気管支学
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38 巻, 1 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 坂田 能彦, 川村 宏大, 保田 祐子, 神宮 直樹, 久永 純平, 阿南 圭祐, 三井 士和, 岩本 範博, 一門 和哉
    2016 年 38 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.悪性胸水に対する胸膜癒着術において,海外ではタルクは標準治療である.本邦では2013年12月に発売された.日本人を対象とした検討はまだ少ない.目的.タルクによる胸膜癒着術の有効性と安全性,効果のリスク因子及び予後を検討すること.方法.2014年1月から2015年3月までにタルクによる胸膜癒着術を行った悪水胸水症例26例を,後方視的に検討した.投与法は全例Slurry法を用いた.有効性は国内第II相試験に準じて評価した.効果のリスク因子及び予後の検討では,死亡及び追跡不能例も無効群に加えた.最終投与症例の投与日から1カ月後を観察期間終了とした.結果.全26例のうち,死亡及び追跡不能例を除いた20例中16例が有効(80%)であった.発熱を26例中10例(38%)に認めたが,その他の重大な有害事象は認めなかった.効果のリスク因子の検討では,Performance Status(PS)不良及び低アルブミン(Alb)血症例で統計学的有意差を認め,宿主の全身状態不良は効果のリスク因子であった.PSと血清Alb値について,予後の追検討を行った.ROC曲線を用いたカットオフ値で各々2群に分けると,PS不良及び低Alb血症群は有意に予後不良であった.結論.今回の検討では,悪性胸水症例に対するタルクによる胸膜癒着術の有効性及び安全性に関しては既報に沿った結果であった.全身状態不良な症例について,施術が奏効しない可能性が示唆され,予後不良であった.投与の是非は症例の全身状態を鑑みて検討すべきである.
症例
  • 稲田 祐也, 眞本 卓司, 梅田 喜亮, 久保 寛明, 京本 陽行, 小川 未来, 後藤 充晴, 畠中 章五
    2016 年 38 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.ニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia:PcP)を契機にHTLV-1キャリアと判明し,その後急速に成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATLL)へ移行した症例を経験したので報告する.症例.61歳,女性.発熱,湿性咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部単純写真で右上肺野に浸潤影を認めた.市中肺炎の診断で抗菌薬を投与されたが改善を認めず,当科へ紹介受診となった.胸部単純CTで両上葉にすりガラス陰影と浸潤影を認めた.気管支鏡検査でPcPと診断し加療を行った.基礎疾患の精査を行ったところ抗HTLV-1抗体が陽性であったが,ATLLの確定診断には至らず,HTLV-1キャリアと診断した.しかし,血液検査のサザンブロット法でHTLV-1感染細胞は既にmonoclonalに増殖していることが示された.その後急速に両鼠径部のリンパ節腫大,直腸腫瘤の出現を認めATLLへ移行した.結論.HTLV-1キャリアにおいて日和見感染症を発症した症例では,ATLLへ移行する可能性があるため注意深い経過観察が重要と考えられた.
  • 大杉 純, 大和田 有紀, 佐藤 佑樹, 山浦 匠, 武藤 哲史, 岡部 直行, 松村 勇輝, 佐藤 俊, 長谷川 剛生, 横内 浩, 金沢 ...
    2016 年 38 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.外科治療が困難な難治性気胸に対して,シリコン製栓型気管支充填剤(Endobronchial Watanabe Spigot®:EWS)充填法は有効な治療法であるが,側副換気の存在により追加治療を要することがしばしばある.症例.59歳,男性.肺癌の術後再発治療中に間質性肺炎を発症し,ステロイド治療を開始した.その後左気胸を発症,胸腔ドレナージを施行するも改善しなかった.術後の間質性肺炎増悪のリスクを懸念し,EWS充填法を選択した.胸腔内造影,バルーンカテーテルによる閉塞試験により,責任気管支を同定,EWSを4個挿入した.気漏は減少したが消失せず,胸腔造影下fibrin glue閉鎖法(thoracographic fibrin glue sealing method:TGF法)を追加した後,気漏の停止が得られた.結論.難治性気胸に対して,EWS充填法とTGF法の併用療法は有用な治療法の1つであると考えられた.
  • 松井 秀記, 押谷 洋平, 上浪 健, 矢野 幸洋, 米田 勉, 好村 研二, 三木 啓資, 北田 清悟, 森 雅秀
    2016 年 38 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.肺放線菌症では皮膚胸腔瘻の報告は散見されるが,気管支胸腔瘻を併発した例は稀である.症例.70歳男性.約50年前に肺結核のため右肺中下葉を切除.湿性咳嗽を主訴とし,胸部X線写真で右上葉に空洞を伴う浸潤影を指摘され,当初は肺結核の再燃が疑われた.気管支鏡検査では右B6の切除後断端に白苔を認め,同部位からの生検で放線菌症と診断した.Sulbactam/Ampicillinの投与により改善するも,その後喀血し,気管支動脈塞栓術を行った.治療開始1年後の気管支鏡検査では,右B6は白苔が消失し,B6とB2の内腔は拡張して気管支胸腔瘻を形成し,胸腔内に灰色の菌体組織を確認した.抗菌薬の治療は40か月間で中止し,その後病状の悪化はない.結論.肺放線菌症で気管支胸腔瘻を生じる経過を追えた.
  • 片山 伸幸, 中村 暁子, 新谷 博元, 笠原 寿郎
    2016 年 38 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.気瘤は,主として幼児期や小児期に気道感染によって起きる肺内の薄壁含気腔である.気道異物による気瘤の症例報告は稀である.症例.70歳,男性.慢性閉塞性肺疾患,気管支喘息にて通院加療中で,気管支喘息発作にて入院し,治療を受けた.退院となったが,翌朝より血痰がみられるようになった.胸部X線写真を撮影したところ左下肺に嚢胞性病変がみられた.胸部CT画像にて,左肺舌区に液体貯留を伴う気瘤がみられ,左下葉気管支内腔に異物を認めた.気管支内視鏡による処置を予定していたが,血痰とともに豆を喀出した後,血痰と気瘤の消失が確認された.退院日に自宅で豆を食べていたことから,豆を誤嚥したことにより気瘤を生じ,血痰を喀出していたものと判断した.結論.気道異物によって発生した気瘤の1例を報告した.
  • 森田 琢也, 花岡 伸治, 佐藤 澄, 市橋 良夫, 立花 秀一, 林 哲也, 時津 浩輔
    2016 年 38 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.瘻孔が大きくEWSによる気管支充填ができない気管支瘻性膿胸症例では,EWSに対する工夫が必要となる.症例.77歳,男性.2007年12月肺アスペルギルス症による荒蕪肺に対し左肺上葉切除術を施行した.術後有瘻性膿胸を発症し左B5気管支瘻直接縫合+前鋸筋弁充填術を行い軽快退院した.2014年9月左B6a+cの有瘻性膿胸に対し開窓術を行った後,同気管支にEWSの充填を試みたが瘻孔の径が太過ぎたため,EWSにポリグリコール酸を材料とした吸収性縫合補強材を巻き付けて直径を太くし,把持突起に縫い付けたナイロン糸を膿胸腔から引き込むことで強固に固定できた.前外側大腿筋皮弁を充填して手術を終了した.術7カ月経過後,EWSの移動は認めていない.結論.瘻孔部が短く順行性の留置が困難な気管支瘻に対して,ポリグリコール酸不織布(ネオベール)縫着逆行性EWS留置法は有用であった.
  • 桂田 直子, 三沢 昌史, 鈴木 史, 渡邊 純子, 桂田 雅大, 青島 正大
    2016 年 38 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.肺癌術後の新たな肺門・縦隔リンパ節腫大はしばしば経験されるが,必ずしも術後再発によるものとは限らない.症例.78歳女性.右上葉肺癌(pT1aN0M0, p-stage IA)の手術15か月後に,18F-fluorodeoxy-glucose positron emission tomography/computed tomography(FDG-PET/CT)検査で異常集積を伴う縦隔リンパ節腫大を認めた.肺癌術後再発の可能性を考え,#7リンパ節に対するEBUS-TBNAを施行したが,病理組織学的に乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を認めた.QuantiFERON® TB-3Gも陽性であり,縦隔リンパ節結核と診断した.抗結核薬で治療を行ったところ,治療6か月後のPET/CT所見で腫大リンパ節は縮小し,FDG異常集積も消失した.結語.肺癌術後に肺門・縦隔リンパ節腫大を認めた場合,リンパ節転移再発のみならず他疾患も鑑別に入れ,EBUS-TBNAを用いた組織検体採取により確定診断を得ることが勧められる.
  • 祢木 芳樹, 栗林 康造, 間瀬 浩史, 本田 実紀, 金村 晋吾, 堀尾 大介, 藤本 英利子, 幸田 裕一, 守屋 友美子, 中村 智子 ...
    2016 年 38 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    背景.サルコイドーシスの胸部X線所見として,単結節影は非常に稀であり非典型的所見とされる.また縦隔リンパ節腫脹に対して確定診断を得る方法として,近年超音波気管支鏡ガイド下針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)の有用性が確立しつつある.症例.49歳女性.右背部痛を主訴に近医受診.胸部X線にて右上肺野に約20 mm大の単結節影を認め,当科紹介初診.胸部CTでは右肺門・縦隔リンパ節の腫大も認められ,FDG-PETの画像所見も合わせて右上葉の原発性肺癌が強く疑われた.確定診断目的にEBUS-TBNAを含む気管支内視鏡検査を施行したところ,右S3の単結節には悪性所見は認められず,EBUS-TBNAを施行した#2Rリンパ節から非乾酪性肉芽腫病変を認めた.EBUS-TBNAで得られた所見と以降の精査とを合わせて,サルコイドーシスの確定診断を得た.結語.画像所見上FDG強陽性を呈する単結節影に対して,EBUS-TBNAを含む気管支内視鏡検査を施行する際には,非常に稀ではあるがサルコイドーシスも鑑別診断として考慮し,確定診断が得られるように検査を進める必要がある.
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