日本臨床救急医学会雑誌
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22 巻, 6 号
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会告
原著
  • ―2つのトリアージツールの比較検討―
    髙岡 宏一, 山中 雄一, 山名 比呂美, 松永 奈千代, 小野 雅也, 掛田 崇寛
    原稿種別: 原著
    2019 年22 巻6 号 p. 753-760
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,救急外来看護師18名を対象にEmergency Severity Index(ESI)とJapan Triage and Acuity Scale(JTAS)を用いて,模擬患者課題を通した評価者間一致の差を無作為化比較試験で検証することである。緊急度判定の評価者間一致はκ係数を用いて分析した。その結果,ESIはJTASと比較して高い評価者間一致を認め,より優れたカテゴリーに分類された(ESI=0.82,JTAS=0.74)。また,トリアージナース間の一致率においても,ESIはJTASに比して,すべての緊急度で同等以上であり,なおかつもっとも判定に難渋する緊急度レベル2で高い評価者間一致を示すことが明らかになった。すなわち,ESIは患者を適切な緊急度に判定可能であり,わが国の救急臨床により適したトリアージツールであることが示唆された。

  • 井上 弘行, 上村 修二, 小出 梨紗, 舘 祐希, 喜屋武 玲子, 文屋 尚史, 片山 洋一, 葛西 毅彦, 成松 英智
    原稿種別: 原著
    2019 年22 巻6 号 p. 761-767
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:医師の業務負担軽減のため,当センターでは2016年に医師事務作業補助者(以下,DC)の業務内容を見直し,病棟庶務から本来業務に変更(以下,業務改革)した。2018年度からはDCを増員し2名体制としたため,それらの効果を検討した。方法:改革前,改革後,DC増員後それぞれの,DCによる各種文書の代行作成数,文書遅滞によるクレーム数,オーダー代行数,各種記録数,症例登録入力数,および医師の残業時間,患者受入応需率,医師満足度などを調査した。結果:業務改革によってDCによるすべての文書作成と記録の件数は増加した。多くの業務がDCに移行され,患者受入応需率は6.7%増加,医師の残業時間は14%減少し,医師の満足度は100%であった。結論:業務改革により医師の負担は軽減し,診療にエフォートをシフトし得た。また,業務が効率化され,生産性と医療の質を上げた。救急医の働き方改革の鍵はDCの活用にある。

  • 森川 剛, 久保田 健, 寺島 孝徳, 岡澤 香津子, 湯本 みゆ紀, 柄澤 裕, 塚田 晃裕
    原稿種別: 原著
    2019 年22 巻6 号 p. 768-775
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:当院の夜間緊急入院対応病棟における薬剤師業務において,薬剤関連入院の実態を調査し,また薬剤師の介入による医療経済的評価を行った。方法:対象は,2016年4月〜 2018年3月までの2年間で,夜間緊急入院対応を主とする病棟で薬剤管理指導を実施した1,754例とした。薬剤師の介入によって薬剤関連問題が原因の入院であると医師が診断した症例とその入院費,処方中止・減量を提案した薬剤のうち費用最小化分析が適応できる症例を調査した。結果:薬剤関連問題による入院と診断された症例は3.6%(64例/1,754例)あり,その入院医療費は計約5,454万円であった。薬剤師による中止・減量提案は410薬剤あり,費用最小化分析が適応できる医薬品削減費は計約710万円であった。結論:入院早期に薬剤師が介入することで,薬剤関連問題が明確化され,医療経済効果も明らかとなった。

  • 有村 公一, 黒木 愛, 西村 中, 坂本 哲也, 飯原 弘二
    原稿種別: 原著
    2019 年22 巻6 号 p. 776-783
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:本邦における脳卒中病院前救護の現状は不明であり,全国的な調査が必要である。方法:本研究では全国の消防本部を対象としたアンケート調査を実施した。病院前診断,医療機関情報,搬送手段,ICT,脳卒中最新治療の周知状況,事後検証・再教育体制などについてアンケート項目を設定した。結果:PSLSおよび病院前脳卒中スケールの活用率はそれぞれ47.6%,59.9%であった。半数以上で管内に常時血管内治療が可能な施設がなく,ドクターヘリは53%で活用されていた。ICTは41.1%で導入されていた。また脳卒中最新治療の認知は33.9%にとどまっていた。搬送先病院との事後検証は72.6%で行われていたが,地域MC協議会の事後検証の半数以上に脳卒中専門医が関与していなかった。結論:脳卒中病院前救護の標準化,地域格差の是正,医師と救急隊とのより積極的な情報共有などが必要であると考えられた。

  • 伊藤 真実, 川本 英嗣, 伊藤 亜紗実, 林 智世, 水谷 典子, 今井 寛, 島岡 要
    原稿種別: 原著
    2019 年22 巻6 号 p. 784-791
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    医療者間のコミュニケーション促進は,集中治療室での医療サービスの質にかかわる重要な要素である。しかし,コミュニケーションを客観的かつ網羅的に測定することは技術的に困難であった。本研究では,医療者に装着したウェアラブルセンサーで4週間にわたり持続的かつ網羅的に収集した行動科学ビッグデータを解析することにより,集中治療室での医療者間のコミュニケーションの活性度とネットワークの実態を研究した。コミュニケーションは加速度計により検出された特異的な身体運動強度でメタデータとして解析し,赤外線センサーで検出された医療者間の対面情報と合わせてネットワーク解析を行った。その結果,看護師のコミュニケーション量がもっとも多く,看護師がコミュニケーションの要となっていることがわかった。また,看護必要度や患者重症度が高いほどコミュニケーション活性度が高かった。

  • 根本 学, 京谷 圭子, 菅野 壮太郎, 高木 正人, 北山 勝博, 水村 勝
    原稿種別: 原著
    2019 年22 巻6 号 p. 792-800
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    日本は高齢社会を迎え,救急現場においてもその影響は避けられない。今回,人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生などのあり方に関して,日本臨床救急医学会の提言を参考に地域メディカルコントロール協議会のワーキンググループにより指針を策定し,運用を開始したので報告する。現場の救急隊員からの要望に応え,「救急救命処置についての説明と同意書」と「心肺蘇生に関する医師の指示書」を策定し,2017年12月1日より運用を開始した。運用開始から2018年11月30日の期間における内因性心肺停止525件中,心肺蘇生を望まなかったのは23件(4.4%)であった。救急隊員へのアンケート調査では,不安や精神的ストレスを感じている者がいることが判明した。人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生などのあり方に関しては,地域メディカルコントロール協議会を中心とした活動指針の策定と事後検証が重要と考える。

調査・報告
  • 宮﨑 雄紀, 西山 和孝, 林 美和子, 松原 ちはる, 網野 一真, 小口 正義, 登内 盛治, 伊藤 鮎美, 野首 元成, 酒井 龍一
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年22 巻6 号 p. 801-805
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    救急医療での薬剤師,とりわけ救急認定薬剤師の役割は大きくなってきており,中毒領域においても積極的な介入が求められる。今回,当院において経験した中毒関連多数傷病者対応について多職種での振り返りを行い,それを基に新たな救急認定薬剤師の役割として中毒患者ホットラインと救急外来への派遣体制を構築した。その後,重篤なメトヘモグロビン血症をきたした急性薬物中毒事例に対して同体制が機能し救命に至った症例を経験した。また,救急病棟へ入院した中毒患者に対して行ったカルテへの中毒原因物質情報の記載も有用であった。一般薬剤業務もさることながら,部署内での協力を得て,救急医療における多職種連携の一翼を担うことで院内での救急認定薬剤師としての新たな役割を確立した。今後も中毒領域に限らず救急医療に対するかかわりを強化していくととともに,後進の育成や病院間での連携などを担っていく必要がある。

  • 渡辺 徹, 村上 宏, 佐藤 信宏, 廣瀬 保夫
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年22 巻6 号 p. 806-811
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:救急隊員による12誘導心電図判読の精度と有用性を明らかにすること。方法:2015年8月から半年間,救急隊員が急性冠症候群を疑い12誘導心電図を記録した例を対象とした。身体所見と心電図を組み合わせた急性冠症候群の判断,初診医の診断などについて前方視的に検討した。結果:対象例は231例,救急隊員の急性冠症候群の判断精度は感度94.8%,特異度91.3%であった。救急隊員が心電図所見ST上昇と判断した群とST上昇ではないと判断した群に分類したところ,ST上昇と判断した群のST上昇型心筋梗塞の判断精度は感度100%,特異度60.0%であった。結論:救急隊員による身体所見と12誘導心電図を組み合わせた急性冠症候群の病院前判断は,感度・特異度ともに実用に耐え得る状況にあった。 教育された救急隊員による病院前12誘導心電図の判読はST上昇型心筋梗塞においてとくに有用である可能性がある。

  • 松本 尚哉, 三輪 琴未, 岡本 大介, 相川 なほ子, 安田 貞美, 市原 利彦
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年22 巻6 号 p. 812-816
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    平成23年より,医療事務委託企業と病院が共同し,救急外来受付事務スタッフの質向上を目的として救急救命士を配属する取り組みを開始し,一定の効果を得た。この取り組みが発展し,平成26年,臨床現場で医師・看護師の診療を支援する派遣スタッフ「ER-Aide」を立ち上げた。ER-Aideは救急救命士を中心に構成されるが,病院内で勤務する救急救命士は資格を直接活かせず定着率が低いことが課題であった。そのため,ER-Aideは派遣元企業で正社員雇用して待遇を保障し,昇給・昇格などのキャリアアップが臨める体制を構築した。また,社内の救急救命士同士が情報交換,悩み相談,勉強会などを活発に行う仕組みや,ベテランの救急救命士による教育体制を作るなど,課題の解消を図っている。慌ただしい医療現場に対し,医療事務から発展した企業からの派遣システムという新たな取り組みで,病院に貢献できる取り組みを紹介したい。

  • 佐野 元洋, 秋葉 七美, 広兼 妙子, 網 信子
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年22 巻6 号 p. 817-822
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    循環器専門病院では,他疾患専門の医療機関に比べ,院内心停止や急変対応に遭遇する割合が高い。循環器専門病院であるA病院では,2015年より医療従事者向けのBLSプロバイダー講習を導入し,院内急変の迅速な対応と治療に取り組んでいる。しかし,コメディカルスタッフの急変対応に関する現状や研修のニーズの把握ができていなかったため,アンケート調査を行った。最終的に163名がアンケートに回答した。70%以上のスタッフがBLSや急変に関する知識をもっており,急変対応をしたことがあるが,急変対応に自信がある割合は20%であった。ACLSやより高度な管理,シミュレーションやコミュニケーションに関する研修のニーズが明らかとなり,BLSプロバイダー講習に加え,重症管理やシミュレーションに焦点を当てるなど,ニーズや現状に応じた研修を検討する必要性が示された。

  • ―2011年と2016年の比較―
    小山 泰明, 井上 貴昭, 中村 晴美, 佐藤 信宏
    原稿種別: 調査・報告
    2019 年22 巻6 号 p. 823-831
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:改正臓器移植法から5年以上を経て,臓器提供の意識・教育普及の変化や必要な教育体制を明らかにする。方法:2011年8月・2016年1月開催の若手救急医勉強会に参加した医師を対象にアンケート調査を行った。結果:2011年44名(回収率88%),2016年63名(89%)が回答した。「臓器提供しない」とする回答者が17%から39%に増加した(p=0.044)。 臓器提供を希望しない若手救急医の20%しか選択肢提示(臨床的脳死が想定される患者の家族に臓器移植を含めた選択肢を提示し説明すること)をせず,臓器提供を希望する若手救急医の67%より少なかった。医療者教育が必要と半数の若手救急医が回答した。終末期患者・家族のグリーフケア研修受講率は10%未満,受講希望は29%から52%に上昇した。結論:臓器提供を希望しない若手救急医は選択肢提示も少なく,臓器提供の教育体制,とくにグリーフケア教育が不十分である。選択肢提示やグリーフケアに必要なコミュニケーション能力など,包括的教育体制構築が急務である。

編集後記
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