救急車搬送時間と生存率との関係を明確にするため,九州の9つの急性期病院で急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI),クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH),脳梗塞(cerebral infarction:CI),脳出血(cerebral hemorrhage:CH),大動脈解離(aortic dissection:AD)の5疾患と多発外傷(multiple trauma:MT)の現場からの救急車搬送症例についてretrospectiveに集計し,検討した。1,310例の有効症例から,30日目の生存率は,AMIが85.8%,SAHが63.4%,CIが90.3%,CHが77.2%,ADが74.7%,MTが64.1%であった。また,覚知から病院到着までの搬送時間が40分以内であれば,AMIの重症と中等症,CIの中等症と軽症,ADのスタンフォードAおよびB型,ISS 18以 上の多発外傷症例では,搬送時間が短いほど,入院30日目の生存率が高くなることが確認できた。これらには負の高い相関で近似式も引くことができた。今回の検討から,搬送時間を短縮できる道路整備やドクターヘリの活用が進むことによって,症例によっては30日目生存率を上げることが期待できると思われる。
抄録全体を表示