日本臨床救急医学会雑誌
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9 巻, 6 号
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原著
  • 天野 忠好, 日高 武英
    原稿種別: 原著
    2006 年 9 巻 6 号 p. 423-427
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    ショックパンツのゲージ圧は様々な要因により変化することが予想される。そこでLSPショックパンツTM(以下,LSP)コーケンMid-MASTTM(以下,MAST)を用いて,現場で想定される体位変換(ログリフトやログロール)及び被装着者の体重が,ゲージ圧に与える影響について調査した。今回実施したすべての体位変換にゲージ圧の著しい低下を認め,また,被装着者の体重が大きいほうが影響を受けやすいことが明らかになった。ショックパンツ装着後において体位変換を実施する場合は,ゲージ圧の変化やそれに伴う循環動態の悪化に注意しなければならない。

  • 阪本 雄一郎, 益子 邦洋, 松本 尚, 原 義明, 朽方 規喜, 武井 健吉, Hiroyuki UENO, 富田 祥輝, 山本 保博
    原稿種別: 原著
    2006 年 9 巻 6 号 p. 428-432
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    背景:重症外傷患者の治療戦略としてDCS(damage control surgery)の重要性が報告されているが,当科では実践的で簡便な基準(血圧90以下,BE −7.5以下,体温35℃以下)を用いて DCSの決断を行っている。目的:救急室開腹手術(emergency room laparotomy;ERL)の意義を当科のDCS決断基準に基づき検討する。対象と方法:平成6年から平成18年1月までに当科で経験した肝損傷269例中,開腹手術の行われたⅢb型肝損傷19例を対象に,ERL施行群(A群)と非施行群(B群)に分け比較検討した。結果:A群がB群より有意に予測生存率が低く,A群は全例が当科のDCS決断基準の3項目を満たしていた。A群中4例の死亡例は,来院から平均34.3分(21-62分)で手術を開始しているが,当科の示したDCS決断基準の3項目を来院から平均22.5分(17-34分)で満たしていた。考察:DCS決断基準を満たした時点で迅速に手術を施行するためには救急室開腹手術を要すると考えられた。

調査・報告
  • 阪本 雄一郎, 益子 邦洋, 松本 尚, 原 義明, 朽方 規喜, 武井 健吉, 富田 祥輝, 齋藤 伸行, 八木 貴典, 山本 保博
    原稿種別: 調査・報告
    2006 年 9 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    はじめに:JPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)1)受講者率と交通事故死亡者数の推移について検討した。対象と方法:千葉県の消防本部ごとにJPTECプロバイダー取得者の割合が消防吏員中10%以上の地域(A群)と10%未満の地域(B群)に分け,平成12年から16年における死亡者数の推移を比較検討した。また,MC(Medical Control)地域ごとのプロバイダーコース開催数と交通事故死亡者の推移を検討した。結果:A群では平成12年に比し16年では有意に交通事故死亡者数が減少していたが(p=0.0173),B群では差を認めなかった。MC地域間でのコース開催数の格差が認められ,コース開催が多い地域の交通事故死亡者数は減少していた。考察:JPTEC普及の効果によって交通事故死亡者数減少の可能性が示唆された。千葉県においてはMC協議会主催コースの開催数に地域格差があるため,地域MC協議会を横断するコース開催は有用と考えられ,今後は消防学校の正規授業におけるコース開催の意義についても評価する必要がある。

臨床経験
  • 一下肢動脈塞栓症との比較一
    藤井 弘史, 北澤 康秀, 金田 浩由紀, 山本 透, 富野 敦稔, 岸本 真房, 鈴木 聡史, 梅井 菜央, 安藤 有子, 村山 里香
    原稿種別: 臨床経験
    2006 年 9 巻 6 号 p. 438-443
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:閉塞性動脈硬化症の急性増悪例の治療成績を塞栓症と比較した。対象:閉塞性動脈硬化症急性増悪10例と,下肢動脈の塞栓症8例が対象となった。結果:閉塞性動脈硬化症急性増悪例では,一次的下腿切断例を除き,残りの9例では発症から平均74.3時間後にバイパス手術を施行した。全例とも救肢に成功し,重篤な合併症や周術期死亡は認められなかった。下肢動脈塞栓症例では発症から平均6.6時間で,全例とも血栓除去術を行ったが,2例で肢の切断を要した。膝上切断の症例では急性腎不全を合併したが生存退院した。周術期の再塞栓(脳梗塞)は2例に発生し,う ち1例が死亡した。結論:下肢閉塞性動脈硬化症急性増悪例は,発症から比較的時間が経過している症例でも,救肢が可能となることがある。塞栓症では救肢に成功しても他臓器を含めた再塞栓を発生しやすく注意が必要である。

  • 上野 幸廣, 阪本 雄一郎, 松本 尚, 原 義明, 朽方 規喜, 武井 健吉, 富田 祥輝, 益子 邦洋, 山本 保博
    原稿種別: 臨床経験
    2006 年 9 巻 6 号 p. 444-449
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    1999年1月から2004年9月までの5年8ヶ月の間に,吐血・下血を主訴に搬送された上部消化管出血164症例を対象として,出血原因・止血までの時間・止血方法・再出血率・予後を検討した。164症例中ショック(収縮期血圧90mmHg以下またはショック指数1以上)症例は70例(43%)を占めた。ショック症例において,病院搬送から緊急内視鏡検査開始までの平均経過時間は45分であった。再出血症例は23例(14%)で,手術施行症例は5例(3%)だった。来院時心肺停止症例を除くと出血による死亡例は認めず,これまでの報告での死亡率6~8%と比較して,極めて良好な結果であった。内視鏡検査に習熟した救命救急センターの医師が治療を行うことによって,循環動態の早期の安定化と出血に対する決定的治療を連続して時間を浪費することなく行うことができ,救命率の上昇につながることが示唆された。

症例報告
  • 小野 元, 内田 一好, 田口 芳雄, 伊巻 尚平
    原稿種別: 症例報告
    2006 年 9 巻 6 号 p. 450-453
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    交通外傷にて生じた外傷性頭蓋内動脈瘤と頭蓋外頸部動脈瘤の合併例を経験した。外傷による頭頸部血管障害は意識障害やその他の原因で見落としがちであり,治療上緊急性の高い病態が多く存在するため注意が必要である。また外傷性頭蓋外頸部動脈瘤の治療は,社会的背景を考慮し血管内治療を含め対応が必要であり,質の高い社会復帰を目指す必要がある。

  • 柳井 真知, 小林 宏正, 池田 香織, 石原 隆, 有吉 孝一, 佐藤 慎一
    原稿種別: 症例報告
    2006 年 9 巻 6 号 p. 454-460
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    68歳女性。糖尿病,高脂血症で近医加療中。前夜からの胸痛が持続したたため,某医を経由し当院救急外来受診。血圧172/102mmHg,脈拍94bpm,心電図で広範なST低下を認め,トロポニンT陽性,心エコーで心尖部を除き低収縮。収縮期血圧が40~200mmHgと変動を繰り返した。緊急冠動脈造影では有意な狭窄はなく,心機能は約7日で正常化した。CTで左副腎に3cm径の内部不均一な腫瘤を認め,褐色細胞腫の腫瘍内出血によるカテコラミン心筋障害・心原性ショックと考えた。しかし血中・尿中カテコラミンは軽度上昇のみで,第2病日の123I-MIBGシンチグラフィで取り込みなし。そのためメトクロプラミド負荷試験を施行。血中アドレナリンと血圧は有意に上昇,さらに第37病日の123I-MIBGシンチグラフィで左副腎への取り込みを認めたため左副腎褐色細胞腫と診断。第51病日,腹腔鏡下左副腎摘出術施行。一過性の心筋障害の原因として褐色細胞腫も念頭におく必要がある。

  • 塩谷 信喜, 山田 裕彦, 柴田 繁啓, 真壁 秀幸, 遠藤 重厚
    原稿種別: 症例報告
    2006 年 9 巻 6 号 p. 461-467
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    我々は,糖尿病などの合併症を有し,筋層まで達したⅢ度熱傷から壊死性筋膜炎様の変化を呈した2症例を経験した。いずれも四肢に火炎による熱変性の強い熱傷創が存在し,受傷後48時間以内に皮下脂肪層までの焼痴切除と深い熱傷で壊死に陥った筋肉の一部を除去し,肉眼的に正常と判断できる深度まで切除を施行した。経過中,深い熱傷創周囲の脂肪層に拡大する壊死病変を認め,臨床的に壊死性筋膜炎の形態であったため,直ちに壊死組織のdebridementと電解酸性水による洗浄を開始した。壊死病巣を完全に除去したにも関わらず,周囲へ急速に拡大したが,創部の洗浄・debridementを継続することで,患肢を切断から免れることができた。

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