日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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25 巻, 6 号
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会告
原著
  • 小林 明子, 日高 未希恵, 浦中 桂一
    原稿種別: 原著
    2022 年 25 巻 6 号 p. 893-901
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:看護師によるリハビリテーション介入の実態と関連する要因を明らかにする。 方法:高度救命救急センター37施設の入院病棟で人工呼吸器装着患者のケアに携わる看護師を対象とした,無記名自記式質問紙による横断研究を実施した。結果:配布数370部に対し111部(回収率30%)から回答があった(有効回答率65.8%)。従属変数を段階ごとの介入の有無としたロジスティック回帰分析の結果,独立変数とした情報収集で7項目,妥当性の判断で2項目,直接介入で6項目,継続看護で4項目において有意な関連が認められた。結論:救命救急センターの看護師が行う人工呼吸器装着患者へのリハビリテーション介入は,介入の段階(情報収集,妥当性の判断,直接介入,継続看護)ごとに関連している因子が異なるため,段階に応じた支援を提供する必要性が示唆された。

  • 山本 祥寛, 菅沼 和樹, 中西 仙太郎, 白戸 康介, 宮内 直人, 吉池 昭一
    原稿種別: 原著
    2022 年 25 巻 6 号 p. 902-906
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:壊死性筋膜炎の診断の一助としてLRINEC scoreが提唱されているが,その有効性は報告によりさまざまである。当院におけるLRINEC score の有用性を調査した。方法:2014年3月〜2020年3月までに救急外来を受診した全患者のうち,主担当科による最終診断が壊死性筋膜炎またはフルニエ壊疽の者を対象として年齢,性別,発症から来院までの時間,血液検査結果を診療録により情報収集し,後方視的に検討した。結果:最終診断が壊死性筋膜炎またはフルニエ壊疽であったものは14例,診断に有用であったものは9例,有用でなかったものは5例であった。有用でなかった群はいずれも,前医で抗菌薬加療が行われていた症例,もしくは発症から来院までの時間が48時間未満で受診した患者であった。考察:抗菌薬前投与がなく48時間以上経過した症例ではLRINEC scoreが診断の一助となる可能性がある。

調査・報告
  • 丸川 征四郎, 金子 洋, 長瀬 亜岐, 畑中 哲生
    原稿種別: 調査・報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 907-915
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    わが国では院外心停止に対する救命処置件数などにかかわる大規模データの報告はあるが,心肺蘇生現場の実態を調査した報告は見当たらない。目的:一体型電極パッドを備えた自動体外式除細動器(以下,AEDと略す)の使用状況にかかわる事後調査資料の解析をとおして,心肺蘇生現場における救助者の活動状況などを明らかにする。方法:旭化成ゾールメディカル株式会社(以下,AZM社と略す)が独自に行った救助者などへの聞き取りによる事後調査結果152件を解析した。結果:従来と異なる形状の電極パッドは,医療関連施設とAED講習受講歴がある救助者で戸惑う傾向を認め,電気ショック実施割合は非医療関連施設で高値(41.7% vs 18.6%)であった。聞き取りによる情報量は事後3カ月を過ぎると減少した。結語:AZM社の単独調査であることなどに問題はあるが,救助者の活動状況などの一端が伺えた。事後調査のあり方についても示唆に富む知見を得た。

  • 江川 香奈, 木村 敦
    原稿種別: 調査・報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 916-922
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:一般市民のAEDの使用率向上のための環境にかかわる課題を把握するために,医療福祉施設を事例とし,AEDの配備状況と使用の申し出のしやすい場所の関係性,住宅地にある施設のAED配備への印象を調査した。方法:医療福祉施設のAEDの配備場所,住民のAEDの配備場所へのニーズ,各施設のAEDの配備有無と各施設の住宅地への設置希望との関連を,自治体HPの内容と一般市民100名へのwebアンケートから把握した。結果:AEDの配備場所と,使用の申し出がしやすい場所は老人ホームでは「玄関」と一致したが,児童館と保育園は配備場所「事務室」に対し,申し出のしやすさはそれぞれ「玄関」,「玄関」と「玄関前」と一致していなかった。また,老人ホーム,デイサービス,児童館,保育園はAEDが配備されていた方が住宅地に設置が望まれる傾向がみられた。結論:住民の使用しやすいAEDの配備場所の概要などが把握できた。

  • 米川 力, 間藤 卓, 新庄 貴文
    原稿種別: 調査・報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 923-929
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:コロナ禍における事後検証会開催の工夫について報告する。方法:e-learningシステムを用いた事後検証会の導入前後,およびコロナ禍における事後検証会開催方法について,参加者にアンケート調査を行い,各々の開催方法による満足度を調査した。結果:128件の回答を得た。e-learningシステム導入前の対面式では40.9%が満足・どちらかといえば満足と回答,対面式+ビデオ視聴形式では64.5%が満足・どちらかといえば満足と回答,完全web形式(メーリング討議)では56.3%が満足・どちらかといえば満足と回答した。結論:それぞれの開催形式にはメリット・デメリットがあるが,対面式+ビデオ視聴形式のハイブリッド開催は事後検証会の活発な討議に有効であると考えられる。

  • 大和田 均, 竹井 豊, 神藏 貴久, 山内 一, 大松 健太郎, 岩﨑 隆, 田中 秀治
    原稿種別: 調査・報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 930-934
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:救急隊員にとって,現場活動時の暑熱環境対策はきわめて重要な課題である。本研究では,猛暑対策を目的として,救急隊員の手掌部冷却が現場活動時の猛暑対策によい影響を与えるかを検証した。方法:大学3年生14名を対象として,冷感シートを被験者の両手掌部に貼付した状態で,模擬活動を実施する冷感シート貼付群と未貼付群間の客観的・主観的身体負荷を比較した(外気温28℃,湿度55%)。客観的評価は,被験者の舌下温,前額部温,SpO2値,脈拍数,収縮期血圧の変化,主観的評価は,アンケート調査による被験者の感覚とした。結果:客観的評価で有意差を認める項目はなかったが,アンケート調査において,温冷感(p<0.01),湿度感(p<0.05),快適感(p<0.01)について,被験者は冷感シート貼付時の猛暑に対するよい印象をもっていた。しかし,客観的評価で有意差を認める項目はなかった。結論:救急隊員の手掌冷却は,猛暑時の現場活動を快適にする可能性がある。

  • 竹内 若菜, 松浦 裕司, 櫻谷 眞佐子, 山村 仁
    原稿種別: 調査・報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 935-941
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では小児の年齢や身長・体重に応じ適切な医療資器材や薬剤投与量を記載した小児用のファイルをドクターカーに導入し,その有用性を検討することを目的とした。方法:2014年7月〜2021年7月の期間における14歳以下の小児のドクターカー出動症例のうち,気管挿管とアドレナリン投与を要した心肺停止症例を対象とした。小児ファイルの使用の有無で,挿管チューブ挿入長・帰院後のチューブ調整の有無を比較検討した。アドレナリン投与量に関しては,体重が不明な現場での投与量が許容範囲内であったかを検討した。また,同乗看護師に対してアンケート調査を行った。結果:小児ファイル使用群で,位置不良で再調整を行った症例が減少した。アドレナリン投与量に関しても,許容範囲内で投与できていた。アンケート結果からは,ファイルを参照したことで,診療チーム内での認識統一や,準備時の混乱の軽減につながっていたことが明らかとなった。結論:小児ファイルはプレホスピタルにおいて,医療資器材や薬剤の準備と診療を正確に行うことにつながり有用であった。

症例・事例報告
  • 川口 竜助, 宮口 恵美, 濱田 隼一, 後藤 安宣
    原稿種別: 症例・事例報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 942-945
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    末梢挿入式中心静脈カテーテル留置手技中,カテーテルに結び目が形成されることがまれにあるが,そのメカニズムは明らかではない。今回,結び目形成の前段階でカテーテルがループ形成している状態をX線画像で記録したので報告する。患者は70歳代,男性。BMI 15.8。食道癌に対する化学療法を目的に入院し,特定ケア看護師が右上腕尺側皮静脈より末梢挿入式中心静脈カテーテルの留置を非透視下で行った。穿刺からイントロデューサシース抜去までとくに異常はなく,X線撮影を実施したところ,右胸鎖関節部を先頭に8の字状にカテーテルがループを描いていた。抜去しようとカテーテルを牽引すると,先端から5cm のところに結び目が形成されていた。ループ形成したカテーテルを非透視下で牽引することは結び目の形成につながる可能性があり,ループ形成を確認した時点で透視下での解除を試みる必要がある。

  • 砂川 智佳, 後藤 縁, 小川 健一朗, 北川 喜己
    原稿種別: 症例・事例報告
    2022 年 25 巻 6 号 p. 946-950
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    水タバコは,燃やしたタバコの煙を水にくぐらせ濾過された煙を吸う喫煙方法である。タバコの加熱時に発生する一酸化炭素(CO)を吸入することで急性CO中毒を生じるリスクがあるが,わが国での報告は限られている。症例は25歳,女性。シーシャバーで水タバコを3時間喫煙した後,意識障害を生じ救急搬送された。意識レベルはGlasgow Coma Scale(GCS)E1V1M4。静脈血ガス検査でCOHb 30.7%と高値であり,急性CO中毒と診断した。 高濃度酸素を投与し,COHbは2時間後に14.5%,8時間後に0%まで低下。意識レベルは4時間後にGCS E4V5M6まで改善した。遅発性脳症のリスクを考慮し,高気圧酸素療法が可能な施設へ転院とした。5カ月後の時点で後遺症はみられていない。わが国でも水タバコを提供する店舗が増加しており,救急医療にかかわる者は,水タバコによるCO中毒の危険性を認識し啓発に努める必要がある。

編集後記
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