歯科材料・器械
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2 巻, 3 号
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原著
  • 松家 茂樹
    1983 年2 巻3 号 p. 267-274
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    CaSO4および石英の等モル混合物に, CaSO4に対して2mol%のNaCl, KCl, CaCl2・2H2O, Na2SO4, K2SO4, H3BO3, Na2B4O7・10H2Oを添加し, CaSO4-SiO2系固相反応に及ぼす各添加剤の影響をTG-DTA, X線回折により検討した.無添加試料の反応は一般に3段階で進行する.すなわち, 第1段階はII-CaSO4と石英の反応によるβ-およびα-CaSiO3の生成, 第2段階はCaSiO3とII-CaSO4の反応によるCa2SiO4の生成, 第3段階はCaSiO3とI-CaSO4の反応によるCa2SiO4の生成に対応する.いずれの添加剤も反応を促進したが, CaCl2のみは反応初期において抑制効果を示した.しかし, その反応過程は上記の場合と本質的に同一であった.Na2B4O7以外の添加剤を含む試料および無添加試料において生成するCa2SiO4はβ型であったが, Na2B4O7を添加した場合はα'型が生成した.また, Na2B4O7添加試料ではNa2O・2CaO・3SiO2の生成も観察された.本実験で用いた添加剤の反応促進作用は, それらが石英の反応性を高めることによると考えられる.
  • 松家 茂樹
    1983 年2 巻3 号 p. 275-283
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    CaSO4-SiO2系固相反応に及ぼすLiCl, NaCl, KCl添加の影響を主としてX線回折により検討した.NaClの添加量が2〜5mol%までは, CaSO4の反応率は増加傾向にあり, それ以後減少し始め, 7〜10mol%で最小となる.さらに添加量が増すと反応率は再び増加する.添加されたNaClはCaSO4と共融後に一部複分解して硫酸塩となり, 石英と反応して石英中に固溶する.少量添加の場合の反応促進の機構として以下の二つが考えられる.一つは, 固溶したNa+イオンがケイ酸塩ガラスにおける網目修飾イオンのように石英中に非架橋酸素を生じさせその反応性を高める.他は, 生成相(CaSiO3)中にNa+イオンが固溶し相内におけるCa2+の拡散速度を増加させる.7〜10mol%で反応率が減少するのは, 石英のクリストバライトへの転移がCaSO4との反応に優先するためと考えられた.さらに添加量が増すと, NaClが鉱化剤として働き, 液相を介して反応が起こるため, 反応率が再び増大する.LiCl, KCl添加の場合もNaCl添加の場合とほぼ同様の傾向となる.
  • 岡崎 正之, 高橋 純造, 木村 博
    1983 年2 巻3 号 p. 284-289
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    F含有ヒドロキシアパタイトの物理化学的特性を検討するため, フッ素供給濃度の広範囲にわたってF含有アパタイトを合成した(80℃, pH7.4).X線回折および化学分析の結果, F含有量が2mmol/g(フルオロアパタイトのF含有量)以下ではF含有ヒドロキシアパタイトが生成し, それ以上ではフルオロアパタイトに混ざってCaF2が生成しているのが確められた.F含有ヒドロキシアパタイトの結晶性は, F-イオンを含まないヒドロキシアパタイトに比べて, F含有量とともにいったん増加した後, 比較的低F含有領域で大幅に減少し, フルオロアパタイトのF含有量に近づくにつれ再び増加した.一方, 溶解度は, 低F含有領域で急激に低下した後, 緩慢な減少を続け, F含有量が2mmol/g以上の領域ではほとんど変化しなかった.
  • 竹井 満久
    1983 年2 巻3 号 p. 290-297
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    電気的根管長測定法については, より正確な測定法の確立を目的として, 測定値に影響を与える変動要因についての検索が続けられているが, いまだ解析不十分な点が多く残されている.そこで著者は, 電気的根管長の測定に当り, 根管にリーマーを挿入した際のメーター指示値の変化様相を知る基礎的資料を得る目的で, 根管に相当するガラス管を電解質溶液として用いた生理食塩水中に立てて, その中にリーマーと同一材質のステンレス鋼線より作製した非被覆電極と被覆電極を挿入した際のインピーダンスの変化を市販電気的根管長測定器を用いて測定記録し, 電極と溶液との接触表面積およびガラス管内径の影響について検討した.その結果, ガラス管は抵抗として作用し, 内径が小さいほどその影響力は大きかった.非被覆電極に比べ被覆電極は溶液との接触表面積が一定となるため, 一定の被覆電極を溶液中のガラス管内に挿入したときのメーター指示値は, 電極の先端がガラス管内にあると, その影響を受けて低下したが, ガラス管外にあると必ず一定値となった.
  • 川口 稔, 福島 忠男, 宮崎 光治, 堀部 隆, 森澤 宣生, 羽生 哲也
    1983 年2 巻3 号 p. 298-301
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    新しい結晶性メタクリレートモノマー2.2-bis(4-methacryloxy cyclohexyl)propane(MCP)をメタクリル酸クロライドと2, 2-bis(4-hydroxy cyclohexyl)propaneとから合成し, MMA共重合体におけるMCP濃度と物性との相関を検討した.比較のため9mol%のSDMA, BPDMA-MMA共重合体の物性を測定した.結果は, MCPは濃度によってMMA共重合体の吸水率に変化を与えず, また, 圧縮強さやビッカース硬さは, MCPの濃度が増加すると向上し, その値はSDMAやBPDMA-MMA共重合体と同等ないしは上まわる値を示していた.
  • 原嶋 郁郎, 中西 敏, 立野 治雄, 平野 進, 平澤 忠
    1983 年2 巻3 号 p. 302-309
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    上顎および下顎レジン全部床義歯の作製において, 試圧下の重合用せっこう型内のレジン餅状物の圧力を圧力測定用シートを用いて測定した.その結果, 試圧荷重を400kgから1750kgまで増大させていくと, 上下顎粘膜面歯槽堤部および上顎床口蓋部では, 圧力が試圧荷重400kgで10〜20kg/cm2, 1750kgで35〜45kg/cm2へと荷重に応じて増大した.しかし咬合堤部では, 荷重によって餅状物を生ずる圧力に大きな変化は見られず, 試圧荷重を変化させても上顎で10〜14kg/cm2, 下顎で15〜20kg/cm2の圧力を示した.従来, 試圧には1750kg程度の比較的大きな荷重を用いることが多かったが, 以上の結果から試圧の目的の1つである細部への餅状物の填入に関しては, あまり大きな試圧荷重は必要ないことが示唆された.また, 試圧のもう1つの目的である余剰餅状物のバリとしての除去の面を考え合わせても, 試圧荷重を850kgとした場合でも試圧の目的は十分達せられるものと考えられる.
  • 木村 博, 荘村 泰治, 堤 修郎
    1983 年2 巻3 号 p. 310-317
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    第1報では, エナメル質のう蝕部はYAGレーザーの照射により健全部に比べ非常に穿孔され易い事をのべた.また黒く着色すると健全部でも穿孔が容易になる事は知られているが特にエナメル質ではその穿孔度が表面光沢度により大きく支配され, それ以下で急激に穿孔がおこる臨界光沢度が存在する事がわかった.一方象牙質ではこの傾向はそれ程顕著ではない.また1日から6日の人工う蝕を作成した牛歯における穿孔体積は, エナメル質では時間と共に増加するが, 象牙質では逆に30%程にまで減少してしまう.これはう蝕により有機質の比率が増加したためと考えられる.人歯う蝕部では, 照射面積強度の低いdefocus照射でもエナメル質う蝕部は容易に穿孔され穴壁部のガラス化が顕著である.この部分はマイクロラジオグラムでは軟X線の透過度が低くEPMAによる測定ではCa-Kα, P-Kαの強度が上昇しており密度の上昇が生じたと考えられる.
  • 斎藤 設雄, 桂 啓文, 神 達宏, 池田 政明, 邊 道〓, 村谷 繁
    1983 年2 巻3 号 p. 318-323
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    陶材焼成後の焼成物の表面に局在する応力は, 冷却方法に大きく依存すると考え, 冷却条件を(a)炉冷, (b)コップ内での冷却, (c)空気中放冷, (d)強制空冷とした際の焼成物の冷却時における温度変化, 熱膨張曲線および表面応力値を測定したところ, 次のような結論が得られた.1)温度変化測定の結果, 炉冷では試料の中央部と表層部との温度降下速度の差はほとんど見られない.また, コップ内での冷却および空気中放冷ではやや差が見られ, 強制空冷の場合には差が見られ, 温度差も100℃以上におよんでいた.2)200〜700℃までの平均熱膨張率は, 炉冷1.21%, 空気中放冷1.08%, コップ内での冷却1.05%, 強制空冷0.95%と順に小さくなった.3)試料の温度降下速度および中央部と表層部との温度差が応力の発生に影響している.4)表面応力測定の結果, 強制空冷8.5kg/mm2, 空気中放冷2.5kg/mm2の値が得られたが, コップ内での冷却および炉冷の場合には測定できず, 応力の発生がごく小さかったものと思われる.
  • 山田 敏元, 奥谷 謙一郎, 冨士谷 盛興, 高津 寿夫, 細田 裕康
    1983 年2 巻3 号 p. 324-328
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    2種の試作実習用人工歯材料の被切削性を客観的に評価して歯質のそれと比較するため, 高速切削用定荷重切削試験機を試作し, これにより切削試験を行ない, 切削時のタービン回転数の変化及び切削に要した時間を測定した.更に切削前後のバーの刃部をSEM観察したところ次の知見を得た.1.試作した定荷重切削試験機により人工歯材料の被切削性を, 切削時のタービン回転数の変化と切削に要した時間により客観的に評価することが可能となった.2.擬エナメル質として試作された2種の人工歯材料(コンポジットレジン系及びメラミン樹脂)は, 被切削性及び切削器具の磨滅度の点からしてもともに材質の改良が必要と思われた.3.切削器具の刃部の観察は, 人工歯材料の被切削性の結果を裏付ける証左となることが判明した.
  • 大澤 雅博, Knud D.JφRGENSEN
    1983 年2 巻3 号 p. 329-334
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    北欧で市販されている6種の付加型Silicone印象材の自由な重合収縮が, Mercury bath法により調べられた.それら印象材は収縮挙動から2つのグループに分類された.1)22℃の室温において練和開始後15分間に最大0.08%の収縮を示し, その後24時間の収縮が0.03%以下という寸法安定性の優れた材料と, 2)22℃の室温において練和開始後15分間に0.08%以上の収縮を示し, その後24時間の収縮が0.03%以上という大きな収縮を示す材料である.
  • 大澤 雅博, Werner FINGER
    1983 年2 巻3 号 p. 335-340
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    収縮挙動の異なった3種の付加型Silicone印象材を用いて, トレー内における印象材の実際的な収縮および自由な線収縮が測定された.次いで, 硬化途中の印象材の粘弾性がOscillating RheometerとCone-plate Rheometerにより調べられ, それらの関連が種々検討され, 次の知見が得られた.1)印象材の自由な重合収縮とトレー内での実際的な重合収縮とは一致しなかった.2)印象材の自由な重合収縮から, 石膏歯型の寸法精度を予知する事は困難であるが, 印象が歯型材を注入されずに放置された場合には, 自由な重合収縮時のカーブで見られる経時的寸法安定性は得られる歯型の寸法精度に大きな影響を与える.3)印象材の硬化中の流動性が充分高い場合には, 余剰の印象材のCompensating flowにより, 印象内で起る収縮は部分的に補償される可能性が示唆された.
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