日本臨床救急医学会雑誌
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16 巻, 4 号
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総説
  • 斉藤 沙織, 城丸 瑞恵
    原稿種別: 総説
    2013 年 16 巻 4 号 p. 551-556
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    カテコラミン製剤のシリンジ交換は,循環動態に影響を及ぼすことがあり,緊張度の高い手技でありながらもスムーズに行う必要があるため,適切な交換方法についての検討が必要と考える。その基礎資料とするため,本稿ではシリンジ交換に関する研究動向を明らかにした。医学中央雑誌を用いて,「シリンジポンプ」「カテコラミン」をキーワードとし,解説を除外した原著論文15 件を対象として内容を分析した。結果は,【医療機器の特性】,【シリンジ交換方法】に大きく分類され,さらに【シリンジ交換方法】は,「シリンジ交換手技」と「シリンジ交換方法の比較検証」に分類された。これらの結果からシリンジ交換方法について,現在まで推奨される方法はいくつかあるが,一般的に標準化されるまで至っていないことが明らかになった。
原著
  • ―消防隊員および救助隊員との比較―
    神山 麻由子, 岡本 博照, 細田 武伸, 和田 貴子
    原稿種別: 原著
    2013 年 16 巻 4 号 p. 557-564
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    救急隊員の仕事のストレスを把握する目的で,X 市消防局職員1,246 人に対して勤務状況調査票と職業性ストレス簡易調査票を用いて悉皆調査を行い,このうち救急隊員を消防・救助隊員と比較した。救急隊員215 人は消防隊員418 人と救助隊員163 人に比べ,出場時間と出場関係の業務時間が有意に長く,休憩時間と仮眠時間は有意に短かった。救急隊員の不良なストレス要因は,消防隊員と比較して心理的な仕事の負担(質)および仕事の裁量度,救助隊員と比較して心理的な仕事の負担(量)および仕事の適性度を認め,ストレス反応は救助隊員と比較して不良であった。一方,男性標準集団との比較では,救急隊員のストレス反応は良好であり,ストレス要因の少なさと良好な社会的支援の影響が示唆された。救急患者の適切な搬送はきわめて困難な業務であるため,ストレス要因対策だけでなく上司,同僚,家族や友人からの社会的支援が重要であることが示唆された。
  • 安藝 敬生, 樋口 則英, 中川 博雄, 中村 忠博, 田崎 修, 槇田 徹次, 北原 隆志, 佐々木 均
    原稿種別: 原著
    2013 年 16 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    集中治療における患者の薬物動態は,急性の腎・肝・心機能の低下などに伴い多様に急速に変化するため,薬剤部内で医師の指示から投与設計を行うだけでは,効果的なバンコマイシン(以下VCM)の投与設計を行うことは困難である。今回,集中治療室・救命救急センターに常駐する専任薬剤師が,患者の状態変化や治療方針をVCM の投与計画に迅速に反映することで,VCM 血中濃度治療域の維持率がどの程度向上できたか解析を行った。介入群では,VCM血中濃度治療域の維持率が有意に高く,治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring,以下TDM)実施率も上昇した。専任薬剤師の初期投与計画への関与や,患者の状態変化などを把握したうえでの投与方法の提案により,適切な血中濃度が得られたと考える。急性期のTDM に積極的に専任薬剤師が介入する必要があることが示唆された。
調査・報告
  • 石原 徹, 小澤 秀樹, 守田 誠司, 黒田 啓子, 山崎 早苗
    原稿種別: 調査・報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 570-575
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    目的:CTAS 2008 の当院における有用性を検証するため,時間外救急外来を受診した発熱患者に対し,CTAS 2008 でトリアージレベルを解析し,転帰について調査した。また発熱患者の,他のモディファイア(補足因子)の必要性についても検討した。対象と方法:2011 年10 月〜12 月の3 か月間に,時間外救急外来に独歩で受診した17 歳以上の発熱患者131 名(男性61 名/ 女性70 名)。CTAS 2008 を活用し,看護師がトリアージした発熱患者の経過を,診療録から後ろ向きで観察し,診断と転帰について調査した。また,年齢・基礎疾患・CTAS レベルを2 値に分類し,転帰に対する影響をロジスティック回帰分析で検討した。結果:診断は上気道感染症が最も多く,CTAS 1 〜3 の症例は46.7% が入院の必要な転帰であり,CTAS 4 以下の症例は92.7% が軽症の転帰であった。ロジスティック回帰分析は,年齢がCTASレベルに独立して転帰に影響した(p=0.010)。結論:CTAS 2008 は発熱患者のトリアージに有効であると考えられたが,年齢が独立して転帰に影響している。
  • 岩橋 勝一, 最所 純平
    原稿種別: 調査・報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 576-580
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    救急救命士は医療従事者といわれながら,医師不在の医療機関外で業務を行う特殊性からか,いまだ自立した専門職として認知されていない。救急救命士の今後を考えるうえで,専門職に必要とされる自主性と自立性に焦点をあてたアンケート調査を当消防本部救急救命士に対し実施し,現状と課題を検討した。調査結果では87%が救急救命士は専門職と考えていたが,自己研鑽を実践していたのは54%だった。実践群の90%が専門職として自立していないと考えていたが,未実践群は67%にとどまった。一専門職としての責任の所在については,実践群は自身にあると答えたのに対し,未実践群は組織と答え,有意差を認めた。調査から自主性と責任感を備えた救急救命士が一定存在し,自立すべき専門職の適性を備えていると示唆されたが,さらに専門職として向上する立場を認識すべきと考える。また,受動的で自主性に乏しく組織に責任を委ねるだけの救急救命士の存在は大きな課題である。
  • 吉廣 尚大, 櫻谷 正明, 吉田 研一
    原稿種別: 調査・報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 581-588
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    当院は2010 年より,播種性血管内凝固症候群(以下DIC)に対して遺伝子組み換え型ヒトトロンボモジュリン(以下rTM)を用いている。そこで,DIC 症例を対象に,治療薬として合成プロテアーゼ阻害薬(以下SPI)を使用した患者群(非rTM 群)と,rTM を使用した患者群(rTM 群)において,輸血・血液製剤使用量,凝固系マーカーの推移について後ろ向きに検討した。2009 年1 月から12 月までに集中治療室(以下ICU)に入室した非rTM 群27 症例と,2010 年1 月から2012 年3 月までにICU に入室したrTM 群34 症例を比較した。rTM 群では非rTM群に比べ新鮮凍結血漿と血小板製剤の使用量が有意に少なかった(P=0.04, P=0.05)。rTM の使用が輸血・血液製剤使用量を減少させる可能性がある。
  • ―救護所における処方動向とグループページを活用した後方支援―
    中浴 伸二, 北田 徳昭, 山本 健児, 有吉 孝一, 橋田 亨
    原稿種別: 調査・報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 589-594
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    神戸市立医療センター中央市民病院は,東日本大震災被災地に対する医療支援として,被災地の同一救護所において56 日間の継続した診療活動を行った。現地医療機関の機能がすべて失われた被災地の救護所では,亜急性期から幅広い医薬品の需要が存在した。一方,派遣職員を中心に立ち上げたグループページを活用した情報共有を図ることで,現地情報の把握のみでなく,円滑な後方支援を行うことができた。被災地に対して,効率的な医療支援を行うためには,同一の医療機関による継続した支援が有効であると考えられた。
症例報告
  • 柴田 啓智, 坂本 知浩, 丸山 徹, 田上 治美, 飛野 幸子, 中尾 浩一
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 595-598
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    チエノピリジン系抗血小板薬であるクロピドグレルは,経皮的冠動脈インターベンションのステント留置例において,亜急性血栓性閉塞の予防に寄与する重要な薬剤である。しかし,クロピドグレルは肝臓において薬物代謝酵素の1 つであるCYP2C19 により代謝され薬効を発揮するため,その代謝活性が低い場合効果を示さないことがある。今回われわれは,クロピドグレル服用中でステント留置後に亜急性血栓性閉塞を繰り返した症例を経験した。この症例に対し,VerifyNow®P2Y12 を用いてチエノピリジン系薬剤に特異的な血小板凝集活性を測定したところ,クロピドグレルの薬効がまったく認められなかった。そこで,本患者のCYP2C19遺伝子多型解析を行ったところ,クロピドグレルの代謝能力が低いタイプであることが判明した。この結果をふまえ,クロピドグレルをチクロピジンに変更し,VerifyNow®P2Y12 により抗血小板活性を測定したところ,薬効が認められるようになった結果,合併症を出現せずに経過している。今回の知見で示したように,VerifyNow®P2Y12 とCYP2C19 の遺伝子多型解析の組み合わせは,今後のクロピドグレル適正使用に貢献できるものと考える。
  • 尾中 敦彦, 澤 悟史, 伊藤 真吾, 岡 宏保, 植山 徹, 松阪 正訓, 中村 達也
    2013 年 16 巻 4 号 p. 599-602
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    鈍的腸間膜血管損傷の検出に関するmultidetector row computed tomography を用いたCT angiography の有用性についての報告は少なく,海外で4 編,本邦で1 例の報告が認められるのみである。今回,回結腸動脈のvasa recta 損傷をCT angiography により描出し得た鈍的外傷症例を経験したので報告する。症例は20 歳女性。交通事故により受傷し,当センターに救急搬送された。CT angiography では回結腸動脈末梢のvasa recta に造影剤の血管外漏出像を認めた。緊急開腹術の結果,画像所見と一致する回腸末端にvasa recta からの活動性出血を伴う腸間膜損傷を認め,結紮止血術を行った。自験例では,CT angiography による腸間膜末梢血管損傷の描出が可能であった。またその際,薄いスラブ厚を用いた最大値投影法(thin slab MIP)が有用であった。
  • 後藤 明子, 中島 厚士, 山下 友子, 岩村 高志, 朽方 規喜, 阪本 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 603-606
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    症例は60 歳代の男性。突然の前胸部痛と嘔気を主訴に救急搬送された。来院時は意識清明で,明らかな外傷や神経学的異常は認めなかった。心電図にV2 〜V5 でST 上昇があり,心エコー上,前壁中隔の壁運動低下を認め,急性冠症候群と判断し,緊急心臓カテーテル検査を施行した。左前下行枝Segment 7 の100%狭窄を認め,経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行したが,その後,ICU へ搬送中に意識レベルの低下を認めた。頭部CT で,外傷性脳挫傷,両側硬膜下血腫,外傷性くも膜下血腫を認め,PCI 時に使用した抗凝固薬により,血腫が増悪した可能性が考えられた。急性硬膜下血腫に対して,両側頭蓋内血腫除去術,および右広範囲外減圧術を施行したが,その後も意識レベルの改善はみられず,入院11 日目に死亡した。急性心筋梗塞治療後に頭部外傷が判明し,対応に苦慮した症例を経験したので若干の文献的考察とともに報告する。
  • 皆川 幸洋
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 607-612
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,過去10 年間に当救命救急センターを受診した喀血症例60 例について年齢,性,原因疾患,気管支動脈塞栓術(bronchial arterial embolization,以下BAE)の有無,喀血量(推定),予後について検討し,文献的考察により喀血患者に対するアプローチ,BAE の適応と限界について検討した。年齢は平均69 歳(13 〜95 歳),男性35 例,女性25例。原因疾患は肺炎14 例,特発性肺出血12 例,肺アスペルギルス症6 例,陳旧性肺結核6 例,肺癌6 例,気管支拡張症4 例,外傷1 例などであった。BAE の有無については10 例にBAE を施行した。喀血患者に対するアプローチとして,チーム医療による大量喀血を念頭においた迅速なmultidetector-row CT angiography(MDCTA)による診断から,積極的にBAE を施行することと,BAE を行っても症状が安定しない症例に対する外科的治療や病態,治療環境に応じたその他の治療法の適応決定が重要と考えられた。
  • 小林 巌, 木村 慶信, 大曾根 順平, 望月 宏樹, 住田 臣造
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 16 巻 4 号 p. 613-617
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/15
    ジャーナル フリー
    症例は79 歳女性。転倒による大腿骨転子部骨折に対して,入院当日にインプラントを用いた骨接合術を施行。第11 病日より発熱と創部腫脹がみられ,第17 病日にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による骨髄炎と判明したが,インプラント抜去を行わずに治療を行う方針となりICU 入室となった。バンコマイシンに対する感受性低下(最小発育阻止濃度2μg/ml)と腎機能障害を認めたため,ダプトマイシン(6mg/kg/ 日)とリファンピシン(600mg/ 日)による治療を行った。第79 病日でダプトマイシンとリファンピシンの治療を終了後,約2 週間のリネゾリド(1,200mg/ 日)内服を継続した。長期に及ぶダプトマイシンの投与であったが,横紋筋融解症などの重篤な副作用を発症することなく安全に治療を終えた。今後,本邦でもダプトマイシン長期投与の有効性と安全性に関するデータの蓄積が必要と思われる。
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