歯科材料・器械
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5 巻, 1 号
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原著
  • 原 龍馬, 根本 君也
    1986 年5 巻1 号 p. 1-16
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    物性の優れたコンポジットレジンの開発を目的として微粒子シリカ粉をフィラーとしたレジンを試作し, その性質をしらべた.試作レジンはBis-GMAとTEDMAのコモノマーおよび次の種類のフィラーより作製した.1)MF, 表面処理された0.05μのエアロジール 2)CF, 50%のMFを含む粉砕型架橋レジンのコンポジット 3)MFとCFの混合物 50%のCFを含むコンポジットレジンではフィラーの粒子が小さいほど圧縮強さが大きくなり, その他の性質では粒子径による差異が少なかった.試作レジンの物理的, 機械的性質は, 硬化物中のシリカ量に比例して向上した.シリカの含有率による物性の上昇率から複合効果を明らかにしたところ, 圧縮強さの複合効果は3.7, 弾性率は2.3, ロックウェル硬さ, 熱膨張率および引張り強さの複合効果は約1倍であった.コーンプレート型粘度計で測定したMFを含むレジンの粘度は, ずり速度の増加とともに粘度は低下してthixotropyを示した.CFを含んだレジンの場合, 粘度におよぼすずり速度への影響は小さく, MF+CFの場合はほぼ中間の傾向を示した.
  • 吉成 正雄
    1986 年5 巻1 号 p. 17-25
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    Al-Cu系, Al-Mg系(加工用)およびAl-Si系(鋳造用)合金のTiNイオンプレーティング試料の曲げ特性, 耐食性を検討した.(1)曲げ特性(1)これらの試料の耐力は91.1〜231.1MPaであった.しかし, 加工用合金のプレーティング試料の耐力は, 加工用合金の加工あるいは時効された材質の耐力の約1/2であった.これはプレーティング時の熱的影響に依るもとの推察された.(2)これらの試料の弾性係数は7.1〜8.1×104MPaであった.(3)これらの試料の義歯床用としての実用厚さは0.8〜1.3mmと概算された.(2)耐食性(1)人工唾液による浸漬試験では, Al-Cuのプレーティング試料にのみ孔食が発生した.(2)電気化学的試験の結果, 孔食電位が自然電極電位と近接している材料で孔食が発生し易いことが推察された.(3)Al-Mg系およびAl-Si系合金のプレーティング試料はアノード分極による0V時における電流密度が原合金のそれと比較して1/50〜1/170に減少した.
  • 赫多 清, 小倉 英夫, 中村 健吾
    1986 年5 巻1 号 p. 26-38
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    寒天印象材と模型用せっこうとの適合性を調べるために, 8種の市販寒天印象材のそれぞれに注入した5種の市販模型用せっこうの表面粗さを測定した.さらにX線回折装置, X線マイクロアナライザを用いてせっこう表面の硫酸カルシウム半水塩, 硫酸カルシウム二水塩, シンジナイトの回折X線強度およびカリウムの分布状態を分析した.これら表面生成物の回折X線強度および表面のカリウム分布と表面粗さとの相関について統計解析を行なった.これらの測定結果より次の結論を得た.1)せっこう表面の硫酸カルシウム半水塩の回折X線強度と表面粗さとの間には有意な正の相関があった.2)せっこう表面の硫酸カルシウム二水塩の回折X線強度の対数と表面粗さとの間には有意な負の相関があった.また, せっこう表面の硫酸カルシウム二水塩が極端に少ない場合表面荒れが生じていた.3)シンジナイトは撤去1分後におけるせっこう表面では検出されず, 24時間後のせっこう表面で検出された.シンジナイトの回折X線強度と表面粗さとの間には有意な相関はなかった.4)カリウム分布と表面粗さとの間には有意な相関はなかった.
  • 久賀 嘉代子, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1986 年5 巻1 号 p. 39-46
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯科用リン酸亜鉛セメントについて, 既に報告した機械練和方式を採用して, 日本工業規格(JIS), アメリカ歯科医師会規格(ADAS), 国際標準化機構(ISO)規格試験の相互関係を調べた.統計解析にはStudentのt-testを用いた.使用したセメントは, 而至社製Crown Brideg & Inlay Cement(以下BBと略す)と, 而至社製Elite Cement 100(以下Eと略す)で, その粉液比は次の通りである;BB3.0g/1.0ml, E2.8g/1.0ml.1.稠度は, 標準稠度ではISOと比べて, JIS, ADASともに8%低い値となる.ISOと比較して, JIS, ADASによる値はBBでは危険率5%で, またEでは危険率1%で有意差が認められる.2.硬化時間は, いずれの場合でも長い.ISOではJISならびにADAS(有意差はない)と危険率1%で有意差が認められる.3.圧縮強さは, いずれの規格にも適合する.Eの, JIS, ADAS間でのみ危険率5%で有意差が認められる.4.被膜厚さは, いずれの規格にも適合する.BBの, JISでADAS, ISOと比較して危険率5%で有意差が認められる.5.崩壊率は, いずれの規格にも適合する.BB, EともにJIS, ADAS間で危険率5%で有意差が認められる.
  • 土生 博義, 内田 博文, 秋山 譲, 中野 和衛
    1986 年5 巻1 号 p. 47-53
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    従来型およびダストフリータイプアルジネート印象材23種類の空気中, 100%湿度中および水中の寸法変化を, 無荷重直接法で測定した.その結果, 100%湿度中では, 材料固有の硬化反応の進行に伴うsyneresisによる収縮が認められ, その傾向と収縮量は, 製品によって異った.水中におけるimbibitionに由来する膨張は, syneresisの影響を強く受けた.ダストフリー化の寸法安定性に及ぼす影響は, 処理剤の添加よりも充填材の変更のほうが大きく表れた.
  • 水沼 徹
    1986 年5 巻1 号 p. 54-64
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    4-META/MMA-TBB系レジンの象牙質に対する接着に関して, 象牙質コラーゲンの構造が重要な因子になっていることは既報の通りである.今回, 象牙質に対する接着における塩化第二鉄(FeCl3)の効果について, 新しい方法で調べた結果, 以下のことが判明した.象牙質コラーゲンは, リン酸やクエン酸などの酸によって変性する.しかし, 10%クエン酸-3%FeCl_3溶液(10-3溶液)は象牙質コラーゲンをほとんど変性させない.象牙質コラーゲンを60℃のトリプシン消化用緩衝液中で8時間加熱すると, ほぼ完全に変性した.60℃の蒸留水中で15分間加熱された被験象牙質に対し, 10-3溶液でエッチングして, 4-META/MMA-TBB系レジンを接着しても, 接着強さは7.5MPaが上限であった.一方, 60℃の3%FeCl3水溶液中で被験象牙質を加熱してから, 同様の接着強さを測定したところ18MPaの値を示した.これらの結果から考えて, 10-3溶液中の第二鉄イオンは象牙質コラーゲンの安定化に役立っていることが示唆された.
  • 松村 英雄
    1986 年5 巻1 号 p. 65-70
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    各種官能性モノマーが歯科用合金の接着に及ぼす効果を検討するため, 酸無水物基やカルボキシル基を有するモノマーをMMA-TBB系レジンに加えた接着材を用いて, 歯科用合金に対する接着試験を行なった.カルボキシル基や酸無水物基のほか, 架橋剤を少量加えた場合, 接着性の向上に有効であったが耐久性はモノマーの種類により異なっていた.サンドブラスト処理した合金面は平滑面に対して接着強さの低下を大幅に抑制する効果があったが, この場合もモノマーの効果の差が明らかであった.酸無水物基をもつモノマーは長期間保存すると加水分解されることから, 水中における合金の接着性にはカルボキシル基が有効に作用していると考えられた.
  • 西村 文夫, 岡崎 邦夫, 中村 英雄, 野本 直
    1986 年5 巻1 号 p. 71-77
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    10歳台の女子から抜去した新鮮な第3大臼歯から, 直径0.8〜1.0mm, 高さ0.8〜2.2mmのエナメル質と象牙質の円柱状試片を作製した.純銅製中空ドリルとアルミナペーストを併用し, 回転速度2, 000rpm, 負荷1N(100gf)で切削する方法を開発し, 圧縮試験によって比例限, 耐力, 破断強さ, 弾性係数, 歪などを測定した.試験片は, エナメル小柱や象牙細管などの方向や部位に留意して作製し, 圧縮試験は毎分0.1mmのクロスヘッドスピードで行った.次のような結果がえられた.1.エナメル質の圧縮特性は, 小柱の方向に強く影響を受けるが, 象牙質は影響を受けない.2.エナメル小柱の長軸方向と平行に圧縮した場合の圧縮特性は最小となり, 小柱の鍵穴型の頭から尾を通る軸と平行に圧縮した場合は中間の値となり, 鍵穴型を真横から圧縮した場合が最大の値を示した.3.エナメル質の圧縮耐力は測定できなかったが, 破断強さは270〜440MPaであり, 象牙質の圧縮耐力は210〜220MPaであった.
  • 小林 絋孝
    1986 年5 巻1 号 p. 78-91
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    市販陶材焼付用金合金と3元合金の高温および室温での機械的性質を測定し, サグレジスタンスの評価方法について検討した.合金の機械的性質を評価するために, 高温および室温での引張試験, かたさ試験, たわみ試験を行った.その結果, 3元合金の機械的性質は市販合金よりも劣っていた.また, 各合金の引張強さ, かたさ, たわみ量は互いに密接な関係があり, サグレジスタンスの評価手段として引張強さ, かたさを使用することが妥当であるといえる.この結論は, 有限要素法による2点支持ばりの応力分布計算によって, たわみが引張応力に依存していることからも証明された.陶材焼付用金合金のサグレジスタンスはメーカー表示の引張強さやかたさの大小から評価することができる.
  • 小島 克則
    1986 年5 巻1 号 p. 92-105
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    MMA-PMMA/TBBO系レジンの接着性を向上する目的で歯質や金属に接着性を示す官能性モノマーを探索してきた結果, 歯質, 金, パラジウム, 銅, 鉄及び歯科用貴金属合金などによく接着するチオフェノール性のメルカプト基を有するモノマーN-(4-Mercaptophenyl)methacrylamide(MPMA)が見出された.このMPMAモノマーは3%の塩化第二鉄または塩化第二銅を溶解した10%のクエン酸水溶液で前処理したヒトエナメル質及び象牙質表面にライナーとして塗布すると, MMA-PMMA/TBBO系レジンが強く接着することが認められた.また, これは歯質だけでなく, 金, パラジウム, 銅, 鉄などにもよく接着し, 特にパラジウムや金銀パラジウム合金に安定した耐久性のある接着性を示すことが認められた.これに対して, 重合可能な二重結合をもたないメルカプト基を有する化合物N-(4-Mercaptophenyl)isobutylamide(MPIA)を同様にパラジウム表面にライナーとして塗布した場合には接着性を示さないことから, MMA-PMMA/TBBO系レジンに対し有効な接着性を示すには共重合可能な二重結合をもつことが必要であることが明らかとなった.また, メルカプト基をもたない類似の化学構造をもつモノマーN-Phenyl methacrylamide(PMA)をライナーとして塗布した場合には耐久性のある安定した接着強さが発揮されないことも認められた.特に注目されたのは, パラジウムの表面をMPMAのアセトン溶液で処理した後, X線光電子分析装置(ESCA)で測定するとMPMAモノマーがパラジウムと化学的に結合している事実が認められたことである.このことにより, 歯科用金銀パラジウム合金に対しMPMAが結合し, 更にMMA-PMMA/TBBO系レジンと共重合して, 耐久性のある高い接着強さを示す理由が明らかになった.
  • 倉田 茂昭, 山崎 升
    1986 年5 巻1 号 p. 106-109
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    剛直な分子構造をもつ分子をレジン中に分子分散することにより, レジンを強化する分子複合材の歯科材料としての適性を調べた.剛性分子として, 種々の割合のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとフェニルトリエトキシシランの共加水分解により得られる, ラダー構造をもつ多官能性シロキサンオリゴマーを用い, これとMMAとの共重合体をつくり, その理工学的性質について, 3G, Bis-GMAそしてTMPTなどのMMA共重合体と比較検討した.その結果, シロキサンオリゴマーを20wt%複合したMMA共重合体の圧縮強さは, Bis-GMA-MMA共重合体に比べ大きく, オリゴマー分子に含まれる二重結合数の増加と共に増大した.硬さは3G-MMA共重合体より大きく, Bis-GMAやTMPT-MMA共重合体と同程度であった.吸水量は他のいずれの多官能性モノマーの共重合体に比べ小さかった.以上の結果から, シロキサンオリゴマー・MMA分子複合材は, 優れた理工学的性質をもち, 充填および硬質レジン用ベースレジンなどの歯科用レジンとして応用が期待される.
  • 伊東 邦彦, 宮本 了一, 永田 勝久, 中林 宣男
    1986 年5 巻1 号 p. 110-114
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    各種有機質複合フィラーを作製し, BPO-アミン触媒によるコンポジットレジンの機械的性質を検討した.TMPTフィラーは, TMPTモノマーの影響により, フィラー中に残存する二重結合が多くレジンマトリックスと共重合する可能性が高いことが認められている.そのためUDMAモノマーを使った有機質複合フィラーのコンポジットレジンより高い機械的性質を示した.さらにTMPTフィラーに適合するモノマーを検討したところ, EDMAやTEGDMAが主体となるコンポジットレジンが良好な機械的性質を示した.この時, エチレングリコール基を持つモノマーによる吸水量の増加に対しては, RDMAとのコモノマーにすることによって解決した.EDMA, TEGDMAとRDMAとのコモノマーとTMPTフィラーのコンポジットレジンは, 他の有機質複合フィラー型コンポジットレジンと比べ, 硬さ・吸水量・熱膨張係数において優っており, 圧縮強度は, ほぼ同等であることがわかった.
  • 加我 正行, 久田 洋, 小野木 正章, 大川 昭治, 太田 守
    1986 年5 巻1 号 p. 115-121
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    純NiならびにNi-Ta系合金のラット皮下組織の親和性について病理組織学的および化学的に検索した.純Ni周囲の皮下組織は壊死や組織溶解が生じ著しい炎症がみられた.純Ni周囲の皮下組織から多量のNi2+が測定された.Ni-10wt%Ta, Ni-20wt%Ta, Ni-30wt% Ta合金周囲の皮下組織は炎症性細胞浸潤がほとんど認められず, 合金は組織親和性を示した.しかし, それらの合金周囲の皮下組織からもわずかにNi2+が測定された.これは, Ni-Ta系合金がラット皮下組織内で腐食した結果, 合金周囲組織にNiが溶出してNi2+やNi化合物となって存在したことによると思われる.そのNi2+量は組織に変性を起こす濃度以下にあって微量であった.
  • 清水 彰
    1986 年5 巻1 号 p. 122-132
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造用として有望な二元系チタン合金のうちTi-Pd, Ti-Cr合金に対し, 主にリン酸塩系埋没材に鋳造した場合の機械的性質, 鋳造性, 鋳造組織, 表面あらさ, 寸法精度などについて検討を加えた.また, 一部の試験にはマグネシア系埋没材を用いてリン酸塩系の場合と比較した.鋳造はアルゴンアーク加圧吸引鋳造機でおこなった.この結果, Ti-20〜25wt%Pd, Ti-15〜20wt%Crの場合に表面のあらさがやや大きくなるが, 引張強度, 伸び, 延性, 鋳造性, 寸法精度の点で市販のNi-Cr合金, Co-Cr合金と同程度かそれら以上の性質を有することがわかった.また, マグネシア系埋没材を使用した結果, 機械的性質はリン酸塩系埋没材の場合と大きな変化はみられなかったが, 表面のあれが著しく改善され良好となることがわかった.
  • 清水 彰
    1986 年5 巻1 号 p. 133-143
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    前報でTi-15〜20wt%Cr, Ti-20〜25wt%Pdが機械的性質, 鋳造性, 寸法精度の点で歯科鋳造用として良好であることを報告した.今回は第三元素としてTi-20CrにAl, B, Siを, Ti-25Pdにcrを添加し機械的性質, 鋳造組織, 鋳造性, 表面あらさ, 寸法精度について検討した.前報同様, リン酸塩系埋没材を使用しアルゴンアーク加圧吸引鋳造機で鋳造した.この結果, Ti-20Cr合金に0.1, 0.2Siを加えた合金及びTi-25Pd合金に1, 2, 5Crを加えた合金は歯科鋳造用合金としてTi-20Cr二元合金, Ti-25Pd二元合金の場合より機械的性質, 鋳造性, 表面あらさ, 寸法精度の点で改善され, 酸化による表面硬化層もきわめて少なかった.従来のリン酸塩系埋没材使用で, これらチタン合金は市販のNi-Cr合金, Co-Cr合金に比べても機械的性質, 鋳造性, 寸法精度, 表面あらさの点で同等以上であった.また, Ti-20Cr合金に1, 2Alを加えた合金は湯流れにやや問題があるが, その他の性質は良好となった.
  • 山内 淳一
    1986 年5 巻1 号 p. 144-154
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯質との接着性に優れた歯科用接着剤の研究開発をする目的で, リン酸基を有する官能性モノマーおよび常温重合の可能な開始剤について研究を行った.その結果, -塩基酸のリン酸エステル系メタクリレートモノマーとスルフィン酸塩-過酸化物-アミンより成る3元系開始剤の組み合せにより, 歯質と強固に接着し得る優れた接着性レジンを得ることができた.リン酸エステルモノマーのなかで, 芳香族環で置換したものが好ましく, フェニル基で置換した2-メタクリロイルオキシエチル フェニルリン酸(Phenyl P)が最も優れた歯質接着性を示した.また3元系開始剤はスルフィン酸塩の増加とともに象牙質との接着性が向上することを見出し, 接着剤の開始剤として相応しい性質を有することを認めた.
  • 木村 博, 荘村 泰治
    1986 年5 巻1 号 p. 155-161
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    Ti-V-Fe-Al系合金の形状記憶効果を歯科用インプラントに応用するため, 40°〜80℃における形状回復率の改善を試みた.その結果, 低真空排気アルゴンアーク炉で溶解したTi-11.5V-1.7Fe-3.3Alは, 400℃で僅か3秒の時効処理と, -20℃での曲げ変形により, 80℃での回復が, 時効しない時の44%に対し85%に増加した.しかし8秒以上時効を行うと逆に回復率は低下した.次に合金中の酸素濃度を下げるため, 高真空排気アルゴンアーク炉で溶解した所, 上記の3秒の時効により98.5±0.8%と高回復率でかつ非常にばらつきの少ない結果がえられ, 60℃でも89.9%の回復を示した.そして酸素分析の結果, 低酸素濃度の方が, 高い形状回復率を示す傾向のあることがわかった.また, 現状で最も良い形状回復率を得る条件は, Ti-11.5V-1.7Fe-3.3Al合金を800℃で10分間溶体化処理した後, 400℃で3秒時効処理してから-20℃で曲げ変形することであることがわかった.これを基に, 厚さ0.6mmの模擬インプラントを作製し, 先端の開き角を約50°とする記憶処理を施し, 80℃で回復させた所, 約40度開いた.以上の結果から, この合金は, まだ改善の余地はあるが, 歯科用インプラントとして応用の可能性をもつといえる.
  • 窪田 敏之
    1986 年5 巻1 号 p. 162-172
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    第1報ではSUPER-BOND, PANAVIA-EX, 試作接着性レジンがVitaの社の焼付用陶材VMK68に対して接着性を示すことを見出して報告した.さらに安定した接着強さを得るためにシランカップリング剤を応用した表面処理法を検討した.これらの接着方法では水中浸漬1週間程度までの短期間では200kgf/cm2程度の大きい接着強さを得ることができるが, 長期間の水中浸漬を行うと接着強さが徐々に低下し, 1ヵ月後には50kgf/cm2以下になる.今回の実験ではより安定に接着する方法を見出すため陶材の各成分に対する接着性および, 前回の実験で成績の良かった表面処理法であるシランカップリング剤と熱処理を行なったものについて検討した.また新しい手法として陶材表面のエッチングを試みた.歯科用陶材は, SiO2(シリカ), Al2O3(アルミナ)を主成分とし, そのほかに融点, 焼結性, 色調等を調整するための修飾酸化物が含まれている.このため今回は歯科用陶材のほかに純アルミナ, 純シリカに対する接着強さを調べた.この結果, アルミナ, シリカ, 歯科用陶材の順で安定した接着強さを示した.また長期の水中浸漬における接着強さの安定性ではMMA, PMMA, TBB-O系よりPANAVIA-EXが優れていることがわかった.表面処理はシランカップリング剤を塗布した後110℃7分間の加熱が有効であった.最も接着強さの大きい接着方法では水中浸漬6ヵ月後でも180kgf/cm2以上の接着強さを保っており, 臨床での応用に対しほぼ充分な強さに達した.またエッチング法は今回はMMA, PMMA, TBB-Oによる接着試験, 電顕的観察のみを行ったが, 安定に接着するために有望な方法と思われるのでさらに検討する必要がある.
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