気管支学
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38 巻, 4 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
表紙
会告
目次
巻頭言
追悼
論評
原著
  • 香川 友祐, 曽根 一輝, 中尾 心人, 鈴木 悠斗, 黒川 良太, 村松 秀樹
    2016 年 38 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.びまん性肺疾患では気管支鏡検査が診断の一助となる一方で,急速に呼吸不全が進行する症例では十分な検査を施行できない場合がある.呼吸不全を伴うなかで気管支鏡検査を実施する際には,従来,鼻カニュラや非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)による酸素投与下に検査が行われてきたが,供給できる酸素濃度の限界や忍容性,検査手技の操作性が問題となり検査を遂行できない症例もある.びまん性肺疾患においてネーザルハイフローシステム(nasal high flow:NHF)による酸素供給下での気管支鏡検査の有用性については,これまで報告がない.目的.呼吸不全を呈するびまん性肺疾患患者において,NHF使用下での気管支鏡検査の安全性,忍容性や有用性を評価する.方法.当院にて2012年12月中旬~2015年4月上旬に,びまん性スリガラス状陰影を伴う急性呼吸不全患者のなかで,NHF使用下気管支鏡検査にて気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)または経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)を試みた16例について,診療録より後方視的に検討した.結果.受診から検査実施までの日数は中央値で2日であった.1例を除く15例では忍容性が保たれ,呼吸不全に対応しながら検査を行うことができた.BALは14例,TBLBは6例実施された.NHFの使用と関連する明らかな偶発症は認めなかった.全例で直接または間接的に診断に寄与する結果が得られた.結論.呼吸不全を呈したびまん性肺疾患患者におけるNHF使用下気管支鏡検査は,有用で安全な方法の1つと考えられた.適応の確立と適切な症例選択のため,さらなる症例の蓄積と検討が必要と考える.

症例
  • 松村 琢磨, 津島 健司, 松村 茜弥, 安部 光洋, 鈴木 敏夫, 寺田 二郎, 多田 裕司, 巽 浩一郎
    2016 年 38 巻 4 号 p. 272-277
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.胸膜サルコイドーシス(以下サ症)の報告は稀である.局所麻酔下胸腔鏡で癌性胸膜炎に類似する所見を呈した胸膜サ症を経験したため,報告する.症例.70歳代女性.検診で縦隔リンパ節腫脹を指摘された.前医において18FDG-PETで全身リンパ節への多発性集積亢進を認め,全身麻酔下胸腔鏡でサ症と診断された.一カ月後の当院転医時,右滲出性胸水を認めた.局所麻酔下胸腔鏡を施行し,壁側胸膜に顆粒状隆起性病変・小粒状病変・毛細血管増生を認めた.胸膜生検の迅速捺印細胞診は腺癌疑いで癌性胸膜炎が考えられ,リンパ節腫脹はサ症以外にサルコイド反応の可能性が考えられた.しかし,全身検索では悪性腫瘍を認めなかった.気管支鏡所見はサ症に矛盾せず,胸膜生検の最終病理では,非乾酪性類上皮肉芽腫及び多核巨細胞を認め,悪性所見は認めなかった.以上より,胸水及び胸膜病変は胸膜サ症と診断した.結語.胸膜サ症の胸腔鏡所見は癌性胸膜炎に類似することがあり,留意が必要である.

  • 豊田 行英, 藤原 大樹, 田村 創, 高橋 好行, 飯田 智彦, 柴 光年
    2016 年 38 巻 4 号 p. 278-284
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.超音波気管支鏡下経食道的針生検(endoscopic ultrasound with bronchoscope-guided fine-needle aspiration:EUS-B-FNA)は,食道に接する胸腔内および縦隔病変の診断に有用であることが報告されている.症例.70歳男性.発熱と咳嗽を訴え,胸部CTで右胸腔内に最大径50 mm大の多発する胸膜腫瘤影を指摘された.FDG-PETでは腫瘤にFDG異常集積を認め,肺癌胸膜播種や悪性胸膜中皮腫などが疑われた.腫瘤が気道に接しておらず,食道に接していたため,通常の気管支鏡では診断が困難と考え,超音波気管支鏡を用いて経食道的に腫瘤を生検した.組織学的には好酸性の胞体を有する上皮性異型細胞集塊を認め,免疫組織学的にcalretinin,WT-1陽性,CEA,Ber-EP4陰性であった.胸腔鏡下生検で脂肪層を含めた壁側胸膜全層検体による腫瘍の再評価を行い,上皮型悪性胸膜中皮腫と診断した.結論.EUS-B-FNAにて上皮型悪性胸膜中皮腫の病理診断に十分な腫瘍組織の採取が可能であった.食道に近接する上皮型悪性胸膜中皮腫の診断にEUS-B-FNAは有用である.

  • 有村 保次, 北村 瑛子, 土田 真平, 松尾 彩子, 小田 康晴, 坪内 拡伸, 坂元 昭裕, 今津 善史, 飯干 宏俊, 床島 眞紀, ...
    2016 年 38 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.肺放線菌症は気管支鏡検査による診断率は低いことが報告されている.症例.62歳女性.入院3週間前より血痰が出現した.近医にて胸部単純X線と胸部CTで右上葉に腫瘤影を指摘され,他医に入院した.気管支鏡検査を施行されたが診断に至らず,血痰の持続と腫瘤影の増大を認め当院へ紹介された.入院時,未治療の糖尿病と齲歯を認め,胸部CTで右上葉に低吸収域を伴う腫瘤影を認めた.肺放線菌症も鑑別に考え,腫瘤深部の検体採取も考慮し,ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(endobronchial ultrasonography with a guide-sheath;EBUS-GS法)併用の気管支鏡検査を施行した.気管支擦過物の細胞診よりイオウ顆粒を認め,肺放線菌症と診断した.結論.肺放線菌症を疑った際には,病巣深部からの検体採取が必要であり,EBUS-GS法併用による気管支鏡検査が診断に有用であった.

  • 畑 亮輔, 山﨑 啓, 白石 朝子, 川波 敏則, 石本 裕士, 矢寺 和博, 迎 寛
    2016 年 38 巻 4 号 p. 291-295
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.肺胞蛋白症は,肺サーファクタントの生成や分解過程の障害により生じ,標準治療として,全身麻酔下に全肺洗浄が行われる.症例.47歳,男性.労作時呼吸困難と咳嗽を主訴に近医を受診した.労作時呼吸困難と胸部CTですりガラス陰影を伴う小葉間隔壁の肥厚(crazy paving appearance)が認められ,気管支鏡検査で白濁した気管支肺胞洗浄液が得られ,経気管支肺生検で肺胞領域にPAS陽性の無細胞性好酸性物質の充満所見が認められたため,肺胞蛋白症と診断された.治療目的に当科紹介となり,左B5a,右B5aの区域洗浄を二期的に施行した.洗浄後2カ月の胸部CTでは,洗浄部位に加えて両側下葉の非洗浄領域にも陰影の改善を認めた.結論.区域洗浄は,肺胞蛋白症の治療選択肢の1つであるが,自己免疫性肺胞蛋白症に対する区域洗浄後に,経過から自然軽快と考えにくい非洗浄領域の改善を認めた1例を経験した.今後のさらなる症例の集積および詳細な病態生理学的検討が期待される.

  • 石﨑 俊介, 小林 隆之, 佐藤 峻, 瀧口 恭男
    2016 年 38 巻 4 号 p. 296-300
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.気管支放線菌症は稀な疾患であり,主に異物によって発症することが知られている.治療には,抗菌薬の長期投与とともに異物の除去が重要とされている.症例.74歳男性.進行肺癌により,呼吸不全に至る右中間幹閉塞をきたし,金属ステントを留置した.長期生存が得られ,5年後ステント留置部位に気管支放線菌症を合併した.抗菌薬では軽快せず,低酸素血症を伴うようになったため,気道ステントを生検鉗子により小片ずつ除去した.結果.気管支放線菌症は治癒し,抗菌薬も中止可能であった.その後2年にわたり増悪を認めていない.結論.気管支放線菌症の加療に関しては,従来の報告通り,異物の除去が重要である.しかし,金属ステントの抜去に関しては,重篤な出血や粘膜損傷などの危険性を伴うことから,実施に際しては慎重な検討が必要と思われた.

  • 小寺 祐貴, 横尾 慶紀, 矢部 勇人, 小橋 沙也香, 田中 康正, 山田 玄, 高橋 弘毅
    2016 年 38 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.先天性食道閉鎖症は多くに気管食道瘻を合併する.多くは新生児期に手術療法を行うが,小児期に食道気管瘻が再開通することがある.症例.35歳女性.新生児期にGross C型先天性食道閉鎖症の手術を受けた.しかし,高校生の頃から肺炎を繰り返すようになった.近医で気管支拡張症と診断されていたが,肺炎を反復するために当科に精査入院となった.胸部X線では左下肺野に浸潤影を認め,胸部CTでは左下葉に限局する囊胞状の気管支拡張症と内腔の液面形成を認めた.また周囲には肺炎像も伴っていた.気管支鏡では気管膜様部に瘻孔を認めたため,気管食道瘻の再発を疑い上部消化管の精査を行った.上部消化管内視鏡では上部食道の前壁に瘻孔を認め,食道造影検査では造影剤が食道瘻孔を通じて気管から左下葉気管支へ流入する所見を認めた.以上から気管食道瘻の再開通と診断し,食道瘻孔部直接縫合閉鎖術を行った.気管支拡張症は長期間の感染の反復により形成されたと考えた.結論.先天性食道閉鎖症の手術歴のある患者が呼吸器感染症を繰り返す場合は,気管食道瘻の再開通の可能性がある.

  • 西原 昂, 白山 敬之, 岡本 紀雄, 西田 拓司, 田中 彩子, 葉山 学, 田宮 基裕, 森下 直子, 鈴木 秀和, 平島 智徳
    2016 年 38 巻 4 号 p. 306-309
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.胸水貯留を契機として前立腺癌が診断されることは稀である.今回,局所麻酔下胸腔鏡検査を用い,胸膜生検により診断し得た前立腺癌の症例を報告する.症例.86歳,男性.咳嗽・労作時呼吸困難感・体重減少を主訴に近医を受診し,右大量胸水を指摘され当院を紹介受診した.血尿や尿閉といった泌尿器症状は認めなかった.胸部CT検査で右胸水貯留と胸膜多発腫瘤を認めた.局所麻酔下胸腔鏡検査で壁側胸膜に表面平滑な大小の隆起性病変を認め,生検を行った.その病理組織学的所見も参考にして前立腺癌胸膜転移と診断.泌尿器科受診後,内分泌療法が開始された.結論.胸水貯留を契機に局所麻酔下胸腔鏡で診断された前立腺癌の1例を経験した.高齢男性の胸水症例では前立腺癌も鑑別診断として挙げる必要があり,胸腔鏡下胸膜生検はその診断に有用である.

  • 田中 悠祐, 田中 優子, 小寺 祐貴, 山添 雅己, 高橋 隆二
    2016 年 38 巻 4 号 p. 310-314
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.肺囊胞症に感染を来した場合の多くは内科的治療で改善するが,排膿が困難な場合には治療に難渋することがある.症例.76歳男性.感染性肺囊胞に対して約6週間の抗菌薬投与を行ったが,囊胞内の膿瘍は減少せず病態の改善は得られなかった.X線透視下に気管支鏡を施行したところ囊胞内と交通する気管支を認めたため,気管支充填術を施行し,さらに経皮的に囊胞内にドレーンを留置した.結果.ドレーン留置による排膿と囊胞内洗浄を行い,炎症反応の改善を認め,自己血注入により囊胞内癒着を施行してドレーンを抜去した.結論.抗菌薬不応の感染性肺囊胞に対して,気管支充填術施行下でのドレーン挿入による排膿及び囊胞内洗浄は,他部位への炎症の波及や気胸の合併予防ができ有効な治療法と考えられる.

  • 佐藤 伸之, 石橋 直也, 阿部 皓太郎
    2016 年 38 巻 4 号 p. 315-318
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.肺粘表皮癌は稀な疾患で悪性度によって予後が大きく異なる.症例1.58歳女性,肺腺癌として右肺上葉切除を施行したが術後に低悪性度粘表皮癌と診断された.2年無再発生存中.症例2.35歳女性,検診で左肺門部の腫瘍を発見,リンパ節転移を伴う高悪性度粘表皮癌の診断で左肺全摘術を施行したが,術後に骨,頸部リンパ節に再発した.結論.粘表皮癌の術前診断は難しいとされてきたが,最近の報告では6割が気管支鏡下に診断されている.7割は低悪性度で完全切除することにより治癒が望めるが,高悪性度の予後は不良で有効な集学的治療法を確立しなくてはいけない.

  • 本野 望, 田中 良, 町田 雄一郎, 前田 寿美子, 薄田 勝男, 佐川 元保
    2016 年 38 巻 4 号 p. 319-323
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.肺葉切除後の気管支断端瘻の治療には難渋することがしばしば経験される.症例.患者は80歳,女性.左肺下葉切除10か月後に気管支断端瘻疑いにて当科に入院,胸腔ドレナージを開始,胸水から細菌が検出された.胸腔ドレーンから色素を注入後に左下葉気管支断端から色素の漏出を認め,気管支断端瘻と診断した.気管支鏡下に1%ポリドカノールを気管支断端の粘膜下に注入し,2日後に気漏の停止を認めた.気漏の再燃を認めなかったため,胸腔内洗浄と抗菌薬投与を行い,膿胸腔は縮小し無菌化を確認した.4週間気漏がない状態が続いたため胸腔ドレーンを抜去し,その後の気管支鏡所見で気管支断端の瘢痕性癒着と瘻孔閉鎖を確認し,独歩退院した.退院後10か月が経過しているが,気管支断端瘻の再燃を認めていない.結論.気管支鏡下のポリドカノール粘膜下注入は簡便かつ低侵襲であり,気管支断端瘻の閉鎖に有効な場合がある.

  • 鳥羽 博明, 監崎 孝一郎, 滝沢 宏光, 先山 正二, 近藤 和也, 丹黒 章
    2016 年 38 巻 4 号 p. 324-327
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル フリー

    背景.急速に増大する巨大気腫性肺囊胞に対して,囊胞内吸引療法後にEWSと囊胞内のフィブリン糊注入により軽快した1例を報告する.症例.70歳代男性.塵肺症にて在宅酸素療法導入中.右気胸にて計3回の加療歴あり.主訴は進行性の安静時呼吸困難.入院時PS:4,mMRC:グレード4.左肺癌と癌性胸膜炎を合併.CTにて進行する右巨大気腫性肺囊胞を認め,それによって残存肺が圧排されていた.CTガイド下囊胞内吸引療法を施行.それにより残存肺の膨張が得られた.囊胞よりの気漏が持続したため,EWS留置後,ドレーンよりフィブリン糊の囊胞内注入を行ったところ,気漏は停止し,ドレーンを抜去できた.CTでは巨大気腫性肺囊胞は著明に縮小し,自覚症状は改善した.退院時PS:3,mMRC:グレード3.結論.本症例のようなハイリスクで対側の癌性胸膜炎を有する症例に対して,手術を施行せずに,囊胞内吸引療法後にEWSとフィブリン糊囊胞内注入により手術を回避し,内科的治療にて治癒せしめることができた.

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