土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
69 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第30巻(特集)
  • 遠藤 学史, 日比野 直彦, 森地 茂
    2013 年69 巻5 号 p. I_523-I_532
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    首都高速道路のような環状道路の整備が進んだ都市高速道路ネットワークでは,一つのODに対し複数の経路が存在している.利用者は様々な情報を総合的に判断し,最適な経路を選択すると考えられる.一方,近年のETC利用率の増加によりETC-ODデータを用いた交通行動の分析が可能である.また,高速道路上のフリーフローETC(FF-ETC)アンテナを介し通過地点情報を取得することにより,利用者の選択経路状況を観測することも可能となる.本研究は,首都高速道路を対象にFF-ETCデータを用い,ETC-ODデータ,車両感知器データおよび事故・故障車情報等から一般化平均概念を用いた経路選択モデルの構築し,利用者の経路選択行動要因を分析するものである.
  • 日比野 直彦, 佐藤 真理子, 森地 茂
    2013 年69 巻5 号 p. I_533-I_543
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    様々な調査主体により,観光に関する複数の統計調査が実施されている.しかしながら,これらの調査の対象,サンプル数,調査方法等の違いから同一の質問項目であっても調査結果が異なり,観光動向の実態が正しく把握できていないという問題が発生している.今後の観光マーケティングや観光政策の立案に向けては,各調査の特性を整理し,それらを踏まえた定量的な分析に基づき,実態をより正確に把握することが重要である.本研究では,複数の統計調査の個票データを用い,それらを比較することにより,各統計の特性を明らかした.さらに,その特性を踏まえた国内宿泊観光行動の時系列分析を行い,温泉浴の今後の動向を明示した.また,都市間交通統計との比較も行い,組み合せの可能性を示した.
  • 倉嶋 祐介, 近藤 隆二郎
    2013 年69 巻5 号 p. I_545-I_553
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,これまで評価がなされることが少なかったバスに対する主観的評価のうち,安心感や雰囲気といったような評価を,特に利便性等の機能面の評価に対比して意味面の評価として着目し,路線バスに対する具体評価・概念評価を問うたアンケート調査を分析することでこれを明らかにした.テキストマイニングによる図示や数量化III類分析によるグルーピング,SDプロフィールによる図示の各分析を行うことで意味面の評価構造を明らかにし,その活用に向けての考察を示した.調査は滋賀県彦根市の路線バスの利用者・非利用者を対象に実施した.
  • 土倉 悟, 中山 晶一朗, 高山 純一
    2013 年69 巻5 号 p. I_555-I_562
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    道路ネットワークのサービスの評価において,道路ネットワークの信頼性についての評価の重要性が高まっている.しかし,信頼性の概念は様々なものがあり,それらをまとめて評価することはこれまであまり実施されてこなかった.本研究では道路の信頼性として代表的な時間信頼性と連結信頼性を取り上げる.そして,それら時間信頼性と連結信頼性を統合した期待総旅行コストを定義し,時間信頼性と連結信頼性の統合評価方法を提案する.この2つの信頼性を評価することができる確率的な均衡配分を用いて,道路ネットワークのリンク追加による便益向上を評価する方法を構築する.さらに,金沢市道路ネットワークに適用することで構築した統合評価法や配分モデルの利用可能性などを考察する.
  • 佐藤 仁美, 酒井 良輔, 三輪 富生, 森川 高行
    2013 年69 巻5 号 p. I_563-I_570
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,2009年に名古屋市にて実施された,コミュニティサイクルシステム(CCS)の社会実験によって得られたデータから利用状況を把握することが1つめの目的としている.さらに,CCS実現のキーポイントとなる適切なステーション配置の設計に貢献することを2つめの目的とし,ステーションごとの潜在需要を含む貸出頻度モデルを構築し,どのような場所にステーションを配置すべきかを分析する.その結果,名古屋都心部の土地利用や都市機能の配置が,CCSの利用目的にも如実に表れており,ステーション配置を検討する際には,沿道状況や土地利用状況を考慮することが利用を促進する上で重要であることが分かった.
  • 大川 高典, 吉田 長裕, 日野 泰雄, 内田 敬
    2013 年69 巻5 号 p. I_571-I_578
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,車道上に自転車通行空間の整備が始まっているが,新たな通行空間における利用者特性は明らかになっていない.今後,通行環境を自転車に配慮して設計するためには,特に利用時の視線や挙動,さらにはそれらの関係を把握しておく必要がある.本研究では,自転車専用通行帯(以下,自転車レーン)の整備された地区において,自転車利用者の視線と挙動を計測する実験を行った.視線特性と情報提供との関連性を分析した結果,自転車レーンでは歩道上と比較して利用者が安定して高速走行していること,走行速度が高くなると遠くを見やすく,水平方向の視野が狭くなりやすい傾向が示された.これらの結果に基づき,走行速度と周辺への注意に関する仮説を示し,自転車通行空間における利用者特性を考慮した,路面表示等の設置に対する考え方を提案した.
  • 吉井 稔雄, 高山 雄貴, 松本 洋輔
    2013 年69 巻5 号 p. I_579-I_586
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本稿では,高速道路ネットワークを対象とし,定点観測による観測値の獲得を実施要件とするランプ流入制御手法の有効性を検証する.検証では,オンランプ入口における一部車両の一般道路への経路変更挙動を考慮したシミュレーション解析を行い,高速道路ネットワークにとどまらず,一般街路への影響も考慮した上で評価を実施する.その結果,提案した制御の実施が,高速道路ネットワークの円滑性を向上させるとともに,高速道路への流入台数を増加させ,一般道路の交通量を減少させる,すなわち,流入交通量を制御した高速道路上にとどまらず,一般道路ネットワークの混雑緩和効果をもあわせもつ可能性があることを示した.
  • 松本 修一, 清水 太朗, 國府方 久史, 大門 樹, 川嶋 弘尚
    2013 年69 巻5 号 p. I_587-I_594
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,電気自動車(EV)の消費電力量を最小化する配車配送問題におけるより効率の良い巡回路算出のために,配送計画問題であるVRPにおけるメタヒューリスティクス解法の一つであるSA法の基本的な枠組みを用いて,積載荷重の変化,道路の勾配を考慮した最少消費電力巡回路算出アルゴリズムの作成を行った.
    この手法を用いて,現実の道路ネットワークにおける標高を考慮した問題を解いたところ,最少消費電力巡回路は最短巡回路と比較して消費電力量についてより良好な解を出力することができた.これらのことから,本研究で提案した配送計画問題において積載荷重の変化,道路の勾配を考慮する手法の有用性を示唆することができた.
  • 森田 泰智, 森地 茂, 伊東 誠
    2013 年69 巻5 号 p. I_595-I_611
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,東京の都心駅周辺で急速に都市開発が進展し,これにより,駅施設の処理能力を上回る旅客のホーム上での滞留が発生するなど,鉄道駅で激しい混雑が見られるようになった.しかし,上記の駅周辺での都市開発の進展は,駅施設に急激な負荷をかけることとなるが,駅施設が交通量の増加にどこまで耐えられるのかについて,曖昧で把握されていない.そこで本研究では,都心駅周辺の急速な都市開発による鉄道駅の激しい混雑への対応に向けて,駅構内の混雑の実態調査を行い,ピーク時における駅施設(本研究では,駅構内で最も混雑する場合が多いホームの昇降施設等に着目)で刻々と変化する旅客の捌け方を秒単位で計測し,駅昇降施設が許容できる交通量(本研究では,最大捌け人数と定義)を検討した.
  • 谷口 守, 肥後 洋平, 落合 淳太
    2013 年69 巻5 号 p. I_613-I_620
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    地方分権化が進み,都市計画における市町村の役割が非常に高まっている.低炭素社会を実現していくためには,各市町村が都市の低炭素化の実態を把握したうえで,都市計画マスタープランにおいて適切な政策を掲げていく必要がある.本研究では,都市ごとの一人当り自動車CO2排出量の変遷を最新のデータを踏まえ明らかにした上で,経年的比較が可能なモデルの構築を通じその要素を把握し,都市マスにおける政策の構成要素との対応関係をみることで,政策方向性を検討した.分析の結果,都市の一人当り自動車CO2排出量は一部で減少に転じたことが分かった.排出量を決める要因として人口密度や都市構造以外に,自家用車保有率が強く影響を及ぼしており,これらの要因を都市計画マスタープランの中で取り上げていくことの一層の重要性が示された.
  • 伊藤 雅
    2013 年69 巻5 号 p. I_621-I_628
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    路面電車の軌道緑化は,都市景観の創出,ヒートアイランドの緩和,騒音の抑制など様々な効果をもたらしている.本研究では,2007年度から本格的に軌道緑化がなされ,2012年度末には道路延長にして8.9kmの併用軌道区間全ての緑化が完成するという,日本で最も整備が進んでいる鹿児島市の路面電車沿線住民を対象として,軌道緑化に対する住民意識に関するアンケート調査を実施した(有効回答数327世帯).その結果,軌道緑化の整備が進むにつれ市民の評価意識は高まり,公的事業としての軌道緑化事業の実施推進や税金利用に対する意識の向上を促していることがわかった.また,アンケートによる支払意思額にもとづいて軌道緑化の環境価値を推計したところ,年間数億円程度の便益がもたらされている可能性を示した.
  • 山口 裕通, 奥村 誠, TIRTOM Huseyin
    2013 年69 巻5 号 p. I_629-I_638
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    我が国では,今後都市間交通の利用者は減少することが予想される.利用者減少による都市間交通のLOS(Level of Service)低下は,さらなる都市間の移動者数減少の要因となり,地方都市の活力の低下や衰退につながる恐れがある.地方自治体は公的資金を用いつつ都市間交通LOSを維持し,このような事態の進展を防ぐことが求められる.限られた財源でアクセシビリティの維持・向上を図るには,地方自治体は可能な限り都市間交通ネットワークの集約・効率化を検討し,ターゲットを絞った施策が求められる.この絞り込むターゲットを検討する際,リンクのLOS変化に対する,ゾーン発生集中交通量の変化率として定義する「LOS弾力性」が有用である.本研究では,この「LOS弾力性」の推計手法を提案し,LOS弾力性を踏まえた都市間交通施策を検討した.
  • 曽根 慎太郎, 紀伊 雅敦, 土井 健司
    2013 年69 巻5 号 p. I_639-I_648
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    四国の鉄道は速達性の面で自動車に対する競争力が低く,モータリゼーションの進展および人口減少と相まって利用者数は大きく減少し,地域ネットワークの維持が困難となっている.鉄道は持続的発展を図る戦略インフラとして,また人々の移動権を確保する基礎的社会インフラとしての役割が期待されており,その維持・改善方策として高速鉄道の導入が検討されている.本研究では,四国圏における鉄道の持続可能性と高速化の意義を明らかにすることを目的とし,香川を起点とする四国高速鉄道導入の効果を,高速シナリオを設定したうえで2035年までの人口動態をもとに,経済的効率性・社会的公平性の観点から定量的に分析した.成果として,高速鉄道導入は鉄道事業者の財務状況の改善と鉄道利用者のサービス水準の向上に一定の効果をもたらすことが示された.
  • 村野 祐太郎, ZOU Wenqian, 溝上 章志
    2013 年69 巻5 号 p. I_649-I_658
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    地方都市では地域公共交通の路線維持が困難になっている.また,運行事業者に対する自治体からの補助額も年々増加しており,自治体財政の点からも大きな問題となっている.
    本研究では,これまでの欠損補助制に対して,事業者と自治体との両者に対して費用の削減や需要の獲得の動機を与えるインセンティブ補助制度の地域公共交通への提供可能性について検討する.需要固定型であった既存モデルに対して,ここでは運行頻度を未知変数の一つとし,需要変動を内生化した,より一般的な地域公共交通システムに対するインセンティブ補助モデルを提案する.このモデルを,地域公共交通サービスの維持が喫緊の問題となっている熊本県荒尾市の路線バス網に適用し,決定変数に対する権限の付与の違いによる解の特性や適切な政策を明確にしていくことを目的とする.
  • 西村 悦子, 今井 昭夫
    2013 年69 巻5 号 p. I_659-I_667
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,国内外の大規模コンテナターミナルで使用される荷役方式に着目し,そこで主として使用される荷役機器とターミナルレイアウトの特徴がコンテナの配置計画にどのような違いをもたらすかを検証する.具体的には荷役機器の違いは,コンテナヤードの保管エリアにあるコンテナブロック間に設けられた通路のどこを搬送車両が走行するかで移動に要する時間が異なること,さらに荷役機器の大きさや機動性に伴ってターミナル全体の保管容量が異なることがある.そこで評価指標には,総サービス時間とスペース占有率を用いた.計算結果より,港の混み具合や係留パターンに関わらず,タイヤ型門型クレーンで評価が高かったが,そのうち半数のケースでレール式門型クレーンと同等の評価を得ることが分かった.
  • 波床 正敏, 山本 久彰
    2013 年69 巻5 号 p. I_669-I_676
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    鉄道やバスに関する需給調整規制が廃止され,鉄道事業法も2000年に改正されることで鉄道事業への参入が簡素化されたが,同時に,鉄道事業を廃止する際には許可が必要であったものが,事前届出制になったため,比較的容易に事業撤退できるようになった.このような需給調整規制の廃止は,自由な競争の下,鉄道事業の活性化によってサービス水準の向上を狙ったものであったが,その一方で地方部における鉄道サービスの衰退が進行した.
    本研究はこのような法改正前後で鉄道事業からの撤退がどの程度変化したかを調査し,需給調整規制廃止の影響を分析した.その結果,大手私鉄や第三セクター鉄道などで鉄道の廃線が進行したことが明らかとなった.
  • 鈴木 雄, 原田 彩, 日野 智, 木村 一裕
    2013 年69 巻5 号 p. I_677-I_686
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,地方都市では路線バスの廃止や縮小などにより自動車を運転できない高齢者は移動が困難なものになっている.移動手段の確保は高齢者にとって,外出機会の増加や交流機会の創出などQOLの向上に資するものである.秋田県秋田市では70歳以上の高齢者が1回100円で路線バスを利用できる「高齢者コインバス事業」を平成23年10月から実施している.本研究は70歳以上の事業対象者と,70歳未満の非対象者に対し意識調査を実施した.バス利用料金の低減による70歳以上の高齢者のQOL向上効果と,70歳未満の非対象者の事業に対する受容意識を把握している.分析の結果,事業の非対象者であっても,高齢者のQOL向上に資する事業への受容意識は高いことが明らかとなった.一方,事業の対象者と非対象者に共通して,事業の存続への不安があることも示された.
  • 大窪 和明, 奥村 誠, 平 聖也
    2013 年69 巻5 号 p. I_687-I_695
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    小型家電リサイクルの促進に向けた新制度案においては,自治体が中間処理業者を選定し,契約を結ぶことになっている.小型家電の回収量には不確実性があるため,中間処理業者の参入を促進するためには何らかの形で回収量の不確実性の大きさをコントロールする必要がある.本研究では,Bertsimas and Thieleなどのロバスト最適化手法を参考に,自治体と中間処理業者が事前に交渉することによって不確実性の範囲を限定し,中間処理業者の利潤を確保させることを考える.そのために,中間処理業者が想定する不確実性の範囲の変化に対する利潤の変化を明らかにする.その結果,回収量の不確実性を小さく想定できる場合には,平均的な利潤が高くなるだけでなく,リサイクルから排出される残渣の最終処理量が少なくなることを明らかにした.
  • 中嶋 悠人, 山中 英生, 真田 純子
    2013 年69 巻5 号 p. I_697-I_704
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    クロスバイク,ロードバイクなどのスポーツサイクル(以下SC)は,普及しているシティサイクルと比べると,高速・長距離・長時間の走行が可能であり,全身運動にも優れていることから,中距離通勤や健康活動に適している.このため,SCの普及・利用促進は環境・健康に配慮した都市づくりにとって,重要な政策になるといえる.
    本研究は,SC利用者の増進のための施策を検討することを目的に,SC愛好家へのヒアリング調査と物語分析およびSC利用者への意識調査を行い,SC愛好の促進要因,阻害要因を分析するとともに,選好する利用環境や利用促進施策への賛同を分析した.この結果,愛好要因として初期の同行型走行,挑戦心・達成感を得られるコース経験,などが明らかになり,SC利用増進に向けた施策の方向を提案した.
  • 上畑 雄太郎, 高山 純一, 中山 晶一朗, 塩士 圭介
    2013 年69 巻5 号 p. I_705-I_713
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,少子高齢化や地方部における過疎化の進行,自家用車の普及によって公共交通の利用者が減少している.しかし,交通弱者は必ず存在するため,公共交通機関を容易に廃止することはできない.また,市町村の合併が盛んに行われるようになり,それに伴い公共交通の需要が変化することが予測される.これらのことから,現在多くの地方自治体では公共交通再編の必要に迫られている.そこで,本研究では全国の市区町村を対象に公共交通に関するアンケート調査を実施し,各市区町村の公共交通の現状や課題,目標に対する達成度を把握した.また,クラスター分析を用いて合併市町村を合併形態ごとに分類し,各形態の公共交通に関する施策や課題,達成度評価の傾向を比較した.
  • 鈴木 美緒, 岡田 紫恵奈, 屋井 鉄雄
    2013 年69 巻5 号 p. I_715-I_724
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    自転車は車道通行が原則であるにもかかわらず,歩道通行を安全と考える利用者はいまだ多い.自動車からの視認性の悪さが指摘される歩道通行だが,その事故の実態は詳細に分析されていない.そこで本研究では,大田区内の歩道を有する道路での事故を分析し,歩道通行する自転車の事故要因を考察した.過去4年間での自転車に関連する事故の分析を行なった結果,歩道通行する自転車と歩行者・自転車との事故傾向は歩道幅員によらないこと,対自動車事故では,車道通行する自転車の事故要因が自転車側の違反であるのに対し,歩道通行する自転車は正しい通行方法であっても事故に遭っていることがわかった.さらに,単路部,交差点部とも,歩道通行の特徴である自転車の双方向通行と自動車からの視認性の悪さが事故の要因となっていることが明らかとなった.
  • 西内 裕晶, 岸 悠介, 轟 朝幸
    2013 年69 巻5 号 p. I_725-I_734
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,地方都市における公共交通再編の検討に資するためのICカードデータを用いた乗り継ぎ結節点の評価手法を提案する.具体的には,高知市中心部の公共交通機関(路面電車,バス)で利用可能なICカードから得られる利用者の乗り継ぎ履歴データを用いて,乗り継ぎ時間および乗り継ぎトリップ数などの利用実態把握を行う.更に,複数の指標を加味することが可能な包絡分析法(DEA手法)を用いた乗り継ぎ効率性の評価を時間帯と利用者の年齢を考慮して行うものである.その結果,同じ乗り継ぎ結節点においても時間帯,年代ごとに効率性が異なることがわかり,乗り継ぎに対する各乗り継ぎ結節点の特性を複数指標の効率値から把握することの必要性を把握した.
  • 山田 稔, 塩濱 慶之
    2013 年69 巻5 号 p. I_735-I_743
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    地方部においてDRTの導入事例が増えているが,これらの多くはフルデマンド方式である.この方式は面的に需要分布が拡散している場合に有益と考えられているが,地域の内部で需要密度に濃淡がある場合には,より効果的な運行方法が存在する可能性がある.しかし,これまでこの視点からの検討はほとんどなされておらず,こういった状況での運行改善の方法論は確立されていない.本研究では,仮想都市に関するシミュレーションと実際にDRTが運行されている地域の需要分布や輸送効率のデータからこれらの関係を明らかにしたものである.その結果,需要が空間的に拡散している場合に比べ中心部への集約が進むと,移動距離が短いためDRTの輸送効率は低下すること,輸送対象を区分し別々に運行する方が輸送効率が高まる場合があることを明らかにした.
  • 外井 哲志, 大塚 康司, 姜 偉銘
    2013 年69 巻5 号 p. I_745-I_751
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    初めての目的地まで行く際(初行運転)には,多くの運転者が地図を用いて予定経路を設定すると考えられるが,その予定経路は,参照する地図に表記された道路の情報によって変化する可能性がある.本研究では,まず地図に記載された道路の路線番号が予定経路の設定の際に有力であることを述べる.続いて路線番号の表記方法として,上位路線のみの表記と重複路線表記の相違が初行運転時に設定される予定経路に影響を及ぼすことを実験を通して明らかにしたものである.実験の結果,予定経路を走行するために記憶すべき路線番号の数が少ないほど,多くの被験者に選択されるという傾向が確認された.また,アイマークレコーダーを用いた視線移動分析の結果,選択した経路と地図の上での視線移動パターンに強い関係があることが明らかになった.
  • 尾高 慎二, 神田 佑亮, 西ノ原 真志, 飯野 公央, 谷口 守
    2013 年69 巻5 号 p. I_753-I_760
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    松江都市圏では,平成19年度から職場モビリティ・マネジメント(MM)を5年間継続的に実施してきている.また,平成21年度からは市民全体の取り組みとして「ノーマイカーウィーク」へと発展させてMMを展開している.本稿では,職場MMの継続効果として,交通現象面へ与える集計的効果,「まつエコ宣言(職場交通プラン)」策定による意識・行動変容に与える効果,取り組みの継続・定着状況によるまちづくり意識へ及ぼす効果の3つの観点から職場MMの継続実施効果を明らかとするものである.これらの結果,ノーマイカーウィーク実施中のみならず,通常時の交通量も減少すること,まつエコ宣言によりノーマイカーへの取り組みが活性化されること,取り組みの継続意向の高さや定着により,まちづくり意識に影響があることを示唆している.
  • 安江 勇弥, 金森 亮, 山本 俊行, 森川 高行
    2013 年69 巻5 号 p. I_761-I_770
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    各国でカーシェアリングのサービス利用が進んでいるが,我が国でも民間事業者による運営が本格的に始まり,最近ではカーシェアリングが交通手段の一つとして認識されてきている.本研究では,カーシェアリングの更なる普及・利用促進に向けて,会員と非会員との環境意識や自動車保有意識の差異及びサービス変化に対する感度を把握することを目的としてWEBアンケート調査を実施した.その結果,会員と非会員で自動車保有意識に差がみられ,カーシェアリングの利便性を高めることで更なる普及の可能性があること,乗り捨て方式や電気自動車の導入に対して利用意向が高く,利用促進に効果的であることを示す.
  • 偉士大 恵美, 山中 英生, 真田 純子
    2013 年69 巻5 号 p. I_771-I_780
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    生活交通の確保を図るためデマンドバス等の施策が広まっているが,山間部等の過疎地域にも交通手段を持たない高齢者等が存在しており,お出かけ支援を考慮したサービスが必要となっている.このため,交通困難者を限定した移動支援策として,タクシー料金の一部を補助する制度が行われている.本研究では,タクシー補助制度を導入している自治体の取組についての特徴や課題を明らかにすることを目的とし,運営者へのヒアリングと助成実績等の比較に加え,対象者選定等のタクシー補助制度のあり方に対しての一般市民の意識調査を行った.その結果,高齢型は福祉型に比べて助成額が少ない傾向にあること,市民は市民一人当たり補助額が低い案に賛成しているが,困難者を限定し,モビリティを確保することを受容する市民も少なくないこと明らかになった.
  • 萩田 賢司, 森 健二, 横関 俊也, 矢野 伸裕, 牧下 寛
    2013 年69 巻5 号 p. I_781-I_788
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    自転車走行空間の整備が各地で進められているが,これらの効果を分析するために地域全体の通行方向別の自転車事故を分析した研究は存在しない.そのため,千葉県東葛地域で発生した自転車事故を分析対象として,道路地図に自転車事故発生地点をプロットし,当事者の進行方向矢印を読み込ませた.この情報と,自動車と自転車の相対的な進行方向,事故類型などをもとに,事故時の自転車の通行方向を明らかにした.これらの自転車事故を分析した結果,全体的には,右側通行時の自転車事故がやや多く発生しており,左側通行の自転車事故の事故率がやや低くなっていることが想定された.ただし,単路部で発生した事故を抽出して分析したところ,自動車の直進時に左側通行の自転車との事故が多発しており,対策が必要であると考えられた.
  • 猪井 博登, 橋本 真彌, 栗山 龍起, 岡田 和也
    2013 年69 巻5 号 p. I_789-I_796
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,ハンドル形電動車いす利用者による単独事故が増えてきている.そこで本研究では新たな対策としてハンドル形電動車いすを自動減速をさせることによる搭乗者の運転を支援システムを提案する.このシステムは,レーザースキャナによって実現される.ハンドル形電動車いすの運転経験がない者を対象に行った実験の結果,実験コースにおいて自動減速をおこなうことで搭乗者の操作性を向上した.また,特にハンドル形電動車いすの運転を難しいと思う人ほど効果があった.
  • 羽賀 研太朗, 浜岡 秀勝
    2013 年69 巻5 号 p. I_797-I_807
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    平成20年以降の状態別死者数を見ると,「歩行中」が最も多いことから,歩行者事故への対策が重要となっている.そこで本研究は,歩行者が右左折車を確認する際の挙動を分析し,歩行者が接近車両を回避できる安全な確認行動を明らかにする.試験場内に設置した模擬交差点において,車両が右左折する状況のもと,歩行者が横断する実験を実施した.その際,右左折車両の接近パターン,昼夜による視認性の変化,ヘッドホン装着の有無による周囲の音の聞こえやすさ,歩行者のスタート位置の変更により,歩行者の横断歩道横断時における右左折車への確認行動のデータを得た.また同時に,歩行者が車両接近時に感じた危険性に関するアンケートを行い,安全評価に基づく適切な安全確認の位置を明らかにした.
  • 瀬尾 亨, 日下部 貴彦, 朝倉 康夫
    2013 年69 巻5 号 p. I_809-I_818
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    道路区間の交通量や速度などの交通状態の観測には主に定点観測が用いられているが,広範囲での高密度な観測はコストの面から難しい.一方,移動体観測は観測車両(プローブカー)が走行できる区間のデータを広範囲に得ることができる.しかし,GPS搭載プローブカーから得られる位置(速度)データのみを用いた交通状態の推定には,k-v関係等の様々な仮定が必要となる.本研究は,交通安全目的で開発・実用化された車間距離計測技術に着目し,プローブカーによって車間距離が計測できることを前提とし,移動体観測に基づく交通状態の推定手法を構築した.シミュレーション実験を通して検証した結果,本手法により,k-v関係等を仮定することなしに移動体観測に基づく交通状態の推定が可能であることを示した.
  • 金澤 文彦, 鈴木 彰一, 若月 健, 中村 悟
    2013 年69 巻5 号 p. I_819-I_837
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    欧米各地では政府方針のもと,協調ITS(Cooperative ITS:車対車,車対インフラ,インフラ対インフラの通信を統合し,広範なITSサービスの利用を増大するシステム)の実証実験が活発に行われ,国際的に標準化が急速に進みつつある.本研究では,協調ITSについて,欧米や国内のプロジェクトで考えられている機器,通信,サービスの内容を調査・比較分析し,車両技術の高度化,無線技術の高度化など最新技術の動向や社会経済の潮流などを踏まえ,日本が今後中長期的に目指すべきITSサービスのシステムアーキテクチャを検討した.これをもとに,サービスの実現状況,研究開発状況を整理し,中長期で新たに提供を目指す協調ITSサービスの研究課題を抽出し,ITSに関する国の最近の政策動向も踏まえ,優先的に研究開発すべき新たな研究開発の方向性について考察した.
  • 南 愛, 松村 暢彦, 天野 圭子
    2013 年69 巻5 号 p. I_839-I_846
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究は「鉄道シニアパス」が郊外に居住する高齢者の交通行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている.購入者の余暇活動頻度や内容,市街地利用形態の変化について特に考察する.また一部の被験者に沿線の店舗や施設・イベント情報をメーリングリストを用いて配信し,効果を検証した.ケーススタディ地域とした兵庫県川西市は,能勢電鉄と阪急バス沿線にオールドニュータウン群を有し,ターミナルの川西能勢口駅周辺は商業施設が並ぶ.アンケートの分析結果から,シニアパスは余暇活動と鉄道利用に,メーリングリストは鉄道利用に促進の効果が確認された.鉄道利用に伴って買い物や趣味,交流,余暇活動などの増加がわかった.また,川西能勢口駅周辺と,梅田や宝塚沿線の買い物やスポーツ,交際・交流等がシニアパスにより促進されていた.
  • 坂井 勝哉, 日下部 貴彦, 朝倉 康夫
    2013 年69 巻5 号 p. I_847-I_856
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    旅行時間を点推定で予測し,かつ一定の割合で収まると期待される幅も推定する既存の統計モデルを基にして,合流部を対象とするモデルに拡張した.合流によるボトルネックでは相手路線の混雑状況によって容量が変動するため,容量の大きさに応じて旅行時間の不確実性が異なることを考慮する必要がある.
    実データを用いたモデルの検証分析では,旅行時間を点推定で予測する段階では既存モデルで対応できることが確認されたが,旅行時間のばらつきを確率的に考慮した幅を予測する場合には合流相手路線のオキュパンシーをモデルの入力変数として用いることで旅行時間の不確実性をより適切に推定できることが示された.具体的には,相手路線のオキュパンシーが高ければ合流部の容量が小さくなり旅行時間のばらつきが大きくなることがわかった.
  • 鈴木 弘司, 今井 克寿, 藤田 素弘
    2013 年69 巻5 号 p. I_857-I_867
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,自転車利用者視点による幹線街路評価の検討を行うため,自転車歩行者道において走行調査を行い,心拍変動から求められる指標を用いて自転車利用者のストレスを計量した.走行位置別に,ストレスに与える影響要因に関する重回帰分析を行い,交差点の通過や幅員が影響を与えることやその影響度が走行位置により異なることを示した.さらに,ストレスレベルに基づく評価指標を定義した上で,対象道路区間の現況評価を行い,道路構造変更による効果を検討した.一方,アンケート調査より自転車利用者の主観的な評価データを取得し,各評価項目に関する影響要因を重回帰分析により明らかにした.さらに,客観評価と主観評価およびそれらに影響する要因の関係性を考察し,自転車利用者視点からの幹線街路評価に関わる外部要因の特徴を整理した.
  • 平田 輝満
    2013 年69 巻5 号 p. I_869-I_879
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    羽田空港は2010年の再拡張により交差する4本の滑走路を同時運用する方式となった.その際,空域の運用制約から「方面別滑走路」方式が採用され,また滑走路上においても離着陸が相互従属運用となった.これらの運用制約や特性は航空機遅延に対して大きな影響を与える.本研究では,これら羽田空港の滑走路運用特性に起因した航空機遅延に関して,方面別滑走路制約の有無による遅延量変化をシミュレーション分析し,さらに数理最適化手法を応用した離着陸便数配分手法による遅延軽減方策について検討を行った.その結果,方面別滑走路制約の解消および羽田空港の処理容量特性を踏まえた離着陸便数配分の最適化による遅延軽減効果を定量的に示した.
  • Tien Dung CHU, Hideki NAKAMURA, Miho ASANO
    2013 年69 巻5 号 p. I_881-I_891
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    This paper proposes an approach to model the gap choice behavior of merging vehicles under various traffic flow conditions at urban expressway merging sections in Nagoya, Japan. The gap choice is classified into three patterns denoted direct, yield and chase merging. Empirical analysis shows that mainline traffic conditions significantly affect the proportion of gap choice. In addition, yield and chase choices result in further merging position compared to direct one. This fact is necessary to be considered in order to design the acceleration lane to meet driver behavior under relevant operational traffic flow conditions. TTC is adopted as an index to determine the threshold of choosing a merging pattern. The results show that the thresholds of choosing direct/yield or chase, continue to chase or not and direct or yield are 4.3, 3.2 and 5.4 seconds, respectively. The gap choice behavior is modeled by applying binary logit model. The results reveal that relative speed and space gap, traffic conditions, acceleration lane length, and remaining distance significantly affect the gap choice behavior of merging drivers.
  • 太瀬 隆敬, 岡村 敏之, 中村 文彦, 田中 伸治, 王 鋭
    2013 年69 巻5 号 p. I_893-I_902
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/15
    ジャーナル フリー
    開発途上国では自家用車が普及しており,自家用車を保有した人は公共交通を利用しなくなる傾向にある.本研究では自家用車を利用する人々の意識を分析し,手段選択に対して意識が及ぼす影響を明らかにする.モータリゼーションと軌道系交通機関の整備とが進行しているメトロマニラにおける,ショッピングモールへの来訪行動を対象としている.
    モール利用者に対して行った意識調査を通して,特に利用する必要のない場面では自家用車に依存せず合理的な交通行動を行う意識の軸が確認され,軌道系導入時の手段転換意向に影響を及ぼすことが明らかになった.メトロマニラではモールを中心に軌道系の導入が計画されているが,シナリオ分析を行い,転換が行われるかについて自家用車を今後保有する人々の意識が重要となることが示された.
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