日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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10 巻, 3 号
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特集
  • 有賀 徹, 木村 佑介, 浅野 幸雄, 石松 伸一, 市川 光太郎, 小野 清, 岸本 晃男, 栗原 正紀, 野口 宏, 常陸 哲生, 山田 ...
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 301-305
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    地域ごとの事情などを勘案すると二次救急医療の守備範囲は極めて幅が広く,そのあり方を画一的に提示することは難しい。そこで,二次救急医療の問題点を洗い出し,その実態を把握し,それを踏まえて地域における救急医療の効率的で効果的な運営方法を考察し,具体的な方法やあり方について考えることを委員会の当面の検討課題とした。例えば人口80万人の地域では,1日当たり46~47人の入院患者が救命救急センターと二次救急医療機関とに入院する。加えて入院を要さない救急患者400人前後へも対応している。高齢化社会を迎えるなどあって,継続的かつ包括的な医療が地域において展開できねばならず,救急医療はその入り口をなす重要な役割を担う。このような安心と安全とを確実にする社会資本として救急医療のあるべき姿を示していくことが必要である。いずれ二次救急医療のあり方に関する「尺度(指標)」を示し,二次救急医療の更なる活性化に繋げたい。

  • 浅野 幸雄, 野口 英一
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 306-311
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    東京都の二次救急医療体制の特徴として,休日の昼間と毎日の夜間に入院を要する救急患者の診療体制を確保するため,「休日・全夜間診療事業」が整備され,内科,外科及び小児科について365日救急病床を確保し,細かい診療科目には関係なく,必ず診療する体制となっている。また,都立3病院で実施されている「東京ER」では,「365日24時間いつでも,だれでも,様々な症状の救急患者に対して,診察・入院・緊急手術・救命措置などトータルな救急医療サービスを提供する」ことを目的とした救急医療体制ができている。救急隊にとっては,診療科目を細かく選定することなく搬送することができ,救急活動での搬送先医療機関選定では心強いシステムである。

  • 小野 清
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 312-316
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    本市では,三次医療機関が,軽症の患者を含めて,搬送人員の3分の1の患者を受入れており,三次の本来機能への影響が危惧される。また,病院照会件数はその約4割弱が収容不可という結果であり,こうした状況が医療機関への収容所要時間の遅延の要因になっていると考えられる。本市は,こうした課題に対応するため,診療体制の確保と医療機関の機能分担という観点から,既存事業を再編して平成18年に病院群当番制事業を開始したが,当番病院の配置や数の問題から,期待される効果が目に見えるかたちで発揮されるには至っていない。現在,当番病院の増強等の取組みが進められており,さらなる体制の充実が期待される。消防としても,積極的に関与し,円滑な救急医療の実現に向けて引き続き努力していきたい。

  • 常陸 哲生
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    救急を要請する多くの市民の立場からすれば,家族又は同僚に普通ではない状態が起き,あるいは突然事故に遭遇するといった場合に,要請しているのであって,一刻も早い救急車の到着を望んでいるはずである。しかし,救急車の出動件数は, この10年右肩上がりで増え続け,これに対応すべく救急車の増隊には,各都市とも努力しているところであるが,なかなか追いついていかないのが実態で,むしろ,救急車の現場到着時間が遅くなってきているのが実態であり,憂慮されるところである。そんな中での二次救急医療(初期,三次含む)の体制と消防救急が抱えている課題等について考えてみたい。

  • 岸本 晃男
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 322-332
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    東京都の初期・二次救急医療体制の現状を江戸川区の体制を例示して述べた。東京都区内には現在14の大学病院本院があり,公的病院も多く,全国の特定機能病院の17%が集中している。したがって三次救急施設は,他地区より充実しているが,そんな中でも日常発生している救急患者の多くは,初期・二次救急医療体制の中で処理されている。しかしこの初期・二次救急医療体制も医師や診療科目の遍在,患者ニーズの多様化,安全対策上の問題,さらに生活費が世界一高い東京での医療経営上の問題をかかえている。したがって日々の救急医療をささえている都内救急病院の維持が困難になってきた。一方,休日夜間医療は,都と共に地域医師会体制の中でも行われているが,マンパワー(特に小児専門),医療安全対策上の問題等課題が多く,これも二次救急医療の機能麻痺に直結する。初期医療・二次救急医療体制は,機能の分担を再検討した上で,その連携を密にしなければならない。

  • 石松 伸一
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 333-335
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    一医療機関から見た救急医療の問題点, とくに二次救急医療について考察した。当院は1995年の新病院移転時より救急部を開設し救急医療の提供を開始したが,受診患者総数, とくに自力受診患者数は増加の一途をたどる一方で救急車搬入患者を断るという問題点が出てきた。この理由には救急医をはじめとする医療側のマンパワーの問題,施設などの構造上の問題,救急病床運用のようなシステムの問題などが背景にあり,一部は院内での対策で解決可能であった。しかしながら高度化多様化を続ける社会の救急医療への要求に今後とも対応して行くためには,一施設ではなく地域や行政面での対策を真剣に議論する必要がある。

  • 〈北九州方式を中心として〉
    市川 光太郎
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 336-341
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    小児救急医療提供体制はマンパワー不足を中心に社会問題化しているが,その質の観点では,総合診療としての小児救急医療が提供されるべきである。すなわち,小児救急疾患が単なるbiomorbidityからco‐morbiditiesに変わってきたこととも相まって,心身両面での診療が求められ,そこに専門医志向が昂揚する理由がある。事故外傷を含めての総合診療は育児支援の大きな柱と考えられる。地域の救命救急センターにおいて,各救急診療科医との連携を強め,小児科医を中心としての診療体制を組むことが総合診療の基本となり,一次~三次医療一体化施設として地域の中心的役割を担うべきであろう。そこには地域の二次救急医療体制を構成する医療資源との協働体制が必要である。このような医療資源をともに育み,充実させるためには,いかに地域住民の理解を得ていくかが重要となる。いずれにせよ,小児救急医療が小児内科医単独で行い得るものではなく,事故外傷の子ども達への対応を含め,境界疾患の対応が可能な他科医の連携が不可欠であり,いかに地域二次救急医療体制と融合して,その医療資源をともに活用して,質の向上を図るかが今後の課題であろう。

  • 山田 至康
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 342-347
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    小児救急医療をめぐっては保護者の救急診療へのニーズの増大と多様化に医療側が対応できないために混乱が生じている。小児科学会や厚生労働省は病院小児科の集約化・重点化の推進により小児医療を確保する方針であるが,実施には時間がかかるだけでなく,折からの医師不足のため都市部と地方の医療格差は広がる一方である。今回,病院小児科の集約化・重点化の推進に伴い,小児科医がER体制をとっている救命救急センター等で救急医と協働することの重要性を述べると共に,教育カリキュラムの確立による「小児救急専門医制度」に向けての取り組みの重要性について言及した。

  • 栗原 正紀
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 348-356
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    高齢社会においては住み慣れたところで安心した地域生活が送れるように支援するための新たな救急医療体制(地域救急医療体制)が求められる。助けただけの救急医療は過去のもの。救命後のQOLを視野に入れた救急医療のあり方,機能分化・連携が課題として挙げられる。このためには,救急医療とリハビリテーション医療が地域の中で包括的に展開されることが肝要である。医療機関の機能分化を考慮した時,特殊救急疾患に対する応需体制としてのセンター化が望まれ,急性期・回復期・維持期リハビリテーションの流れの中で地域医療連携が構築されることが必要である(図1)。

  • 一連携を視野に入れた二次救急病院の役割―
    木村 佑介
    原稿種別: 特集
    2007 年 10 巻 3 号 p. 357-359
    発行日: 2007/06/30
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    今日まで,救急医療は三次中心にその重傷度によって,三次・二次・初期と分けて構築され機能してきた。しかし,社会構造の変化,特に完全な少子高齢社会による救急に対するニーズの変化,一方で医療構造(制度を含めた)による医療提供側の変化により,現状に合わないものになってきている。今まで,すべて右肩上がり(経済も,人口も)の状況を想定しての施策・システムが構築され(インフラの整備等)てきたが,今後は人口減少社会・右肩下がりの社会を想定して高齢人口の増加,きめの細かさを求める医療ニーズを考え,二次そのもののあり方を“地域”という単位で再構築することが必要である。

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