日本緑化工学会誌
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34 巻, 2 号
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特集
特集
論文
  • 辻 盛生, 平 塚明, 佐野 嘉彦, 鈴木 周
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 2 号 p. 375-383
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/17
    ジャーナル フリー
    東京都心のビル屋上において,アゼスゲ(湿生区)とノシバ(シバ区)の試験区を設け,温度上昇抑制効果及び熱収支特性を評価した。その結果,シバ区,湿生区の屋上面の夏期晴天時の平均温度は平均気温より低く,屋上面の熱流の発生量も少なかった。さらに,湿生区の屋上面の温度はシバ区に比べ0.5~0.7℃ 程度低く推移する傾向が見られた。湿生区は,群落内の温度が外気温よりも低くなり,蒸発散による潜熱と,アゼスゲ地上部による日射の遮蔽によって,冷却が効率的に行なわれていることが明らかになった。群落内の低温は,群落上にも影響を与え,屋上面の温度上昇抑制だけではなく,群落上の冷却という形でヒートアイランド現象を緩和することが示唆された。湿生区は潜熱の発生量が多く,顕熱と植生基盤の蓄熱量の和はマイナスの値をとる期間が多くなったことから,熱収支からも冷却効果を裏付ける結果を得た。
  • 細木 大輔, 中村 勝衛, 亀山 章
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 2 号 p. 384-394
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,植生基材吹付工と植生マット工の施工後の植生遷移と外来緑化草本の消長について施工後8 年間調査を行って把握した。湿潤な岩盤切土法面において,初期緑化目標を低木林群落に設定し,外来緑化草本,在来緑化草本,在来緑化木本の種子を配合して緑化施工した。植生基材吹付工の試験区は,吹付厚を1cm,3cm,5cm に設定した。試験に供した法面では,植生遷移が起こるのに必要なシードレインが確認された。被覆率の結果から,吹付3cm 区および5cm 区では施工当年において良好に緑化がなされたと判断され,吹付1 cm 区とマット1 区は施工後3 年目には緑化がなされたと判断された。吹付3cm 区以外では,3 年目には導入した先駆性木本類が優占して低木層を形成したことから,初期緑化目標が達成されたと判断された。施工後5 年目に在来緑化木本の除伐を行った後の8 年目の時点では,吹付1cm 区とマット1 区では外来緑化草本は消滅したが,吹付3cm 区と5cm 区ではクリーピングレッドフェスク(Festuca rubra Linn.)が比較的高い被度で出現しており,吹付5cm 区では同種の被度が12.0% であった。本研究の結果からは,施工当年の被覆率の成績だけを見た場合には,植生基材吹付工の厚さ3cm と5cm の試験区が,導入した外来緑化草本が良好に生育しており良い成績であったが,緑化目標の達成と外来緑化草本の消滅について考えた場合,植生基材を薄く吹いた吹付1cm 区と,植生基材を使用しないマット1 区において成績が良かったと結論づけられた。
技術報告
  • 石田 仁, 山本 あゆみ
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 2 号 p. 395-398
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/17
    ジャーナル フリー
    岐阜県飛騨地方にある岐阜大学位山演習林内のスギ人工林伐採跡地において,低コスト森林更新の研究の一環として山引苗の植栽試験を行った。山引苗は,主に天然更新稚樹が高密度に分布する林道沿いで採取した(総数392 本,低木7 種,小高木5 種,高木31 種)。その多くは,刈り払いの痕跡が認められたが,地上部に対し地下部が大きく苗の活着に有利であると予想された。植栽当初,98.0% の苗が活着したが,生育期末には61.0% の苗が獣害を受けていた。他の植物に被陰されている苗とされていない苗の獣害率は前者で低かった。植栽当年の生育期末の苗の生存率は92.6% と高く,適度な耐陰特性を有する陰樹の植栽苗を用いれば,針葉樹人工林伐採跡地の森林再生において山引苗を活用できることが示唆された。
  • 鈴木 弘孝
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 2 号 p. 399-408
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/17
    ジャーナル フリー
    本研究は,東京都心部に実在する街区をモデルとして,樹木なしの場合(ケース1)に対して,同じ樹木本数の配置方法を街区の南西部に集中的に配植した場合(ケース2)と空地部分に均一に配植した場合(ケース3),ケース3 に加え建物南西面を地上50 m まで壁面緑化した場合(ケース4)についてシミュレーションを行い,街区内での夏期の温熱負荷の違いを表面温度,MRT(平均放射温度),HIP(ヒートアイランドポテンシャル)について算出し,比較検討した。解析の結果,ケース1 に対して,ケース3 ではピーク時でHIP が約5℃ 低減し,ケース2 ではさらに約1℃ の低減が見られ,街区の南西部へ樹木を集中的に植栽する方法のピーク時における顕熱負荷低減への有効性が示された。また,樹木緑化に壁面緑化を加えることでケース3 よりもさらにHIP は1℃ 低減し,樹木緑化との相乗的な負荷低減効果を定量的に評価することができ,街区レベルでの熱負荷の少ない緑化の計画・設計への応用可能性が示唆された。
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