歯科材料・器械
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15 巻, 6 号
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原著
  • 藤沢 盛一郎, 長崎 正文, 門磨 義則
    1996 年15 巻6 号 p. 483-488
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    ビタミンEのラジカルスキャベンジング効果を明らかにするため, 重合開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)およびα, α-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いてビタミンEおよびその関連化合物(2, 6-Di-tert-butyl-4-methylphenol, 以下BHTと略す.およびフェノール)の存在下示差走査熱量計, DSCで70℃所定時間メチルメタクリレート加熱重合を行い, DSCサーモグラムにより時間重合率曲線を描記し誘導期間, 初期重合速度(IRP)を求めた.BPOシステムにおいてフェノール化合物の誘導期間は濃度依存性を示し, 濃度の増加に伴って誘導期間は増加した.その値は次のように減少した.BHT>フェノール>ビタミンE.フェノールに比較するとビタミンEのIRPは濃度が増加するにつれて著しく減少した.以上のことからビタミンEは重合遅延剤(抑制剤)と結論された.BHTのIRPは0.1mole%以下の濃度でコントロールと比べ変化がなかった.BHTは効率の良い重合禁止剤であることを示している.一方, AIBN系で各フェノール化合物の誘導期間は次の順序で減少した.ビタミンE>BHT>フェノール.ビタミンEはAIBN分解ラジカルと強く相互作用した.
  • 日比野 靖, 巽 真由賀, 倉持 健一, 橋本 弘一
    1996 年15 巻6 号 p. 489-493
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    リン酸4カルシウムにInF_3・3H_2Oを0, 1, 2ならびに3wt%添加し, 再度大気中1400℃で2時間焼成を行いセメント粉末を作製した.この粉末とクエン酸-リンゴ酸水溶液を練和し, 硬化体を作製した.なお, 粉液比(P/L)は1.0, 1.2ならびに1.4(g/g)に設定した.得られた硬化体に関してはADAS No.61に準じて硬化時間, 圧縮強さならびに崩壊率の測定を行った.その結果, 粉液比の増加に伴い硬化時間は短くなり, 硬化体の物性においては粉液比の増加に伴い崩壊率は小さくなり, 圧縮強さは大きくなった.
  • 三浦 啓一
    1996 年15 巻6 号 p. 494-499
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では, ウレタンジメタクリレートに種々のエチレングリコール系ジメタクリレートを等モル比になるようにそれぞれ加えた7種類のベースモノマーに, 表面処理を施したSiO_2フィラー(1.9μm)を加えて(65wt%), コンポジットレジンを試作し, エチレングリコール系ジメタクリレートの構造が試作コンポジットレジンの硬化特性に及ぼす影響を検討した.各試作コンポジットレジン中に加えたエチレングリコール系ジメタクリレート中の〓OCH_2CH_2〓_n鎖の反復度数nが大きくなると, 照射表面のヌープ硬さは, 62.1から6.56に, 重合収縮率は7.831%から1.478%にそれぞれ低下し, 重合深度は浅くなる傾向を示した.一方, これに対して未反応物量は, 反復度数nが大きくなると1.21%から5.51%に増加した.
  • 三浦 啓一
    1996 年15 巻6 号 p. 500-507
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    ウレタンジメタクリレートに種々のエチレングリコール系ジメタクリレートを50/50mol%の割合でそれぞれ加えベースモノマーを作製し, それに表面処理を施したSiO_2フィラー(1.9μm)を65wt%添加して7種類の光重合型コンポジットレジンを試作した.そして試料にそれぞれ加えたエチレングリコール系ジメタクリレートの構造が試作コンポジットレジンの動的粘弾性および物理的性質(熱膨張, 吸水性)に及ぼす影響を検討した.その結果, 各試作コンポジットレジンの動的ずり弾性率(G')は温度の上昇に伴い低下し, 同一温度(37℃)で比較した場合のG'は, 加えたエチレングリコール系ジメタクリレートモノマー中の〓OCH_2CH_2〓_n鎖の反復度数nが大きくなると5.40GPaから0.36GPaへと低下した.また, これに対して, 熱膨張量, 吸水量は反復度数nが大きくなると, 36.5×10-6/℃から112.0×10-6℃へ, 0.50mg/cm^2から2.54mg/cm^2(水中保存30日後)へとそれぞれ増加した.
  • 呉 江
    1996 年15 巻6 号 p. 508-514
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    FeCl_3を3%溶かした10%クエン酸水溶液(10-3溶液)で前処理した象牙質を水洗, 乾燥後直ちにMMA-TBBレジンを接着すると8.0MPaの接着強さしか得られないが, 3分間非イオン界面活性剤, poly(ethylene glycol)p-isooctylphenyl ether(TX), の0.02%水溶液に浸漬すると, 13.8MPaの接着強さで接着できるようになった.さらに接着方法を簡略化し, 10-3溶液で処理後直ちに0.02%TX水溶液に40秒間浸漬し乾燥した象牙質には, 12.4MPaの接着強さで接着できた.TXが10-3溶液で前処理した象牙質のMMA透過性を向上させ, その結果, 象牙質表層部に樹脂含浸象牙質が生成することをSEM観察により確認できた.このようにモノマーの性質と同様に, 象牙質のモノマー透過性も, 象牙質表層部に樹脂含浸象牙質を生成させ, レジンを象牙質に接着させる上で重要であることがわかった.
  • 古川 哲
    1996 年15 巻6 号 p. 515-524
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    矯正用メタルブラケットを光重合レジンで歯面へ接着を行う場合, ブラケットの上部から照射された光は直接レジンには届かない.したがって, レジンの反応が十分かどうか懸念され, ひいては接着性も懸念される.そこで本研究では, 照射時間と照射位置を変えてメタルブラケット下のレジンの反応率を, 顕微FT-IRを用いて測定した.光の照射時間が不足した場合, レジンはブラケットの長軸方向に不均一な反応率分布となった.しかし, 照射時間を延長すると反応率分布は均一となった.反応率は, 40秒照射で約70%となったが, それ以上照射時間を長くしても増加せず限界値と考えられた.
  • 高田 雄京, 奥野 攻
    1996 年15 巻6 号 p. 525-531
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    ステンレス鋼のSUS447J1やSUS316Lと金銀パラジウム合金を電気的に接続し, 0.9%NaCl水溶液に7日間浸漬した結果, おのおのから溶出するイオン量が単独に比べて共に増加した.ステンレス鋼と金銀パラジウム合金の電位は常に一定ではなく, 経時的に変化して浸漬初期には金銀パラジウム合金のほうが貴に, しばらくすると逆転してステンレス鋼のほうが貴になることがわかった.また, 両者を接続したときの混成電位は, 浸漬初期にはステンレス鋼の活性溶解域に, 電位が逆転した後には, 金銀パラジウム合金の活性溶解域に単独の場合よりも貴な電位で存在し, 腐食電流密度が増加することがアノード分極から示された.これより, 浸漬初期にはステンレス鋼が, 電位が逆転した後には金銀パラジウム合金が, それぞれ単独の時よりも腐食しやすくなり, 両者の腐食が増加することが明らかになった.
  • 渡辺 孝一, 大川 成剛, 金谷 貢, 中野 周二, 宮川 修, 小林 正義
    1996 年15 巻6 号 p. 532-539
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    U字型キャビティにチタンを鋳込み, 標識元素による湯流れ観察と, X線透過像による欠陥検査を行った.これらの結果を基に, 差圧鋳造と遠心鋳造の違い, スプルー直径やその植立条件が充満過程へ及ぼす影響を検討した.ほとんどの場合, スプルーから噴流として流入し, 咬合面部はF型で充満することが確認された.脚の部分では, 差圧鋳造ではB型.遠心鋳造ではF型の充満であった.内部欠陥に関しては差圧鋳造の場合はスプルー線の太さ, 遠心鋳造の場合はスプルー線の植立位置および角度が重要な因子であることが推定された.
  • 湊 元也, 中村 健吾, 後藤 真一
    1996 年15 巻6 号 p. 540-558
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    Ir0.03%を含む30Pd-15Cu-55Ag(AP), 12Au-20Pd-15Cu-53Ag(APG)母合金および格子点計画法の特殊3次計画法に従って, Zn, Sn, Inの総量が2%となるように母合金に添加した7種のAP, APG系合金を溶製, 鋳造し, 軟化・硬化熱処理した試料の比重と機械的性質を測定した.AP, APG系合金ともにZn2%添加合金の引張強さ, 硬さ, 弾性限, 耐力(強度関連特性値)が最も小さく, 伸びは最も大きく, Sn2%を添加した合金の強度関連特性値は最大となるか, 最大値と有意な差が認められない.Inは合金の強さと伸びを低下させる傾向がある.軟化・硬化熱処理した試料の強度関連特性値と鋳造試料の比重との間に有意な相関は認められないことなどを示した.以上からAP, APG合金に対しては, Sn2%以下, またはSn1%, Zn1%を添加するのが最良であると考える.
  • 三浦 弘貴, 大坪 邦彦, 黒田 勝也, 野田 隆夫, 相馬 邦道, 米山 隆之, 浜中 人士
    1996 年15 巻6 号 p. 559-567
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    Ti-Ni合金は, その超弾性特性, 形状記憶特性を生かした応用が広がってきているが, 近年, 防振合金としても注目されてきている.本研究は矯正用超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーの振動減衰能を明らかにすることを目的とし, ステンレス鋼ワイヤーとの比較による検討を行った.ステンレス鋼ワイヤーの振動減衰曲線は緩徐な減衰波形を示したのに対し, 超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーのそれは急激な減衰波形を示した.また, 固有減衰能(Specific damping capacity:SDC)を算出したところ, 超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーはステンレス鋼ワイヤーと比較して高い振動減衰能を有すると評価された.
  • 平野 進, 齊藤 仁弘, 野本 理恵, 西山 實, 平澤 忠
    1996 年15 巻6 号 p. 568-576
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    飲食物類似溶液として, アルコール水溶液, クエン酸水溶液, サラダ油および蒸留水を選択し, これらの溶液に浸漬してコンポジットレジンの諸性質の経時的変化を500日にわたり調べた.溶液の吸収率は, アルコール水溶液, クエン酸水溶液および蒸留水では供試したコンポジットレジンでほぼ同様の値を示したが, サラダ油はこれらの溶液の吸収率の1/3〜1/4であった.これらの溶液浸漬によって, マトリクスレジンは, 初期には溶液を吸収して可塑化するため, 100日後には曲げ強さは上昇する傾向にあった.とくにサラダ油はその効果が著しかった.500日後にはアルコール, クエン酸水溶液ならびに蒸留水ではフィラー・マトリクス界面の結合を低下させ, コンポジットレジンの機械的性質の低下原因となることが示唆された.
  • 高橋 志郎, 新家 光雄, 福井 壽男, 小林 俊郎, 長谷川 二郎
    1996 年15 巻6 号 p. 577-584
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    種々の熱処理を施した歯科用金銀パラジウム銅合金につき, 引張試験および動的破壊靱性試験を行い, 引張および衝撃破壊特性に及ぼす熱処理条件の影響について検討した.引張強さおよび0.2%耐力は, 溶体化まま材および溶体化時効材とも, ほぼ溶体化温度の上昇に伴い増加する傾向にある.溶体化時効材では, いずれの溶体化温度でも時効温度の上昇に伴い, 引張強さおよび0.2%耐力が増加する傾向にある.一方, 伸びは, 溶体化まま材では, 強度特性値とは逆に, 溶体化温度が高いほど低下する傾向にある.動的破壊靱性値は, 一部の例外を除き, 強度特性値の場合と同様に, 溶体化温度の上昇とともに増加する傾向にある.これは, 本合金の動的破壊靱性値に対して, 延性の低下に比べ, 強度の増加がより大きく寄与したためであると考えられる.動的破壊靱性値は, 溶体化まま材の方が溶体化時効材に比べ大きい.強度, 靱性, 延性バランスを考慮すると, 溶体化温度1073Kの熱処理条件がより適切である.特に, 溶体化まま材で, 溶体化後空冷の熱処理は, 冷却工程が簡便で, 時効工程を省略でき, より有利な熱処理条件といえる.
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