日本臨床救急医学会雑誌
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12 巻, 6 号
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原著
  • 一致死的内因性疾患および多発外傷の場合―
    鮎川 勝彦, 高山 隼人, 前原 潤一, 井 清司, 藤田 尚宏, 有村 敏明, 中村 夏樹, 島 弘志, 宮城 良充, 藤本 昭
    原稿種別: 原著
    2009 年 12 巻 6 号 p. 535-542
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    救急車搬送時間と生存率との関係を明確にするため,九州の9つの急性期病院で急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI),クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH),脳梗塞(cerebral infarction:CI),脳出血(cerebral hemorrhage:CH),大動脈解離(aortic dissection:AD)の5疾患と多発外傷(multiple trauma:MT)の現場からの救急車搬送症例についてretrospectiveに集計し,検討した。1,310例の有効症例から,30日目の生存率は,AMIが85.8%,SAHが63.4%,CIが90.3%,CHが77.2%,ADが74.7%,MTが64.1%であった。また,覚知から病院到着までの搬送時間が40分以内であれば,AMIの重症と中等症,CIの中等症と軽症,ADのスタンフォードAおよびB型,ISS 18以 上の多発外傷症例では,搬送時間が短いほど,入院30日目の生存率が高くなることが確認できた。これらには負の高い相関で近似式も引くことができた。今回の検討から,搬送時間を短縮できる道路整備やドクターヘリの活用が進むことによって,症例によっては30日目生存率を上げることが期待できると思われる。

  • 一二三 亨, 大友 康裕, 吉岡 早戸, 山口 順子, 石堂 志直, 本間 正人
    原稿種別: 原著
    2009 年 12 巻 6 号 p. 543-547
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    急性薬物中毒患者に対し,救急隊の現場における医療機関選定に関する病院前トリアージ案を作成するために,後ろ向きに救急隊現着時の傷病者の意識レベル,服薬内容および服薬総量,治療内容として気管挿管,血液浄化療法の有無について検討した。2004年1月1日から2004年10月30日まで救命救急センター入院(3次対応)となった患者2,044名のうち,医薬品による急性薬物中毒患者数は162名(79%)であった。救急隊現着時,意識レベルがJCS Ⅱ桁以下で,かつ服薬総量50錠未満では,救命処置としての気管挿管を要する傷病者は,わずか(60名中2名)であり,血液浄化療法を必要とした症例はなかった。今回の検討によりわれわれは,救急隊現着時,医薬品による急性薬物中毒と判断された傷病者の意識レベル,服薬内容の危険薬物の有無に加えて,服薬錠数が50錠未満かどうかにより搬送先の選定を考慮するというトリアージ案を提案する。

調査・報告
  • 荻野 暁, 沼上 清彦, 和田 貴子, 吉川 恵次, 神納 光一郎, 森下 伊津夫, 田辺 敦, 大橋 教良, 田中 秀治, 太田 宗夫
    原稿種別: 調査・報告
    2009 年 12 巻 6 号 p. 548-552
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    民間の救急救命士養成校は平成20年4月現在で28校あり,そのうち卒業生が出ている19校で実施した就職状況に関する記名式アンケート調査の結果を検討した。19校の救急救命士国家試験合格者のうち,2,000人以上の卒業生が現状で資格を最も活用できる消防機関に就職できていない実態が判明した。また,救急救命士資格を有する女子救急隊員の主要な供給源が養成校であることが示唆された。救急救命士資格を有する卒業生の採用は,消防にとって経済面・社会面から利点があると考えられるが,このためにも養成校は学生の消防への就職が果たせるよういっそうの自助努力が必要である。

  • 岩橋 勝一, 最所 純平
    原稿種別: 調査・報告
    2009 年 12 巻 6 号 p. 553-557
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    救命できなかった心原性CPA症例のなかにPreventable Deathが存在する可能性について考察し,原因を地域プロトコルに基づき時間的要因に注目した検討を行った。2005年4月~2007年10月までの心原性CPA症例から,救命の可能性が高いと考えられた17例(60才未満,日撃者あり)を抽出。転帰「死亡」は10例。VFを呈していた転帰「死亡」9例に対し,接触から除細動器電極装着時間が遅延していた症例が5例存在。うち4例は解析開始時間も遅延しており,救急隊活動に課題があると考えられた。一方,転帰「1ヶ月以上生存」7例は速やかに電気ショックが実施されており,早期に除細動器を起動させることで救命につながることがあらためて示唆された。検討の結果,心原性CPA症例のなかにPDが存在すると思われ,PDを減らすためには早期に除細動器を起動させることを義務付けているプロトコルを厳守することが必要であると考えられた。

  • 間渕 則文, 山田 富雄, 山崎 潤二, 稲垣 雅昭, 松本 卓也, 南 仁哲, 三宅 健太郎, 笹野 寛, 田久 浩志, 中川 隆
    原稿種別: 調査・報告
    2009 年 12 巻 6 号 p. 558-563
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    平成20年道交法施行令の改正により可能となった患者搬送機能のない乗用車型ドクターカーを,毎日24時間体制で運用し4ヶ月が経過した。4ヶ月間に107件の出場要請があり,出場途上キャンセル率は約21%であった。要請に至った病態としては,交通外傷,CPA,循環に問題があったもの,意識に問題があったものの順で多かった。要請がかかってから出場までに要した時間(要請出場時間)は全出場の平均が3.8分であったが,医師が自宅待機をしている場合は5.6分と遅延していた。出場してから現場に到着するまでの時間(出場現着時間)は,多治見市内への出場の場合,現場に直行できたときには5.1分であったが,現場が同定できず消防誘導車と途上で合流して現場に向かった場合には9.8分を要していた。改善する点もいくつかはっきりしてきたが,運用開始初期としては出場件数,対象 疾患・病態,レスポンスタイムについてまず妥当な範囲で運用されていると考えられた。

  • 森脇 義弘, 田原 良雄, 加藤 真, 豊田 洋, 小菅 宇之, 鈴木 範行, 杉山 淳
    原稿種別: 調査・報告
    2009 年 12 巻 6 号 p. 564-572
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    背景と目的:高齢者生活施設入居者の心肺停止(CPA)時の施設内看取り(施設内で死亡に立ち会うか,救急要請を行わず医師到着を待ち施設内で死亡確認)の可能性を考案する。方法:1)救護施設内での看取りを受容できるか,CPAに備えた本人の意思確認に施設職員が携われるかを調査,2)死が予想される症例にCPA時用の意思確認が可能かを検討した。結果:1)入居者本人の意思は聞いておくべきだが,反復してまでは聞くべきでないとの回答が目立った。自然な死,施設内での死を希望していた入居者がCPAで発見された場合,自然に看取ってあげたいか積極的治療をしてあげたいかでは半々,入居者が死亡するふさわしい場所は施設と思われていた。2)5年間で本人用10通,家族用4通を作成するにとどまった。全例が自然に看取られたい,70%が徐々に衰弱した場合施設で看取られたいと回答した。結論:入居者のCPA時に備えた意思確認は対象を選定すれば可能だが,全例に機械的に行うのは時期尚早と考えられた。

症例報告
  • 籾井 英利, 安藤 真一, 高須 修, 矢野 博久
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 12 巻 6 号 p. 573-576
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2023/09/06
    ジャーナル フリー

    症例は63歳男性で,喉の違和感を自覚,約24時間後に呼吸困難を訴え徒歩で近医を受診し,待合室にて心肺停止となった。気道確保ができず,バッグバルブマスクを用いて蘇生を行いながら当院に搬入。喉頭展開にて著しく腫大した喉頭蓋により声門を直接観察できなかった。挿管に成功し,心停止から約45分後に自己心拍の再開に至ったものの翌日に亡くなられ剖検を行った。その結果,喉頭蓋嚢胞を認め,嚢胞の導管と思われる部位に細菌塊を伴う塞栓物と,膿瘍の形成と嚢胞壁の破壊がみられた。この炎症が喉頭蓋舌側へ急激に波及し,気道狭窄・閉塞に至ったと推察された。

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