歯科材料・器械
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17 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 藤沢 盛一郎, 門磨 義則
    1998 年17 巻6 号 p. 321-325
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ビタミンA(VA), β-カロチン(βC)のラジカル捕捉効果を明らかにするため, 重合開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)および2, 2′-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いたMMA重合をこれらの共存下70℃で示差走査熱量計(DSC)で行い, 重合率-時間曲線を描記し, 誘導期間(IP), 初期重合速度(IRP)を求めた.VA, βCのIPは濃度(0.2〜0.7mol%)に非依存的で両者ともコントロールの値とほぼ同じ4〜7分であった.これに対し, フェノール系抗酸化剤のブチルヒドロキシトルエン(BHT)は濃度依存性で, 低濃度(0.05mol%)で大きなIP(約80分)を示したので, ポリエン化合物であるVA, βCはBHTとまったく異なる作用を示すことが分かった.VA, βCのラジカル捕捉効果は不飽和二重結合へのラジカルトラッピングにより発現すると考えられる.両者のIRPを測定した結果, 濃度の増加につれてIRPは減少し, βCの作用がVAより大きかった.これは両者の不飽和二重結合数の差によると思われる.
  • 大木 裕玄, 齊藤 仁弘, 臼井 伸行, 塩田 陽二, 西山 實
    1998 年17 巻6 号 p. 326-334
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は, 精密印象に用いる印象材と作業模型に用いる石こう模型材との適切な組み合わせを知るために行った.クラウン・ブリッジ調製過程で, 模型の作製に使用される市販印象材11製品(付加型シリコーンラバー印象材6種, ポリサルファイドラバー印象材1種, 寒天-寒天印象材2種)と, 市販石こう模型材9製品(硬質石こう4種, 超硬質石こう5種)との組み合わせから得られた石こう模型の細線再現性と表面粗さを測定した.その結果, 以下のことが判明した.ラバー系印象材と石こう模型材との組み合わせはすべて良好(細線再現性の評価:A, 表面粗さの評価:A)であった.寒天印象材と石こう模型材との組み合わせで, ラバー系印象材と同じ評価(A-A)になったのは, 硬質石こうでは8組中2組, 超硬質石こうでは10組中2組であった.
  • 岸田 秀明, 鈴木 敏光, 久光 久
    1998 年17 巻6 号 p. 335-343
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    グラスポリアルケノエートセメントの物理化学的性質の向上を目的として, 8種類のアエロジル, コンポジットレジンにおいて使用されているフィラー, および高分子ポリエチレンをセメント粉末中に混入した.試料は, 微粉末の量を変えてセメント粉末中に添加したのち, 液と練和して作製した.その後, 硬さ, 歯ブラシ摩耗, 溶解性, エックス線不透過性の各試験を行った.その結果, 硬さ試験では平均粒径の小さい6種類のアエロジルで, 表面硬さの低下が認められた.歯ブラシ摩耗試験では, 1種類のアエロジルで摩耗抵抗性が大きく増加した.溶解試験では, ほとんどの微粉末において溶解量の増加が認められた.またエックス線不透過性試験では, チタン含有のアエロジルにおいてエックス線不透過性の増加が認められ, 反対に高分子ポリエチレンでは不透過性が減少した.
  • 関 文久
    1998 年17 巻6 号 p. 344-353
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    熱可塑性樹脂の射出成形に利用されているガスインジェクション法(GI)を義歯床製作に応用し, 寸法精度に優れた義歯を製作することを目的に本研究は行われた.吸着酸素と水が除去されたメタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸エチルの共重合体ビーズと, 蒸留精製したMMAを用いて, アルゴンガス雰囲気中でスラリーを作製して重合した.義歯床製作でGIを行うためには, 石膏模型を予備加熱してスラリーの重合を石膏面から先に開始させ, 外側にガスバリアを形成させる必要がある.そしてスラリーの重合の進行中に, 流動性のあるスラリー中央部にガスを注入することにより, スラリー全体の重合収縮を補償することができた.またGIを行った重合物の曲げ強さは, GIを行わなかったものと比較して有意な低下は認められなかった.GIは義歯床製作に応用可能な技術であり, GI法により寸法精度の良好な義歯が製作できた.
  • 五十嵐 賀世
    1998 年17 巻6 号 p. 354-361
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    リン酸処理象牙質にレジンを確実に接着させる方法を見出すことを目的としてプライマーを検討した結果, リン酸エッチング後の乾燥により収縮した脱灰象牙質にPhenyl-Pを1%溶解した30%HEMA水溶液(1P-30H)をプライミング後, HEMAをプライミングすることによりレジンを安定して接着できた.すなわち, ダンベル型の象牙質接着試料を用いた引張試験により, 1P-30Hでプライミング後ただちにTEGDMAボンディング材を接着させた場合には4.1MPaであった接着強さが, HEMAによるセカンドプライミングを追加すると17.2MPaと有意に向上し, 破断形態も界面剥離からレジンの凝集破壊に変化した.さらに, これらの接着界面の象牙質側に樹脂含浸象牙質が生成しており, その底部にはレジンで包埋されたハイドロキシアパタイトが存在することがSEM, TEM観察により確認された.
  • 今井 弘一, 寺嶋 久順, 泉谷 欣也, 赤木 誉, 中村 正明
    1998 年17 巻6 号 p. 362-369
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    細胞培養が可能な唾液モデルの細胞培養液を開発して細胞毒性試験を行い, 口腔内における補綴材料の生物学的性質に関する基礎データを得ることを研究の目的とし, 唾液因子を導入した細胞培養液の試作を試みた.すなわち, Greenwood氏人工唾液, サリベートおよびヒト混合唾液を4段階の濃度で培養液にそれぞれ添加した.その結果, 添加濃度の上昇につれて細胞回復度が低下し, 人工唾液45%添加群で約70%以上の細胞回復度を示した.また, ヒト混合唾液添加群は人工唾液添加群より細胞回復度の低下が認められた.
  • 高橋 志郎, 新家 光雄, 福井 壽男, 福永 啓一, 成田 潔治, 長谷川 二郎
    1998 年17 巻6 号 p. 370-377
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯科用銀パラジウム銅金合金について種々の熱処理を施し, β相を析出させることでミクロ組織を系統的に変化させたときの, 引張破壊特性値に及ぼす析出相の影響について検討した結果, 以下の結論を得た.熱処理を変化させることにより種々の体積率および粒子径を有する析出相が得られることがわかった.最高時効までは, 析出相の体積率の増加に伴い, 強度は増加し, 延性は低下する傾向にあった.溶体化まま材では, 溶体化温度1123Kの場合は結晶粒界・粒内を問わず試料の全体ですべりが生じ, 溶体化温度1173Kの場合は主に結晶粒内でのみすべり帯が観察された.溶体化・時効材では, β相が析出することですべりが拘束され, 析出物のない場合に比べて局所的な変形によって破壊する傾向を示した.すなわち, 溶体化まま材では破面から離れた部分にまですべりが観察されたのに対し, 溶体化・時効材では破面近傍にのみすべり帯が観察された.
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