歯科材料・器械
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15 巻, 3 号
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原著
  • 渡辺 和美エリゼッテ, 鈴木 一臣, 山下 敦, 繁田 真人, 今井 誠, 矢谷 博文, 中井 宏之
    1996 年15 巻3 号 p. 187-191
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯質被着面に一定期間作用した仮着材は, 接着における阻害因子になることが懸念されている.そこで, 仮着材を作用させた象牙質に対する接着性レジンセメントの接着強さを測定し, 残留仮着材が接着に及ぼす影響について検討した.すなわち, ウシの歯象牙質に種々の仮着材を24時間作用させた後, エキスカベーターを用いて仮着材を肉眼的に付着していない状態まで除去し, この被着面と接着材(パナビア21, クラレ)との接着強さの測定および接着界面の形態をSEM観察した.その結果, コントロールの接着強さは6.9MPaであったが, ハイボンドテンポラリーセメント作用面に3.6MPa, フリージノールテンポラリーパック作用面に4.9MPaおよびテンパック作用面に5.3MPaの値を示し, いずれの仮着材においても低い値を示した.一方, 接着界面のSEM像から, コントロール試料においては約0.5μmの樹脂含浸層が確認されたが, 仮着材を作用させた後の接着界面には樹脂含浸層が生成されていなかった.
  • 洞沢 功子, [タカ]橋 重雄
    1996 年15 巻3 号 p. 192-201
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    アマルガムに代わる材料として, 近年, 水銀を含有しないガリウム合金が開発され市販もされるようになった.本実験は, 浸漬試験, サイクリックボルタンメトリ, X線マイクロアナライザによる試験片の表面観察および面分析という一連の腐食試験法を用いて, ガリウム合金の耐食性について検討を行った.その結果, ガリウム合金の1%NaCl溶液中での腐食過程は, 早期にCore周囲のリング状反応相から未反応Gaの溶出が生じ, 続いて長期的にマトリックスからSnとInが選択的に溶出することがわかった.
  • 高橋 英和, 中村 英雄, 本村 一朗, 岩崎 直彦, 土生 夏史, 燕 敏, 西村 文夫
    1996 年15 巻3 号 p. 202-209
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, 市販の急速加熱型石膏系埋没材で製作した鋳造体の物性について検討した.急速加熱型石膏系埋没材3種と従来型石膏系埋没材2種を用いた.金銀パラジウム合金の鋳造体の寸法精度, 表面粗さ, 表面硬さ, 引張特性を試験した.得られた鋳造体表面には鋳バリは観察されなかった.鋳造体の寸法精度は埋没材ごとに異なっていた.鋳造体の表面粗さは従来型石英系で大きな値を示すものがあった.急速加熱型から得られた鋳造体のマイクロビッカース硬さはがやや小さい値を示していた.鋳造体の引張試験では引張強さ, 耐力, 弾性係数, 伸びには埋没材の違いは認められなかった.以上より, 急速加熱型埋没材による鋳造体の特性は寸法精度を除いては従来型埋没材での鋳造体の特性と明らかな差がないものと考えられた.
  • 伴 清治, 長谷川 二郎, 丸野 重雄
    1996 年15 巻3 号 p. 210-217
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    第2リン酸カルシウム二水塩(DCPD)と炭酸カルシウム塩の懸濁液を30〜80℃で化学反応させることによりリン酸八カルシウム〔Ca8H2(PO4)6・5H_2O, 以下OCPと略す〕を合成した.50〜80℃では薄刃状のOCP結晶がDCPD結晶板上に生成され, 時間の経過とともにハイドロキシアパタイト(HA)に転化した.転化したHAはCa/P比が約1.5のCa欠損アパタイトであった.DCPDの回折強度の減少, OCPおよびHAの回折強度の増加は反応時間の平方根に比例した.また, これらの変化速度は反応温度に依存していた.以上の結果は, これらの逐次反応の律速段階が各結晶粒子上のNernst境界層を通過するCaイオンの拡散過程にあることを示唆している.
  • 土井 豊, 若松 宣一, 志水 雄一郎, 足立 正徳, 後藤 隆泰, 亀水 秀男, 森脇 豊
    1996 年15 巻3 号 p. 218-225
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ACaPO4(A=K, NaもしくはLi)で表されるリン酸カルシウム塩, いわゆるレナニットを合成し, これら試料を熱分析, X線回折およびIR解析し, 各レナニットが水酸化アパタイトの焼結性に関与する物理化学的性質について調べた.熱機械分析の結果, レナニットの中ではナトリウムおよびリチウムレナニットがアパタイトの焼結温度を低下させ得ることが示された.特に, リチウムレナニットは極めて有効な焼結助材としての働きをすることが明らかとなった.リチウムレナニットを示差熱分析すると約840℃の温度で溶融し始め液相を形成することが示された.このため, これを添加したアパタイトは液相焼結が可能となり, 焼結温度が低下することが明らかとなった.例えば, 4wt%のリチウムレナニットを水酸化アパタイトに添加すると, この試料はレナニット無添加試料に比べ約300℃低い780℃前後の温度で焼結できる可能性が示された.
  • 平野 進, 平澤 忠
    1996 年15 巻3 号 p. 226-230
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    トルク変換器付きの低速切断機を試作し, 切断時の負荷荷重(切断荷重)を変化させてコンポジットレジンの切断時のトルクを測定した.測定した総トルクから切断時の仕事量を算出し, 試験前後の試料の重量減と密度から, 切断時に失われた体積を算出した.これらから単位体積当たりコンポジットレジンを削り取るのに必要な仕事量を計算した.試験した3種の臼歯部用コンポジットレジンではその仕事量は, 切断荷重が350gfの時には, 1cm^3当たり約130〜150Jであった.
  • 戸井田 哲也, 中林 宣男
    1996 年15 巻3 号 p. 231-240
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    酸による脱灰は象牙質コラーゲンを変性させる場合があり, この脱灰象牙質は乾燥により容易に収縮する. 収縮した脱灰象牙質のモノマー透過性は低いため, そこに樹脂含浸象牙質を生成させることは困難である. 研削面の一部をプロテクトバニッシュで保護した後に接着操作を行い, その接着縦断面を塩酸および次亜塩素酸ナトリウムに浸漬させてSEM観察することは, 樹脂含浸象牙質の生成のメカニズムを理解するのに有効な方法である. この観察法により, リン酸のエッチング時間を延長すると象牙質の脱灰はそれだけ深く進行し, 乾燥による脱灰象牙質の収縮の度合いも大きくなること, リン酸の脱灰力は解離したリン酸の濃度と量に関係することを明らかにすることができた.
  • 加山 勝敏, 今井 弘一
    1996 年15 巻3 号 p. 241-253
    発行日: 1996/05/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    市販の組織モデル(MATREX)による細胞毒性試験を行った. LDHとMTTで評価した結果, 常温重合型のアクリル系8材料ではいずれも細胞毒性が強かった. しかし, 加熱重合型のアクリル系とフッ素系材料ではほとんど細胞毒性が認められなかった. シリコーン系材料では中等度の細胞毒性であった. 光重合型の3材料では光照射前は, 常温重合型のアクリル系材料と同程度であったが, 光照射後では細胞毒性は減弱化した. 抽出液による細胞回復度試験の結果から, 常温重合型のアクリル系材料では, 細胞回復度は小さかったのに対して, 加熱重合型のアクリル系材料は大きな細胞回復度を示した. シリコーン系材料は中等度の, フッ素系材料では比較的大きな細胞回復度であった. 一方, 光重合型の3材料では, いずれも光照射前は細胞回復度が小さく, 照射後は大きな細胞回復度であった. また, 3回にわたる各抽出液間では細胞回復度への影響はほとんど変らなかった. 組織モデルによる試験は, 口腔粘膜の広い範囲に対して接触する義歯床用材料の試験を行うに当たって示唆を与え得るものと考えられた.
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