日本臨床救急医学会雑誌
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26 巻, 5 号
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会告
原著
  • 山崎 真悟, 中川 洸志, 植田 広樹, 田中 秀治
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 5 号 p. 577-584
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:横須賀市の病院外心停止(以下OHCA)傷病者に対する,現場出発前後のアドレナリン(以下ADR)投与のタイミングと自己心拍再開(以下ROSC)の関連を検討すること。方法:横須賀市消防局のウツタインデータを用い,2013年1月1日〜2022年4月30日までのOHCAでADRを投与された傷病者を対象とした。ADR投与のタイミングを現場出発前投与群(以下,現発前群)と現場出発後投与群(以下,現発後群)の2群に分類し,多変量ロジスティック回帰分析によりADR投与のタイミングとROSCの関連を推定した。結果:対象のOHCA傷病者は1,122例,現発前群は483例,現発後群は639例であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,現発前群は現発後群と比較しROSCと有意な関連を示した(AOR 2.03,95%CI 1.31-3.16)ほか,現場滞在時間が4分延長していた。結論:現発前の早期ADR投与は早期ROSCにつながる一方で現場滞在時間の延長も示した。MC協議会は救急隊員に対して早期ADR投与の重要性について教育が必要である。

  • 谷口 圭祐, 松本 英樹
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 5 号 p. 585-591
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    緒言:早期アドレナリン投与は, 院外心停止(以下OHCA)の良好な転帰と関連することが先行研究により明らかにされている。目的:ショック非適応リズムのOHCA症例について後方視的に検討し,病院前アドレナリン投与時間との関連要因を推論する。方法:2013年6月〜2021年11月に管内で生じたOHCA 387例中,ショック非適応リズムで病院前アドレナリン投与83例を対象に統計解析した。データは救急情報システムから連結不可能匿名化し抽出,解析にはRを使用した。結果:重回帰分析にて,心停止原因が心原性の場合有意に初回アドレナリン投与時間が短縮した(β=−4.60,95%CI −7.64- −1.56)。考察:心原性OHCAでは有意に初回アドレナリン投与時間が短縮した。窒息や外傷などによる非心原性OHCAで早期のアドレナリン投与も重視する場合,救急活動の効率化が必要不可欠である。

  • 外山 元, 大松 健太郎, 安達 哲浩, 高橋 司, 竹井 豊
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 5 号 p. 592-600
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では救急救命処置の実施や救急隊による医療機関選定にかかる時間が救急現場活動時間の延長に影響を及ぼすのかを疫学的に検証することを目的とした。方法:2019年中の全国救急搬送データのうち,転院搬送,軽症例,医師関与例,欠損データを除外した2,575,738件を分析対象データとして,救急現場活動時間の延長に影響を与える因子を最小二乗法による多変量線形回帰によって分析した。結果:すべての因子を考慮した救急現場活動時間の推定値は15.84分であった。多変量解析において,搬送先医療機関決定までの連絡回数が複数回の例(20.96分),関東地方での発生例(19.12分),高齢傷病者(18.77分),非急病事案 (16.54分)は救急現場活動時間を延長させ,心肺蘇生実施例(14.49分)は救急現場活動時間を短縮させる要因であることが示された。結論:搬送先医療機関決定のために行う複数回に及ぶ病院連絡は救急現場活動時間を延長させる主たる要因であった。救急現場活動時間には地域差があり,救急需要と医療リソースの不均衡による連鎖が課題であることが示唆された。

  • 升井 淳, 橋本 純子, 朴 將輝, 柳 英雄
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 5 号 p. 601-606
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    救急搬送において高齢者がその多くを占め,うち自己転倒の患者は多く,救急搬送数増加の一因となっている。今回高齢自己転倒患者に関して,患者背景,予後などを検討した。 対象は2022年1月1日〜6月30日の期間に当院に救急搬送された高齢自己転倒患者とし,65歳以上を高齢者,明らかな外力のない転倒を自己転倒とした。カルテ調査を行い,後方視的に検討した。対象は370例,年齢中央値80.0(74-86),男性158例で,骨折を伴わない止血処置を要する出血24例(6.5%),骨折141例(38.1%)に認めた。入院106例(28.6%)でうち37例(10.0%)は入院21日時点においても入院が必要であったが,死亡例はなかった。入院群では外来帰宅群と比較し,多剤内服(5剤以上)(62.3% vs 21.7%,p=0.029)である割合が有意に高かった。年齢や性別,飲酒などは入院に寄与しなかった。自己転倒により高齢者においては約3 割が入院しており,内服薬調整を含めた転倒予防が重要と考える。

  • ―抗菌加工剤NRC(nano revolutionary carbon)の抗菌効果/活性期間と浮遊微生物菌への効果―
    瀧 健治, 爲廣 一仁, 古賀 仁士, 石橋 和重, 松尾 由美, 平尾 朋仁, 山田 晋大郎
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 5 号 p. 607-613
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:抵抗力が弱い重篤な患者や重症外傷患者を扱う医療施設で,衛生環境維持は重要な課題であり,抗菌加工剤のNRC(nano revolutionary carbon)の使用が衛生環境維持に有益か,実験的に検討する。方法:標準ブドウ球菌(以下,ブドウ球菌)・標準カンジダ菌(以下,カンジダ菌)・浮遊微生物菌を用いて,NRCの①細菌との接触時間,②抗菌活性の持続期間,③「抗菌加工」剤の二酸化塩素(クレベリン®,以下クレベリン)の抗菌活性持続期間,および④浮遊微生物菌へNRCの抗菌効果,を比較検討した。結果:NRCの抗菌効果/ 活性には細菌と30分以上の接触時間が必要で,抗菌活性の持続期間はブドウ球菌で約1年,カンジダ菌で2年6カ月とクレベリンの場合より長く,浮遊微生物菌にも有効な抗菌効果を確認した。結論:NRCの抗菌活性期間と浮遊微生物菌への効果から,抗菌加工剤のNRCは衛生環境維持に効果的であると実験的に評価した。

調査・報告
  • 小林 洋平, 中川 貴弘, 河津 敏明, 烏野 隆博
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 614-621
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    救急領域での処方入力支援の報告は少ない。りんくう総合医療センターの救命救急センター・集中治療室では,薬剤師による定期処方入力支援PBPM(protocol based pharmacotherapy management)を2021年8月より開始している。本PBPMでは,入室8日目以降の患者を対象に医師と薬剤師が協働して定期処方の妥当性を評価し,薬剤師の処方入力支援を可能としている。処方入力支援を行った薬剤のうち中止された薬剤は15.5%にとどまっており,中止されたものの多くは,重症領域で起こり得る薬剤および原因であった。また,PBPM前後で医師への投与薬剤の意図確認と常用薬の再開の介入が有意に増加しており,従来以上に常用薬や患者の投与中薬剤の妥当性を注視することとなったと考えられた。以上から,救急領域において処方入力支援PBPMは,患者の薬物療法の適正化に貢献することが示唆された。

  • 佐々木 広一, 安田 康晴
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 622-627
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    背景:近年,オゾンによる新型コロナウイルス不活化の研究が報告され,救急車内の環境表面などの殺菌のためオゾン発生器を導入する消防本部が増加している。しかし,救急車内でのオゾン拡散が均一となっているかは明らかにされていない。目的:救急車内のオゾン拡散状況を把握すること。方法:救急車内にオゾン発生器を設置し,救急車内の前部・中央部・後部でオゾン濃度を測定した。また,培養した細菌の死滅化を目視確認した。結果:オゾン濃度は各測定箇所での濃度差が認められ,機器が表示する濃度よりも,前部では低く,中央部と後部では高い濃度となった。菌の死滅化においても前部で残存が多く認められた。結論:有効CT値に未到達の箇所や過剰な濃度になっている箇所があり,車内拡散の不均一性が示唆された。殺菌できていない箇所がある可能性があり,オゾン殺菌によるメリット・デメリットを考慮し,効果的かつ安全性を確保したうえで適切に使用する必要がある。

  • ―自傷・自殺未遂レジストリ(JA-RSA)構築と展望―
    小林 諭史, 隅 浩紀, 福田 吉治, 秋枝 一基, 三宅 康史
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 628-632
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    自傷・自殺未遂の経験は将来の自殺死亡に関連する重要な単一の予測因子である。医療機関における自傷・自殺未遂の症例登録の仕組みが必要であることは,広く指摘されている。著者らは自傷および自殺未遂に関する全国的なレジストリシステム(JA-RSA)を開発した。2021年にプロトタイプ作成,2022年度より全国の救命救急センターに参加を依頼し,各共同研究機関で症例登録を開始した。JA-RSAの特徴は,わが国初の全国的かつ継続的な自殺未遂症例登録の取り組みであり,救命救急センターへ搬送された患者を対象としている。またJA-RSAは,実効的な自殺対策の施策検討や評価にも貢献することが期待される。登録が進むことで,自殺に至る危険因子や社会情勢の変化によるリスクの同定が可能になる。現在,約60の救命救急センターがJA-RSAに参加しているが,今後は全国約300のセンターの参画を目指し,自傷・自殺未遂の実態把握と積極的な自殺対策に活用していく予定である。

  • 小野寺 誠, 後藤 沙由里, 関根 萌, 鈴木 光子, 菅谷 一樹, 大山 亜紗美, 全田 吏栄, 鈴木 剛, 塚田 泰彦, 伊関 憲
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 633-640
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:福島市における救急搬送困難事案の推移および原因をコロナ禍発生前後で調査した。方法:2019年度〜2021年度の間に福島市内で発生した照会回数5回以上の救急搬送困難事案を対象に,年度別に発生数,事故種別,照会時間帯(平日日勤帯,平日夜間帯,土日祝日),医療機関の断り理由を検討した。結果:発生数は71件/82件/193件と2021年度で有意(p<0.001)に増加していた。事故種別検討では一般負傷が19 年度と比較して2021年度で有意(p<0.001)に多く,照会時間帯別にみると平日日勤帯の割合が2019年度と比較して2021年度で有意(p<0.001)に多かった。断り理由別では「ベッド満床」が2021年度で,2019年度, 2020年度と比較して有意(それぞれp<0.001,p<0.001)に多かった。結論:コロナ禍では需要と供給の両輪に対応可能な救急搬送システムを立案し,回復期・慢性期施設を含めた地域連携を構築することが重要と思われた。

  • 安田 康晴, 佐々木 広一
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 641-648
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:救急現場用感染防止衣の除菌・洗浄方法と交換時期について検討すること。方法:ナイロン系をオゾン除菌(4カ月使用想定)と洗濯機で市販洗剤を用いた洗濯後に自然乾燥(50回)させ,耐水・ウイルスバリア性をASTM・JIS,繊維断面を電子顕微鏡で,除菌剤別噴霧を3カ月間の実使用で,不織布を乾燥機で乾燥させ,それぞれ繊維劣化を確認した。結果:オゾン除菌と洗濯後の繊維劣化は有孔膜フィルムナイロン系で認められたが,無孔膜フィルムでは認められなかった。除菌剤別噴霧の繊維劣化は塩素系除菌剤で,不織布製で乾燥機による乾燥で毛羽立ちや毛玉が認められた。結論:ナイロン系・不織布製とも,洗浄は洗濯機で塩素系以外の市販洗剤を用いた洗濯後に自然乾燥させる。除菌はオゾンと塩素系除菌剤は繊維劣化を生じるため繊維劣化が生じない除菌剤を噴霧する。交換は感染防止衣に亀裂や破損,毛玉,毛羽立ちが,不織布製は汚染が認められた場合とする。

  • 塩谷 信喜, 吉田 真一郎, 富田 明子, 井上 望, 塚本 祐己, 川島 如仙, 硲 光司, 七戸 康夫
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 649-654
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    背景:がん診療連携拠点病院以外の急性期病院に,救急車で搬入となった未診断がん患者の現状はあまり知られていない。目的:当院の救命救急センターに搬入となった未診断がん患者の実態を調査する。方法:2013年4月1日〜2021年3月31日の間に,未診断がんと診断した患者を対象に,患者特性,主訴,診断名と診断までの期間,入院日数,治療,転帰を調査した。結果:救急車で搬送された患者19,216人のうち,新規がんの診断は58例(0.30%)で,高齢者が多く,進行がんは約半数を占めた。主訴は呼吸困難と発熱が多く,診断は肺がん,大腸がんの順に多かった。治療は20例(34.5%),支持療法は31例(53.4%),治療転院は7例(12.1%)であった。結論:救急搬入患者の0.30%に新たにがんが診断された。当院は診療科に制限があるため,治療のための転院を遅らせないために診断の精度を上げることも課題の一つである。

症例・事例報告
  • 玉造 竜郎, 田中 道子, 吉川 泰司, 杉田 栄樹, 阿部 和正, 岡田 菜津美, 関戸 匡恵, 縄田 修一, 嶋村 弘史
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 655-660
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    耐性緑膿菌による骨・軟部組織感染症は治療に難渋することが多い。今回,持続局所抗菌薬灌流(continuous local antibiotics perfusion,以下CLAPと略す)により治療した2症例を報告する。症例1:10歳代,女性。バイクの単独事故により左大腿骨骨幹部開放骨折のため緊急入院となった。左大腿創部の耐性緑膿菌感染症に対してトブラマイシンを用いたCLAPを78日間実施し,杖歩行可能な状態で自宅退院した。症例2:40歳代,女性。慢性的に大腿後面に褥瘡ができており,大腿骨骨幹部近位骨折が生じたため緊急入院となった。軟部組織の耐性緑膿菌感染のため,ゲンタマイシンによるCLAPを25日間行い,両松葉杖歩行ができる状態で転院した。いずれの症例も薬物血中濃度モニタリングを行い,投与量に相関する副作用は発現しなかった。耐性緑膿菌による骨・軟部組織感染症に対してCLAPは治療の選択肢の一つとして考慮すべきであり,副作用マネジメントとしてTDMの実施が望まれる。

  • 入江 仁, 青柳 有沙, 杉山 佳奈, 石澤 義也, 花田 裕之
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 661-664
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    意識障害の原因が消毒用エタノールの誤飲であった高齢者の症例を経験した。患者は92歳,女性。既往歴に認知症があり施設に入所中であった。嘔吐,意識障害,ショック状態を呈し救急搬送された。施設職員より本人の部屋にある手指消毒用エタノールの容器の蓋が外され,内容量が減った状態で枕元に置かれていたと申告があった。血中エタノール濃度は300mg/dL以上(当院測定上限)であり,誤飲による急性エタノール中毒と診断し,即日入院とした。第2病日に血中エタノール濃度は189mg/dLまで低下し,意識レベルも改善したため,第5病日に他院へ転院とした。新型コロナウイルス感染症を契機に手指消毒薬はきわめて身近な存在となったが,一般的に用いられている消毒用エタノール溶液は濃度が80%程度であり,誤飲により意識障害などの中毒症状で受診に至る可能性があることを認識しておく必要がある。また,認知症を有する高齢者が誤飲しないための対策が必要である。

  • 谷村 洋輔, 坪井 重樹
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 665-668
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は50歳代女性,家族歴なし。5,6年前から自然に軽快する腹痛を何度か自覚し,原因不明の腹膜炎と発熱で近医から発熱外来へ紹介された。腹部全体に腹膜刺激症状を認め血液検査で炎症反応の上昇を示すものの,その他の項目や画像検査で異常は指摘できなかった。 繰り返す症状のエピソードから,家族性地中海熱(familial Mediterranean fever,以下FMFと略す)を疑った。その後も同様の症状を繰り返すことから,FMFと臨床診断し専門機関に紹介した。関連遺伝子のMEFV遺伝子異常が同定され,FMFと確定診断した。コルヒチンの内服を開始し,発作の頻度,程度ともに著明に改善した。繰り返す発熱や腹膜炎・胸膜炎を呈する症例では,FMFを鑑別にあげる必要がある。

  • 鈴木 善樹, 伊藤 護之, 宮本 政宗, 眞壁 秀樹
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 669-673
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    Rapid response system(以下RRSと略す)は急変を回避する院内システムである。急変の原因が薬剤の場合も多く,当院では薬剤師もRRSに参画し活動を行っている。症例:79歳,男性。徐脈と血圧低下のためRRS発動。コールを受けた薬剤師が現場到着し,担当医師コール後,薬物治療歴の収集と救急カートから必要薬剤の準備を行った。医師到着後,酢酸リンゲル液とアトロピン投与が行われたが,低血圧と徐脈が継続した。使用薬剤にβ遮断薬があり,ドパミンとエフェドリン投与を提案し開始となった。医師による初期評価中に,病棟薬剤師および看護師から再度薬物治療歴と採血結果の聴取を行い,ゲムシタビンとシスプラチンによる化学療法歴と腎機能低下が確認された。腎機能障害によるβ遮断薬の排泄遅延が疑われることを報告し,服薬中止となった。RRSに薬剤師が参画することで,治療と並行して早期に常用薬の有害事象を発見するに至った。

  • 玉垣 圭祐, 尾上 敦規, 中村 佳裕, 中村 文子, 中嶋 麻里, 櫻本 和人, 室谷 卓, 梶野 健太郎, 池側 均, 鍬方 安行
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 5 号 p. 674-678
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は49歳,女性。自傷目的での墜落外傷。搬送時,腰痛の訴えはあるも,腹痛はなくFASTは陰性であり,血圧83/55mmHg,脈拍95回/ 分であった。CT検査では胆囊周囲にはeffusionはなく,四肢・骨盤骨折の合併損傷を認めた。第2病日に右季肋部痛を訴え,CT検査を行い前日の造影CT検査で使用した造影剤が胆汁中に排泄されており,胆囊周囲にも造影剤の漏出がみられ,胆囊損傷と診断した。直ちに,腹腔鏡下での手術を行い腹腔内への胆汁漏出があり胆囊摘出,腹腔内洗浄を行った。術後は問題なく経過。各骨折の手術加療を行い,第20病日にリハビリ転院となった。胆囊損傷は初診時には診断が難しく,搬送時に胆囊損傷が否定的と考えられても継続した観察を行うことが必要である。

編集後記
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