日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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11 巻, 3 号
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原著
  • 西山 知佳, 石見 拓, 川村 孝, 米本 直裕, 平出 敦, 野々木 宏
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    背景:心停止患者の救命率向上のためには一般市民の救命意識・AEDに対する認知を高め,蘇生処置への積極的な参加を促す必要があるが,市民の救命意識に関する検討はなされていない。目的:心肺蘇生講習会の受講による救命意識の変化を検討する。対象:心肺蘇生講習会に参加した大学生。方法:3時間の心肺蘇生講習会を実施し,講習会の前後に,心肺蘇生法,AED使用など救命意識に関する質問紙調査を行った。結果:今回の講習会には大学生307名が参加し,203名から有効回答が得られた。203名のうち,見知らぬ人が倒れていたら自ら心肺蘇生を試みようと思う受講者は講習会前後で4%から52%に増加した。蘇生現場でAEDがあれば使用してみようと思う受講者は8%から80%にまで増加した。一方で受講後も倫理的な問題で蘇生処置を躊躇する受講者が少数いた。結論:講習会を受講することで,受講者の救命意識の向上が見られたが,倫理面での不安が蘇生処置参加への障害となっていた。

  • 岩井 敦志, 堀端 謙, 木村 和哉
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 3 号 p. 278-285
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    目的:近年救急搬送件数の増加が社会的問題となっている。人尾市における実態と内容を分析し,問題点を明いかにすることを目的とした。対象および方法:平成13年から17年の5年間に入尾市消防本部管内で救急搬送された患者を対象とした。年次ごとの救急搬送人数の推移を病態別・重症度別。年齢層別に検討した。結果:救急搬送人数は経年的に増加しているが,急病と一般負傷における成人と高齢者とくに高齢者の軽症例の搬送が,人数および全救急搬送人数に対する割合ともに増加していた。考察および結論:八尾市においては独居もしくは高齢者のみの世帯が増加しており,このような社会状況から,軽症でも救急車を利用する高齢者が増加していることが近年の救急搬送件数増加の一因になっていると考えられた。成人に関しても,その後半1/3は高齢者と同様の状況におかれているものと思われた。

  • 鈴木 範行, 森脇 義弘, 荒田 慎寿, 小菅 宇之, 岩下 眞之, 春成 伸之, 豊田 洋, 麻生 秀章, 久保田 真人, 菊池 清博
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 3 号 p. 286-291
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    普通乗用車を改造した小型ドクターカーを用いて医師現場活動を行った。119番通報の内容が意識・呼吸の異常,高エネルギー事故・大出血・救助事案,胸痛・背部痛・突然の激しい頭痛, 目撃のある心肺停止症例など医師による現場活動が傷病者の予後改善に有用と思われる傷病者に対し,司令管制員がドクターカーの出動要請をした。スタッフ医師・研修医・看護師・運転手各1名が,平日日勤帯に半径3km・10分圏内の地域へ出動した。医師による現場活動は1年間で意識障害31例,高エネルギー事故17例,胸痛6例,閉じ込め・救助事案各5例,呼吸不全2例, 目撃のある心肺停止1例の62件で,現場からの搬送はすべて消防の救急車で行った。従来タイプのドクターカーに比べ,小型ドクターカーは車両費用が抑えられ,狭い路地・急坂など出動範囲に制限なく,機動的な走行が可能であり,医師が迅速に救急・災害現場へ出動する車両として期待される。

  • 児玉 貴光, 箕輪 良行, 桝井 良裕, 平 泰彦, 明石 勝也
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 3 号 p. 292-299
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    近年の救急医療需要の増大に伴い,既存の救急医療システムの有効利用は切実な問題となっている。川崎市において救急車の適正利用に関する調査を実施し,病態別に策定した軽症分類基準を用いて救急車要請の妥当性について調査した。平成18年秋の2ヶ月間における全救急要請8,347件に対して,指令課員,救急隊,医師の救急車利用の是非についての判断を比較検討した。軽症分類基準によつて指令課員が救急要請不要と判断したのは878件(10.5%)であった。そのうち,医師が要請不要と判断したのは586件で正確度は44.6%であった。これは救急隊が要請不要と判断した正確度86.3%に比較して著明に低かった。現段階では軽症分類基準だけで実際に患者に接することがなく,自覚症状と簡単な病歴から病状を判断するには限界があると推測された。救急車の適正利用を進めるためにも,より信頼度の高い分類基準を策定する必要があると考える。

調査・報告
  • 大谷 典生, 谷部 聡, 原茂 順一, 石松 伸一
    原稿種別: 調査・報告
    2008 年 11 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    病院未収金は,昨今の社会問題となっており,緊急入院患者は未収金発生のリスクといえる。聖路加国際病院では2003年より救命救急センターSocial Conferenceを通じて医師と事務部門との連携強化を図っている。救急部門において医療現場より事務部門への積極的情報発信を行うことにより,事務部門,とくに医事課による患者家族への介入のあり方に変化が生じた。その結果,病院未収金・未収率の低下が認められている。救急部門における社会的側面に対するチーム医療の充実は,単一部門のみならず病院経営において有用であるといえる。

症例報告
  • 廣瀬 智也, 小川 智也, 米満 弘一郎, 島原 由美子, 若井 聡智, 前野 良人, 大西 光雄, 白 鴻成, 西野 正人, 定光 大海
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 3 号 p. 305-308
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    ACE阻害薬は今や全世界で広く日常的に使用されている降圧剤である。しかしながら血管性浮腫といった生命にかかわる副作用も報告されている。長期間にわたってACE阻害薬を内服していたが,血管性浮腫による気道緊急を生じ,緊急気管切開術により救命した症例を報告する。症例は58歳女性で既往歴に高血圧があり,10年間,ACE阻害薬による治療を受けていた。ACE阻害薬内服後,下顎の腫脹,発声困難が生じたため救急要請となった。喉頭の浮腫が強く気管挿管不能であったため,緊急気管切開術を施行した。患者本人の要請によりACE阻害薬を用いて再投与試験を行い,血管性浮腫の原因はACE阻害薬と判断した。ACE阻害薬長期内服中の患者でも本症例のように重篤な副作用が出現することを認識する必要がある。

  • 佐々木 庸郎, 山口 和将, 石田 順朗, 小島 直樹, 古谷 良輔 , 稲川 博司, 岡田 保誠
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    HCVキャリア,高血圧の既往のある50歳男性が上気道炎症状で発症し,敗血症性ショックとなり当院へ搬送された。来院時,すでに敗血症に伴う循環不全,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation,以下DIC),肝機能障害,急性腎不全など多臓器不全を来しており,人工呼吸器管理,抗DIC療法,持続的血液濾過透析などの集中治療を必要とした。血液培養より肺炎球菌が検出され,これによる敗血症と考えられた。来院時より四肢末梢,外鼻,耳介などに紫斑を呈しており,末梢循環は不良であった。経過中にこれらの部位が壊死を来し,電撃性紫斑病の合併と考えられた。Waterhouse-Friderichsen症候群,血球貪食症候群などを合併し,長期の集中治療を必要としたが, リハビリテーションを進める段階まで回復した。四肢の壊疸は,当初の予想より縮小して境界画定し,乾性壊疸であったため切断を急ぐ必要がなかった。しかし,結局小脳出血性梗塞を合併し,脳ヘルニアとなり死亡した。

  • 佐藤 千恵, 猿田 貴之, 服部 潤, 樫見 文枝, 神應 知道, 今井 寛, 相馬 一亥
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    救命救急センターで経験した示唆に富む内分泌緊急症の3例を報告した。症例1:38歳男性。39℃台の発熱,咽頭痛,消化器症状が出現後,意識障害と痙攣を認め当院へ搬送された。来院時JCS300であったが,脳局所兆候は認められず。血液検査にて低血糖と低ナトリウム血症を認め,精査によりACTH単独欠損症と診断した。症例2:39歳男性。胸背部痛出現後,心室細動となりDC施行し当院へ搬送された。来院時意識清明で血液検査にて低カリウム血症を認め,CT検査にて急性大動脈解離(Stanford B)と副腎腫瘍を認めた。精査により原発性アルドステロン症と診断した。症例3:53歳女性。意識障害と痙攣にて当院へ搬送された。頭部CT上,大脳基底核に石灰化を認め,血液検査では低カルシウム血症を認めた。精査により副甲状腺機能低下症と診断した。まとめ:上記のような一般的な症状で救急搬送されてくる患者の中に,さまざまな比較的まれな内分泌疾患が隠れていることを念頭におきながら,診療にあたる必要があると考える。

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