近年の救急医療需要の増大に伴い,既存の救急医療システムの有効利用は切実な問題となっている。川崎市において救急車の適正利用に関する調査を実施し,病態別に策定した軽症分類基準を用いて救急車要請の妥当性について調査した。平成18年秋の2ヶ月間における全救急要請8,347件に対して,指令課員,救急隊,医師の救急車利用の是非についての判断を比較検討した。軽症分類基準によつて指令課員が救急要請不要と判断したのは878件(10.5%)であった。そのうち,医師が要請不要と判断したのは586件で正確度は44.6%であった。これは救急隊が要請不要と判断した正確度86.3%に比較して著明に低かった。現段階では軽症分類基準だけで実際に患者に接することがなく,自覚症状と簡単な病歴から病状を判断するには限界があると推測された。救急車の適正利用を進めるためにも,より信頼度の高い分類基準を策定する必要があると考える。
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