北海道初のPublic Access Defibrillation(以下PADと略す)奏功例を経験した。
症例:56歳,男性。2006年春,札幌市でテニス大会に出場し,スマッシュを打った直後に意識消失して倒れた。心肺停止状態と判断した同僚2人が,心臓マッサージと人工呼吸を継続し,競技場職員が競技場に設置してあった自動体外式除細動器(automated external defibrillator,以下AEDと略す)を使用した。救急隊到着時,心拍は再開していた。当院高度救命救急センター搬入時のGlasgow coma scale(以下GCSと略す)は8点であつた。2日間の脳低温療法を施行し,その後復温して,第6病日に抜管した。第7病日には意識清明となった。本報告例は基礎疾患の非閉塞性肥大型心筋症により,運動中に心室細動(以下VF)が出現し心肺停止となったと考えられた。最終的には経皮的冠動脈形成術を行い,植え込み型除細動器を植え込んだ。
本報告例は適切な一次救命処置とPADにより心拍が再開し,かつ脳低温療法の救命の連鎖が迅速に連動し,後遺症もなく完全社会復帰した。
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