから溶出する銀イオン濃度をICPを用いて測定した.AgシリカガラスはS.mutansに対して抗菌性を示し, また, Agコンポジットレジンにおいても顕著な抗菌性が認められた.ケタック-シルバーも同様にS.mutansに対して抗菌性を示した.さらに, ケタック-シルバーから溶出する銀濃度が上昇するに伴い生菌数は減少することが確認された.
  • 鈴木 麻美, 熊谷 由美, 吉田 隆一
    1997 年16 巻4 号 p. 249-269
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    変色性アルジネート印象材5種を強酸性水6種とハイクロソフト酸化水に浸漬したときの経時的寸法変化を測定した.その結果, いずれのアルジネート印象材も機能水浸漬直後, 急激に膨張した.その後, 粉末タイプのものは, ハイクロソフト酸化水に浸漬すると膨張を続けたが, 強酸性水中では収縮した.また, アルジネート印象材種の寸法変化への影響は, 機能水種を変えたときと比較して大きかった.Escherichia coliを付着または練和により強制混入した変色性アルジネート印象材1種について, 強酸性水1種あるいはハイクロソフト酸化水のいずれかに浸漬したときの殺菌効果を検討した.その結果, 機能水を作用させると1分以内で印象材表面に対する殺菌効果は認められた.しかし, その表面にせっこうを流し込むと, せっこう表面には少数ではあるがE.coliが確認された.また, E.coliを強制混入した印象材の表面から1mm内側では, 殺菌効果は認められなかった.
  • 佐藤 範幸, 小林 國彦, 疋田 一洋, 稲田 純一, 伊藤 省吾, 内山 洋一
    1997 年16 巻4 号 p. 270-275
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 試作レジン(クラレ)を用いた, 新しいレプリカ法を開発した.口腔内修復物の表面性状を評価するために多くのレプリカ法が報告されているが, そのほとんどは2段レプリカ法である.この新しい方法は1回法であり, その利点は操作の容易さと, 時間が短縮されることにある.欠点は, 陰型レプリカ法であり, 得られる像が反転することである.この点を改善するために, この試作レジンを用いた2回法も開発した.これらの方法の形態と寸法再現性をSEM観察と表面粗さ測定によって従来法と比較して検討し, 以下の結論を得た.1.3種類の方法とも同様の寸法再現性を示した.2.SEM観察によると, 試作レジン1回法は良好な形態再現性を有していた.3.試作レジン1回法は口腔内修復物の表面性状の評価に有効と思われる.
  • 土生 博義, 内田 博文, 中川 久美
    1997 年16 巻4 号 p. 276-281
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    寒天印象材6製品を使用して, 寒天単一印象および寒天層の厚みが異なる寒天・アルジネート連合印象から得た模型の表面粗さを測定した.また, 連合印象による歯型直径の寸法精度も測定した.寒天3製品は, 連合印象により単一印象よりも模型の表面粗さが減少した.連合印象の寒天層が薄くなるほど表面粗さが減少したが, 歯型の寸法には影響がなかった.
  • 菊地 聖史, 奥野 攻
    原稿種別: 本文
    1997 年16 巻4 号 p. 282-287
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    コンピュータを用いて陶材築盛を自動化するためには, 熟練者が容易に成し遂げている作業でもその科学的意味を明らかにし, 機械的に再現する必要がある.陶材の築盛時の湿潤状態は築盛体の可否を決める重要な因子の一つであるが, その明確な基準はないようである.そこで本研究では陶材の湿潤状態の自動制御への応用を目的とし, 画像処理による湿潤状態の評価方法を検討した.試作装置を用いて陶材の湿潤状態と表面からの反射光の強さの関係について調べたところ, 乾燥した陶材粉末に蒸留水を供給していくと反射光の強さは増加し, 逆に濡れた状態から乾燥させると減少することが分かった.また反射光の強さはコンデンスの有無や陶材粉末の量の影響を受けることが分かった.
  • 山本 真, 米山 隆之, 浜中 人士, 黒田 敬之
    1997 年16 巻4 号 p. 295-301
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    超弾性チタンニッケル合金線を応用した歯列弓拡大装置の矯正力について, コバルトクロム合金線によるクアドヘリックス型の装置と比較検討した.まず, 713K, 1.8ksで一次熱処理を行った後, 753Kあるいは793Kで1.8ksの二次熱処理を施すことにより形状記憶処理を施し, 変態点測定試験ならびに矯正力測定試験を行った.その結果, コバルトクロム合金試料では荷重が変位に比例して直線的に増減したが, チタンニッケル合金試料では超弾性による荷重変化の小さい領域が認められた.また, チタンニッケル合金試料による荷重の大きさは, コバルトクロム合金による場合と同レベルにあり, 753Kで二次熱処理を行った方が荷重ヒステリシスが小さかった.従って, チタンニッケル合金を歯列弓拡大装置に応用することにより, 超弾性による持続的で変化の少ない安全で効果的な矯正力を作用させることが可能になると考えられる.
  • 大川 昭治, 石井 邦宜, 近藤 清一郎, 宇尾 基宏, 菅原 敏, 塙 隆夫, 亘理 文夫
    1997 年16 巻4 号 p. 302-309
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    チタンとフラックスの反応を調べるため, 6種類のKHF2-LiF-NaCl-KCl系フラックスの溶融物にチタン板を浸漬して, チタン板の累積重量損失量を測定した.さらに, これらのフラックスを用いて, 銀ろうの広がりの面積を決定した.すべてのフラックスについて, 900℃においてチタン板の累積重量損失量は浸漬時間とともに増加した.フラックスの反応性は, 〔NaCl+KCl〕<〔56KHF2-14LiF-30(NaCl+KCl)〕<〔50KHF2-50LiF〕<〔70KHF2-30LiF〕<KHF2<LiFの順に促進された.温度も反応性に影響した.〔56KHF2-14LiF-30(NaCl+KCl)〕とチタンの初期反応における活性化エネルギーは19.5kcal/molとなった.銀ろうの広がり面積は, LiF単独フラックスを除くと, 〔NaCl+KCl〕, 〔70KHF2-30LiF〕<KHF2<〔50KHF2-50LiF〕, 〔56KHF2-14LiF-30(NaCl+KCl)〕の順に増加した.最も反応性が大きいLiFでは, ろうはほとんど広がらなかった.フラックスの反応性は, ろうの広がり面積の増加とは必ずしも一致しなかった.
  • 土居 寿, 米山 隆之, 小林 郁夫, 浜中 人士
    1997 年16 巻4 号 p. 310-315
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    チタンを歯科用の材料として応用するためには, 単純な引張試験や硬さ試験によるものだけではなく, 疲労試験を行う必要があると考えられる.さらに実際の口腔内環境を考慮すると, 腐食環境中での疲労試験, すなわち腐食疲労試験が重要であると考えられる.そこで本研究では, 腐食液中での疲労試験ができる腐食疲労試験装置を製作し, 歯科鋳造用に開発されたチタンの0.9%NaCl水溶液中での腐食疲労試験を行い, 腐食疲労特性を検討した.その結果, 有用な腐食疲労試験装置を製作することができ, 実際の材料の評価に使用できることが示唆された.また, 鋳造した歯科用チタンの腐食疲労試験を行った結果, チタンの腐食疲労特性は良好で, 歯科用の材料として実用的であることがわかった.
  • 小島 克則, 門磨 義則, 山内 淳一
    1997 年16 巻4 号 p. 316-321
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    アセトンに6-〔N-(ビニルベンジル)プロピルアミノ〕-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオン(VBATDT)を単独あるいは10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)とともに溶解させた歯科用金属接着性プライマーを試作した.試作プライマーで表面処理した金属にコンポジット系レジンセメントのパナビア21を接着させ, 接着強さを調べた.その結果, VBATDT単独よりMDPと併用することにより貴金属のAg, Pt, Pdや卑金属のCr, Tiでは接着増強効果が認められた.VBATDTとMDPを併用したプライマーを塗布し, 乾燥させる処理では, MDP濃度が1.0wt%の場合, VBATDT濃度が5.0wt%よりも0.1または0.5wt%の方が高い接着強さが得られた.さらに, VBATDTを0.5wt%としてMDP濃度を変化させた結果からは, 好ましいMDP濃度は0.2〜0.5wt%程度であることが示唆された.
  • 艾 紅軍, 永井 正洋, 宮入 裕夫, 安田 登
    1997 年16 巻4 号 p. 322-329
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    歯科用接着性レジンのモードI破壊靱性試験方法として, ここではメタル/接着性レジン/メタル構成による双片持はり試験を採用し, その試験方法を策定するために, 特に試験片の寸法に注目し検討した.その結果, 次の結論を得た.き裂進展過程での破壊靱性値(GIC, GIR)は, 各試験片ともにき裂進展量に関係なくほぼ一定となる傾向を示した.従って, 接着性レジンの破壊靱性は, 最大荷重時の破壊靱性値(GIC)によって評価しても十分であることが分かった.接着性レジンの破壊靱性値(GIC)は, 試験片の寸法として幅(b=3, 5mm), 厚さ(2hm=2, 4mm), 初期き裂長さ(a0=9〜19mm)には特に影響されなかった.本研究で検討したモードI破壊靱性試験方法は, 接着性レジンの新しい材料評価方法として有効であることが分かった.
  • 大川 成剛, 渡辺 孝一, 金谷 貢, 中野 周二, 宮川 修, 小林 正義
    1997 年16 巻4 号 p. 330-335
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2018/08/06
    ジャーナル フリー
    アルゴン吹き付け雰囲気と置換雰囲気の二つの雰囲気でチタン鋳造体を作製した.鋳造体の引張強さと破断伸び, および硬さを測定し, それらを鋳造体中のOとNの含有量と関連づけて検討した.アルゴン吹き付け雰囲気で得た鋳造体の引張強さと硬さは, 置換雰囲気のそれより大きいが, 伸びは逆であった.Oの含有量は, インゴット, インゴットを溶解凝固させたもの, 鋳造体の順に多かった.置換雰囲気中でインゴットを溶解凝固させたものと鋳造体のOの含有量は, アルゴン吹き付け雰囲気の場合より多い傾向にあった.これに対して, アルゴン吹き付け雰囲気で得た鋳造体のNの含有量は, 置換雰囲気のそれの13〜15倍であった.この結果から, 上で述べたアルゴン吹き付け雰囲気と置換雰囲気における鋳造体の機械的性質の違いは, Nの含有量に関係することが示唆された.
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